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王様の実力
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決戦の時は来た。
兵はそれぞれの持ち場に散り、武器を手に取り、戦いが始まった。
戦闘開始前に王様はあの巨大な竜山に名前を付けた。名は古代兵器ドラゴー。ドラゴンとゴーレムという安直なネーミングは気にしないでおこう。
とにかく敵の名前がはっきりしたことにより、ドラゴーを完全に敵とみなした。
名前が決まっただけで今までは現象に近い感覚だったのが、倒せるのではないかと思えるようになったのは自分でもよくわからない。でも、やる気は出た。
「こっちにもエネルギー光線飛んでくるじゃん!」
「予想外ですね……お互い気を付けましょう」
「えっと、ショールとダイヤだっけ。頑張ろうね」
「………………」
白髪のダイヤはにっこにこしてる。ショールは無言で頷くだけ。アズちゃんよりも喋らない。
対称的な二人だが、コンビネーションは抜群だ。同時攻撃で一気に削る。
しかしドラゴーの足は固い。ただの岩ならば簡単に砕くことができるのだが、今は山そのものがゴーレムになっているため、全体に魔力が通り簡単には砕けなくなっているのだ。
「ふっ! はあああ!! ……ッッッ!! ダメだ、全然通じない……」
いくら殴っても崩れない。しかも、ドラゴーは常に少しずつ動いているため走りながら攻撃しなくてはいけない。疲れるも疲れる。
さらにだ。一瞬攻撃が緩まった時に加速するため、常に攻撃をし続ける必要がある。
いくら攻撃をしてもドラゴーが遅くなることはない。絶望的な状況だ。
「あくまでも私の役目は足止め、気を抜いたらダメだ」
いや、遅くなることはないのだから足止めもできてないか。
とにかく今は無心で攻撃するしかない。足の一部でも砕ければ足止めはできるかもしれないが、時間内にそこまでのダメージを与えられるかどうか。
「ぐっ……」
ガギンガギンとおよそ岩を殴って出るものではない音が響く。
金属よりも余裕で硬い。だがドラゴンの肉を食らった私の拳は鉄をも砕く。込められる魔力も増えているのでエネルギー光線を避ける役割は他の人に任せて、私は足を砕くことに専念することにした。
数十分が経過した。私が集中して攻撃している場所は徐々にヒビが入っている。
ヒビは時間が経つと元に戻ってしまう。とにかく集中攻撃をするしか方法はないのだ。
「まだかな……」
ギンが迎えに来るのを待っているのだが、遺跡内部で相当手間取っているらしい。なかなか来ない。
あと少しで足を砕けるのだ、ギンが来るまでは全力で殴る。
「はあああああああああああああ!!!!!!」
ヒビが広がる。あと少し、本当にあと少しだ。
しかし体力も限界に近い。休憩を取らなくては。でも、今休憩を取ったらヒビが塞がってしまう。
なら、残りの体力を絞り切って一気に砕くしかない。
「スゥゥゥゥゥ………………一・撃・入・魂ッッッッッ!!!!!」
バキバキバキっと岩が割れる。魔力が隙間から漏れ、その勢いに押されてヒビも広がる。
ヒビは次第に大きくなっていき、ドラゴーの右足の三分の一が砕けた。
ドラゴーが姿勢を崩す。右側に若干傾き、スピードが大きく遅くなる。
「やっ………………た…………!」
全身の力が抜ける。そのまま地面に倒れながら目を閉じる。
ぐわっと全身が持ち上がる感覚。誰かが受け止めてくれたのだろうか。余計なことを。
「クォォォォォ!!!」
「ギン…………なんだ、今指示出したんだ」
目を開けると空だった。ギンに背中をがっちり掴まれ、運ばれている。
自分に羽が生え、空を飛んでいるような気持ちになるね。悪くないかも。
空からドラゴーの全体が見える。横から見て傾いてるのは分かってたけどやっぱり空から見てもバランスが悪くなってるな。
なんて思っていると、ギンがドラゴーの背中に降ろしてくれた。王様が近くに立っている。
「ドラゴーの姿勢が崩れ速度も遅くなった。十分な働きだ、エファ」
「はぁ……はぁ……もっと、褒めてくれてもいいんですよ……」
「疲労困憊のところ悪いが急がなければ間に合わんぞ。っと、流石に休憩は必要か。そこで見ていろ」
「えっ?」
王様はそう言うと巨大な大剣を持ってギンの背中に飛び乗った。ジャンプで乗るとかどんなだよ。
そしてギンが空高く飛び立つ。その背中に平然と立つ王様。やばい。
「だらああああああああああああああ!!!!」
叫びながらギンの背中から飛び降りる王様。やばい。
大剣を両手で持つと、空中で構えた。ただでさえ大きい大剣がさらに大きくなっていく。
「マキシマム……バスタアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
自分の身長よりも数倍大きくなった刃を振り下ろす王様。この距離からでも叫び声が聞こえる。
その巨大な斬撃はドラゴーの後ろ足を断ち切った。私があそこまで苦労して砕いた足を一撃で粉砕したのだ。流石は国一番の大剣使いというべきか。規格外だ。
「ふぅ……まあこんなものよ」
「化け物ですか……?」
というかなんで普通に着地してるの。結構高いところから落ちてなかった?
ダメだ、王様は今の時間で休憩し息を整えさせるために行動したのに、全然休憩できてない。
「俺の話はもういい、これでほぼ止まるだろうな。しかしコアを破壊したらどうなるかもわからん。覚悟しておけよ」
「…………? はあ、まあ覚悟はもうできてますよ」
「それならば行くぞ。中でお前の仲間が待っている」
王様の後ろを歩く。さっきまで全速力で走りながら戦っていたので歩くだけでも十分な休憩だ。
体力はもうほとんどない、私にできることはまだあるのだろうか。
いや、弱気になっていたらダメだ。できることもできない。本当に最後の力を振り絞ったのならば、立つこともできなくなっているはずだから。
さあ、ドラゴーを止めに行こう。
兵はそれぞれの持ち場に散り、武器を手に取り、戦いが始まった。
戦闘開始前に王様はあの巨大な竜山に名前を付けた。名は古代兵器ドラゴー。ドラゴンとゴーレムという安直なネーミングは気にしないでおこう。
とにかく敵の名前がはっきりしたことにより、ドラゴーを完全に敵とみなした。
名前が決まっただけで今までは現象に近い感覚だったのが、倒せるのではないかと思えるようになったのは自分でもよくわからない。でも、やる気は出た。
「こっちにもエネルギー光線飛んでくるじゃん!」
「予想外ですね……お互い気を付けましょう」
「えっと、ショールとダイヤだっけ。頑張ろうね」
「………………」
白髪のダイヤはにっこにこしてる。ショールは無言で頷くだけ。アズちゃんよりも喋らない。
対称的な二人だが、コンビネーションは抜群だ。同時攻撃で一気に削る。
しかしドラゴーの足は固い。ただの岩ならば簡単に砕くことができるのだが、今は山そのものがゴーレムになっているため、全体に魔力が通り簡単には砕けなくなっているのだ。
「ふっ! はあああ!! ……ッッッ!! ダメだ、全然通じない……」
いくら殴っても崩れない。しかも、ドラゴーは常に少しずつ動いているため走りながら攻撃しなくてはいけない。疲れるも疲れる。
さらにだ。一瞬攻撃が緩まった時に加速するため、常に攻撃をし続ける必要がある。
いくら攻撃をしてもドラゴーが遅くなることはない。絶望的な状況だ。
「あくまでも私の役目は足止め、気を抜いたらダメだ」
いや、遅くなることはないのだから足止めもできてないか。
とにかく今は無心で攻撃するしかない。足の一部でも砕ければ足止めはできるかもしれないが、時間内にそこまでのダメージを与えられるかどうか。
「ぐっ……」
ガギンガギンとおよそ岩を殴って出るものではない音が響く。
金属よりも余裕で硬い。だがドラゴンの肉を食らった私の拳は鉄をも砕く。込められる魔力も増えているのでエネルギー光線を避ける役割は他の人に任せて、私は足を砕くことに専念することにした。
数十分が経過した。私が集中して攻撃している場所は徐々にヒビが入っている。
ヒビは時間が経つと元に戻ってしまう。とにかく集中攻撃をするしか方法はないのだ。
「まだかな……」
ギンが迎えに来るのを待っているのだが、遺跡内部で相当手間取っているらしい。なかなか来ない。
あと少しで足を砕けるのだ、ギンが来るまでは全力で殴る。
「はあああああああああああああ!!!!!!」
ヒビが広がる。あと少し、本当にあと少しだ。
しかし体力も限界に近い。休憩を取らなくては。でも、今休憩を取ったらヒビが塞がってしまう。
なら、残りの体力を絞り切って一気に砕くしかない。
「スゥゥゥゥゥ………………一・撃・入・魂ッッッッッ!!!!!」
バキバキバキっと岩が割れる。魔力が隙間から漏れ、その勢いに押されてヒビも広がる。
ヒビは次第に大きくなっていき、ドラゴーの右足の三分の一が砕けた。
ドラゴーが姿勢を崩す。右側に若干傾き、スピードが大きく遅くなる。
「やっ………………た…………!」
全身の力が抜ける。そのまま地面に倒れながら目を閉じる。
ぐわっと全身が持ち上がる感覚。誰かが受け止めてくれたのだろうか。余計なことを。
「クォォォォォ!!!」
「ギン…………なんだ、今指示出したんだ」
目を開けると空だった。ギンに背中をがっちり掴まれ、運ばれている。
自分に羽が生え、空を飛んでいるような気持ちになるね。悪くないかも。
空からドラゴーの全体が見える。横から見て傾いてるのは分かってたけどやっぱり空から見てもバランスが悪くなってるな。
なんて思っていると、ギンがドラゴーの背中に降ろしてくれた。王様が近くに立っている。
「ドラゴーの姿勢が崩れ速度も遅くなった。十分な働きだ、エファ」
「はぁ……はぁ……もっと、褒めてくれてもいいんですよ……」
「疲労困憊のところ悪いが急がなければ間に合わんぞ。っと、流石に休憩は必要か。そこで見ていろ」
「えっ?」
王様はそう言うと巨大な大剣を持ってギンの背中に飛び乗った。ジャンプで乗るとかどんなだよ。
そしてギンが空高く飛び立つ。その背中に平然と立つ王様。やばい。
「だらああああああああああああああ!!!!」
叫びながらギンの背中から飛び降りる王様。やばい。
大剣を両手で持つと、空中で構えた。ただでさえ大きい大剣がさらに大きくなっていく。
「マキシマム……バスタアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
自分の身長よりも数倍大きくなった刃を振り下ろす王様。この距離からでも叫び声が聞こえる。
その巨大な斬撃はドラゴーの後ろ足を断ち切った。私があそこまで苦労して砕いた足を一撃で粉砕したのだ。流石は国一番の大剣使いというべきか。規格外だ。
「ふぅ……まあこんなものよ」
「化け物ですか……?」
というかなんで普通に着地してるの。結構高いところから落ちてなかった?
ダメだ、王様は今の時間で休憩し息を整えさせるために行動したのに、全然休憩できてない。
「俺の話はもういい、これでほぼ止まるだろうな。しかしコアを破壊したらどうなるかもわからん。覚悟しておけよ」
「…………? はあ、まあ覚悟はもうできてますよ」
「それならば行くぞ。中でお前の仲間が待っている」
王様の後ろを歩く。さっきまで全速力で走りながら戦っていたので歩くだけでも十分な休憩だ。
体力はもうほとんどない、私にできることはまだあるのだろうか。
いや、弱気になっていたらダメだ。できることもできない。本当に最後の力を振り絞ったのならば、立つこともできなくなっているはずだから。
さあ、ドラゴーを止めに行こう。
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追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
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