気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

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ギンの安全確保!

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「いやーまさかこんなに報酬金が多いとは思わなかったよ」

 袋に入っている金銀財宝…………とまではいかないが、金貨銀貨の山ににやけ顔が止まらない。
 これだけで宝石店に売っている高級結晶を買うことができるのではないだろうか。もう鉱山で採掘はしないだろうから山小屋の荷物は全て回収したのだが……流石に足りるよね?

「当然でありますよ、あのドラゴンの被害は長いこと続いてたんであります。その問題を解消したんでありますから」
「本来なら王国がやる仕事だもんね」

 王国め、大事なことを調べてるらしいけどなんて奴らだ。
 そういえば王国に報告しないといけないんだっけ。目の前で走っているギンはどうやって説明しよう。
 この子ね、お肉食べるんだよね。肉は山ほど手に入るし問題ない。食費が浮くね、やったね。

「街についたら王国に報告して、解体してもらって、素材を換金して、装備を強化して、増えたお金で結晶を買って、転移クリスタルを手に入れる。うーん、やることが多い」
「でももう目的は達成したよねー」
「うん、これで旅に出られるよ」

 ついに念願の旅に出られるぞ。と言っても、今は旅よりもドラゴンの肉の方が楽しみなのだが。

「あーそういえば吾輩たちって旅をするためにお金稼ぎをしてたんでありますよね。完全に忘れていたであります」
「そりゃあれだけ山に籠ればね」

 本来の目的を忘れてしまうほど拘束されていたのか。私は旅に出たいという気持ちが強すぎて採掘中も忘れることはなかったけど。

「それじゃ、私は寝るから。ついたら起こして」
「えー、えっちゃんずるーい」
「ポコ、大人はみんなずるいんだよ」

 私は大人だからずるいんだ。戦闘スタイルは全然ずるくないけど。

「見た目は子供でありますけどね」
「ポコ、一緒に寝ようか」
「わーい!」

 ポコが抱き着いてくる。おっふ、なんでそんなに密着するのん。胸が当たって胸が。
 そういえばあの時も二人で寝たなぁ、一つのベッドを二人で。ワンルームをダブルで。

「えっ、ちょっと!? 二人が寝たら吾輩一人で見張りになってしまうでありますよ!?」
「知らん」

 一人ぼっちは寂しいもんな……まあ私には関係のない話だ。

「クォオ」
「ギンだけが心の支えであります……」

 隊長はギンとあまり交流がなかったし丁度いい機会だろう。私はそれを見越して寝ようとしたのだ、今そういうことにした。

 ギンが馬車を引いて歩く。という方法で移動をしようとしていたのだが、ポコの馬車改造によりその心配もなくなった。なんと風魔術と刻印により、馬車を浮かせることに成功したのだ。浮いているのでギンが走っても揺れが少ない。頑張れば空を飛ぶことだってできる。
 だが、まだテスト段階のため飛行は行っていない。魔術だけでなく馬車まで形ごと改造しなければ安全にはならないだろう。この荷台で空を飛ぶのは危険だ。

 凄まじい速さで流れていく景色を横目に、私は目を閉じたのだった。

* * *

 隊長に起こされ、目を覚ました。もう街はすぐそこまで来ている。

「ふぁぁ……早いね、流石ドラゴン」
「いや、まあまあ寝てたでありますよ。吾輩も寝たいであります」
「じゃあ、さっさと報告して休もうか。どうせ解体するのに時間かかるし」
「了解であります。お、もう入り口でありますね」

 寝起きだからかふわふわした感覚の中、ギンの背中越しに街の壁を見る。相変わらず高い壁だ。
 あと、ふわふわしてるのは馬車……竜車? が浮いているからかもしれない。目が覚めてきた、これ浮いてるからだわ。そりゃあふわふわするわ。
 というわけで、寝てなくてもふわふわしてる奴も起こそう。

「じゃあポコ起こそうか。って、なんか騒がしくない?」
「ほんとであります、しかも吾輩たちを見て逃げているでありますよ」
「何かに追われてるとか……じゃないか」

 馬車から顔を出し来た道を確認するが、そこにはただ長い道が続いているだけだった。
 ならばなぜ? 怖がられることなんて別に……あっ。

「ギンだ!」
「うぇっ!? な、なぁに?」

 私の声でポコが起きる。思わず大きな声を出してしまった、まあ起こせたし別にいいか。

「ギン! 止まって!」
「クォォォォン」

 ギンがゆっくりと減速し、関所の近くに止まる。それと同時に兵士が数人飛び出してくる。
 まずい、誤解を解かなければ。
 私が竜車から降りると、兵士は武器を下した。流石にギンが静かで人間が出てくれば話は聞いてくれるか。

「これはどういうことかね」
「このドラゴンは私たちの仲間です、害はありません」

 とりあえず簡潔に説明する。

「はぁ……どうする?」
「そんなこと言ったってなぁ」

 兵士たちが集まって話し合いを始めた。これまでにない事例だから困っているのだろう。

「確か、魔獣を農作に使ってるんですよね? それならドラゴンだっていいじゃないですか」
「あれは調教師が調教した魔獣だ。外から来た竜を通すわけにはいかない」
「えー……」
「えー、じゃない」

 ギンはここでお留守番? でも知らない狩人に襲われるかもだし、兵士もドラゴンの護衛なんてしてくれないだろう。してくれるなら申し出るはずだ。
 ならば、安全だと証明できれば良いのでは?

「王様に確認……は無理だし、調教師に確認させるのはどうですか?」
「まあ、それならいいが。おい、調教師を呼んできてくれ」
「はっ!」

 確か馬小屋だとか、そういう動物がいるのは関所の近くだ。そこまで時間がかかることはないだろう。
 少しだけ待つ、ドラゴンを倒した話をしたりして時間を潰した。兵士はドラゴンを倒したと聞いて驚きはしたものの、ギンが安全かどうかの評価は変わらないようだった。ちぇっ。

「呼んできました」

 調教師を呼びに行った兵士が戻ってくる。早かったね。
 その兵士の後ろについてきたのは、メガネに白い服を着た白髪の女の人だった。すっごいニコニコしてる。怖い。

「はいはい、君が話のドラゴンですね? メタルヴルムですか。ふむ、大人しい子です。仲間になった、というのはいつからですか?」

 どうやらギンはメタルヴルムという種類の竜らしい。初耳だね。

「昨日ですね」
「昨日!? 何したらこんなに懐くんですか」
「えっと、宝石を上げました。そしたら仲良くなっちゃって」

 確かに言われてみれば昨日会ったばかりなんだよね。でも、ポコも隊長も会ったその日に仲良くなれたし、ドラゴンによるんじゃないかな。

「宝石ですか……なるほど、参考にしておきます」

 なんのだ。

「して、調教師殿。ギンは安全なのでありますか?」
「うん安全安全。ちょー安全だよ」
「だってさー兵士さん!!」

 なんかポコと調教師さん似てるな。

「う……だがドラゴンが街を徘徊するのはまずいだろう。街の中でいいから、預けられるところに預けるべきだ」

 正論だ。いくらギンが安全だと言っても、住民が怖がってしまうのは避けられない。

「なら私が預かりますよー、それでいいかな? えっと、誰?」
「エファです。じゃあ、お願いできますかね?」
「おっけ任せて。ギンちゃんこっちだよーう」
「クォ?」

 ギンは調教師のお姉さんに呼ばれるが、どうしていいかわからずに私の顔を見た。

「ギン、いっておいで」
「クォォ」
「おお、ご主人の言うことは聞くんですね。ますます謎です。それでは、安心して街に入ってくださいね!」

 多少不安ではあるが、ギンの安全が確保できてよかった。これからもやることがあるのだ、こんなところで足止めされている場合ではない。
 ギンの預け先が決定し、やっと街に入ることができた。あとは、お城に行って報告した後に解体だ。おらわくわくすっぞ。
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