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魔獣……? ドラゴンやないかい!
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最初は宝石が出たら採掘をやめて隊長を待とうと思っていたのだが、奇跡的に見つかってしまったためやることがなくなってしまった。
と、いうことで。
「よーし、じゃあ探そうか」
私はそう言いながら岩で宝石の入っていた壁を隠した。
「え、今のって」
「なになに? まだ掘ってないじゃん。ほら、探そう探そう」
「そ、そうだね!」
さすがポコだ、こんな茶番にも付き合ってくれる。
目的を達成してしまい、何をすればいいかわからなくなってしまった、それならば、まだ見つかっていないことにしてしまえばいいのだ。
さあ、お宝探しの始まりだ!
* * *
「ないね」
「ないよね、だってレアだもんね」
掘り始めてからどれだけの時間が経っただろうか。いや、そこまで経っていないのだが、それでもちょくちょく壁を崩して何もなかった虚無感を味わったのでかなり心が参っている。
「あった!」
「あったね、だってあるもんね」
こらえきれなくなったポコが雑に被せた岩をどかし、宝石を見つける。はい見つけたー、よし、隊長を待とう。暇とかもうどうでもいいよ。てかすげー喜ぶべきイベントでしょこれ。宝石だぜ? だって宝石なんだぜ??
「おーーーーーーーーい! 戻ったでありますーーーーーーーー!!」
「あ、戻ってきたよ」
「早いね、なんか不安なんだけど」
手を振りながら走ってくる隊長。めっちゃ笑顔じゃん、なんでそんなに嬉しそうなの。隊長が嬉しそうってことは隊長にとって嬉しいってことだよね、それかなりハードなのでは? あいつ危険性とか全く考慮しないぞ。
「おつかれ、どうだったのん」
「はぁ……はぁ……依頼を受けてきたであります!」
「依頼ー?」
依頼って、なんか採取してこいとか、そういうのじゃないの。えー別にいいけどさ、魔獣を倒したいんだよね私。
「安心してほしいであります! 討伐依頼でありますよ!」
「ほう、内容は?」
「巨大生物の討伐であります。夜中になにか巨大な影が鉱石を食べてしまって、採掘量が減って困っているらしいんであります」
「鉱石を……食べる?? え、見た目はどんな感じなの」
鉱石を食べる魔獣は本に載っていたっけ。確か、岩を食べる魔獣はいても鉱石を食べる魔獣はいなかったはずだ。もしかしたらその鉱石を食べる魔獣は鉱石ではなく岩を食べるついでに食べているのではないか。
「空を飛ぶトカゲ……まあドラゴンでありますね」
「だね、ドラゴンだそれ。じゃあそれこそわからんぞー」
空を飛ぶドラゴン、飛竜種はまた別の本に載っているのだ。お手上げである。
しかし飛竜種か……ドラゴンモドキともまだ戦っていないのにいきなり知らないドラゴンを相手にするのは危険ではないのか。それは私たちの実力でどうにかなる相手なのか。
「鍛冶屋のおじいさんが言ってた鉱石の量が減ったっていうのはそれが原因なのかなー?」
「そうらしいでありますよ。結構前から目撃情報が出てて、被害も大きいらしいんであります」
ここで一つの疑問が浮かぶ。なぜ、そこまで危険なドラゴンを野放しにしておくのか。
いや、人間を襲ったというわけではないから危険かどうかはわからないが、採掘の被害が出ているのだから王国も放っておかないはずだ。
「なんでずっと放置してるの? 金属が手に入らないと国も困るでしょ」
「知らないんでありますか? フォルテシアは今、本格的に古代文明の探索に力を入れていて人手が足りていないんでありますよ。人が襲われたなどの事件があれば動くかもしれないでありますが、今回はその被害は出ていない、つまり後回しにしてもいいと判断したんであります」
古代文明が何なのかは知らないが、とても大事なことなのだろう。お金稼ぎが終わったら、その古代文明の探索に足を突っ込んでもいいかもしれない。ポコのお父さんにも会いたいしね。むしろポコを会わせてあげたい。前に行ったら遠征してていなかったし。
「それでも働いている人は困るでしょ? 他のところに、それこそ狩人に依頼しなかったのかな?」
「依頼は張り出されているでありますよ? でも、ドラゴンと聞いた狩人はなかなか来てくれなかったんであります。そして、来ても戦えずに終わることがほとんどだとか……」
「そんなに見つからないんだ……」
「いや、見つかるけど逃げられてしまうんでありますよ」
「なるほどね、すぐ逃げるんだ」
それは何というか賢いというか、厄介だね。
しかし私たちはお金稼ぎが目的でここに来ている。夜にちょっと探索するくらいどうってことはない。存分に時間を掛けて探すことができるし、作戦も考えられる。なにせこっちにはアバンというトラッパーがいるのだから。
「じゃあ、早速探索行く? もうすぐ夜だし」
「そうだねー、どの辺を探せばいいのー?」
「そうでありますね、やはり……反対側であります!」
「…………」
それならば最初から私たちも反対側に行って話を聞いた方が楽だったのでは、というツッコミはしない方がよいだろうか。
でも残ったことにより結果的に宝石が手に入ったし、いいのかな? ま、聞いた限りじゃそのドラゴンは簡単には見つからないだろう。誤差だ誤差。むしろ宝石が手に入った分今の方がいいのではないだろうか。
全てはポジティブ思考。前向きムキムキに生きていこうね。
と、いうことで。
「よーし、じゃあ探そうか」
私はそう言いながら岩で宝石の入っていた壁を隠した。
「え、今のって」
「なになに? まだ掘ってないじゃん。ほら、探そう探そう」
「そ、そうだね!」
さすがポコだ、こんな茶番にも付き合ってくれる。
目的を達成してしまい、何をすればいいかわからなくなってしまった、それならば、まだ見つかっていないことにしてしまえばいいのだ。
さあ、お宝探しの始まりだ!
* * *
「ないね」
「ないよね、だってレアだもんね」
掘り始めてからどれだけの時間が経っただろうか。いや、そこまで経っていないのだが、それでもちょくちょく壁を崩して何もなかった虚無感を味わったのでかなり心が参っている。
「あった!」
「あったね、だってあるもんね」
こらえきれなくなったポコが雑に被せた岩をどかし、宝石を見つける。はい見つけたー、よし、隊長を待とう。暇とかもうどうでもいいよ。てかすげー喜ぶべきイベントでしょこれ。宝石だぜ? だって宝石なんだぜ??
「おーーーーーーーーい! 戻ったでありますーーーーーーーー!!」
「あ、戻ってきたよ」
「早いね、なんか不安なんだけど」
手を振りながら走ってくる隊長。めっちゃ笑顔じゃん、なんでそんなに嬉しそうなの。隊長が嬉しそうってことは隊長にとって嬉しいってことだよね、それかなりハードなのでは? あいつ危険性とか全く考慮しないぞ。
「おつかれ、どうだったのん」
「はぁ……はぁ……依頼を受けてきたであります!」
「依頼ー?」
依頼って、なんか採取してこいとか、そういうのじゃないの。えー別にいいけどさ、魔獣を倒したいんだよね私。
「安心してほしいであります! 討伐依頼でありますよ!」
「ほう、内容は?」
「巨大生物の討伐であります。夜中になにか巨大な影が鉱石を食べてしまって、採掘量が減って困っているらしいんであります」
「鉱石を……食べる?? え、見た目はどんな感じなの」
鉱石を食べる魔獣は本に載っていたっけ。確か、岩を食べる魔獣はいても鉱石を食べる魔獣はいなかったはずだ。もしかしたらその鉱石を食べる魔獣は鉱石ではなく岩を食べるついでに食べているのではないか。
「空を飛ぶトカゲ……まあドラゴンでありますね」
「だね、ドラゴンだそれ。じゃあそれこそわからんぞー」
空を飛ぶドラゴン、飛竜種はまた別の本に載っているのだ。お手上げである。
しかし飛竜種か……ドラゴンモドキともまだ戦っていないのにいきなり知らないドラゴンを相手にするのは危険ではないのか。それは私たちの実力でどうにかなる相手なのか。
「鍛冶屋のおじいさんが言ってた鉱石の量が減ったっていうのはそれが原因なのかなー?」
「そうらしいでありますよ。結構前から目撃情報が出てて、被害も大きいらしいんであります」
ここで一つの疑問が浮かぶ。なぜ、そこまで危険なドラゴンを野放しにしておくのか。
いや、人間を襲ったというわけではないから危険かどうかはわからないが、採掘の被害が出ているのだから王国も放っておかないはずだ。
「なんでずっと放置してるの? 金属が手に入らないと国も困るでしょ」
「知らないんでありますか? フォルテシアは今、本格的に古代文明の探索に力を入れていて人手が足りていないんでありますよ。人が襲われたなどの事件があれば動くかもしれないでありますが、今回はその被害は出ていない、つまり後回しにしてもいいと判断したんであります」
古代文明が何なのかは知らないが、とても大事なことなのだろう。お金稼ぎが終わったら、その古代文明の探索に足を突っ込んでもいいかもしれない。ポコのお父さんにも会いたいしね。むしろポコを会わせてあげたい。前に行ったら遠征してていなかったし。
「それでも働いている人は困るでしょ? 他のところに、それこそ狩人に依頼しなかったのかな?」
「依頼は張り出されているでありますよ? でも、ドラゴンと聞いた狩人はなかなか来てくれなかったんであります。そして、来ても戦えずに終わることがほとんどだとか……」
「そんなに見つからないんだ……」
「いや、見つかるけど逃げられてしまうんでありますよ」
「なるほどね、すぐ逃げるんだ」
それは何というか賢いというか、厄介だね。
しかし私たちはお金稼ぎが目的でここに来ている。夜にちょっと探索するくらいどうってことはない。存分に時間を掛けて探すことができるし、作戦も考えられる。なにせこっちにはアバンというトラッパーがいるのだから。
「じゃあ、早速探索行く? もうすぐ夜だし」
「そうだねー、どの辺を探せばいいのー?」
「そうでありますね、やはり……反対側であります!」
「…………」
それならば最初から私たちも反対側に行って話を聞いた方が楽だったのでは、というツッコミはしない方がよいだろうか。
でも残ったことにより結果的に宝石が手に入ったし、いいのかな? ま、聞いた限りじゃそのドラゴンは簡単には見つからないだろう。誤差だ誤差。むしろ宝石が手に入った分今の方がいいのではないだろうか。
全てはポジティブ思考。前向きムキムキに生きていこうね。
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追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
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