気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

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世界って狭いよねって話

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 朝起きて、昼までの自由時間。お昼に鍛冶屋に集合ということで、隊長とは解散した。
 冒険に出るにも、昼までじゃあ帰ってこれない。大人しく時間を潰そうか。
 あ、ちなみにだが、ポコはまだ寝ている。一度起こしたが、奴はお昼まで寝るとか言いながら二度寝した。どうやらポコは定期的に昼まで寝ないと死ぬ生き物らしい。

「つってもねぇ……どこか面白そうなところがないものか」

 隊長は昨日自宅に帰り親に旅をすることを伝えたそうだ。そのまま一泊。
 事前に自由行動にすることは伝えていたため、早朝にわざわざ宿に来た隊長と話をして、解散という流れだった。依頼を全て剥がすらしい。掲示板以外の場所にも貼ってたのかよ。

 村にいたころは、近くの森を散策したり仕事をしたりしていたので暇で暇で仕方がない。みんなって暇なとき何するんだろう。わからん。

「あ」
「おっ」

 赤い髪の見知った女性とばったり会う。こういうときなんて声かけたらいいんだ。奇遇だねとか、久しぶりとか? いや久しぶりでもないか。

「聞いたぜ。アバンを仲間に迎えたんだってな」
「そういえばトパーさんに言ったんだっけ……そうだけど、ダメだった?」
「いやいや、いいじゃないか。旅をしたがってたからな……嬉しいくらいだ」

 嬉しいって……ああ、この人はそういう人だった。私も仲間というものを大事にしたいと考えているが、アカネさんは私なんかじゃ比にならないくらいに仲間愛に溢れている。仲間全体のことを考えながら、個人のことも考える。それをするには、相当なカリスマが必要になる。狩猟団をまとめる……絶対難しいよね。

「アカネさんってさ、他の国にも行くんだよね」
「まあ……そのうちな。てか、それはお前らもそうだろ?」
「まあね。なら、また会うかもね」
「おう会おう会おう。どーせ転移クリスタルを手に入れたら国を行き来できるんだ。しばらくはお互い金集めだな」

 金集めと口にすると聞こえは悪いが、それしかすることがないのだ。魔獣を狩ることイコール金集めなので、もうすべての目的が金集めと言っても過言ではない。そのうちお金を気にしなくなるのだろうか。そうなりたいな。

「お金集めだけなら、そっちの方が早そうだけどね」
「こっちはスカウトもあるんだ、そう簡単に貯まらないさ」
「そっか、他の街にも行ってるんだっけ」

 他の街に移動するにも、お金はかかるだろう。このまま国ごと制覇するのではないかという勢い。いつか私の村にもスカウトしに行くのかな。子供が多いからあんまりおすすめしないけど。

「手伝ってほしいことがあったら何でも言ってくれよ?」
「そんなこと言ったら、こき使うよ?」
「そんなことしないだろう、君は」

 調子が狂うな、ちょっとちょっかいを出そうとしても全部受け入れられてしまう。私を信頼するに足りえる出来事なんて、なかった気がするんだけどな。

「……そうだね。じゃ、本当に困ったら頼るよ」
「そうしてくれ。あ、ちなみにあたしはしばらくしたらまた遠くの街に狩人希望者を探しに行くから、頼るなら早めに頼む」
「そんないきなり困らないでしょ……」

 考えてみれば、色々な街に言っているのだから、いつでも会えるわけではないのだ。私よりも旅をしているのでは???
 その後お互いの情報を交換して別れた。随分話したな、ちょっと早いけど鍛冶屋に向かおうか。

* * *

 鍛冶屋に向かうと、ちょうど加工をしている最中だった。話しかけてよいものかと見ていると、おじいさんがこちらに気づく。

「もう来たのか。残念じゃがまだ完成しとらんぞ」
「あ、ごめんなさい。邪魔しちゃいましたか」
「その程度で乱れるほど未熟じゃないもんでな。好きに話しかけていい」
「ありがとうございます」

 逆に不機嫌にさせてしまったか? でも笑ってるしな、甘く見てもらっちゃ困る、みたいなやつかもしれない。大人しく見守ろう。

「それは?」
「マントじゃ」

 鍛冶屋なのに縫うのか。と思ったが、皮を叩いているようだ。そういう作り方をするのか。
 でも一部は縫われてるな……鍛冶屋の技術がわからん。

「これでほとんど完成じゃ」
「おお、早いですね。まだ昼までは時間ありますけど」
「時間に余裕を持たせることが大事なんじゃ。何があるかわからんからの」

 それはミスや、それ以外のトラブルなどに対してだろう。緊急の依頼があったりね。
 昨日並べた素材は、それぞれの装備に加工され並べられている。胸当て、膝当て、これは私の装備だろうか。小物だけ頼もうと思ってたんだけどな、安いならいいや。使わなくなったら分解して錬金術の素材にもできるらしいし。

「ひゃー、こんなにできるんですね」
「ほっほ、これでも素材のあまりは多いぞ。金には困らんじゃろうな」
「はっはっは、それならよかったんですけどね」
「ああ、お前さんも転移クリスタルか。赤髪の女も金がないと嘆いておったわい」
「やっぱりね」

 またアカネさんか。あの人は活動を始めたばかりらしいし、これから革命を起こしそうだな。
 ほんと頼りになる。まだわからないけど、味方側にいるというだけで安心感がすごい。
 その後、ポコと隊長が到着し、装備の説明を受けることになったのだった。
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