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紅の女狩猟団
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デクセスの死体の横で、女性六人が焚火を囲んで座っている。なんとも豪快な見た目だろう。それこそ、男がやってしっくりくる状況だと思う。
「デクセスの肉食ってんのかそれ?」
当然ではあるが、アカネさんが私が焼いているデクセスの肉を見て興味を持ち始めた。
「美味しいよ。あまりは山ほどあるし、食べる?」
ポコもこくこくと頷く。この子たくさん食べるね、これは魔力がモリモリ湧いてきますわ。もう一頭倒せるんじゃないかくらいの勢い。実際遠距離から慎重に倒せば時間は掛かるが安全に倒せそう。
「なっ!? アカネ様に魔獣の肉を食べさせるというのか!」
「いただこう」
「アカネ様!?」
例のごとく紫髪の子が無礼な! とこちらを睨むが、流石アカネさん。どこまでも大きい懐の広さで受け入れてくれる。ささ、お食べ。
「ぐっ……魔獣の肉か……」
「…………美味しそう」
「アズっ!? 本気か!?」
おおっ、青髪の子……アズが肉を手に取ったぞ。というか初めて喋ったね。無口な子なのかな。
小さくてかわいいなぁ、身長は私に近いかもしれな……ち、ちっさくないし! アズさんより多分年下だからまだ未来はあるし!
「おお! こりゃうめーな! 普通に食糧としても十分……いや、下手な肉よりもうめーぞ」
アカネさんはデクセスの肉をそう評価した後、魔獣の肉は安定して手に入るわけじゃないがこれを食糧にすれば食費が浮く云々をぶつぶつと呟き始めた。
この人豪快そうに見えて案外しっかりと物事を考えてるなぁ。
「…………これ、おいしいよ」
「本当ですかアズ。それなら、わたくしにも一口くださいな」
「はい、あーん」
「トパーまで……」
金髪の子はトパーさんって言うのか。アカネさんとはまた違うお姉さんって雰囲気の人だ。すごい美人さんだけど、この人も狩りをするのかな? 想像ができない。
そしてアズさんとトパーさんがあーんしてる! もう一度確認しよう。あーんしてる! うっわぁ、仲いいなぁ、でもちょっと恥じらってるのもいい。
「食べてみたら? 紫さんの大好きなアカネさんが美味いって言ってるんだからさ」
「紫さんじゃなくてハックだ!」
「食べてみなさいよ、美味しいわよこれ」
もっしゃもっしゃと食べているのに、なぜか上品に見えてしまう。トパーさん……何者?
そしてアズさんは無言で食べ勧めている。目が早く次の肉焼いてと言っているような気がして、急いで次の肉を焼く。あ、笑顔になった。なんか許せちゃう。この子もこの子で何者なんだ。
お姉ちゃん力が発揮されてしまうだろうやめてくれ。
「仕方ない……あむっ……む? んんっ、これはなかなか……」
ようやく肉を食べるハックさん。いや、ハック。この人は呼び捨てでいいや。うん。そうしよう。それがいい。
何はともあれ全員が魔獣の肉の美味しさを体験したことになる。私の人類美食計画の第一歩が始まった。そこまでじゃないにしてもこの旅で魔獣の肉を広めるくらいはしたい。
「って、それよりも話を聞かせてください。兵士来ちゃいますよ」
「おっと、そうだったな。それじゃあ、まずは私の狩猟団について話そうか」
それから、短くとも濃い話が始まった。アカネさんが立ち上げた女狩人の集まりは、狩人になりたいが仲間がいない、女性だからと男性の仲間に入れてもらえない人や行き場がなくなり住む場所がなくなった女性などにアカネさんが直接声を掛けて結成した団体らしい。
逆に女だけで男のグループよりも強くなってやろうと、そう意気込んで活動をしているそうだ。
ぶっちゃけすごくいいと思う。だってそうじゃん、端的に言うといい人たちじゃん。私いいことしてる人大好きだよ。
「とまあこんなところだ。お前は……ああ、自己紹介を忘れていたな。もうわかってるかと思うが、あたしはアカネだ。紫のがハック、金髪がトパー、青がアズだ」
「ふんっ」
「よろしくお願いしますね」
「…………よろしく」
偉そうにそっぽを向いているのがハックで、礼儀正しいのがトパーさん。無口で可愛いのがアズちゃんね。アズちゃんは可愛いからさんじゃなくてもいいよね。
「エファです。こっちがポコン」
「よろしくぅー!」
いつも思うんだけど仲良くなるの早いよポコ。その能力があれば友達いっぱいできたのに勿体ない。
まあ、この先でたくさんの友達ができるだろうしいいか。私もそのくらい軽い気持ちで話しかけたい。
「それじゃ、今度はそっちの話を聞かせてくれないか」
「いいですよ。と言っても、まだまだ始まったばかりの話ですけどね」
まだ始まったばかり。本当にそうだ。ずっと、こういう旅を、こういう肉に憧れてた。
それがようやく叶ったのだ。いや、まだ叶ってはいないか。私が求めるのは他のどの動物の肉よりも美味しい魔獣の肉。竜の肉。それを求め続ける。
「いいさ、聞かせてくれ」
「では、初めに私が村を出た理由から――――――」
こうして、ポコに話したような私の旅をする理由、目的などを話した。
実家が牧場であること、幼少期に出会った旅人に感化されて旅に出たこと、魔獣の肉を食べるという夢。
そして、ポコとの出会い。つい最近のことなのに、語りながらどこか懐かしく感じた。
私の話が終わった後も、女子会は続いた。やがて兵士が来て、馬車に戻る。もうすでに暗くなり始めている、早く帰らねば。
帰りの馬車で、私達はアカネさんと同じ馬車に乗せてもらい、再び話をした。
『冒険の帰り道は、楽しくなくてはならない』
私は昔旅人が言った言葉を、唐突に思い出したのだった。
「デクセスの肉食ってんのかそれ?」
当然ではあるが、アカネさんが私が焼いているデクセスの肉を見て興味を持ち始めた。
「美味しいよ。あまりは山ほどあるし、食べる?」
ポコもこくこくと頷く。この子たくさん食べるね、これは魔力がモリモリ湧いてきますわ。もう一頭倒せるんじゃないかくらいの勢い。実際遠距離から慎重に倒せば時間は掛かるが安全に倒せそう。
「なっ!? アカネ様に魔獣の肉を食べさせるというのか!」
「いただこう」
「アカネ様!?」
例のごとく紫髪の子が無礼な! とこちらを睨むが、流石アカネさん。どこまでも大きい懐の広さで受け入れてくれる。ささ、お食べ。
「ぐっ……魔獣の肉か……」
「…………美味しそう」
「アズっ!? 本気か!?」
おおっ、青髪の子……アズが肉を手に取ったぞ。というか初めて喋ったね。無口な子なのかな。
小さくてかわいいなぁ、身長は私に近いかもしれな……ち、ちっさくないし! アズさんより多分年下だからまだ未来はあるし!
「おお! こりゃうめーな! 普通に食糧としても十分……いや、下手な肉よりもうめーぞ」
アカネさんはデクセスの肉をそう評価した後、魔獣の肉は安定して手に入るわけじゃないがこれを食糧にすれば食費が浮く云々をぶつぶつと呟き始めた。
この人豪快そうに見えて案外しっかりと物事を考えてるなぁ。
「…………これ、おいしいよ」
「本当ですかアズ。それなら、わたくしにも一口くださいな」
「はい、あーん」
「トパーまで……」
金髪の子はトパーさんって言うのか。アカネさんとはまた違うお姉さんって雰囲気の人だ。すごい美人さんだけど、この人も狩りをするのかな? 想像ができない。
そしてアズさんとトパーさんがあーんしてる! もう一度確認しよう。あーんしてる! うっわぁ、仲いいなぁ、でもちょっと恥じらってるのもいい。
「食べてみたら? 紫さんの大好きなアカネさんが美味いって言ってるんだからさ」
「紫さんじゃなくてハックだ!」
「食べてみなさいよ、美味しいわよこれ」
もっしゃもっしゃと食べているのに、なぜか上品に見えてしまう。トパーさん……何者?
そしてアズさんは無言で食べ勧めている。目が早く次の肉焼いてと言っているような気がして、急いで次の肉を焼く。あ、笑顔になった。なんか許せちゃう。この子もこの子で何者なんだ。
お姉ちゃん力が発揮されてしまうだろうやめてくれ。
「仕方ない……あむっ……む? んんっ、これはなかなか……」
ようやく肉を食べるハックさん。いや、ハック。この人は呼び捨てでいいや。うん。そうしよう。それがいい。
何はともあれ全員が魔獣の肉の美味しさを体験したことになる。私の人類美食計画の第一歩が始まった。そこまでじゃないにしてもこの旅で魔獣の肉を広めるくらいはしたい。
「って、それよりも話を聞かせてください。兵士来ちゃいますよ」
「おっと、そうだったな。それじゃあ、まずは私の狩猟団について話そうか」
それから、短くとも濃い話が始まった。アカネさんが立ち上げた女狩人の集まりは、狩人になりたいが仲間がいない、女性だからと男性の仲間に入れてもらえない人や行き場がなくなり住む場所がなくなった女性などにアカネさんが直接声を掛けて結成した団体らしい。
逆に女だけで男のグループよりも強くなってやろうと、そう意気込んで活動をしているそうだ。
ぶっちゃけすごくいいと思う。だってそうじゃん、端的に言うといい人たちじゃん。私いいことしてる人大好きだよ。
「とまあこんなところだ。お前は……ああ、自己紹介を忘れていたな。もうわかってるかと思うが、あたしはアカネだ。紫のがハック、金髪がトパー、青がアズだ」
「ふんっ」
「よろしくお願いしますね」
「…………よろしく」
偉そうにそっぽを向いているのがハックで、礼儀正しいのがトパーさん。無口で可愛いのがアズちゃんね。アズちゃんは可愛いからさんじゃなくてもいいよね。
「エファです。こっちがポコン」
「よろしくぅー!」
いつも思うんだけど仲良くなるの早いよポコ。その能力があれば友達いっぱいできたのに勿体ない。
まあ、この先でたくさんの友達ができるだろうしいいか。私もそのくらい軽い気持ちで話しかけたい。
「それじゃ、今度はそっちの話を聞かせてくれないか」
「いいですよ。と言っても、まだまだ始まったばかりの話ですけどね」
まだ始まったばかり。本当にそうだ。ずっと、こういう旅を、こういう肉に憧れてた。
それがようやく叶ったのだ。いや、まだ叶ってはいないか。私が求めるのは他のどの動物の肉よりも美味しい魔獣の肉。竜の肉。それを求め続ける。
「いいさ、聞かせてくれ」
「では、初めに私が村を出た理由から――――――」
こうして、ポコに話したような私の旅をする理由、目的などを話した。
実家が牧場であること、幼少期に出会った旅人に感化されて旅に出たこと、魔獣の肉を食べるという夢。
そして、ポコとの出会い。つい最近のことなのに、語りながらどこか懐かしく感じた。
私の話が終わった後も、女子会は続いた。やがて兵士が来て、馬車に戻る。もうすでに暗くなり始めている、早く帰らねば。
帰りの馬車で、私達はアカネさんと同じ馬車に乗せてもらい、再び話をした。
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