気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

文字の大きさ
上 下
17 / 65

ご存知ないのですか!?(まあわたしもよく知らないけどね)

しおりを挟む
 紹介状と武器を渡された私達は、お城まで歩いた。
 お城……フォルテシア城の入口付近まで行くと、兵士に止められてしまう。

「何者だ」
「一応紹介状があるんでこれ見てください」

 紹介状を兵士に渡す。
 内容を見た兵士は疑いながらもそこで待っていろと言い城内に入っていった。本物かどうか確認をしているのだろう。
 やがて奥から兵士が戻ってくる。

「要件を聞かせろ。上の者に伝える」
「いえ、伝言があるわけじゃなくて……デクセス? の討伐隊に参加させてほしいんです。素材を取ってきてほしいと言われまして」

 これは嘘ではない。武器を加工する素材を手に入れることが第一目的だが、値段を安くするから必要以上の素材も持ち帰ってほしいとも言われたのだ。
 だから、今の私達の立場は鍛冶屋から素材収集を依頼された人間。城にはコネがあるのだろう、多少の融通は利くらしい。

「なに? ……ついてこい」

 私が腰につけていたアイアンナックルと、ポコが背中にしょっていたマジックボウを見た兵士は、魔獣用の武器を持っているからかすんなり城内に通してくれた。

「おい、門の警備はどうした」

 城内のとある一室。そこにはたくさんの人が集まっていた。
 全員武器を持っている。巨大なハンマーや大きな槍、大剣など様々な武器だ。武器屋で見たあの素の状態の武器ではない。魔獣の鱗や牙、爪、角などで加工された武器だ。

「お客様だ。城下町の武器屋からの依頼で討伐隊に同行したいんだとよ。もう一般の募集は終わってるが、人数は多い方がいいだろ?」

 一般の募集をしているのか。というか、基本が一般の募集なのかもしれない。魔獣を倒して生活をする。旅をしなくてもそういうことを仕事にしている人はいるのかもしれない。

「まあな。どうせ数人のチームの集合体だ、後から加わっても問題ないさ」

 私達のように、誰かと協力して狩りをするのだろう。
 だが、それは先に決まっていた相手とだ。ここにいる全員がチームプレイをするわけではない。

「よく集まってくれた狩人達よ。これよりデクセスの討伐に向かうわけだが、出発前に改めて確認をしようと思う」

 なんか、心躍るね。こう、魔獣狩りをしに行くんだと実感する。私もポコも、重々しい空気というか、屈強な男たちの中に混ざっていることにより緊張で声が出ない。
 デクセスの解説が行われる。私もフォルテシア城への移動中に確認した。デクセスは、巨大トカゲの魔獣だ。特徴は大きな爪なのだが、飛びぬけて爪が大きいだとか、そういうわけではない。他にも爪が巨大な魔獣は多く存在する。
 魔獣の中では珍しく群れで行動する魔獣で、比較的よく発見される。尻尾と爪に気を付ければ、初心者でも狩ることができる魔獣だそうだ。

 解説と共に脳内で事前に知っていた情報を照らし合わせていたら、解説が終わった。

「現地に到着したら、各自即座に狩りを開始するように。では乗り込め!」

 城の裏口に出ると、大量の馬車が止められていた。そこに狩人達が颯爽と乗り込んでいく。私達は元々同行する予定ではなかったので、荷物が積んである馬車に乗り込むことになった。
 窓から外の景色を見る。二度目の馬車だが、今回はゆっくりできる。平和だ……揺れはあるがそこまでではない。まったりこの時間を楽しもう。

「緊張しちゃったよー」
「ほんとにね。狩人……っていうのかな? あの人たちがつけてた防具もすごかったよね。鱗とかが加工されてたりさ」
「魔力障壁を高めたら安全だからねー。そのうちもっと強い装備も欲しいねー」

 魔力障壁。聞きなれない単語がポコの口から出てきた。
 なにそれ、なにその重要そうなワード。

「待って、防御魔力って?」
「え、ご存じない!?」
「煽ってない?」
「あはは、まあわたしもそこまで詳しいわけじゃないんだけどね」

 じゃあ、知らないんですかー? ぷぷぷっ、みたいな反応やめてください。わたくしのような田舎者には都会人の常識は毒なのですよ。

「魔力障壁っていうのは、わたしがバリアを張った時みたいな魔力の壁だよ。魔獣みたいな特別な生き物からとれる素材で防具を作れば、魔力が強化されて外からの攻撃を防いでくれるの。強い魔獣ほど強化されるから、武器と同じように防具も加工するべきなんだー」
「生存率が上がるってことか……」
「魔力障壁は魔獣にもあるから、何度も攻撃して魔力を削らないと刃が通らないよ。ラピットスはそもそも魔力が少ないから刃が通りやすいんだってさ」

 そういえば、魔獣の本に魔力を削る云々が書いてあった気がする。事前に知識が無いと何言ってるかわかんないよ……。
 魔獣との戦闘をする前に、かなり重要な知識を得てしまった。知らないまま戦ってたら戦闘中にポコに言われて知ることになっていたのだろうか。

「じゃあ、とにかく攻撃を当てることを考えて戦わないとか……」
「わたしが弓で削って、薄くなったところをえっちゃんが叩く、って感じ?」
「そうなるね。連携難しそぉー」

 私ももちろん魔力を削る攻撃はするが、削るのならばポコの弓が丁度いいだろう。模擬戦闘の時に消費した魔力は、国から支給されたポーションで回復していたし問題ない。
 魔力を回復するポーション。これも大事になってきそうだ。それこそ、魔力障壁を回復させるのにも必要になってくるはずだ。
 そこはポコの錬金術に期待しつつ、私は目的地である森を見ながら武器に手を掛けた。殴るのだから魔獣と近距離の戦闘になる。緊張するのはいいが恐れてはいけない。

 私は改めて覚悟を決めた。ハッキリと相手が魔獣と認識した状態での初めての戦い。絶対勝とう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...