気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

文字の大きさ
上 下
8 / 65

とある狩人の冒険解説

しおりを挟む
 レンキン草を採取してからは、驚くほど簡単に街まで帰ることができた。魔物だって探そうとして見つかるものじゃない。初めての冒険ならばこのくらいか。
 なんて思ったけど、十分危険な冒険だった。あの数のキラーラビットに襲われたのだ。しかもボスまでいる、初めてにしては難易度が高かったようにも思える。

 そんなこんなでポコの家の前。帰り道で、二人でどうやって報告しようか話し合ったりした。最終的に二人でレンキン草を突き出すという話にまとまった。
 コンコンとドアをノックする。ガチャっと開いたドアからセルコンさんが顔をのぞかせる。私達だと気づいた瞬間に身を乗り出してきた。

「はいー、わっ……! あなた達……」
「へへっ」
「ふへへ……」

 してやったり、ポコの顔は見えないが、おそらく私と同じようにドヤ顔をしているのだろう。ふへへって、絶対ニヤニヤしてるでしょ。
 無言で大きく頷いたセルコンさんは、中に入るようにとドアを大きく開けた。

「それで、キラーラビットはいたのかしら」
「それはもうバッチリ。数えきれないほどいましたよ」
「あとねあとね、ボスもいたよ!」
「ボス?」

 それだけ言ってもわからないだろうと、私は青く光る角を取り出し、テーブルに置いた。

「キラーラビットの中に、真っ白なうさぎが居たんです。身体も大きくて、他のキラーラビットの代表って感じでした」
「ボス……真っ白……青い角……ちょっと待ってて」

 そう言うと、セルコンさんは部屋の本棚から本を一冊取り出し、パラパラと何かを探し始めた。
 ピタッと本のページをめくっていた手を止める。そしてまじまじと文字を読み始めた。

「ここ見て」

 本を私たちに見せるセルコンさん。人差し指の先には、なにやら動物の絵と解説が書かれていた。

「なになに……『青の白兎』キラーラビットを従える魔獣……魔獣!?」

 あれ魔獣だったんだ……そりゃあ美味しいわけだよ。いや魔獣が全部美味しいと決まったわけではないけど。

「この魔獣がいる群れは、統率力が格段に増す……って、あの時急に強くなってたのって!」
「うん、この魔獣で間違いないね。そっか、魔獣倒したんだ私達」

 魔物にしては特殊だなとは思っていたが、本当に魔獣だったとは。
 ということは、魔力を使って戦っていたということ。あの突進の威力は脚力だけじゃないよね、そうだよね。

「青の白兎の目撃情報がなかったから大丈夫だと思っていたのだけど、まさか本当に出現するとは思わなかったわ。ごめんなさい」
「いいんですよ。倒せましたし」

 そう倒せたのだ。魔獣、まだ戦うときではないと思っていた魔獣を倒せた。これだけで自信につながる。
 これならばドラゴン討伐も夢ではない。

「そうよね……二人は魔獣を倒せるくらい強いのよね。もちろん旅は認めるわ。でも、ちゃんと準備してから行くのよ? それからエファちゃん、貴方はここに泊まっていきなさい」
「え、いいんですか?」
「ええ、冒険中ポコンがどんな感じだったのか教えてね」
「ちょ、ちょっとお母さん!」

 なんて三人で笑う。一時はどうなることかと思ったが、解決して本当に良かった。
 旅はやっぱりこうでなくちゃ。一緒に旅をしてくれる仲間が増えたり、知らない土地で知らない人と出会ったり、仲良くなったり。こういうことも経験したかったんだ。憧れてたんだ。

* * *

 ポコは旅の準備をすると言って、家を駆けまわっている。その間、私はポコの母親であるセルコンさんと話をしていた。

「はー、だからお父さんが家にいないんですね」

 ポコのお母さんがセルコンさんなのはわかるが、お父さんは何をしているのだろうと思い質問した。もしかしたら聞いてはいけないことを聞いてしまったかと思ったがそんなことはなく普通に魔術師として王国で働いているのだとか。

「ええ、ポコンが旅に出ると聞いてもきっと止めないでしょうね。私と違って放任主義だから」
「王国ってことは近いうちに会うかもしれませんね、最初の目的が転移クリスタルを手に入れることですから」

 転移クリスタルを手に入れるためにブランククリスタルという物も手に入れなくてはいけない。他の国に行ったときにその国の転移クリスタルを登録したいから。
 だが、当然高い。これはしばらく王国で資金集めをしながら魔獣退治かな。

「転移クリスタル……確かにあれは旅をするなら必要よね」
「それさえあれば、簡単に家に帰ってこれますから、きっとすぐに会いに来ますよ」
「ふふ、楽しみにしてるわ。でも、待ちきれないからポコの冒険について聞きたいわ」

 セルコンさんから私がポコンにつけたあだ名が飛び出した。なんだか恥ずかしいな。そういえば、最初は親の前だしポコンって呼ぼうかなとか思ってたけど、結局呼び慣れたポコ呼びになってたなぁ。

「えっ、ポコって……」
「可愛らしいあだ名じゃない。エファちゃんから見たポコン……ポコがどんな感じだったか、聞かせて」

 それから私は、セルコンさんにポコがどう戦っていたのかを話した。
 サンダーウォールでキラーラビットを足止めしたり、バリアを張って守ってくれたりと、色々な手助けをしてくれたという話をした。

「えっ……キラーラビットのお肉を……?」
「ええ、しかもですね……」

 話は盛り上がり、ついに肉を食べたという話にまで発展した。

「肉を食べているのに喉が潤ってですね……」
「ゴクリ……」

 肉についての解説をすると止まらない。味についての感想はここまでにしよう。
 セルコンさんを沼に引きずり込むのは簡単だが、ここは落ち着いて、被害を抑えることにした。

「と、このくらいにしておきますか」
「も、もっと聞きたかったけれど、仕方ないわね」
「今回の冒険でこんなに話すことがあったんですから、きっと旅から帰ってきたときにはもっとすごい話ができますよ」
「ええ、期待して待ってるわ」

 友達のお母さんと仲良くなれるのはとても嬉しい。

「あの、次はセルコンさんがポコについて話してくれませんか? 私も、ポコのことたくさん知りたいんです」
「いいわよ、これも長くなっちゃうけど、構わないわよね」
「もちろんです!」

 さて今度はセルコンさんのターンだ。仲良くなったのはいいが、まだ知り合ったばかり。
 知らないこともたくさんあるのだ。そして、ポコが魔術師として何を学んできたのか。
 これから先、旅の途中でポコから聞けるかもしれないが、親からの話も興味深い。私は、セルコンさんの語るポコを記憶に残すために、話を聞くことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元Sランクパーティーのサポーターは引退後に英雄学園の講師に就職した。〜教え子達は見た目は美少女だが、能力は残念な子達だった。〜

アノマロカリス
ファンタジー
主人公のテルパは、Sランク冒険者パーティーの有能なサポーターだった。 だが、そんな彼は…? Sランクパーティーから役立たずとして追い出された…訳ではなく、災害級の魔獣にパーティーが挑み… パーティーの半数に多大なる被害が出て、活動が出来なくなった。 その後パーティーリーダーが解散を言い渡し、メンバー達はそれぞれの道を進む事になった。 テルパは有能なサポーターで、中級までの攻撃魔法や回復魔法に補助魔法が使えていた。 いざという時の為に攻撃する手段も兼ね揃えていた。 そんな有能なテルパなら、他の冒険者から引っ張りだこになるかと思いきや? ギルドマスターからの依頼で、魔王を討伐する為の養成学園の新人講師に選ばれたのだった。 そんなテルパの受け持つ生徒達だが…? サポーターという仕事を馬鹿にして舐め切っていた。 態度やプライドばかり高くて、手に余る5人のアブノーマルな女の子達だった。 テルパは果たして、教え子達と打ち解けてから、立派に育つのだろうか? 【題名通りの女の子達は、第二章から登場します。】 今回もHOTランキングは、最高6位でした。 皆様、有り難う御座います。

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...