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とある狩人の冒険解説
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レンキン草を採取してからは、驚くほど簡単に街まで帰ることができた。魔物だって探そうとして見つかるものじゃない。初めての冒険ならばこのくらいか。
なんて思ったけど、十分危険な冒険だった。あの数のキラーラビットに襲われたのだ。しかもボスまでいる、初めてにしては難易度が高かったようにも思える。
そんなこんなでポコの家の前。帰り道で、二人でどうやって報告しようか話し合ったりした。最終的に二人でレンキン草を突き出すという話にまとまった。
コンコンとドアをノックする。ガチャっと開いたドアからセルコンさんが顔をのぞかせる。私達だと気づいた瞬間に身を乗り出してきた。
「はいー、わっ……! あなた達……」
「へへっ」
「ふへへ……」
してやったり、ポコの顔は見えないが、おそらく私と同じようにドヤ顔をしているのだろう。ふへへって、絶対ニヤニヤしてるでしょ。
無言で大きく頷いたセルコンさんは、中に入るようにとドアを大きく開けた。
「それで、キラーラビットはいたのかしら」
「それはもうバッチリ。数えきれないほどいましたよ」
「あとねあとね、ボスもいたよ!」
「ボス?」
それだけ言ってもわからないだろうと、私は青く光る角を取り出し、テーブルに置いた。
「キラーラビットの中に、真っ白なうさぎが居たんです。身体も大きくて、他のキラーラビットの代表って感じでした」
「ボス……真っ白……青い角……ちょっと待ってて」
そう言うと、セルコンさんは部屋の本棚から本を一冊取り出し、パラパラと何かを探し始めた。
ピタッと本のページをめくっていた手を止める。そしてまじまじと文字を読み始めた。
「ここ見て」
本を私たちに見せるセルコンさん。人差し指の先には、なにやら動物の絵と解説が書かれていた。
「なになに……『青の白兎』キラーラビットを従える魔獣……魔獣!?」
あれ魔獣だったんだ……そりゃあ美味しいわけだよ。いや魔獣が全部美味しいと決まったわけではないけど。
「この魔獣がいる群れは、統率力が格段に増す……って、あの時急に強くなってたのって!」
「うん、この魔獣で間違いないね。そっか、魔獣倒したんだ私達」
魔物にしては特殊だなとは思っていたが、本当に魔獣だったとは。
ということは、魔力を使って戦っていたということ。あの突進の威力は脚力だけじゃないよね、そうだよね。
「青の白兎の目撃情報がなかったから大丈夫だと思っていたのだけど、まさか本当に出現するとは思わなかったわ。ごめんなさい」
「いいんですよ。倒せましたし」
そう倒せたのだ。魔獣、まだ戦うときではないと思っていた魔獣を倒せた。これだけで自信につながる。
これならばドラゴン討伐も夢ではない。
「そうよね……二人は魔獣を倒せるくらい強いのよね。もちろん旅は認めるわ。でも、ちゃんと準備してから行くのよ? それからエファちゃん、貴方はここに泊まっていきなさい」
「え、いいんですか?」
「ええ、冒険中ポコンがどんな感じだったのか教えてね」
「ちょ、ちょっとお母さん!」
なんて三人で笑う。一時はどうなることかと思ったが、解決して本当に良かった。
旅はやっぱりこうでなくちゃ。一緒に旅をしてくれる仲間が増えたり、知らない土地で知らない人と出会ったり、仲良くなったり。こういうことも経験したかったんだ。憧れてたんだ。
* * *
ポコは旅の準備をすると言って、家を駆けまわっている。その間、私はポコの母親であるセルコンさんと話をしていた。
「はー、だからお父さんが家にいないんですね」
ポコのお母さんがセルコンさんなのはわかるが、お父さんは何をしているのだろうと思い質問した。もしかしたら聞いてはいけないことを聞いてしまったかと思ったがそんなことはなく普通に魔術師として王国で働いているのだとか。
「ええ、ポコンが旅に出ると聞いてもきっと止めないでしょうね。私と違って放任主義だから」
「王国ってことは近いうちに会うかもしれませんね、最初の目的が転移クリスタルを手に入れることですから」
転移クリスタルを手に入れるためにブランククリスタルという物も手に入れなくてはいけない。他の国に行ったときにその国の転移クリスタルを登録したいから。
だが、当然高い。これはしばらく王国で資金集めをしながら魔獣退治かな。
「転移クリスタル……確かにあれは旅をするなら必要よね」
「それさえあれば、簡単に家に帰ってこれますから、きっとすぐに会いに来ますよ」
「ふふ、楽しみにしてるわ。でも、待ちきれないからポコの冒険について聞きたいわ」
セルコンさんから私がポコンにつけたあだ名が飛び出した。なんだか恥ずかしいな。そういえば、最初は親の前だしポコンって呼ぼうかなとか思ってたけど、結局呼び慣れたポコ呼びになってたなぁ。
「えっ、ポコって……」
「可愛らしいあだ名じゃない。エファちゃんから見たポコン……ポコがどんな感じだったか、聞かせて」
それから私は、セルコンさんにポコがどう戦っていたのかを話した。
サンダーウォールでキラーラビットを足止めしたり、バリアを張って守ってくれたりと、色々な手助けをしてくれたという話をした。
「えっ……キラーラビットのお肉を……?」
「ええ、しかもですね……」
話は盛り上がり、ついに肉を食べたという話にまで発展した。
「肉を食べているのに喉が潤ってですね……」
「ゴクリ……」
肉についての解説をすると止まらない。味についての感想はここまでにしよう。
セルコンさんを沼に引きずり込むのは簡単だが、ここは落ち着いて、被害を抑えることにした。
「と、このくらいにしておきますか」
「も、もっと聞きたかったけれど、仕方ないわね」
「今回の冒険でこんなに話すことがあったんですから、きっと旅から帰ってきたときにはもっとすごい話ができますよ」
「ええ、期待して待ってるわ」
友達のお母さんと仲良くなれるのはとても嬉しい。
「あの、次はセルコンさんがポコについて話してくれませんか? 私も、ポコのことたくさん知りたいんです」
「いいわよ、これも長くなっちゃうけど、構わないわよね」
「もちろんです!」
さて今度はセルコンさんのターンだ。仲良くなったのはいいが、まだ知り合ったばかり。
知らないこともたくさんあるのだ。そして、ポコが魔術師として何を学んできたのか。
これから先、旅の途中でポコから聞けるかもしれないが、親からの話も興味深い。私は、セルコンさんの語るポコを記憶に残すために、話を聞くことにした。
なんて思ったけど、十分危険な冒険だった。あの数のキラーラビットに襲われたのだ。しかもボスまでいる、初めてにしては難易度が高かったようにも思える。
そんなこんなでポコの家の前。帰り道で、二人でどうやって報告しようか話し合ったりした。最終的に二人でレンキン草を突き出すという話にまとまった。
コンコンとドアをノックする。ガチャっと開いたドアからセルコンさんが顔をのぞかせる。私達だと気づいた瞬間に身を乗り出してきた。
「はいー、わっ……! あなた達……」
「へへっ」
「ふへへ……」
してやったり、ポコの顔は見えないが、おそらく私と同じようにドヤ顔をしているのだろう。ふへへって、絶対ニヤニヤしてるでしょ。
無言で大きく頷いたセルコンさんは、中に入るようにとドアを大きく開けた。
「それで、キラーラビットはいたのかしら」
「それはもうバッチリ。数えきれないほどいましたよ」
「あとねあとね、ボスもいたよ!」
「ボス?」
それだけ言ってもわからないだろうと、私は青く光る角を取り出し、テーブルに置いた。
「キラーラビットの中に、真っ白なうさぎが居たんです。身体も大きくて、他のキラーラビットの代表って感じでした」
「ボス……真っ白……青い角……ちょっと待ってて」
そう言うと、セルコンさんは部屋の本棚から本を一冊取り出し、パラパラと何かを探し始めた。
ピタッと本のページをめくっていた手を止める。そしてまじまじと文字を読み始めた。
「ここ見て」
本を私たちに見せるセルコンさん。人差し指の先には、なにやら動物の絵と解説が書かれていた。
「なになに……『青の白兎』キラーラビットを従える魔獣……魔獣!?」
あれ魔獣だったんだ……そりゃあ美味しいわけだよ。いや魔獣が全部美味しいと決まったわけではないけど。
「この魔獣がいる群れは、統率力が格段に増す……って、あの時急に強くなってたのって!」
「うん、この魔獣で間違いないね。そっか、魔獣倒したんだ私達」
魔物にしては特殊だなとは思っていたが、本当に魔獣だったとは。
ということは、魔力を使って戦っていたということ。あの突進の威力は脚力だけじゃないよね、そうだよね。
「青の白兎の目撃情報がなかったから大丈夫だと思っていたのだけど、まさか本当に出現するとは思わなかったわ。ごめんなさい」
「いいんですよ。倒せましたし」
そう倒せたのだ。魔獣、まだ戦うときではないと思っていた魔獣を倒せた。これだけで自信につながる。
これならばドラゴン討伐も夢ではない。
「そうよね……二人は魔獣を倒せるくらい強いのよね。もちろん旅は認めるわ。でも、ちゃんと準備してから行くのよ? それからエファちゃん、貴方はここに泊まっていきなさい」
「え、いいんですか?」
「ええ、冒険中ポコンがどんな感じだったのか教えてね」
「ちょ、ちょっとお母さん!」
なんて三人で笑う。一時はどうなることかと思ったが、解決して本当に良かった。
旅はやっぱりこうでなくちゃ。一緒に旅をしてくれる仲間が増えたり、知らない土地で知らない人と出会ったり、仲良くなったり。こういうことも経験したかったんだ。憧れてたんだ。
* * *
ポコは旅の準備をすると言って、家を駆けまわっている。その間、私はポコの母親であるセルコンさんと話をしていた。
「はー、だからお父さんが家にいないんですね」
ポコのお母さんがセルコンさんなのはわかるが、お父さんは何をしているのだろうと思い質問した。もしかしたら聞いてはいけないことを聞いてしまったかと思ったがそんなことはなく普通に魔術師として王国で働いているのだとか。
「ええ、ポコンが旅に出ると聞いてもきっと止めないでしょうね。私と違って放任主義だから」
「王国ってことは近いうちに会うかもしれませんね、最初の目的が転移クリスタルを手に入れることですから」
転移クリスタルを手に入れるためにブランククリスタルという物も手に入れなくてはいけない。他の国に行ったときにその国の転移クリスタルを登録したいから。
だが、当然高い。これはしばらく王国で資金集めをしながら魔獣退治かな。
「転移クリスタル……確かにあれは旅をするなら必要よね」
「それさえあれば、簡単に家に帰ってこれますから、きっとすぐに会いに来ますよ」
「ふふ、楽しみにしてるわ。でも、待ちきれないからポコの冒険について聞きたいわ」
セルコンさんから私がポコンにつけたあだ名が飛び出した。なんだか恥ずかしいな。そういえば、最初は親の前だしポコンって呼ぼうかなとか思ってたけど、結局呼び慣れたポコ呼びになってたなぁ。
「えっ、ポコって……」
「可愛らしいあだ名じゃない。エファちゃんから見たポコン……ポコがどんな感じだったか、聞かせて」
それから私は、セルコンさんにポコがどう戦っていたのかを話した。
サンダーウォールでキラーラビットを足止めしたり、バリアを張って守ってくれたりと、色々な手助けをしてくれたという話をした。
「えっ……キラーラビットのお肉を……?」
「ええ、しかもですね……」
話は盛り上がり、ついに肉を食べたという話にまで発展した。
「肉を食べているのに喉が潤ってですね……」
「ゴクリ……」
肉についての解説をすると止まらない。味についての感想はここまでにしよう。
セルコンさんを沼に引きずり込むのは簡単だが、ここは落ち着いて、被害を抑えることにした。
「と、このくらいにしておきますか」
「も、もっと聞きたかったけれど、仕方ないわね」
「今回の冒険でこんなに話すことがあったんですから、きっと旅から帰ってきたときにはもっとすごい話ができますよ」
「ええ、期待して待ってるわ」
友達のお母さんと仲良くなれるのはとても嬉しい。
「あの、次はセルコンさんがポコについて話してくれませんか? 私も、ポコのことたくさん知りたいんです」
「いいわよ、これも長くなっちゃうけど、構わないわよね」
「もちろんです!」
さて今度はセルコンさんのターンだ。仲良くなったのはいいが、まだ知り合ったばかり。
知らないこともたくさんあるのだ。そして、ポコが魔術師として何を学んできたのか。
これから先、旅の途中でポコから聞けるかもしれないが、親からの話も興味深い。私は、セルコンさんの語るポコを記憶に残すために、話を聞くことにした。
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