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第三章

作戦名『勝つ』

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 あのコアを破壊するにはゴーレムが動き出すまで待つ必要がある。なので、動き出すまでの間実力者を集めて話し合いをする予定なのだが。

「これだけか」

 集まっているのは極少数。今の状況から集まることができるのは手前で戦っていた人達だけだ。
 まあそれでもある程度の話し合いはできる。ヴァリサさんは門の近くで戦っていたし、リュートは普通に飛んで来れる。最悪俺とフォト、リュートにヴァリサさん。フレンがいればいいか。いつものメンバーじゃねぇか。

「てかあれ倒すんだよね? ありえんほどでかくなるでしょあれ。想像もできないんだけど」

 リュートの言う通り、これから生成されていくであろうゴーレムは想像もできない大きさになるはずだ。
 俺は一度タイタン戦で経験しているが、今回はゴーレムが金属なのもあってそれ以上に苦戦するだろう。

「とにかく話し合いです。これからどうしましょうか」
「あれを真正面から相手にできるのは俺たちくらいだ。サポートするメンバーも最高峰の実力者が望ましい」
「そうなるとフォボス、ナイアド、ヒューレ様。マリンアビスとサンドアグリィのトップ辺りですわね」

 主力が俺、フォト、リュート、ヴァリサ、フレン。サポートがフォボス、ナイアド、ヒューレ、各国のトップ、精霊の守護者四体、ってところか。
 そのメンバーでどうにか戦うしかないな。それ以外の戦闘員には、申し訳ないがウルシュフスなどの召喚獣の処理をしてもらおう。
 そのまま話を進めようとしたその時、ヴァリサさんが待ったをかけた。

「あたしの弟子も行けるよ。なあお前達」

 どうやらサポートにヴァリサさんの弟子を出したいらしい。確かにこいつらの実力は本物で、それは信頼できる。
 人数も少なく、戦闘の邪魔になるということもないだろう。強力な一撃でゴーレムの魔力を削ってくれることを期待する。

「うっす! 自分も戦うっす!」

 他のメンバーも次々に発言するが無視する。やる気があるならそれでいい。
 これによりゴーレム討伐隊の人数が決まった。主力が五人と竜六体。サポートが六人程度と守護者四体。
 字面だけ見ると絶望的だが、俺たち主力のメンバーはこの日のために修行を続けてきたのだ。十分戦える。

「全軍プレクストン外壁付近まで後退。今から指名された者はゴーレムとの戦闘のサポートに回ってください。それ以外の者は防衛戦です。フォボス、ナイアド、ヒューレ――――」

 フレンが戦闘中の人たちに指示を飛ばす。その間、俺はどうやって倒すかを考えていた。
 あの魔力量は異常だ。常に供給されている俺が言えた話ではないが、この場合使える最大魔力が莫大なものになるのだ。
 当然、土魔法を使ってくるだろう。あれだけの魔力があれば身体の節々から別々に土魔法を展開することだってできる。

 どう倒すか。まず一点突破……は難しいか。少なくともゴーレムとして完成し動き始めたとして一気にコアまで破壊できるほどの一撃は出すことができない。
 ならば耐久戦か。あのゴーレムがどれほどの復元能力を持っているのかは知らないが、復元するために大量の魔力を消費することはわかる。そうやって魔力を削っていき、守りを薄くするのだ。
 そこまで来てようやく一点突破の作戦が可能になる。問題は、どうやって削るか。そしてどうやって一点突破するか。

「リュート、戦闘中にドラゴンのブレスを頼めるか?」
「ん、おう。元からそのつもりだけど」

 それはそうなのだが、目的は常に魔力を削ることだ。
 魔力を常に削っていれば相手の魔力回復を阻止することができる。もしかしたらブレスよりも魔力の回復の方が上かもしれないが、それでも回復するまでの時間が遅くなるのでその間にこちらが大技で削れば余裕も生まれる。
 それでも相手の回復能力が高いのであればお手上げだ。最終手段を使うしかない。

「じゃあ常に当ててくれ。順番にローテーションしながらだと何体でいける?」
「三体かな。ついでに言うとフォレストドラゴンのブレスは攻撃用じゃないから参加できない」

 そういえばそうだった。フォレストドラゴンのブレスは回復や攻撃力、防御力を上げる効果を持っている。
 となると攻撃用のブレスを出せるのは五体だ。ブレス回復まで五体いれば余裕はできるので、五体でローテーションをしながらでいいだろう。
 そうなるとフリーになるドラゴンは多い。リュートと協力して攻撃を繰り出すこともできるだろう。

「なら五体全員でブレスをローテーションしてくれ。それならリュートも戦いながら力を借りやすい」
「了解。あの二人はどうするのさ」

 あの二人、とキレーネとディオネのことだろう。
 もちろん存在は忘れていない。もう回復もできてるだろうし、いつでも戦闘になる可能性がある。
 こちらがゴーレムを倒そうとすれば、それを妨害してくるだろう。

「そりゃ俺たちの役目だ。ゴーレムも、キレーネもディオネも相手するのは俺たちだ」
「うへぇ」

 リュートの気持ちも分かる。ディオネはともかく、キレーネの能力が厄介なのだ。
 攻撃をしても瞬間移動で避けられてしまう。避けられない範囲の攻撃を出しても防御されたらカウンターを食らってしまうかもしれない。
 俺の石化だって、避けられてしまうだろう。何かしら動きを封じる戦法を取るべきなのだが、何も思いつかない。バインド系のスキルを使ってしまおうか。

「あの、キールさんとリュートさんは魔王候補と戦ったんですよね? 強かったですか?」
「ああ、強い。速さが異常でな、攻撃が当たらないんだ」
「まあ僕は当てたけどね。ドラゴン三体のブレスと僕の槍で!」

 そういえば撃退してたな。しかしドラゴン三体のブレスか、考えるだけで恐ろしいな。
 そんな極太広範囲ブレスとリュートの攻撃によってキレーネにダメージを負わせることに成功したと。
 しかしキレーネも戦闘不能になるほどのダメージではないだろう。戦おうと思えば戦えたはずだ。

「向こうも倒せるなら今ここで倒すって感じだったからな。無理そうなら逃げるだろうよ」

 それに、今度はゴーレムの邪魔も入るのだ。ますます攻撃を当てるのが難しくなる。
 俺の準備も整っていればキレーネにダメージを負わせることはできたかもしれない。あの時は『魔力開放Ⅱ』を発動させてなかったからな。
 速さなら追いつくことができたはずだ。俺もあそこで倒そうと思っていたのだが、逃げられてしまうなと思いやめた。

「ま、それもあたし達なら何とかなるって。頑張ろう」
「そうだな。いくら考えたって仕方ない。作戦名は……『勝つ』だ」

 ここでいくら考えても仕方がない。どう戦うか、どういう流れにするか。それを大まかに決めて、後はその時に状況に合わせて対応することになる。
 今こうしている間にも、ゴーレムの身体は着々と生成されている。平原の奥からは、多くの部隊が戻ってきていた。

 防衛戦をする人が揃ったら、俺たちも出発しよう。
 初めから全力で。出せる戦力の全てをつぎ込んで倒す。ただでかいだけのゴーレムなんざどうとでもなる。

 決戦開始だ。
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