上 下
81 / 134
第二章

VSフォボス(ダイモスアーマー)

しおりを挟む
 『神速』での移動により、あっという間にダークフェニックスは見えなくなってしまう。
 ヴァリサさんに追いついた俺とフォトは、ヴァリサさんのスピードに合わせるため『神速』を切る。フォボスはどこだろうか。近くにいるのは『索敵』で分かるのだが、正確な位置はわからない。
 ポーションをフォトに渡し、二人で飲み干す。うええ、まっず。魔力を即回復できるわけではないので、ゆっくりしていられない。

「二人共、大丈夫だった?」
「ええ。それよりナイアドを探したいんだけど…………おおっ!?」

 遠くから炎が飛んできた。狙撃するように飛ばされた小さな炎の弾丸が地面に突き刺さる。
 一発目の狙撃を躱したことにより、フォボスの位置が特定できる。

「…………あそこ、ですね」
「ああ。締まっていこう」
「行こう!」

 皆それぞれ声を上げながら一直線に進んでいく。
 隠れる場所があるとすれば、岩の陰だろうか。火口付近、その岩裏にフォボスはいる。

「どっせーーーーーーい!!」

 ギリギリまで出てこなかった岩を、ヴァリサさんが叩き切る。
 ええ…………岩ごと壊すのか。なんて思っている間に、フォボスは岩の陰から飛び出した。攻撃を見てからでも避けられるってか。相当な自信をお持ちで。

 こちらも負けてはいられない。着地するや否やはなってきた炎を避けながら斬りかかる。ここまで熱があるとフロストソードの効果はあまり期待できないか。
 ひょいっと、フォボスが俺の斬撃を軽々避ける。鎧である炎を噴出させ、一瞬で移動する技術を持っているのだ。隙を突かなければそもそも当たらない。

「おうおうおうおう、三人がかりかよキール!」
「お前はダイモス入れて実質二人なんだからいいだろっ!」

 それも四天王のダイモスだ。ただの冒険者であるフォトとヴァリサさんに、勇者である俺を加えた三人ならば丁度いいんじゃねーか? まあ、言ってみたところで意味は無いが。

「よしっ、あたしも力になりたいからね。戦術を変えさせてもらおうかな」
「ヴァリサさん、何を?」

 ヴァリサさんは持っていた大剣をギルドカードの中に収納すると、手に何かをはめた。グローブ? だろうか。それにしては指が出ている。
 それにしても、戦術を変える? 困惑していると、ヴァリサさんはフォボスに一気に間合いを詰めると、拳でラッシュ攻撃をし始めた。なんだそれ!? まだそんなの隠し持ってたのか!

「なんだこいつは!?」
「そらそらそら!!」

 突然の拳闘士スタイルに戸惑いを隠せないフォボスが反応に遅れる。
 そうか、大剣だと動きが遅くなってしまう。俺とフォトが剣で戦っている今の戦闘に大剣は不利だ。だから、武器を捨てて速度を取った。
 なるほど、リュートがいつも脳筋脳筋言っている理由がよく分かった。持ち前のパワーを活かせるようにこんな戦術まで用意している。つまり戦闘狂でもあるのだ。つよい。

「くっ、邪魔だァ!」

 フォボスが炎を身体の前に噴出させ、下がりながら攻撃する。ヴァリサさんにそれを防ぐ手段はなく、なるべく当たらないように回避するという対応しかできなかった。

「うあっ!? くぅ、やるね」

 なんとかジャンプして躱したヴァリサさんが頬の汗を拭う。ニヤッと笑っているが、フォボスとの戦闘は範囲攻撃を持っていないヴァリサさんには圧倒的に不利だ。
 ヴァリサさんが攻撃をする時は、俺かフォトがすぐに入れ替われるようにしておく必要がある。いや、そもそもヴァリサさんとか関係なくピンチの時に入れ替われるようにしておくのがいいか。

「無理すんな! 俺が行く! だらあああああああああ!!!」
「へっ、当たるかよ!」

 ヴァリサさんと入れ替わり、俺がフォボスの目の前に出る。
 分かってはいたが、今のフォボスは最初に戦っていた時のフォボスの戦闘力とは桁が違う。ダイモスのアーマーを付けているだけでこんなにも違うのか。
 攻撃面も、防御面も隙が無さすぎる。一気に倒したかったが、避けられてしまっては元も子もない。とにかく隙を作らなくては。

「ちっ、アーマーを着てやっとまともに斬り合えるとはな」
「デュラハンから聞いたぞ。戦闘の素質があるってな。もしかしたら、あの魔王を越えるかもな。お前」

 そんな話ができるくらいには、フォボスの剣は遅かった。アーマーで加速しても、こちらが避けようと思えば簡単に避けられる。
 それはフォボスも同じなのだろう。真正面から戦って、ここまで決着がつかないのは久しぶりだ。

「あったりめェだろ! オレ様は魔王になる男なんだ! ここで、テメーを殺して、人間界を手に入れる!」
「それは俺が困るから、やめてほしいんだけどなっ!」

 強く剣を振り下ろすと、フォボスは剣で受け、後ずさった。
 さてどうする。このまま隙ができるまで戦うか。俺のエクストラスキルを使うタイミングも考えなければならない。
 魔力は本当に持つのだろうか。そんな不安に駆られながら攻撃を続けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...