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第二章

謎の魔族討伐

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 魔力をたどって森の奥まで走る。奥に行けば行くほどマッシュタートルを見かけなくなる。
 森というスポットは奥に行けば行くほど魔力が濃くなる。深い森ならば当然魔力が濃くなり強い魔物も魔獣も現れる。
 しかしここの森はそこまで深くはない。もう少しで中心に到着するだろう。ならば、この辺りに何か原因があるはずだ。

「っ!」

 背後から突然火の玉が飛んできた。咄嗟にそれを避け、背後を確認する。
 そこに立っていたのは、フード付きローブを着た男だった。なにやら赤い玉を持っている。水晶のような透き通った赤色の玉。宝玉だろうか。

「……魔族か」
「よくわかったな、人間」

 フード部分を取り、顔を明かした魔族は、ナイアドとは違い顔に鱗のようなものが見える赤い魔族だった。竜族か。ってことは火の魔王候補が攻めてきてるのか。

「お前が魔王候補か?」
「まさか、俺はただ荷物を運んでいるだけだ」
「ふーん、ちなみに誰の命令なんだ?」
「そんなこと、教えるわけねーだろうが!!!」

 再び火球が飛んでくる。この火球はあの宝玉から出ているようだ。

「そらそら!」

 驚くほど単調な攻撃。ひたすら火球を出しているだけの攻撃だ。そんな攻撃が当たるはずもなく、苦笑いしながら避け続ける。
 が、火球が背後の木に直撃したことにより軽く怒りが湧いてくる。

「おい馬鹿! 火事になるだろ!!」
「そんなこと、オレが知るかよ! どうせ魔族に征服される土地なんだ!」
「ああそうかい、あんたが馬鹿なことだけは分かったよ!」

 征服した土地が焼け野原だったらそっちも困るだろうに。それはきっと例の魔王候補も望んでいない。

「なにィ?? あったまきたぜ! 死にたいらしいな!!」
「まさかこんなとこで炎魔法を使うつもりか……?」

 今でさえ倒木に火が付き困っていたのに、今強力な炎魔法を使われたら辺りが本当に焼け野原になってしまう。

「はーっはっは!! さあ、燃え盛れ! エンハンス『メガフレイム』!」

 男の持っていた赤い宝玉が光を発した、さらに男の手に強い魔力を感じる。魔法があの宝玉により強化されているのだ。
 『メガフレイム』……俺が知っている炎魔法は『キロフレイム』までだった。さらに上ができたのか。
 炎が俺の逃げ場をふさぐ。このままでは焼け死んでしまう。

「『マジックシールド』」

 まずマジックシールド……魔力の盾で炎を防ぐ。向こうには俺が炎に包まれたように見えているだろう。

「ははは! 死ねェ!! 死ねェ!!」
「『ウェザーショット・レイン』」

 空に向けてスキルを放つ。『ウェザーショット』は特殊な魔弾で、辺り一帯の天気を操るスキルだ。
 雨雲を発生させたり、逆に雨雲を引き裂いて一時的に晴れにしたり、大雨の中雷を起こしたり。
 そんな『ウェザーショット』の雨を使わせてもらった。先程まで晴れていた空に雨雲が発生する。そして、大雨が降り始める。

「くそっ! 雨かよ、めんどくせぇな」

 俺が死んだと思っている魔族の男はダルそうに火が消えるのを待っていた。あほか、俺が火事を止めたんだっつの。

「『ウェザーショット・サンダー』」

 さらに『ウェザーショット』を放つ。魔弾が雨雲の中に吸い込まれ、雨雲は雷雲に成長した。
 最初から『ウェザーショット・サンダー』を使っても雷雲を出すことはできるのだが、晴れの状態からだとそこまで強い雷は出ないのだ。なのでこの順番が一番効果がある。

「雷だと!? おいおいどうなってんだ、なんでここだけ……」
「悪いな、本気を出させてもらうぞ」
「!? 生きてやがっ……」

 前回はスキルを使うのを躊躇ったり周りに人がいるから気を使っていたが、今は一人だ。
 今なら全力で相手できる。幸いあの音も聞こえない。これでようやく、全力で魔族と戦えるってわけだ。

「『ウォーターバインド』」
「ぬあっ!?」

 水を出し、それを浮かせて手足を拘束する。
 前に魔物相手にやった『グラスバインド』の水バージョンだな。
 みんなは相手に効きやすいバインドを選ぼう! 今回は使うスキルの種類と合わせて『ウォーターバインド』だ。

「くそっ、てめぇ何者だ!!」
「通りすがりの冒険者。……そろそろか」

 空を見ると、雷雲がゴロゴロと音を発していた。もうそろそろ落雷が発生するだろう。

「『ウェザーショット・サンダー』」

 さらに数発『ウェザーショット・サンダー』を雷雲に撃ちこむ。
 今にも雷が落ちそうな空を見ながら、硬直時間が解けるのを待つ。相手がどんな技を持っているかわからに、とにかく全力の攻撃で倒す。

 硬直が解け、剣に手を掛ける。そういえば、まだ抜いてなかったな。
 抜刀スキル、それも今一番効果のある攻撃。スキルを放つまでの溜め時間に剣の柄に手を掛ける。鞘に収まっている剣がバチバチと電気を纏う。

「『雷光一閃』!!!」
「や、やめっ!!」

 スキルを発動させ、真っ直ぐの線を描くように斬る。
 俺の剣が男に当たる瞬間、空から稲妻が降ってくる。向こうが強化された魔法を使って来たのだから、俺は強化されたスキルを使うのが礼儀というもの。
 二つの稲妻が重なり、電気が辺り一帯を照らし、地面を揺るがす。稲妻が轟き、身体中を震わせた。重い、重い音が木々を揺らした。
 静寂。雨の音だけが聞こえる。やがて、雨もぽつぽつと止んでいく。

「ガッ……ァ……ァァ」

 背後で男が気絶する。俺の今出せる全力の峰打ちだ。殺すわけにはいかないからな。刃の片方に多めに魔力を纏わせておいた。

「…………うあっ!?」

 戦いが終わった安心感に浸っていると、右腕が痺れ始める。
 この痺れは前からあったのだ。サウンドジュエルの音を聞いているときにスキルを使った時に。
 それが、いつの間にか平常時にも起こるようになっている。原因は分からない。医者にも行ったし、回復もしてみた。なのに分からない。まあ、今後何とかするさ。

「とりあえず、縛るか」

 もしもの時のためと、リンクスに渡された吸魔の手枷が役に立つとはな。
 とりあえず赤い宝玉を回収し、手枷を付け、街に戻ろう。

 …………俺、収穫祭何位なんだろ。
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