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最終章『黄昏の約束編』
160 アイテムコレクター、始動
しおりを挟む頬が赤く腫れた山田を拘束し、レクトのゲームデータが無事なことを確認する。
どうやらゲーム内のアカウントをそのままコピーしただけで、アカウントの権限を奪われていたというわけではないらしい。
その後拘束した山田を連れていき、地下を制圧した天使たちと合流した。
元々いた天使たちの戦闘能力はほどほどに、地上に降りて超絶パワーアップしたセラフィーが無双したのだとか。
そして何故か分離して一般人になったはずのエリィがセラフィーとの見事な連携で魔術師たちを拘束していたとかなんとか。
あの修行で強くなったのはセラフィーの力だけではないのだ。エリィも村娘らしからぬ強さに成長しているのだろう。トワ村の未来は明るいな。
「この施設は今後魔術師が管理する異世界の開発施設としてスタートさせるつもりだ。もちろん、今回のような真似はさせない。俺とレクトがいるからな」
「え、俺ここで働くの?」
「いや、異世界との橋渡しは魔術師である俺が担当するからレクトは地上で楽しんでていい。まあ手を借りたい時が来たらその時は頼むけど」
「なんだ、よかった」
ライトが橋渡しになるのであれば安心だろう。異世界を守るために働こうとは思っているが、具体的にどうすればよいのかはよく分かってはいないのだ。
楽しんでいてよいとは言われたが、地上でも何かしら異世界のために働きたいな。少なくとも、俺がいないとダメな世界にはしたくない。世界を滅ぼす超巨大モンスターとかが現れたらまた話は変わって来るけどね。
神様の使いとしてその辺りの調整はしていきたい。不老になったのでまったりゆっくり進めていきたいな。
「んじゃ、俺は魔術協会に連絡するわ」
そう言い、ライトはスマートフォンを取り出した。そこは魔術的な何かで連絡するのではないのか。
やはり魔術師も便利な道具には頼るのか。海外の有名な民族も普通にスマートフォン使ってるらしいし、こだわっている魔術師以外は普通にスマートフォン使ってるんだろうな。
ライトが報告をしている間に、俺とエリィはこれからのことについて話すことにした。
「レクトはそのまま帰ってくるのよね?」
「うん、とりあえずはこれまでと変わらない……いや、むしろこれまでよりも活発に冒険がしたいね」
「わたしも地上に戻りたいですー!」
俺とエリィの話に、セラフィーが割り込んでくる。
見慣れない姿であるため急に割り込まれてびっくりしてしまう。
というか、セラフィーはせっかく天界に戻れたのに地上に来るのか。
「え、なんで」
「だって地上は楽しいんですよー? てれびげーむ? もいいですけどわたしは地上で飛び回りたいです!」
テレビゲームもあるのか。そういえばナチュラルにゲーム機があったかもしれない。
天使たちの間ではゲームが流行っているのか。
「天使たち的にはどうなの?」
「いいんじゃないですか? わたしたちの仕事は地上への手助けなのでノルマさえこなしてくれれば構いませんよ」
ああ、天使の仕事ってノルマ制なんだ。嫌な現実を知ってしまった気がする。
「やったー! じゃあこれからもトワ村でよろしくお願いしますね! レクトさん!」
「トワ村に住むんだ……」
「当然ですよ! エリィさんとわたしは大親友なんですから! ね!」
「う、うん。そうね」
あれ? ちょっと嫌がられてないですかセラフィーさん。大丈夫ですか。仲間内での揉め事とか面倒でしかないんでやめてくださいねほんと。
しかしセラフィーが村に帰ってくるとは。本当にこれからもこれまでの日常と変わらなそうだ。
「私たちはどうしようか、レクトくん」
返事しそうになった、危ない危ない。
「どうって、アルカナさんは『トワイライト』に戻ってくるんでしょ? 落ち着いたらまた一緒にプレイしようよ」
「そうしたいのは山々なのだが、もう少し先になるだろうな」
「なんで!?」
「仕事がな、きっと増える。これだけの事件があったのだ、会社が安定するまで奴隷のように働くことになるのだろうな……私は悲しいぞ」
アルカナさんめちゃくちゃ社畜なんだった。
しかも運営会社のプログラマーだから仕事が増えまくると。なんとも悲しい。頑張って、心を強く持ってくれ俺。
なんて会話をしているうちに、ライトは通話が終わったらしくこちらに戻ってきた。
ライトの話によると、魔術研究施設は消滅し、『トワイライト』の運営会社と魔術師との関係はほとんどなくすのだとか。
そしてライトの言っていた通り、この研究所は魔術師の管理する異世界開発施設として利用するらしい。
案外魔術協会は常識を持っているらしく、今回のような異世界開発については慎重に取り組むべきだと判断したらしい。報告をせずに計画を立てていた根上はしっかり罰せられるそうだ。
「じゃ、何かあったら連絡するからな。後は俺たちに任せとけ」
「それではな、またどこかで。レクトくん」
「ええ、また会いましょう」
寂しそうな顔をしたアルカナさん。その横にいた俺と目が合う。お互いに小さく頷き、振り返らずに背を向けた。
その後、後処理をライトに任せ俺とエリィ、セラフィーは〈空間移動〉で地上に帰るのだった。
* * *
天界から帰還してから、一週間が経とうとしていた。
今日俺は、お宝が残されているという海底神殿に向かっている。
「おおっ、水中で息ができる」
「ドレイクよりも役に立つであろう?」
「何じゃその言い方はぁ!!」
リヴァイアサンの背に乗りながら、水中を進んでいく。
すると、海底に建造物が見えた。所々が崩れているが、確かにそこに存在している。
「いいねぇ、コレクター魂が燃えるよ」
せっかく自由の身になったのだ。アイテムコレクターとしてコレクションを増やしまくってやる。
いつかまたあのような事件が起こるかもしれないが、それまではこうしてコレクターらしく楽しむのだ。
トワ領の仲間たちと共に、冒険生活を始めるのだ。
『弱小領主のコレクター生活』 ―完―
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