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最終章『黄昏の約束編』

154 コレクター、隕石をずらす

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「〈炎帝エンペラーフレイム〉!」

 第五魔法で唯一好きな方向に噴射して攻撃することが出来る〈炎帝エンペラーフレイム〉で隕石を動かそうとする。
 だが、半分になったところで隕石は隕石。そう簡単には動いてくれない。
 このままでは大陸に近い場所に隕石が落ちてしまう。
 爆弾を設置していく暇はないので無理やり壊していくしかない。なら、魔法以外の何かに頼るべきだろう。

「勿体ないけど、仕方ないよね……」

 アイテムストレージからカードを三枚取り出す。
 モンスターの絵が描かれているカード、モンスターカードだ。
 以前ルインと戦った際に使った『ペガサスカード』もその中の一枚で、超低確率でしかドロップしないアイテムでもある。
 効果は召喚獣としてモンスターを召喚するというもの。ボスモンスターのカードも存在するが、レイドボスモンスターのカードは存在していない。
 これで召喚した召喚獣の力を借りて隕石を押してやろうという作戦だ。

「ヘルベヒーモス! 神鳥ゴッドバード! 天空竜スカイドラゴン!」

 カードを掲げてモンスターの名前を叫んだ。
 それぞれボスモンスターの中で有名なモンスターだ。飛べないモンスターだと意味がいないため飛ぶことのできるモンスターの中から最強を選んだのだ。
 ゴッドバードとスカイドラゴンは当然だが、ヘルベヒーモスも飛ぶことが出来る。どうやって飛ぶかって? 地獄の不思議パワーだ。赤黒い禍々しいオーラだね。

「おおお!」

 召喚されたボスモンスターの姿に感動する。ゲーム内でも召喚したことが無いのだ。リアルなボスモンスターの見た目がこんな感じだとは。
 しかし感動に浸っている時間はない。俺自身も魔法を当てて隕石を押さなくては。
 隕石を敵として認識してくれるか不安だったが、三体の召喚獣はそれぞれ隕石に向かって攻撃を開始してくれていた。一安心だ。
 もしかしたら召喚者が敵と認識した相手を攻撃してくれるのかもしれない。

「俺もやらないとね」

 負けじと〈炎帝エンペラーフレイム〉を隕石の側面に当てる。
 四ヵ所に攻撃を当てているためか、かなりの手ごたえを感じる。
 ゴッドバードは羽ばたいて強力な風を、スカイドラゴンは風のブレスを、ヘルベヒーモスは地獄のオーラを放出しての突進を当てている。

「いっけえええええええ!!」

 魔法に集中し続ければ〈炎帝エンペラーフレイム〉の威力が落ちることはない。
 どうやらこの世界の魔法は『トワイライト』と変わっているらしく、魔力を込めれば込めるほど威力が上がり、長時間続くのだ。
 なので長時間の噴射が可能になっている。アルゲンダスクの獣王戦でドレイクと戦ったときのように、俺の〈炎帝エンペラーフレイム〉から本来しないはずの咆哮が聞こえた。

 炎の巨人、炎帝が隕石を押していく。海面が近づく、まだだ、まだ押せる。
 ヘルベヒーモスの突進によりヒビが入っていく。下の一部が崩れていく。
 ヒビが広がり、隕石が次々崩れる。魔法の出力は下げない。このままいけば下半分を小さな隕石の集まりにすることが出来る。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 落とすのは海の中心。なるべく各大陸に被害の出ないように落とす。
 視界の端に、遠方に見えたカリウスたちも順調に隕石を消滅させているようで、もう落ちても被害の少ない大きさになっていた。
 俺の担当した隕石も威力がかなり落ちたはずだが、どこまで被害を減らせたかは分からない。
 だが最後まで隕石への攻撃はやめない。少しでも隕石を砕いて威力を減らすのだ。

「くっ……魔力が……」

 一気に魔力を使ったためかドッと疲れが襲ってくる。
 だがあと少しで落ちる。もうほんの少しの辛抱だ。
 切れかけた集中力をフルに使い落ちた後のことも考える。一番近い国に転移して波を抑えるべきか、非難が先か。
 くらくらする頭。ぼやけた視界。その視界に映った海面に何かが見えた。



 ――――次の瞬間、海面から飛び出した水の柱が隕石を包み込んだ。
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