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最終章『黄昏の約束編』
147 コレクター、誰かに似ている?
しおりを挟むライトさんへの説明を終え、俺に戦闘能力が無いと分かったためそのまま別れずに捜索を続けることにした。
捕らえようと襲い掛かってくる魔術師たちはライトさんが倒してくれる。なんとライトさん、魔術を使わずに魔術師を倒し始めた。
拳で大量の魔術師を吹き飛ばしていく。頭おかしいんだなって思った。
「ふう、ほとんど気絶させたな」
「もう全部ライトさん一人でいいんじゃないかな」
「レクトくん、そもそも私たちは戦っていないし戦えないぞ」
「そうだった」
全部ライトさんがやってくれましたと。
魔術師が集まっているとはいえ戦えるような魔術師の数は限られている。襲い掛かってくるどころか逃げ出す魔術師が多いのを見るにほとんどが勝てないと判断したのだろう。
そのほうが捜索しやすくて助かるが、なんだか拍子抜けだ。ライトさんが強すぎて安心感が違う。
「そういえば、俺たちを無視して逃げる魔術師の中に出口とは反対側に逃げてる人もいたよね。何かあるの?」
「ゲートだな。異世界へと通じる道だ」
「え、異世界に逃げられたってことですか?」
「確かにゲートの先は異世界だけど、天界という天空にある空間に繋がってるんだ。確か、その天界にも同じような施設が建てられていたな」
「なにそれぇ……」
天界……あの創作で何度も聞いた神聖な場所にこの研究所が建てられてるの?
あまりにもこっちの人間が侵食しすぎている気がする。自然界から見た人間もこんな感じなのかもしれない。
しかしそんな場所に逃げてどうするのか。安全になる場所があるのか、それとも何か目的があるのか。
「根上が天界にいる可能性もあるしな……とりあえずこっちのエリアを探し終わったら天界にも突入しよう」
その後も捜索を続けていると、突然廊下の閉鎖が始まった。
天井から壁が降りてくる。出口を塞ごうという作戦だろうか? 何故今更?
警告音にビビっていると、視線の先に合った扉がシュインと開いた。
「な、なんですか!? 何が起こってるんですかー!?」
部屋から出て辺りを見回していたのは、一人の少女だった。
背中には……羽が生えている。異種族だ。
「ライトさん、あれは?」
「天使だな、なんでこんなところにいるんだ?」
「実験に協力してもらっている。ライトのような拘束は警戒されているからできなかったのだそうだ」
無理やり従わせなかったのは、天使にある程度戦闘能力があるからだろうか。
「だ、誰でしょうか?」
こちらに気付いた天使が怯えながら見つめてくる。うっ可愛い。マジ天使って言葉がそのままの意味になってしまう。
「む、お前英雄なのに知られていないのか」
「関わりがなかったからな。俺が帰ってきてから異世界の警備とか担当してたみたいだし」
天使とライトさんはすれ違いになっていたらしい。そりゃ怯えられて当然か。
「……?」
さてどう話しかけようかと考えていると、天使が俺の顔をじっと見つめてきた。
顔に何かついているのだろうか。
「え、何?」
「むー? むむむ???」
「なにそれかわいい。じゃない、どうしたの?」
「……誰かに似ているんです」
はて、俺に似ている有名人なんていただろうか。
しばらく考え込んだ天使は、ピンと来たのかハッと顔を上げ指をさした。
「あー! レクトさんにそっくりです!!!」
「……本人なのにそっくりさん認定されたんだけど」
まさかの俺の名前が飛び出してきた。
いや本名でもないんだけど、なんでこの子がレクトって名前を知ってるの?
「まさか、君はレクトくんに会ったのか?」
「え、ええ。会いました、少し前にですが」
俺に会った……いや、あっちの俺に会ったのか。
ということはもう一人の俺が近くにいるということ。異世界で何があったのだろうか、何故こっちの世界に来ているのだろうか。疑問は尽きない。
「俺は異世界を再び救いに来たライトだ。他の天使もいるんだろ? 中に入って話を聞かせてくれないか?」
「ライト? あ、あのですか!? どうぞどうぞ! お茶くらいしか出せませんけど!!!」
ライトさんが名乗ってくれたおかげですんなりと部屋に入れるようになった。
あっちの俺も、異世界を救おうとしてくれているのかもしれない。それならば話を聞いた天使もそれなりの情報を持っているだろう。
封鎖された廊下はライトさんの魔術でどうにでもなる。一旦ここでゆっくり情報収集をしていこう。
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