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第二章『黄金の羊毛編』
088 騎士、鎧を手に入れる
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カリウスの壊れた鎧から出た光は、そのまま勢いを増した。
そして、鎧が弾け飛ぶ。全く心当たりのない状況に、俺は必死に目を凝らした。
「あ、あれは……鎧?」
鎧が弾け飛んだカリウスを見ると、そこにはなぜか鎧を装備したカリウスが立っていた。
元々装備していた鎧ではない。金色と銀色が入り混じった鎧だ。
その鎧からは、先程と同じような光がうっすらと出ていた。
「ふぅーーーっ、よくわかんないけどまだ戦えるな」
「貴様、それはなんだ」
「さあ? でもそうだな、確かに舐めてたかもしれない。オレはまだまだだ。だから、この剣を使う」
あ、カリウスが『騎士剣エクスカリバー』を抜いた。
そして柄だけが残った木剣を投げ捨てる。ちょ、そんなでも俺のアイテムなんだからあとで回収してよ。
「それは楽しみだ。だが、同じことよ!」
再び正面から突撃するカリウスに対し、ダルファンは正拳突きで衝撃波を作り攻撃した。
それを、今まで減速しなければ対処できなかったカリウスが速度を落とさずに避けた。
今までの鎧とは明らかに動きが違う。軽い鎧なのだろうか、いや、それ以上に動きが良くなっている。それならあの鎧の効果か……?
「っ、へぇ。動きが全然ちげぇ。これなら木剣でもいけそうだ」
「ば、馬鹿なっ!?」
突撃したカリウスは、避けはしたが攻撃はしなかった。
どこまで動けるのかなどを確認しているのだろう。あのまま攻撃を入れれば勝てたのに。
「全力を、ぶつけようぞ!!」
「後悔すんなよっ!」
カリウスが踏み込むと、その姿が霞んだ。
次の瞬間、一瞬でダルファンの目の前まで距離を詰めたカリウスが剣を振った。
それに対し、ダルファンは驚きながらも後ろに飛んだ。普通なら避けることができる距離だ。
だが、その距離は光を含めたエクスカリバーの射程距離内だ。
「おっらああああああああああああ!!!」
ダルファンの腹に、強烈な一撃が叩き込まれた。
身体を引き裂くがごとき勢いで斬られたダルファンの身体から血が噴き出す。
観客席は驚きが勝っているのか、思っていたほど歓声は上がっていない。
しかし、ダルファンが倒れ、立ち上がらない状況を見た観客たちは遅れて歓声を上げた。
「勝者! ロンテギアのカリウス! 見事な戦いであった!」
まあ、そうなるよね。
大王は驚きながらも落ち着いていた。平常運転って感じだね。
「やっべぇ! やりすぎた!!! レクト、どうしよう!?」
「あーもー仕方ないなぁ」
ダルファンは遠目から見ても重傷だった。
あの一撃を食らったら急いで治療をしても死んでしまうかもしれない。
焦るカリウスに呼ばれた俺は観客席から飛び降りる。今注目されたくないんだけどな。
「誰?」
「誰だろうあの子」
「かわいい」
「かわいい」
「かわいい」
あーもうほらこうなる。ロンテギアでも似たような声聞こえてたし。
こんなことならカリウスに事前にポーションを渡しておけばよかったかもしれない。
「ほら、これ飲んで」
俺はダルファンに、『グリーンポーション』を飲ませようとする。
「羨ましい」
「そこ代われ」
「ダルファン死ね」
うるさいな。
ささ、早くダルファンにポーションを飲ませよう。
と思ったのだが、なぜかポーションを持つ手を掴まれた。
「い、いらぬ……この痛みが我の次なる成長に……!」
「うるさああああい! 飲んでよ!! 死ぬよ!?」
ダルファンの出血量は尋常ではなかった。
痛みを感じていたいのならもっと効果の薄いポーションを飲ませようかと思ったが、面倒なのでやめた。
俺がダルファンに無理やりポーションを飲ませると、みるみるうちにダルファンの傷が癒えていく。
「な、なんだこのポーションは……!?」
「料金は要らないよ」
大王が見てる目の前でポーションを使ったんだから、これで効果が分かるはず。
宣伝ができたのでダルファンから金を取ろうとは思わない。お金には困ってないしね。
ありがとうとお礼を言われながら、俺とカリウスは逃げるように待機所に向かった。
* * *
「それ何?」
「オレに聞かれても……というかレクトは知らないのかよ、あの木剣の力とか……」
「そんなわけないでしょ!?」
待機所で休憩したカリウスに、鎧について聞いたが心当たりはないらしい。
あの木剣は正真正銘ただの木剣なので、特に効果はない。ダメージのほとんどない素振りや模擬戦用だ。
なのでこの鎧はカリウス自身の力によるものなのだが……
「もしかして、俺の〔キルタイム〕と同じものなのかな?」
「どういうことだ?」
「本人の持つ技……かな? 武器に依存しないような」
俺の〔キルタイム〕は『トワイライト』には存在しない技だ。
しかも、『騎士剣エクスカリバー』のような特有の技でもない。俺自身の能力。
カリウスの鎧もそれと同じものなのだろう。
「解除ってできる?」
「やってみる。……おっ」
カリウスが目を瞑ると、金と銀の鎧が霧のように消えた。
中に着ていた服だけが残る。やっぱり魔力で作られた鎧だったか。
「今後はこれを使いこなすのが目標だな。じゃ、絶対試合で戦おうな」
「うん、楽しみにしてる」
カリウスの試合が終わったら、俺の試合が近づいてくる。俺もそろそろ準備しないとね。
しかし俺だけでなくカリウスにもあんな力があるとは。もしかしたら、案外全員が同じように別の能力を持っているのかもしれない。
そんなことを考えながら準備運動を始めた。
そして、鎧が弾け飛ぶ。全く心当たりのない状況に、俺は必死に目を凝らした。
「あ、あれは……鎧?」
鎧が弾け飛んだカリウスを見ると、そこにはなぜか鎧を装備したカリウスが立っていた。
元々装備していた鎧ではない。金色と銀色が入り混じった鎧だ。
その鎧からは、先程と同じような光がうっすらと出ていた。
「ふぅーーーっ、よくわかんないけどまだ戦えるな」
「貴様、それはなんだ」
「さあ? でもそうだな、確かに舐めてたかもしれない。オレはまだまだだ。だから、この剣を使う」
あ、カリウスが『騎士剣エクスカリバー』を抜いた。
そして柄だけが残った木剣を投げ捨てる。ちょ、そんなでも俺のアイテムなんだからあとで回収してよ。
「それは楽しみだ。だが、同じことよ!」
再び正面から突撃するカリウスに対し、ダルファンは正拳突きで衝撃波を作り攻撃した。
それを、今まで減速しなければ対処できなかったカリウスが速度を落とさずに避けた。
今までの鎧とは明らかに動きが違う。軽い鎧なのだろうか、いや、それ以上に動きが良くなっている。それならあの鎧の効果か……?
「っ、へぇ。動きが全然ちげぇ。これなら木剣でもいけそうだ」
「ば、馬鹿なっ!?」
突撃したカリウスは、避けはしたが攻撃はしなかった。
どこまで動けるのかなどを確認しているのだろう。あのまま攻撃を入れれば勝てたのに。
「全力を、ぶつけようぞ!!」
「後悔すんなよっ!」
カリウスが踏み込むと、その姿が霞んだ。
次の瞬間、一瞬でダルファンの目の前まで距離を詰めたカリウスが剣を振った。
それに対し、ダルファンは驚きながらも後ろに飛んだ。普通なら避けることができる距離だ。
だが、その距離は光を含めたエクスカリバーの射程距離内だ。
「おっらああああああああああああ!!!」
ダルファンの腹に、強烈な一撃が叩き込まれた。
身体を引き裂くがごとき勢いで斬られたダルファンの身体から血が噴き出す。
観客席は驚きが勝っているのか、思っていたほど歓声は上がっていない。
しかし、ダルファンが倒れ、立ち上がらない状況を見た観客たちは遅れて歓声を上げた。
「勝者! ロンテギアのカリウス! 見事な戦いであった!」
まあ、そうなるよね。
大王は驚きながらも落ち着いていた。平常運転って感じだね。
「やっべぇ! やりすぎた!!! レクト、どうしよう!?」
「あーもー仕方ないなぁ」
ダルファンは遠目から見ても重傷だった。
あの一撃を食らったら急いで治療をしても死んでしまうかもしれない。
焦るカリウスに呼ばれた俺は観客席から飛び降りる。今注目されたくないんだけどな。
「誰?」
「誰だろうあの子」
「かわいい」
「かわいい」
「かわいい」
あーもうほらこうなる。ロンテギアでも似たような声聞こえてたし。
こんなことならカリウスに事前にポーションを渡しておけばよかったかもしれない。
「ほら、これ飲んで」
俺はダルファンに、『グリーンポーション』を飲ませようとする。
「羨ましい」
「そこ代われ」
「ダルファン死ね」
うるさいな。
ささ、早くダルファンにポーションを飲ませよう。
と思ったのだが、なぜかポーションを持つ手を掴まれた。
「い、いらぬ……この痛みが我の次なる成長に……!」
「うるさああああい! 飲んでよ!! 死ぬよ!?」
ダルファンの出血量は尋常ではなかった。
痛みを感じていたいのならもっと効果の薄いポーションを飲ませようかと思ったが、面倒なのでやめた。
俺がダルファンに無理やりポーションを飲ませると、みるみるうちにダルファンの傷が癒えていく。
「な、なんだこのポーションは……!?」
「料金は要らないよ」
大王が見てる目の前でポーションを使ったんだから、これで効果が分かるはず。
宣伝ができたのでダルファンから金を取ろうとは思わない。お金には困ってないしね。
ありがとうとお礼を言われながら、俺とカリウスは逃げるように待機所に向かった。
* * *
「それ何?」
「オレに聞かれても……というかレクトは知らないのかよ、あの木剣の力とか……」
「そんなわけないでしょ!?」
待機所で休憩したカリウスに、鎧について聞いたが心当たりはないらしい。
あの木剣は正真正銘ただの木剣なので、特に効果はない。ダメージのほとんどない素振りや模擬戦用だ。
なのでこの鎧はカリウス自身の力によるものなのだが……
「もしかして、俺の〔キルタイム〕と同じものなのかな?」
「どういうことだ?」
「本人の持つ技……かな? 武器に依存しないような」
俺の〔キルタイム〕は『トワイライト』には存在しない技だ。
しかも、『騎士剣エクスカリバー』のような特有の技でもない。俺自身の能力。
カリウスの鎧もそれと同じものなのだろう。
「解除ってできる?」
「やってみる。……おっ」
カリウスが目を瞑ると、金と銀の鎧が霧のように消えた。
中に着ていた服だけが残る。やっぱり魔力で作られた鎧だったか。
「今後はこれを使いこなすのが目標だな。じゃ、絶対試合で戦おうな」
「うん、楽しみにしてる」
カリウスの試合が終わったら、俺の試合が近づいてくる。俺もそろそろ準備しないとね。
しかし俺だけでなくカリウスにもあんな力があるとは。もしかしたら、案外全員が同じように別の能力を持っているのかもしれない。
そんなことを考えながら準備運動を始めた。
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