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私の前世は……
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部屋へ入ると、3人で生活するには十分な広さで庶民生活をしていたミシェイルには落ち着かなかったが、以前のことを思い出せばなんとかなるだろうと納得した。貴族であれば部屋は別々に用意するものだが、レナリアがミシェイルのことを慮って家族で生活できる部屋にしてくれたのだろう。
妙な緊張感を漂わせたまま、室内にある革張りのソファに三人向かい合って座りこれからのことを話すことにした。
「二人には、わたしの我儘で平民暮らしでしかも農作業なんてさせてしまって申し訳なかったわ」
「いえ、姫様。われわれはあの暮らしを楽しんでおりました」
「そうですとも、姫様が生まれてから3年間、1歳で流暢に話し始めたときはどうじようかと思いましたがあの生活ができて楽しゅうございましたわ」
ジュダスとシェーナは穏やかな表情でミシェイルに語り掛けた。
「それで姫様、あなた様の素性をついに私どもに教えていただけるのですな?」
「ええ、そう。どうして私が1歳でしゃべりだして、今もこのように3歳にはありえない思考をすることができるのかということ」
ミシェイルがそう言うと、二人は息を飲んだのがわかった。
「あなたたちは、聖ミュリア孤児院で生涯を遂げたマリアンナ・ドールボウを知っている?」
「え?は、はあ、有名な方ですからね」
急に全く予想をしていなかった人間の名前が出て肩透かしを食らったように二人はきょとんとした。
「マリアンナの生涯についてはどうかしら?」
「あの王家の醜聞についてですね?もちろん知っております。ドールボウ公爵家はいまだに王家から距離をとっていらっしゃいますから」
「あら、まだ許してないのね」
ミシェイルの前世の実家であるドールボウ公爵家は、マリアンナが婚約破棄をしたときそれはそれは怒り狂い、一族総出で出仕をやめて見限ろうとしていたのだ。
その時はマリアンナがなんとかとりなしたが、王家に対する嫌悪は継続中のようである。
「その彼女がどうしたというのです?」
「記憶があるのよ」
まるで明日の天気の話でも言うかのようにミシェイルは答えた。
「マリアンナの記憶がわたしの中にある。マリアンナの魂が私に宿っているのか、ただの思い込みなのかわからないけれど、確かに思い出すことができるのよ」
ミシェイルの言葉にジュダスは考えるように眉根を寄せて、シェーナはひとつ大きく頷いた。
「やはり、どなたかが姫様の中におられるのだろうと思っておりましたが、マリアンナ様でいらっしゃいましたか」
「シェーナ、どういうことだ?」
ジュダスが問いかけると、シェーナは説明を始めた。
「姫様はわたしが教えずとも貴族の作法をご存じでした。所作もお子様とは思えず、身分の高い方が姫様の中におられるのだろうと。悪いものかもしれないと考えましたが、悪いものであれば農作業をしようなんて考えませんわ」
ふふ、と笑うシェーナにミシェイルも確かにそうねと返して苦笑した。
「俺にはどうにも想像ができないのだが、とにかくマリアンナ様の記憶が姫様に宿っておられるということですな?そのために、このように大人びた、というか老成したような態度でいらっしゃるのか」
「そう、わたしは記憶だけなら二人よりうんと年上なのよ」
肩をすくめておどけたミシェイルは、二人がさらに混乱する発言をこぼした。
「もっというとね、さらに別の記憶もあるのよね」
妙な緊張感を漂わせたまま、室内にある革張りのソファに三人向かい合って座りこれからのことを話すことにした。
「二人には、わたしの我儘で平民暮らしでしかも農作業なんてさせてしまって申し訳なかったわ」
「いえ、姫様。われわれはあの暮らしを楽しんでおりました」
「そうですとも、姫様が生まれてから3年間、1歳で流暢に話し始めたときはどうじようかと思いましたがあの生活ができて楽しゅうございましたわ」
ジュダスとシェーナは穏やかな表情でミシェイルに語り掛けた。
「それで姫様、あなた様の素性をついに私どもに教えていただけるのですな?」
「ええ、そう。どうして私が1歳でしゃべりだして、今もこのように3歳にはありえない思考をすることができるのかということ」
ミシェイルがそう言うと、二人は息を飲んだのがわかった。
「あなたたちは、聖ミュリア孤児院で生涯を遂げたマリアンナ・ドールボウを知っている?」
「え?は、はあ、有名な方ですからね」
急に全く予想をしていなかった人間の名前が出て肩透かしを食らったように二人はきょとんとした。
「マリアンナの生涯についてはどうかしら?」
「あの王家の醜聞についてですね?もちろん知っております。ドールボウ公爵家はいまだに王家から距離をとっていらっしゃいますから」
「あら、まだ許してないのね」
ミシェイルの前世の実家であるドールボウ公爵家は、マリアンナが婚約破棄をしたときそれはそれは怒り狂い、一族総出で出仕をやめて見限ろうとしていたのだ。
その時はマリアンナがなんとかとりなしたが、王家に対する嫌悪は継続中のようである。
「その彼女がどうしたというのです?」
「記憶があるのよ」
まるで明日の天気の話でも言うかのようにミシェイルは答えた。
「マリアンナの記憶がわたしの中にある。マリアンナの魂が私に宿っているのか、ただの思い込みなのかわからないけれど、確かに思い出すことができるのよ」
ミシェイルの言葉にジュダスは考えるように眉根を寄せて、シェーナはひとつ大きく頷いた。
「やはり、どなたかが姫様の中におられるのだろうと思っておりましたが、マリアンナ様でいらっしゃいましたか」
「シェーナ、どういうことだ?」
ジュダスが問いかけると、シェーナは説明を始めた。
「姫様はわたしが教えずとも貴族の作法をご存じでした。所作もお子様とは思えず、身分の高い方が姫様の中におられるのだろうと。悪いものかもしれないと考えましたが、悪いものであれば農作業をしようなんて考えませんわ」
ふふ、と笑うシェーナにミシェイルも確かにそうねと返して苦笑した。
「俺にはどうにも想像ができないのだが、とにかくマリアンナ様の記憶が姫様に宿っておられるということですな?そのために、このように大人びた、というか老成したような態度でいらっしゃるのか」
「そう、わたしは記憶だけなら二人よりうんと年上なのよ」
肩をすくめておどけたミシェイルは、二人がさらに混乱する発言をこぼした。
「もっというとね、さらに別の記憶もあるのよね」
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