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やっとお嬢様登場、先が思いやられる
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「何を言っているのです?」
後ろで見守っていた恐らく執事長らしき人物が前を進み出てきた。だいたい40代ぐらいだろうか、シルバーグレイになった髪を綺麗になでつけ眼光鋭くミシェイルを見下ろしている。
「帰ると言っているの。聞こえなかった?」
「……ちっ、これだから高貴な方々を敬えぬ下賤の者は!」
あなたもなかなか品がないわ、と内心つっこみつつミシェイルが言ったことが予想外だったのだろうとあたりを付ける。公爵家で働くことができるなど一生ものの誉れだ、これを逃そうとするやつなど普通ならいるはずがない。
しかし逃そうとする幼女がここにいる。
「このような子供の言うことなど聞く必要はない。お前たち、この子供の親ならば礼儀を躾ておけ」
そう執事長が吐き捨てた瞬間、ミシェイルの背後から背筋がビリビリとざわつくほどの威圧感が襲ってきた。
(あちゃ、二人とも怒っている)
ミシェイルは知ーらねと肩をすくめたが、使用人たちは気にあてられたのか真っ青になっている。ジュダスもシェーナももとは戦闘職なのだ、武人を怒らせたら一般人がビビるのも当たり前である。
「私たちの子供に過失は一つもないが?」
「ええ、このようなレベルの低い使用人しかいない家など得るものは何もありません。わざわざ呼びつけたお嬢様がいらっしゃらないのなら帰るのは当然のことです」
「な、なにを!」
「なにをしているのです?」
執事長がなんとか震えた声で反論しようとすると、正面階段の上階からレナリアが鋭い声を発して降りてきた。
「彼女が着いたらわたくしに知らせなさいと伝えたはずです、これはどういうことなの」
「お嬢様……」
使用人たちがばつの悪そうな顔をしている中、5歳にしてなかなかの貫禄をもつレナリアは、堂々とやってきてこの状態を見渡してからミシェイルに目をやった。
「ようこそいらっしゃいました、ミシェイル。来てくれて嬉しいわ」
「いえ、もう帰る予定です」
「お、お前まだそんなことを!」
執事長が止めようと声を上げたとき、「お前?」とレナリアは彼を睨みつけた。
「この方たちは私が招き入れた客人にお前呼ばわりとはどういうこと?何度も伝えたと言うのにあなたの記憶力はどうなっているの」
「し、しかしお嬢様、この者たちはただの農民ではありませんか!この公爵家にふさわしいはずが」
「おだまりなさい。ふさわしいかどうか決めるのはあなたではないわ。ふさわしくないというなら、わたくしの言葉を理解せず、わたくしが大切にしようとしていることをこのように滅茶苦茶にするあなたのほうがよほどふさわしくない」
なおも食って掛かろうとするが一刀両断された上に全否定をされた彼は見るからに全身が震えていた。
「ごめんなさいミシェイル、手違いであなた方を不快にさせてしまいました。あなたを迎え入れる準備はできています、さあこちらに」
「お嬢様!案内はこちらでいたします!」
「信用できないの、控えなさい」
慌てて追従しようとする侍女長たちも受け入れず、レナリアは自らミシェイルたちを案内しだした。
(公爵家の使用人としては質の悪いやつらのわりにレナリアのことは一応主人と認めているのね。言うこと聞かずに暴走したみたいだけど)
ミシェイルはこの家の勢力図や関係性がいまいちつかめないまま、レナリアのあとをついて行くことにした。
後ろで見守っていた恐らく執事長らしき人物が前を進み出てきた。だいたい40代ぐらいだろうか、シルバーグレイになった髪を綺麗になでつけ眼光鋭くミシェイルを見下ろしている。
「帰ると言っているの。聞こえなかった?」
「……ちっ、これだから高貴な方々を敬えぬ下賤の者は!」
あなたもなかなか品がないわ、と内心つっこみつつミシェイルが言ったことが予想外だったのだろうとあたりを付ける。公爵家で働くことができるなど一生ものの誉れだ、これを逃そうとするやつなど普通ならいるはずがない。
しかし逃そうとする幼女がここにいる。
「このような子供の言うことなど聞く必要はない。お前たち、この子供の親ならば礼儀を躾ておけ」
そう執事長が吐き捨てた瞬間、ミシェイルの背後から背筋がビリビリとざわつくほどの威圧感が襲ってきた。
(あちゃ、二人とも怒っている)
ミシェイルは知ーらねと肩をすくめたが、使用人たちは気にあてられたのか真っ青になっている。ジュダスもシェーナももとは戦闘職なのだ、武人を怒らせたら一般人がビビるのも当たり前である。
「私たちの子供に過失は一つもないが?」
「ええ、このようなレベルの低い使用人しかいない家など得るものは何もありません。わざわざ呼びつけたお嬢様がいらっしゃらないのなら帰るのは当然のことです」
「な、なにを!」
「なにをしているのです?」
執事長がなんとか震えた声で反論しようとすると、正面階段の上階からレナリアが鋭い声を発して降りてきた。
「彼女が着いたらわたくしに知らせなさいと伝えたはずです、これはどういうことなの」
「お嬢様……」
使用人たちがばつの悪そうな顔をしている中、5歳にしてなかなかの貫禄をもつレナリアは、堂々とやってきてこの状態を見渡してからミシェイルに目をやった。
「ようこそいらっしゃいました、ミシェイル。来てくれて嬉しいわ」
「いえ、もう帰る予定です」
「お、お前まだそんなことを!」
執事長が止めようと声を上げたとき、「お前?」とレナリアは彼を睨みつけた。
「この方たちは私が招き入れた客人にお前呼ばわりとはどういうこと?何度も伝えたと言うのにあなたの記憶力はどうなっているの」
「し、しかしお嬢様、この者たちはただの農民ではありませんか!この公爵家にふさわしいはずが」
「おだまりなさい。ふさわしいかどうか決めるのはあなたではないわ。ふさわしくないというなら、わたくしの言葉を理解せず、わたくしが大切にしようとしていることをこのように滅茶苦茶にするあなたのほうがよほどふさわしくない」
なおも食って掛かろうとするが一刀両断された上に全否定をされた彼は見るからに全身が震えていた。
「ごめんなさいミシェイル、手違いであなた方を不快にさせてしまいました。あなたを迎え入れる準備はできています、さあこちらに」
「お嬢様!案内はこちらでいたします!」
「信用できないの、控えなさい」
慌てて追従しようとする侍女長たちも受け入れず、レナリアは自らミシェイルたちを案内しだした。
(公爵家の使用人としては質の悪いやつらのわりにレナリアのことは一応主人と認めているのね。言うこと聞かずに暴走したみたいだけど)
ミシェイルはこの家の勢力図や関係性がいまいちつかめないまま、レナリアのあとをついて行くことにした。
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