上 下
67 / 84

67話 告白しようかな

しおりを挟む





 滅多にないファンサに興奮する。
 今の、ぜったい永久保存版ッ!!
 瞼に焼き付けようと、目を閉じて脳内で再生する。
 うん、ばっちり記憶した! 再生可能!!
「琉生?」
「ん? え、なに?」
「いや……ドラマの撮影は終わったけど、琉生はグループ活動忙しいの?」
「あ、うん! 今度ライブあるから、その打ち合わせとか、リハとかあるんだ」
「そうなんだ。俺も、琉生のライブ観に行きたいな」
「えッ!? 来てくれんの!?」
 思わず席を立って、テーブルに手をついたまま前のめりになる。
 驚きと喜びで、早口にまくし立てた。
「珂南、ライブ来てくれんの? オレ、招待するよ!?」
「琉生がイヤじゃなかったら、行きたいって思ってたよ」
「ホント!?」
「ああ。だけど、撮影のスケジュールが重なったら、いけないかもしれないけど……」
 珂南が申し訳なさそうに付け加える。
 そういえば、新しく映画の撮影始まったって言ってたっけ?
「それでもいい! チケットできたら、渡す!」
「ありがとう。琉生、座って大丈夫だよ?」
「あっ!」
 立ったままなのに気付いて、あわてて座り直す。
 やべ、興奮しすぎた!
 だって、珂南がライブ来てくれるなんて、思わなかったし!
 今まで珂南が共演した中にアイドルの子もいたけど、その子たちのライブに行ったって話、聞いたことなかったから。音楽アーティストのライブはたまに行くって言ってたから、アイドルが興味ないんだろうなって思ってたんだ。
「すげぇ嬉しいっ! ありがと!」
「お礼を言うのは俺の方だよ。誘ってくれてありがとう」
 嬉しそうに笑ってくれるので、義理とかじゃないよな!?
 やばいっ! メチャクチャ嬉しい!!
「あっ、監督や椎名さんにも、チケット渡すつもりなんだ! 椎名さんって、LiPのライブ来たことあるんだって!」
「椎名さんは、アイドルも好きだから、そうだろうね」
 珂南が納得したように頷く。
 BL好きでアイドル好きって聞くと、目的はソッチなのかな~と思うけど、口には出さなかった。
 知らぬが仏ってやつだな。
「そうだ、琉生」
「ん?」
「食事が終わったら、俺の家に来ない?」
「へっ!?」
「琉生に、渡したいものがあって……」
「行くっ!!」
 かぶせ気味に即答する。
 やった! 珂南の家!!
 この店で終わりだと思ってたから、嬉しくてニヤニヤする。
「良かった。ちゃんと部屋も片付けたから、安心して?」
「あ、お姉さんに片付けてもらったんだ?」
「半分はね。俺もちゃんとやったよ?」
 珂南が言い訳するように言うのがおかしくて、笑ってしまう。
 いつもの、他愛ない会話が幸せだ。
 これが最後だなんて、信じたくない。
 ……告白、しようかな。
 珂南の笑顔を見つめながら、オレは密かに決意を固めた。



 珂南の家に上がったのは、あの練習の日以来だ。
 あの時のことを思い出すと、やっぱり恥ずかしさもあって、ちょっとだけ居たたまれない。
「どうぞ」
「お邪魔しまーす」
 なるべく、軽い口調でリビングに足を踏み入れる。
 家の中は、珂南がいったとおり、綺麗さっぱり片付けられて、モデルルームみたいな部屋に戻っていた。
 あんなにグチャグチャだったのに、よく片付けたなぁ。
 珂南のお姉さんって、すげぇ。
「適当に座って」
「うん」
 珂南に促されて、ソファーに座る。オレの部屋と同じソファーだから、色違いのお揃いで、見るたびにニヤニヤしてしまう。
「琉生、ワインでいい?」
「うん、何でも!」
「良かった。ちょうど昨日開けたのが残ってて」
 そう言いながら、珂南が赤ワインのボトルとグラス、つまみを用意してくれた。
 オレのすぐ左に腰掛けると、グラスにワインを注ぐ。前もワインを出してくれたことがあるけど、そのときのグラスと違うし、こっちも高級レストランで出てきそうな、オシャレなグラスだった。たぶん、何種類も持ってるんだろう。
 さすが珂南だよな~。オシャレで優雅な生活のイメージに合ってる。
 ファンに見えないところでも、期待を裏切らない男。
 すげーよなぁ。オレも、リビングくらいは誰が来ても「ナナっぽくてオシャレな部屋だね」って言ってもらえるような部屋にしたい。
「琉生。どうぞ」
「あ、ありがと」
 グラスを受け取ると、珂南も同じようにグラスを持つ。
 赤ワインの色は美しく、グラスを持つ珂南は、それだけで絵になる。
「はい。乾杯」
「乾杯っ」
 ワイングラスを軽く持ち上げ、香りを楽しんでから一口飲む。
 ふわっと芳醇な香りが口に広がって、味もかなり良い。
「おいしいっ!」
「よかった」
 珂南が唇をほころばせて、オレを見つめる。
 ワインを飲みながら、オレの肩にぐっと寄りかかってきた。
 うぇぇッ!?
「か、珂南ッ!?」
「ん?」
「お、重いんだけど!」
「そんなに重くないでしょ?」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

天才有名音楽家少年は推し活中

翡翠飾
BL
小学生の頃から天才音楽家として有名で、世界を回って演奏していった美少年、秋谷奏汰。そんな彼の推しは、人気男性アイドルグループメンバー、一条佑哉。奏汰は海外から日本の佑哉の配信を欠かさず見て、スマチャもし、グッズも買い集め、演奏した各地で布教もした。 そんなある日、奏汰はやっとの思いで 望んでいた日本帰国を15歳で果たす。 けれどそれを嗅ぎ付けたテレビ局に是非番組に出てほしいと依頼され、天才少年としてテレビに映る。 すると、何とその番組にドッキリで一条佑哉が現れて?!! 天才美少年によるミステリアス人気アイドルへの、推し活BL。 ※後半から学園ものです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

天然くんはエリート彼氏にメロメロに溺愛されています

氷魚(ひお)
BL
<現代BL小説/全年齢BL> 恋愛・結婚に性別は関係ない世界で エリート彼氏×天然くんが紡いでいく 💖ピュアラブ💖ハッピーストーリー! Kindle配信中の『エリート彼氏と天然くん』の大学生時のエピソードになります! こちらの作品のみでもお楽しみ頂けます(^^) ♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡ 進学で田舎から上京してきた五十鈴は、羊のキャラクター「プティクロシェット」が大のお気に入り。 バイト先で知り合った将が、同じキャンパスの先輩で、プティクロシェットが好きと分かり、すぐ仲良くなる。 夏前に将に告白され、付き合うことになった。 今日は将と、初めてアイスを食べに行くことになり…!? ♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡ ラブラブで甘々な二人のお話です💕

処理中です...