上 下
44 / 84

44話 ベッドにいこう

しおりを挟む





 洗面所と脱衣所には仕切りがあって、脱衣所の奥にバスルームがある。前に洗面所を借りたことがあるけど、今は仕切りがなくなってるので、かなり広い。
 ドラム式洗濯機の上にカゴがあって、そこに新しいバスタオルとフェイスタオル、ボディタオルまで入れてあった。さっき用意してくれたんだろう。
 それに、洗面所の周りはハンドソープとアルコール消毒用のボトルがあるだけで、すっきりしている。しかも、ボトルがオシャレだし!
 リビングの惨状から、こっちも散らかってるものだと思っていたけど、これもさっき片付けたのかもしれない。
「マジ、モデルルームみてぇ」
 清潔に保たれている様子を見れば、こまめに掃除をしているみたいだ。
 珂南って、やっぱキレイ好きなんだなぁ。
 バスルームへ入ると、その広さに驚いた。
 バスタブ、大きいな! てか大理石!?
 壁も床も白っぽくて、ピカピカに磨かれている。入浴剤の香りか、花の匂いがして、お湯は淡いラベンダー色だ。
「うわっ、オシャレ!」
 普段は入浴剤とか使わないので、テンションが上がる。
 洗い場も広いし、バスタブのお湯の温度もちょうど良かった。
 シャンプーやボディソープも、洗面所と同じタイプのボトルに入ってて、ちょっと良いホテルのアメニティみたいだ。
 なんていうか、ラグジュアリーな空間?
 ラベンダーの香りも、リラックスさせてくれる。ゆったりとお湯につかって体を温めながら、目を閉じた。
 風呂から上がった後のことを考えると、叫び出したくなるので、あえて今は何も考えずに、風呂を満喫した。
 いつもより時間をかけて風呂から上がると、入れ替わりに珂南がバスルームに入った。
 洗面所でドライヤーを借りて髪を乾かした。コンディショナーも良いやつなのか、艶が出て、ふんわり仕上がった。
 珂南の髪がサラサラしてるのも、これのおかげなのかな?
 どこのメーカーか気になるので、後で聞いてみよう。
 そんなことを考えながら、リビングのソファーで珂南を待った。シンと静まりかえった部屋の中は居心地が悪くて、テレビが付けておく。
 いつもなら、風呂上がりで気持ちよく過ごす時間だけど、ソワソワして落ちつかない。入浴剤の効果なのか、自分の体から何となく良い匂いがするし、おまけに珂南の部屋着を借りて着ているからだ。
「推しの服とか、ヤバすぎるし!」
 ゆったりとした長袖のTシャツと、スウェットのパンツ。エアコンが効いてるので、この薄着でも寒くない。けど、オレが着ると袖も裾も余ってだぶつくんだよな。
 決して、オレの手足が短いからじゃない!
 珂南のスタイルが良すぎるからだ。袖口を顔に近づけると、せっけんの爽やかな香りがした。そして、わずかだけど、珂南の優しい匂いもする。
「香水? じゃないよな。柔軟剤か? はぁ……いい匂い」
 くんくんと匂いを嗅ぐと、珂南の思い出して幸せな気分になる。
 この服、持って帰りてぇ!
 後で洗って返すって言えば、持って帰れるかなぁ?
 なんて、オタク丸出しの思考に飛ぶ。
 あれこれ妄想して楽しんでいると、不意に珂南の声がした。
「琉生」
「ひゃぁっ!」
 ビクッとソファーから飛び上がった。
 やばいっ!? 声に出てた!?
「いや! あの、今のは……ッ!?」
 焦りながら振り返った途端、息が止まった。
 とんでもない光景に、思わず固まる。
「!?」
 風呂上がりの珂南が、そこに立っていた。
 腰にバスタオルを巻いただけの、艶めかしい姿に、目を剥いた。
 ひぇぇぇぇッ!?
 しっとりと濡れた髪から、ポタっと落ちる滴。照明に反射するその粒が、珂南の肩にかかり、胸元をつぅっとすべり落ちていく。
 えっ、ええぇぇ!? エロスッ!?
 初めてみた推しの裸体に、ポカンと口を開けたまま動けない。
 引き締まった体の腹部は、しっかり腹筋が割れている。何度も写真集で眺めた美しい上体が、目の前にあった。
 しかもエロい!!
「か、かかか珂南っ!?」
「琉生。ベッドにいこうか」
「べっ!?」
 ベッド!?
 動揺して返事もできずにいると、珂南が微笑みながらオレに近づいてくる。呆然としている間に手を引かれて、リビングのすぐ隣にある寝室へ連れて来られた。
 ひぇぇっ! べ、ベッドがある!!
 ホテルの一室みたいに、高そうなベッドがドンと置いてある。
 目の前には、裸の珂南がいて、心臓がバクバクしてきた。
「ああ、琉生」
 珂南はオレを振り向くと、手を離して言った。
「上は脱いで」
「へっ!? う、うえ?」
「上は、裸だよ」
 微笑みを浮かべてるけど、冗談を言ってる様子はない。
 え!? オレも脱ぐってこと!?
 何で、と思ったけど、やっとここで意味が分かった。
 れ、練習するって言ってたの、本気だったんだ!!
「ほら、早く」
「ぇ、ぇ……で、でもっ」
「下は、履いててもいいから」
「ぬ、脱がないと、ダメ?」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

天才有名音楽家少年は推し活中

翡翠飾
BL
小学生の頃から天才音楽家として有名で、世界を回って演奏していった美少年、秋谷奏汰。そんな彼の推しは、人気男性アイドルグループメンバー、一条佑哉。奏汰は海外から日本の佑哉の配信を欠かさず見て、スマチャもし、グッズも買い集め、演奏した各地で布教もした。 そんなある日、奏汰はやっとの思いで 望んでいた日本帰国を15歳で果たす。 けれどそれを嗅ぎ付けたテレビ局に是非番組に出てほしいと依頼され、天才少年としてテレビに映る。 すると、何とその番組にドッキリで一条佑哉が現れて?!! 天才美少年によるミステリアス人気アイドルへの、推し活BL。 ※後半から学園ものです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

処理中です...