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44話 ベッドにいこう
しおりを挟む洗面所と脱衣所には仕切りがあって、脱衣所の奥にバスルームがある。前に洗面所を借りたことがあるけど、今は仕切りがなくなってるので、かなり広い。
ドラム式洗濯機の上にカゴがあって、そこに新しいバスタオルとフェイスタオル、ボディタオルまで入れてあった。さっき用意してくれたんだろう。
それに、洗面所の周りはハンドソープとアルコール消毒用のボトルがあるだけで、すっきりしている。しかも、ボトルがオシャレだし!
リビングの惨状から、こっちも散らかってるものだと思っていたけど、これもさっき片付けたのかもしれない。
「マジ、モデルルームみてぇ」
清潔に保たれている様子を見れば、こまめに掃除をしているみたいだ。
珂南って、やっぱキレイ好きなんだなぁ。
バスルームへ入ると、その広さに驚いた。
バスタブ、大きいな! てか大理石!?
壁も床も白っぽくて、ピカピカに磨かれている。入浴剤の香りか、花の匂いがして、お湯は淡いラベンダー色だ。
「うわっ、オシャレ!」
普段は入浴剤とか使わないので、テンションが上がる。
洗い場も広いし、バスタブのお湯の温度もちょうど良かった。
シャンプーやボディソープも、洗面所と同じタイプのボトルに入ってて、ちょっと良いホテルのアメニティみたいだ。
なんていうか、ラグジュアリーな空間?
ラベンダーの香りも、リラックスさせてくれる。ゆったりとお湯につかって体を温めながら、目を閉じた。
風呂から上がった後のことを考えると、叫び出したくなるので、あえて今は何も考えずに、風呂を満喫した。
いつもより時間をかけて風呂から上がると、入れ替わりに珂南がバスルームに入った。
洗面所でドライヤーを借りて髪を乾かした。コンディショナーも良いやつなのか、艶が出て、ふんわり仕上がった。
珂南の髪がサラサラしてるのも、これのおかげなのかな?
どこのメーカーか気になるので、後で聞いてみよう。
そんなことを考えながら、リビングのソファーで珂南を待った。シンと静まりかえった部屋の中は居心地が悪くて、テレビが付けておく。
いつもなら、風呂上がりで気持ちよく過ごす時間だけど、ソワソワして落ちつかない。入浴剤の効果なのか、自分の体から何となく良い匂いがするし、おまけに珂南の部屋着を借りて着ているからだ。
「推しの服とか、ヤバすぎるし!」
ゆったりとした長袖のTシャツと、スウェットのパンツ。エアコンが効いてるので、この薄着でも寒くない。けど、オレが着ると袖も裾も余ってだぶつくんだよな。
決して、オレの手足が短いからじゃない!
珂南のスタイルが良すぎるからだ。袖口を顔に近づけると、せっけんの爽やかな香りがした。そして、わずかだけど、珂南の優しい匂いもする。
「香水? じゃないよな。柔軟剤か? はぁ……いい匂い」
くんくんと匂いを嗅ぐと、珂南の思い出して幸せな気分になる。
この服、持って帰りてぇ!
後で洗って返すって言えば、持って帰れるかなぁ?
なんて、オタク丸出しの思考に飛ぶ。
あれこれ妄想して楽しんでいると、不意に珂南の声がした。
「琉生」
「ひゃぁっ!」
ビクッとソファーから飛び上がった。
やばいっ!? 声に出てた!?
「いや! あの、今のは……ッ!?」
焦りながら振り返った途端、息が止まった。
とんでもない光景に、思わず固まる。
「!?」
風呂上がりの珂南が、そこに立っていた。
腰にバスタオルを巻いただけの、艶めかしい姿に、目を剥いた。
ひぇぇぇぇッ!?
しっとりと濡れた髪から、ポタっと落ちる滴。照明に反射するその粒が、珂南の肩にかかり、胸元をつぅっとすべり落ちていく。
えっ、ええぇぇ!? エロスッ!?
初めてみた推しの裸体に、ポカンと口を開けたまま動けない。
引き締まった体の腹部は、しっかり腹筋が割れている。何度も写真集で眺めた美しい上体が、目の前にあった。
しかもエロい!!
「か、かかか珂南っ!?」
「琉生。ベッドにいこうか」
「べっ!?」
ベッド!?
動揺して返事もできずにいると、珂南が微笑みながらオレに近づいてくる。呆然としている間に手を引かれて、リビングのすぐ隣にある寝室へ連れて来られた。
ひぇぇっ! べ、ベッドがある!!
ホテルの一室みたいに、高そうなベッドがドンと置いてある。
目の前には、裸の珂南がいて、心臓がバクバクしてきた。
「ああ、琉生」
珂南はオレを振り向くと、手を離して言った。
「上は脱いで」
「へっ!? う、うえ?」
「上は、裸だよ」
微笑みを浮かべてるけど、冗談を言ってる様子はない。
え!? オレも脱ぐってこと!?
何で、と思ったけど、やっとここで意味が分かった。
れ、練習するって言ってたの、本気だったんだ!!
「ほら、早く」
「ぇ、ぇ……で、でもっ」
「下は、履いててもいいから」
「ぬ、脱がないと、ダメ?」
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