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第5話 一緒にいる理由
しおりを挟む翌日になっても、クリスは部屋から出てこなかった。
だから夜は、広いベッドで、オリヴァーと一緒に眠る。
いつもはクリスが面倒を見てくれるけど、クリスがいない時は、オリヴァーがちゃんと代わりをしてくれた。
「おい、寝るぞ」
「はーい」
歯みがきも一緒にして、ベッドに入ると、絵本もちゃんと読んでくれた。
いつもなら絵本の途中で寝てしまうけど、終わりまでいっても、まだ目は冴えている。
「まだ寝ないのか?」
「んーねむくない」
「クリスが気になんのか?」
オリヴァーが呆れたような顔でオレを見る。
クリスが部屋に閉じこもってるのはオリヴァーのせいなのに、どうして平気な顔で、しかも面倒くさそうな顔をするのか、よく分からなかった。
「クリス、もうねちゃったかなぁ?」
「寝てるんじゃねーの」
「オリヴァーは、なんでクリスに、いじわるばっかりゆうの?」
「言ってねぇだろ」
「ゆってるもん! オリヴァーが、だまってろって、おこるから、クリスかなしそうだもん」
「あいつに狩りなんてムリだからな。俺の言うこと聞いてりゃいいんだよ」
オリヴァーはそう言ってオレの髪に触れる。
優しく、あやすような手つきだ。
オリヴァーはめずらしく優しい表情をしていた。
「ねー、オリヴァー」
「なんだ」
「オリヴァーとクリスはケンカするのに、どうしていっしょにいるの?」
「俺にはクリスが必要だからだ」
「ひつよー?」
「一緒でないとダメってこと。クリスも、俺がいないと生きていけないんだ」
5歳のオレには、オリヴァーの言う意味が分からなかった。
でも、二人でないとダメって言うのは、なんとなく分かる。
「じゃあ、なんでケンカするの?」
「あいつが弱くて、バカだからだ」
そう答えたオリヴァーは、なんだか寂しそうだった。
だからオレは、クリスにするときみたいに、ぎゅうっとオリヴァーに抱きつく。
すると大きな腕がしっかりオレを抱きしめてくれる。
クリスとは違って、オリヴァーの腕の中は温かい。
背中をトントンとたたくリズムも、クリスとは違うけど、好きだった。
すぐにウトウトして、目を閉じる。
眠りに落ちる寸前、オリヴァーの小さな声が聞こえた。
「……俺には、クリスしかいないんだ」
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