天然くんはエリート彼氏にメロメロに溺愛されています

氷魚(ひお)

文字の大きさ
上 下
2 / 2

初めてのアイスデート ②

しおりを挟む










 けど、選択肢が三つに増えても、まだ絞りきれない。
「うーん……」
 食べてみたいのが、たくさんある。
 季節限定のは食べてみたいけど、定番のだって、おいしそうだし。
 メニュー表とにらめっこしていると、将が笑いながらたずねてきた。
「どれで悩んでるんだ?」
「えっと、これ」
 悩んでるフレーバーを指す。
 どちらも、この時期にしか出ないだろう季節限定のフレーバーだ。
「スイカもおいしいと思うけど、イチジクもすごく気になるんだよね」
「じゃあ、これは俺がスイカを注文するから、五十鈴はイチジクにすれば?」
「え?」
「俺の分けてやるから」
「いいの!?」
 将を見上げると、笑顔でうなずいてくれる。
「やった! ありがとね、将」
 どっちも食べたかったから、嬉しい!
 将って、ほんと優しいよね。
「ドリンクは、ジンジャエールでいいか?」
「うん!」
 僕の好きな飲み物も覚えててくれてる。
 注文は、店員が聞きにくるんじゃなくて、スマホでするみたい。でも将があっという間に注文してくれた。
 店内はそれほど混み合ってなかったから、すぐに番号を呼ばれる。
 将は「取ってくる」と言って、カウンターまでアイスとドリンクを取りに行ってくれた。
 こういうところも、カッコいい。
 何をするにもスマートなんだよね。
 戻ってきた将がトレイをテーブルに置く。
 ワッフルコーンのアイスと、ガラスのカップに入ったアイス、それに飲み物が乗っている。
「五十鈴はこっちな」
「わぁっ、おいしそう!」
 スタンドに乗ってるコーンが、僕のアイスだ。
 選んだのは、バナナ、イチジク、ストロベリー。
 将のは、白いお皿の上に、ガラス製のアイスクリームカップがのせてあって、中には丸い形のアイスが三つ乗っている。
 お皿に金色のスプーンが添えてあって、可愛い。
 将のフレーバーは、ダークチョコレート、スイカ、ヘーゼルナッツ。
 飲み物は、僕がジンジャエールで、将はアイスコーヒーだ。
 お店で食べるアイスは初めてじゃないけど、将と一緒だからワクワクする。
「じゃあ、食べようか」
「うん!」
 スタンドからアイスを取って、早速スプーンですくう。
 三種類のフレーバーだから、ぎゅっとおさまってるけど、ちょっとずつスプーンで食べた。
 それぞれ味がしっかりしてて、夢中になる。
「んーおいしい!」
「良かった。スイカも食べるだろ?」
「たべる!」
 顔を上げると、将がスプーンにすくったアイスを差し出してくる。パクッと食べると、スイカの味が口に広がった。
 これもおいしい。
「スイカだね!」
「ああ」
 将が嬉しそうに笑う。
 スイカ以外も、味見させてくれた。
 チョコレートとヘーゼルナッツも甘かったけど、アイスだからさっぱりしている。
「将のアイスも、甘くておいしいね」
「だろ」
 将が得意げに笑って、アイスコーヒーを飲む。
 僕はコーンの上に乗っていたアイスを食べ終わると、スプーンをおいて、こんどはそのままコーンにかじりついた。
 ワッフルコーンだから甘みもあって、ザクザクした食感のおかげで、アイスがよりおいしく感じる。
「そういえば、なんで将はコーンじゃないの?」
「ん?」
「コーンタイプの、あんまり買わないよね?」
 スーパーで買うのも、カップアイスが多い。
「カップが好きなの?」
「まあ、そうだな」
 曖昧にうなずいているけど、なぜかちょっと遠い目をしている。
「何か理由があるの?」
「……これいうと、笑われるから嫌なんだけど」
「え? 僕は将を笑ったりしないよ?」
 僕を他の人と一緒にして欲しくない。
 そう思ってじっと見つめると、将は苦笑して口を開いた。
「俺、もともと体温が高いだろ?」
「うん。暑がりだもんね」
「手のひらもかなり熱いんだ。子供の時はよく、ソフトクリーム食べてる途中でアイスが溶けてさ」
「えっ、そんなにすぐ溶けちゃうんだ?」
「溶ける。ソフトクリームは最後まで食べられたことがないし、手も服も汚れて散々だったからな。食べないようにしてるんだ」
 僕は自分の握っているコーンを見たけど、アイスは少し溶けてるくらいだ。
「でもこれ、下まではアイス入ってないよね?」
「そうだけど、苦手意識がな……」
 将はまた遠い目になってる。
 コーンタイプのアイスがトラウマになっちゃったのかな……大好きなアイスがすぐに溶けちゃったら、悲しいもんね。
「そっかぁ」
 僕だったら、しょぼんってしちゃう。
 切ない気持ちでコーンを眺めていたけど、ふとひらめいた。
「そうだ!」
「うん?」
「将、僕が持っててあげる!」
 僕の手なら、アイスはすぐに溶けない。
 右手に持っていたコーンを将の口元に向ける。
「はいっ。食べてみて、将」
 これなら将も、安心して食べられるはず。
 名案だよね!
 将を見上げる、驚いた顔で目を瞬かせた。
 あれ? 僕、変なこと言ったかな?
「将?」
 首をかしげると、将はすぐニッコリと笑った。
「ありがとな、五十鈴」
「うんっ」
「じゃ、こうやって食べるよ」
 将は、コーンを握っている僕の右手を、両手でぎゅっと包み込んできた。
「ふぁっ!?」
 びっくりしている間に、将がパクッとコーンの先を食べる。
 将の手は、とても熱かった。
 手を繋ぐのは慣れてきたけど、両手で包み込まれるのは、また違ったドキドキだ。
 アイス食べてるのに、体が熱くなってくる。
「あ、あの……将?」
「うまいな」
「う、うんっ」
「これからアイス食べる時は、五十鈴に持っててもらおう」
「あ、えっと、うん……いいよ?」
 僕が言い出したことだから、イヤとは言えない。
 でも、毎回こうやって握られるのかな?
 それはちょっと、鼓動が速くなっちゃうから、遠慮したいな……!
「五十鈴のアイス、うまかった」
「あっ」
 将が僕の右手からスッと離れた。
 あの熱はなくなったけど、僕の心臓の音は落ちつかない。
 アイスを食べに来たのに、将のせいで暑くなっちゃったよ。
 残りのアイスを少しずつ食べていると、先に食べおえた将が笑顔でたずねてくる。
「五十鈴、ここのアイス気に入った?」
「うん。どれもおいしいよね」
 他の味も気になるし、また食べてみたい。
 もちろん、将と一緒がいいけど。
 ちらっと窺うと、将は目を細めて、優しく微笑んだ。
「夏休みのうちに、またアイス食べに来ような」
「うんっ!」
 将との約束に、大きくうなずく。
 夏休みはまだ半分も残っている。
 将と、いろんなところに行けたらいいな。
「あ、五十鈴」
「ん?」
「デートもいっぱいしような?」
「!?」
「楽しみにしてる」
 将の言葉にカァッと顔が熱くなる。
 でも、そっか。
 将は僕の彼氏なんだから、ただのお出かけじゃなくて、デートになるんだ。
 デートなんてしたことなかったから、ちょっとくすぐったい。
「僕も、楽しみだよ」
 そう伝えると、将はとっても嬉しそうに笑ってくれた。




(終)






しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

アルファとアルファの結婚準備

金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。  😏ユルユル設定のオメガバースです。 

待っていたのは恋する季節

冴月希衣@商業BL販売中
BL
恋の芽吹きのきっかけは失恋?【癒し系なごみキャラ×強気モテメン】 「別れてほしいの」 「あー、はいはい。了解! 別れよう。じゃあな」  日高雪白。大手クレジットカード会社の営業企画部所属。二十二歳。  相手から告白されて付き合い始めたのに別れ話を切り出してくるのは必ず女性側から。彼なりに大事にしているつもりでも必ずその結末を迎える理不尽ルートだが、相手が罪悪感を抱かないよう、わざと冷たく返事をしている。  そんな雪白が傷心を愚痴る相手はたった一人。親友、小日向蒼海。  癒し系なごみキャラに強気モテメンが弱みを見せる時、親友同士の関係に思いがけない変化が……。 表紙は香月ららさん(@lala_kotubu) ◆本文、画像の無断転載禁止◆ Reproducing all or any part of the contents is prohibited without the author's permission.

上司命令は絶対です!

凪玖海くみ
BL
仕事を辞め、新しい職場で心機一転を図ろうとする夏井光一。 だが、そこで再会したのは、かつてのバイト仲間であり、今は自分よりもはるかに高い地位にいる瀬尾湊だった。 「上司」と「部下」という立場の中で、少しずつ変化していく2人の関係。その先に待つのは、友情の延長か、それとも――。 仕事を通じて距離を縮めていく2人が、互いの想いに向き合う過程を描く物語。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。 浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。 攻め:浅宮(16) 高校二年生。ビジュアル最強男。 どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。 受け:三倉(16) 高校二年生。平凡。 自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

処理中です...