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特別に
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アレクセイside
台風で足止めをくらい、宿も満員になってしまったため、宿屋の主人がもつ敷地で野営をさせて貰うことになった。
2日ほどここから出られないとのことなので、部下たちには自由に過ごすように言い、荷物番をしていた。
「公爵様!」
そこに出かけていた騎士達が戻ってきて、静かだったテントは一気に騒がしくなった。
「公爵様、ちょっとついてきてください」
「なんだ?」
連れられるがまま、店が並ぶ路地まで連れてこられた。どこに行くのだと問うても、「まぁまぁ」というばかりで全く分からなかった。
結果、たどり着いた先は、娼館だった。
「…お前らなぁ」
「まぁまぁ。公爵様ってば、全く結婚する気は無さそうだし、仕事以外はだいたい鍛錬をしてらっしゃるでしょう?」
「そんな生活をしていたら、いくら公爵様でも男。それに加えてαともなれば、色々溜まるでしょう」
「なので、俺らでこの娼館の人気NO.1の娼夫を予約しておいたんです」
「ここは男娼の店だろう。俺は男色じゃないぞ」
「ここのNO.1、Ωなんですよ」
「それに、ここは『1度この店に入れば他では満足出来ない』と言われる程の娼館なんですよ!」
「俺らも今夜はここで予約してるので、ごゆっくりお楽しみください」
「全く…」
部下たちのはからいを無下にするわけにも行かないので、店内に入る。すると、すぐに部屋に案内された。
コンコン、と2度ノックをする。
「入ってもいいだろうか」
「…どうぞ」
少し間があったが、許可は貰ったので部屋に入る。
途端、中にいた人物から甘い香りが漂ってきた。
そういえば、先程部下がNO.1はΩだと言っていた。相手も俺がαであることに気づいたようで、唖然としている。
あの面はなんだろうか、狐?この店のコンセプトだろうか。そんなことを考えていたが、少しだけ身じろいだ彼を見てハッとした。
「…すまない、俺は君を抱くつもりはない」
そう伝えると彼はかなり驚いた様子をしていた。
彼と会話しながらも、俺は彼の口にばかり目が行ってしまう。面をしていても、彼がすごく綺麗なことはわかる。艶のある黒髪に白い肌。面の下にはどんな色が広がっているのだろう、とそればかり頭の中で考えていた。
あれから俺は月に1度くらい彼の元に通っている。時間があれば多くて月3回ほど行っている。
彼は俺と友人でいたいようだが、俺は違う。
出会った時から、俺はずっと彼と特別な関係になることを望んでいる。
こんなこと、彼に伝えてしまえば絶対に嫌われてしまうだろう。
彼はそれも知らずに、部屋を出て行こうとする俺を泣きながら引き止めた。嫌われたと思ったのは俺の方だったのに。
泣き方があまりにもおかしいので思わず笑ってしまう。ぽかんとしてこちらを見あげる姿は、さらに笑わされた。
笑いが収まり、彼と話していると彼の顔に涙の跡が見えた。それを拭おうと、彼の頬を擦る。衝撃だ。なんて柔らかいのだろう。
ずっと触っていたかったが、それはまた別の機会に取っておこう。
いつか、俺が君の特別になれるその時まで。
台風で足止めをくらい、宿も満員になってしまったため、宿屋の主人がもつ敷地で野営をさせて貰うことになった。
2日ほどここから出られないとのことなので、部下たちには自由に過ごすように言い、荷物番をしていた。
「公爵様!」
そこに出かけていた騎士達が戻ってきて、静かだったテントは一気に騒がしくなった。
「公爵様、ちょっとついてきてください」
「なんだ?」
連れられるがまま、店が並ぶ路地まで連れてこられた。どこに行くのだと問うても、「まぁまぁ」というばかりで全く分からなかった。
結果、たどり着いた先は、娼館だった。
「…お前らなぁ」
「まぁまぁ。公爵様ってば、全く結婚する気は無さそうだし、仕事以外はだいたい鍛錬をしてらっしゃるでしょう?」
「そんな生活をしていたら、いくら公爵様でも男。それに加えてαともなれば、色々溜まるでしょう」
「なので、俺らでこの娼館の人気NO.1の娼夫を予約しておいたんです」
「ここは男娼の店だろう。俺は男色じゃないぞ」
「ここのNO.1、Ωなんですよ」
「それに、ここは『1度この店に入れば他では満足出来ない』と言われる程の娼館なんですよ!」
「俺らも今夜はここで予約してるので、ごゆっくりお楽しみください」
「全く…」
部下たちのはからいを無下にするわけにも行かないので、店内に入る。すると、すぐに部屋に案内された。
コンコン、と2度ノックをする。
「入ってもいいだろうか」
「…どうぞ」
少し間があったが、許可は貰ったので部屋に入る。
途端、中にいた人物から甘い香りが漂ってきた。
そういえば、先程部下がNO.1はΩだと言っていた。相手も俺がαであることに気づいたようで、唖然としている。
あの面はなんだろうか、狐?この店のコンセプトだろうか。そんなことを考えていたが、少しだけ身じろいだ彼を見てハッとした。
「…すまない、俺は君を抱くつもりはない」
そう伝えると彼はかなり驚いた様子をしていた。
彼と会話しながらも、俺は彼の口にばかり目が行ってしまう。面をしていても、彼がすごく綺麗なことはわかる。艶のある黒髪に白い肌。面の下にはどんな色が広がっているのだろう、とそればかり頭の中で考えていた。
あれから俺は月に1度くらい彼の元に通っている。時間があれば多くて月3回ほど行っている。
彼は俺と友人でいたいようだが、俺は違う。
出会った時から、俺はずっと彼と特別な関係になることを望んでいる。
こんなこと、彼に伝えてしまえば絶対に嫌われてしまうだろう。
彼はそれも知らずに、部屋を出て行こうとする俺を泣きながら引き止めた。嫌われたと思ったのは俺の方だったのに。
泣き方があまりにもおかしいので思わず笑ってしまう。ぽかんとしてこちらを見あげる姿は、さらに笑わされた。
笑いが収まり、彼と話していると彼の顔に涙の跡が見えた。それを拭おうと、彼の頬を擦る。衝撃だ。なんて柔らかいのだろう。
ずっと触っていたかったが、それはまた別の機会に取っておこう。
いつか、俺が君の特別になれるその時まで。
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