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友人
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「俺のことはアレクと呼んでくれて構わない」
王家の次に権力を持つとも言われるライリー公爵家の当主にそういわれて、素直にはい、わかりました。と言える人がいるのだろうか
「…アレク様と呼ばせて頂きますね」
「気を使わないでくれ。ここでの俺はただのアレクだと思って欲しい」
「…わかりました」
「アレク様、俺、2時間も話せる内容なんてありませんよ」
「では俺が話そう」
「なにか気になる話はあるか?」
「うーん…」
「あ、この領地にはどうしていらしたんですか?」
「魔物の討伐さ。ここから行ける山に魔物の巣ができてたからな」
「魔物って、どんなのがいるんですか?」
「緑色の体をしたやつとか、豚のような魔物とかだな」
「大きいんですか」
「緑のやつは小さいな。豚はでかい。でも、それよりもっと大きいやつもいるんだ」
2時間も話せるだろうか、と不安に思っていたが、そんな心配は無用だった。寡黙で真面目な印象を受けたアレク様は俺のような平民にも気さくに話してくださるような方だった。
それに加え、娼館からあまりでたことがない俺にとってアレク様から聞く話はどれも新鮮で聞いていてすごく楽しかった。
熱中して話していると、残り5分を知らせる鐘が鳴らされた。
「もう2時間たつのか…早いな」
「ほんとに、」
「…アレク様、今度この領地に来ることがあれば是非俺を指名してくださいね」
「また、冒険譚が聞きたいです」
「次回からはお金は貰いませんから」
「ですけど、来てくださるのならば夜の1時から朝の10時までにお願いします」
「営業時間外なので、店ではなく裏にある建物まで尋ねて来てください」
「あぁ、わかった」
「ではまたな、リシュカル」
ひらひらと、手を振りながら部屋を出ていくアレク様。
なぜだか、彼のいなくなった部屋が特別寂しく感じられた。
アレク様がうちを尋ねてきたのは、2日後のことだった。
朝の4時時に宿舎を尋ねてきていたらしいが、俺が目を覚ますまで待っていてくれたらしい。
「ごめんなさい、アレク様。最後のお客さんが少し乱暴で…」
「ちょっと、疲れて寝てしまってました」
「いや、こんな早朝に来てしまってすまない」
朝の5時だと言うのに、彼は眠そうどころか昼間のようにいきいきとした表情をしている。
「それにしても、思っていたより早くいらっしゃいましたね」
「あぁ。実は、明後日公爵領に帰ることになったんだ」
「とりあえず明後日までは各自自由行動としている」
「わざわざそれを伝えに来てくださったんですか?」
「それはついでだな。君と話をしにきたんだ」
「へへ、ありがとうございます」
「では部屋に案内しますね」
彼を建物の中の1番奥にある自分の部屋に案内した。
「すみません、狭いでしょう」
「いいや」
「…アレク様、俺、友達がいないんですよね」
「だから、この部屋に指導役や店主様以外が来るのは初めてなんです」
「なんか、友達みたいですね」
話してるうちに照れくさくなって、最後の方はほんとに小さな声になってしまった
「…みたい、じゃなくてなるか」
「友達」
「…え、えぇ!?」
「いいんですか!?」
「あぁ、友人なら、ここに来る理由もできるしな」
「友人となることだし、敬語をやめてくれ」
「あぁ…」
「わかった」
「じゃあ、『友人』になることだし、お互いによく知り合わないと!」
『友人』と強調して言ってしまう俺が面白いのか、彼の顔にはクシャッとした笑顔が浮かんでいた。
王家の次に権力を持つとも言われるライリー公爵家の当主にそういわれて、素直にはい、わかりました。と言える人がいるのだろうか
「…アレク様と呼ばせて頂きますね」
「気を使わないでくれ。ここでの俺はただのアレクだと思って欲しい」
「…わかりました」
「アレク様、俺、2時間も話せる内容なんてありませんよ」
「では俺が話そう」
「なにか気になる話はあるか?」
「うーん…」
「あ、この領地にはどうしていらしたんですか?」
「魔物の討伐さ。ここから行ける山に魔物の巣ができてたからな」
「魔物って、どんなのがいるんですか?」
「緑色の体をしたやつとか、豚のような魔物とかだな」
「大きいんですか」
「緑のやつは小さいな。豚はでかい。でも、それよりもっと大きいやつもいるんだ」
2時間も話せるだろうか、と不安に思っていたが、そんな心配は無用だった。寡黙で真面目な印象を受けたアレク様は俺のような平民にも気さくに話してくださるような方だった。
それに加え、娼館からあまりでたことがない俺にとってアレク様から聞く話はどれも新鮮で聞いていてすごく楽しかった。
熱中して話していると、残り5分を知らせる鐘が鳴らされた。
「もう2時間たつのか…早いな」
「ほんとに、」
「…アレク様、今度この領地に来ることがあれば是非俺を指名してくださいね」
「また、冒険譚が聞きたいです」
「次回からはお金は貰いませんから」
「ですけど、来てくださるのならば夜の1時から朝の10時までにお願いします」
「営業時間外なので、店ではなく裏にある建物まで尋ねて来てください」
「あぁ、わかった」
「ではまたな、リシュカル」
ひらひらと、手を振りながら部屋を出ていくアレク様。
なぜだか、彼のいなくなった部屋が特別寂しく感じられた。
アレク様がうちを尋ねてきたのは、2日後のことだった。
朝の4時時に宿舎を尋ねてきていたらしいが、俺が目を覚ますまで待っていてくれたらしい。
「ごめんなさい、アレク様。最後のお客さんが少し乱暴で…」
「ちょっと、疲れて寝てしまってました」
「いや、こんな早朝に来てしまってすまない」
朝の5時だと言うのに、彼は眠そうどころか昼間のようにいきいきとした表情をしている。
「それにしても、思っていたより早くいらっしゃいましたね」
「あぁ。実は、明後日公爵領に帰ることになったんだ」
「とりあえず明後日までは各自自由行動としている」
「わざわざそれを伝えに来てくださったんですか?」
「それはついでだな。君と話をしにきたんだ」
「へへ、ありがとうございます」
「では部屋に案内しますね」
彼を建物の中の1番奥にある自分の部屋に案内した。
「すみません、狭いでしょう」
「いいや」
「…アレク様、俺、友達がいないんですよね」
「だから、この部屋に指導役や店主様以外が来るのは初めてなんです」
「なんか、友達みたいですね」
話してるうちに照れくさくなって、最後の方はほんとに小さな声になってしまった
「…みたい、じゃなくてなるか」
「友達」
「…え、えぇ!?」
「いいんですか!?」
「あぁ、友人なら、ここに来る理由もできるしな」
「友人となることだし、敬語をやめてくれ」
「あぁ…」
「わかった」
「じゃあ、『友人』になることだし、お互いによく知り合わないと!」
『友人』と強調して言ってしまう俺が面白いのか、彼の顔にはクシャッとした笑顔が浮かんでいた。
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