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変わったお客様
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8年前、10歳となりバース検査を受け、Ωだと診断された。その日、孤児院まで娼館の人が迎えに来て、俺の人生は大きく変わった。
5歳の時、領主様の屋敷に呼ばれ、夜の相手を頼まれた。自分の何倍も大きい人から手が伸びてくる姿は幼かった俺にはまるで地獄から手を伸ばしてくる悪魔のようにしか見えなかった。伸びてきた手を払い除け、領主様を殴って逃げて来てしまって、孤児院への支援は2分の1へと減ってしまった。それから先生の俺に対する態度が明らかに変わった。見た目がいいからと他の子より少し優遇されていたのが、ご飯はみんなの2分の1、服もボロ雑巾のような物になった。
それなのに、痩せこけた俺を娼館の人は俺を引き取ってくれた。俺の顔は美しすぎるから、と口だけが見える狐の面を被るように言われ、俺はそれから1人でいる時以外は絶対に面を外さないようにした。
初見世から5年。俺はこの娼館の人気NO.1になった。
ー
ーー
ーーー
「シュカ、今から来るお客様には特別丁寧に接しなさい」
部屋で客を迎える準備をしていると、店主のコーディさんからそう言われた。
「はい」
今までも貴族や商人など地位が高めの人の相手をすることはあったが、今回のように「特別丁寧に」と言われるのは初めてだった。
どんな人が来るのだろう、と考えながら準備を済ませた。
客を迎える部屋にゆき、ただ人を待つ。
どんな人が来ても、喜んで貰えるようにするのが俺の役目だ。
「失礼しても良いだろうか」
扉が2度ノックされた後に、声をかけられた。
驚いた。ここに来る客はみな、ノックをすることはあっても、扉を自分で開けずに許可を待つ人などいなかったからだ。
「どうぞ」
こちらからそう言うと、彼は静かに扉を開けて入ってきた。面を挟んで、彼と目が合う。
αだ。
入ってきた時の、圧倒的な存在感がそう伝えて来る。
「…すまない、俺は君を抱くつもりはない」
αの存在感に唖然としていた俺に聞こえてきた言葉に思わず耳を疑った。
「…抱くつもりがない?」
「金はしっかり払う。ただ俺は、部下に無理やり連れてこられただけなんだ」
「…まあ、お金を払っていただけるのならいいんですけど」
「でも、あと2時間何するんですか?」
「この部屋、決まった時間を過ごすまで部屋の鍵は開きませんよ」
「そうなのか…」
大きな肩を落とし、申し訳ないような素振りを見せる彼。
「では、俺と話をしないか」
今まで、色んな客の色んな要求に答えてきた。だが、「話さないか」と言われたのは初めてだった。
「…いいですよ」
「ありがとう」
「なに、話します?」
「君の名前を教えてもらいたい」
「俺はリシュカルです」
「リシュカルか、俺はアレクセイだ」
「アレクセイ・ライリー」
ライリー、という姓を聞いてコーディさんに「特別丁寧に」と言われた理由がわかった。
この国の三大公爵のひとつ、ライリー公爵家。
娼館からあまりでたことのない俺でも知っているかなりの名家だった。
5歳の時、領主様の屋敷に呼ばれ、夜の相手を頼まれた。自分の何倍も大きい人から手が伸びてくる姿は幼かった俺にはまるで地獄から手を伸ばしてくる悪魔のようにしか見えなかった。伸びてきた手を払い除け、領主様を殴って逃げて来てしまって、孤児院への支援は2分の1へと減ってしまった。それから先生の俺に対する態度が明らかに変わった。見た目がいいからと他の子より少し優遇されていたのが、ご飯はみんなの2分の1、服もボロ雑巾のような物になった。
それなのに、痩せこけた俺を娼館の人は俺を引き取ってくれた。俺の顔は美しすぎるから、と口だけが見える狐の面を被るように言われ、俺はそれから1人でいる時以外は絶対に面を外さないようにした。
初見世から5年。俺はこの娼館の人気NO.1になった。
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「シュカ、今から来るお客様には特別丁寧に接しなさい」
部屋で客を迎える準備をしていると、店主のコーディさんからそう言われた。
「はい」
今までも貴族や商人など地位が高めの人の相手をすることはあったが、今回のように「特別丁寧に」と言われるのは初めてだった。
どんな人が来るのだろう、と考えながら準備を済ませた。
客を迎える部屋にゆき、ただ人を待つ。
どんな人が来ても、喜んで貰えるようにするのが俺の役目だ。
「失礼しても良いだろうか」
扉が2度ノックされた後に、声をかけられた。
驚いた。ここに来る客はみな、ノックをすることはあっても、扉を自分で開けずに許可を待つ人などいなかったからだ。
「どうぞ」
こちらからそう言うと、彼は静かに扉を開けて入ってきた。面を挟んで、彼と目が合う。
αだ。
入ってきた時の、圧倒的な存在感がそう伝えて来る。
「…すまない、俺は君を抱くつもりはない」
αの存在感に唖然としていた俺に聞こえてきた言葉に思わず耳を疑った。
「…抱くつもりがない?」
「金はしっかり払う。ただ俺は、部下に無理やり連れてこられただけなんだ」
「…まあ、お金を払っていただけるのならいいんですけど」
「でも、あと2時間何するんですか?」
「この部屋、決まった時間を過ごすまで部屋の鍵は開きませんよ」
「そうなのか…」
大きな肩を落とし、申し訳ないような素振りを見せる彼。
「では、俺と話をしないか」
今まで、色んな客の色んな要求に答えてきた。だが、「話さないか」と言われたのは初めてだった。
「…いいですよ」
「ありがとう」
「なに、話します?」
「君の名前を教えてもらいたい」
「俺はリシュカルです」
「リシュカルか、俺はアレクセイだ」
「アレクセイ・ライリー」
ライリー、という姓を聞いてコーディさんに「特別丁寧に」と言われた理由がわかった。
この国の三大公爵のひとつ、ライリー公爵家。
娼館からあまりでたことのない俺でも知っているかなりの名家だった。
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