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第三王子。王太子でも無ければ王太子の予備としても順位は低い王族。
本来であれば他国との縁繋ぎに用いられてもおかしくない身分ではあるが、ジェイはそこに関しては自由であった。だからこそ臣に下るという選択肢が既に与えられており、ジェイもそれを選択している。
それでいて今はまだ王族としての特権が使える立場でもある。
彼は王に謁見し、「死の砂漠」へ向かう旨を告げたものの…
「ならぬ」
勿論、拒否された。
騎士団に所属する事や、ナラーへの婚姻を認める事とは訳が違うのだ。
ジェイは食い下がるも、王は王族であり息子でもあるジェイを死の危険にむざむざ晒す必要は無いと判断した。
当たり前の事を当たり前に言われた。それだけだった。
ジェイもそう言われてしまっては、と一旦引き下がりはしたが、熱病に侵されたかの如く恋の熱冷めやらぬ彼に諦める選択肢は無かった。正道でいけなければ邪道。
王城と国から脱出し、死の砂漠を目指す事は恐らく可能。しかし誰かの手を借りるとその家が王の怒りを買う恐れがある。そこまでのリスクを協力者に背負わせる訳にもいかず。
「どうすれば抜け出して、癒しの水泉までいけるだろうか」
そう自室で考え込むジェイに対して、救いの手は差し伸べられた。
「ジェイ、行きなさい」
「母上!?いいのですか?」
それは王妃。ジェイの母だった。
「ただし、必ず帰ってくる事ですよ。とりあえずは私の実家、貴方の祖父の家を頼りなさい」
彼女も夫である王の気持ちはわかる。愛する息子を無暗に危険には晒したくはない。しかし今のジェイの様子では勝手に一人で突っ走る可能性がある事を敏感に感じ取っていた母は、ジェイの気持ちに寄り添った風で監視の目を付ける事にした。彼女の父であるジェイの祖父は孫を溺愛している。
必ずジェイの力になってくれるだろうし、命を落とす前には引き返すだろう。
「はい…はい!行ってまいります!」ジェイは颯爽と駆け出し、まずは母の生家へと向かった。
「ジェイは行ってしまったか…」
「えぇ、あなた。でもあれは止められないと思いますよ」
「それに…あなたが私を愛してくださった時もあんな感じだったでしょう?」「それは言うな」
本来であれば他国との縁繋ぎに用いられてもおかしくない身分ではあるが、ジェイはそこに関しては自由であった。だからこそ臣に下るという選択肢が既に与えられており、ジェイもそれを選択している。
それでいて今はまだ王族としての特権が使える立場でもある。
彼は王に謁見し、「死の砂漠」へ向かう旨を告げたものの…
「ならぬ」
勿論、拒否された。
騎士団に所属する事や、ナラーへの婚姻を認める事とは訳が違うのだ。
ジェイは食い下がるも、王は王族であり息子でもあるジェイを死の危険にむざむざ晒す必要は無いと判断した。
当たり前の事を当たり前に言われた。それだけだった。
ジェイもそう言われてしまっては、と一旦引き下がりはしたが、熱病に侵されたかの如く恋の熱冷めやらぬ彼に諦める選択肢は無かった。正道でいけなければ邪道。
王城と国から脱出し、死の砂漠を目指す事は恐らく可能。しかし誰かの手を借りるとその家が王の怒りを買う恐れがある。そこまでのリスクを協力者に背負わせる訳にもいかず。
「どうすれば抜け出して、癒しの水泉までいけるだろうか」
そう自室で考え込むジェイに対して、救いの手は差し伸べられた。
「ジェイ、行きなさい」
「母上!?いいのですか?」
それは王妃。ジェイの母だった。
「ただし、必ず帰ってくる事ですよ。とりあえずは私の実家、貴方の祖父の家を頼りなさい」
彼女も夫である王の気持ちはわかる。愛する息子を無暗に危険には晒したくはない。しかし今のジェイの様子では勝手に一人で突っ走る可能性がある事を敏感に感じ取っていた母は、ジェイの気持ちに寄り添った風で監視の目を付ける事にした。彼女の父であるジェイの祖父は孫を溺愛している。
必ずジェイの力になってくれるだろうし、命を落とす前には引き返すだろう。
「はい…はい!行ってまいります!」ジェイは颯爽と駆け出し、まずは母の生家へと向かった。
「ジェイは行ってしまったか…」
「えぇ、あなた。でもあれは止められないと思いますよ」
「それに…あなたが私を愛してくださった時もあんな感じだったでしょう?」「それは言うな」
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