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その日、騎士団への救援要請の依頼があった。森で猪型魔物の大量発生の兆候がある――。

 

ナラーの所属する騎士団は現場である森へと向かう事になったが、ジェイは正式な騎士では無いため待機となる。ジェイもわかってはいる。

技術に関しては対人の訓練ではそこそこ戦えるになったものの魔物と戦ったことも無い。騎士として死ぬ覚悟も出来ていない。王族の血を持つ者でもあるため何かあれば問題にもなる。それでもジェイは魔物の大量発生の恐ろしさ―それによって街が滅び、最悪国が1つ亡くなった事も歴史を学んだため知っていた。

 

現在は昔に比べて平和になってきており大量発生の兆候も判別できるようになっているため、本格的にスタンピードが始まる前に原因を叩けばある程度の発生量で抑えられる。

 

しかしとはいっても危険な事に変わらない。

騎士団は命がけ。ジェイは出発準備を始めているナラーの元へ駆け寄る。

 

「ナラー!」

「ジェイ様、どうされたのですか?」

「ナラーも本当に行くのか?」

「当たり前です。私はそもそも強い方ですし、もし近くの町や村に被害が出れば私を含めた女騎士がいたほうが便利でしょう?」

「それはそうだが…」

「大丈夫ですよ。別に魔物と戦うのが初めてって訳でもありませんし」

 

そういってナラーは微笑む。

騎士として死ぬ覚悟が出来ていると言っても、やはり傷つくのは怖いはずだと思うのだが。

 

「出発前にこれを言うのはどうかとも思うが、リナから話を聞いた」

ナラーはバッと顔を上げた後、目を伏せて低い声で言う。

「…そうですか。傷痕が残っている女なんて嫌でしょう?私のこと」

「それを聞いても僕の気持ちは変わらなかった。ナラーには僕と結婚して欲しい」

「年も離れていますし、流石に駄目ですよ。ジェイ様には相応しい令嬢が他にも沢山いらっしゃると思いますし。陛下だって納得はしないでしょう?」

 

実は父にはもう許可は取ってあるんだけどな。流石に今いうのは不味いか。

そもそもナラーは元々の身分は伯爵令嬢であるし、今や女騎士としていて活躍をして後援会(ファンクラブ)の影響力もあるのだけれど。

 
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