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「成程な…、婚約は白紙になったといってもそこから婚約者を探すのも難しい上に、傷があるとなれば尚更か。それで結婚も諦めているような状況なんだな」

「そうです。だからこそ我々後援会は姉の体の治療用の資金を積み立てておりまして、たとえ騎士となった今からでも幸せになって欲しいとは思っていますわ」

「治療の宛はあるのか?」

「いえ、何せもう数年前の傷ですので…医者にも話を伺ったのですが中々…それこそ伝説の治癒薬でもあればいいんですけどね」

「あぁ、エリクサーの事か。流石に存在しないだろうが、こちらでも調べておく」

「第三王子が調べて頂けるのですか?何故です?」

「ナラーと結婚したいからに決まっているだろう」

 

そう熱を持って告げるジェイを見て、リナは思った。この王子使えるかもしれない、と。

後援会はあくまでも貴族令嬢、そして貴族夫人が主体であり(最近は平民用支部も出来ているが)どうしても調べる伝手が限られる。贔屓の商人や吟遊詩人、美術家等が情報源の源である。だが、王子であれば後援会より幅広く情報を集める事ができるかもしれないとリナは思っていた。

 

(だからといって、ナラー姉様との結婚を許すかどうかはまた別ですけどね!)

 

そもそもリナの方がナラーより年が近いにも関わらず、一切見向きもしないジェイ。騎士団での訓練によって逞しい体をしていながらも王族故の顔の良さを持つジェイに一途に想われる姉。少しだけナラーに嫉妬するリナであった。

 

その後、ジェイは王族としての教育、騎士団での訓練、治療方法の情報の収集そして後援会との情報交換等忙しく過ごすようになった。

 

剣術の腕も更に上がり、今では騎士団全体の中の下程度。貴族としては充分以上の腕を身に着けたが、それでもナラーにはまだ10本やって1~2本取れるかどうかであった。

 

ナラーとの仲も少しは深まり、求婚は未だ拒否され続けているがそれでも剣の相談という名目でナラーが非番の日に食事を共にしたり、武具店巡り等を後ろに王子の護衛が付いているとはいえ二人で行けるまでになった。なおナラーは本当に相談に乗っていると思っているが、ジェイの中ではデートである。

 

街に出ている時に、服やアクセサリーを贈ろうとしたのだが、騎士団生活が長かったのか傷の事が尾を引いているのか「私には似合わない」と一度も贈らせてもらえる事は無かった。

 

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