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第四話
賢い者
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S「──とある王国に一人の賢者がいた」
N「おいおい、一体何の話を始めるつもりだ?」
S「良いから落ち着いて聞いとけって。その賢者は良心の塊みたいな男でな。王国中の人間から愛されていたんだ」
N「賢者って言うくらいだからそいつは頭も良かったんだろ? 頭が良くて人柄も良い……。そりゃあ皆に愛されるだろうな」
S「ところがだ。その賢者はあることがきっかけで突然処刑されてしまうんだ」
N「処刑? 一体なぜ?」
S「──なんでも、街中で裸踊りをしたらしいんだ。もちろん一糸纏わぬ全裸になってね。他にも城の壁に落書きをしたり、巡回中の騎士に突然殴りかかったり……」
N「おいおい、ちょっと待った。賢者は良心の塊みたいな奴だったんだろ? 裸踊りや落書きって……良心どころか人並みの知性すら失ってるじゃねえか。一体何があったんだ?」
S「賢者は気が狂う前まで敵国との戦争に出ていたんだ。大規模な魔法で敵を蹂躙し、王国に帰還する頃には英雄扱いされてたみたいなんだけど……そこからなぜ賢者がおかしくなったのか、誰にも分からないんだ」
N「なんだそれ。あまりにも話の脈絡が無さすぎるだろう。他に何か手掛かりみたいなものは無かったのか?」
S「ああ、そういえば……賢者はおかしくなった後、決まって子供の前では奇妙な反応を見せていたそうだ」
N「どんな反応だ?」
S「子供を見た途端その場にうずくまってガタガタ震えだすんだよ。そして小さな声でごめんなさい、ごめんなさいって何度も呟くんだ」
N「なんか不気味な反応だな。……てか、さっきから一体何の話をしているんだ? こんな気味の悪い話を聞かされたところで、俺には何も分からないぞ」
S「──今の話を聞いて何を感じた?」
N「何って……気味が悪いってことと、不思議な話だなってことくらいしか感じなかったが?」
S「ふふっ、なるほどね。君らしいな」
N「おい、お前今俺のことを馬鹿にしただろ。なあ、もう良いだろ? 良い加減何が言いたかったのか教えてくれよ」
S「──賢すぎるのも弊害ってことだよ。賢者は気付いたんだ。自分を取り囲む悪意に……。そして自分の良心が覆ったんだよ。まあ、もともと自分の良心が裏返っていたことに今更気付いただけなんだけどね」
N「なんだ、結局答えを聞いても分からないままじゃねえか」
S「──だから言ってるだろう? 分からないくらいが、お前みたいに察しが悪いくらいがちょうど良いんだよ」
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