TowerDungeonOnline(タワーダンジョンオンライン)

小佐古明宏

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1章 始まりの街

17話 ライバル

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 いつの間にか17時になっており、いったん2人はログアウトする事にした。夕食も涼子が作って、綾も少し手伝う。楽しい食事を終えると、何故かお風呂に一緒に入った。

 涼子の大人の体にドキドキしながら、幼児体系の綾は成長していない自分にため息を吐いた。

「貴女はそれでいいのよ」

 涼子が鼻を抑えながら、やや興奮して綾の背中を洗っていた。着替えの下着もパジャマも持ってきていないのに、涼子は事前に用意をしていた。いつでも、泊まれるようにと話していた。

 前から、綾を誘おうと思っていたらしく、母親から服や下着のサイズを聞き、買い揃えていた。用意周到な事に驚く。

「そろそろ時間ね?」

「はい、LINEで確認してみます」

 綾は、理沙にログインできるか聞き、居場所を尋ねる。

『もう少ししたら入る。場所は、始まりの街を出た北西の場所。元ゴブリンの集落があったところ』

 と返事があった。

「涼子さん?」

 LINEを見せると、怪訝そうに顔をしかめる。

「だからなのね。ホブゴブリンが1体もいなくておかしいと思ったわ」

「どうゆう事ですか?」

「つまり、理沙さんが倒したという事よ。この調子だと、コアも握ってそうね」

 綾は首を傾げる。

「あ~こちらで話すより、向こうで直接見た方が早いわね。それじゃ、ログインしに行くわよ」

「は、はい!」

 応接室から仕事場へと向かうと、涼子と綾はカプセル状の機械へと入る。再びTDOの世界へと潜ると、

「あっ?」

「へぇ?」

 ゴスロリ衣装の少女と出くわした。その少女はアリサとネームが記されており、アヤネとリコを交互に見つめ、警戒するように距離を取った。

「まさか、あのリコが来るとはね」

「あらあら、魔砲少女のアリサじゃない」

 何故か2人の仲が悪い。火花を散らす様に睨み合いをしている。アヤネは介入するかどうか、慌てふためくが、

「おいアリサ、何してる?」

 リサの登場で場の空気が和んだ。

「リサお姉ちゃん! やっと来たんだ」

「リサちゃん!」

 リサの元へアリサが駆け寄り、アヤネも同時に駆け出す。

「お、おう…って、アヤネも傍まで来てたのか」

 背の高いアヤネに抱き着かれ、リサが戸惑う顔をする。

「う? リサお姉ちゃんに抱き着くなんて…」

 先に抱き着かれアリサは、アヤネを睨む。

「おいおい、そう怒るなよ。アリサも良く知ってる人だぞ」

「良く知ってるって……あっ…綾お姉ちゃん?」

「ん? そうだけよ?」

 アヤネはリサから離れると、アリサをまじまじと見つめる。そして、気づく。

「もしかして、亜里沙ちゃん?」

「うん、久しぶりだね! 綾お姉ちゃん!」

 無邪気に微笑むと、バフッと音がしそうな程、アヤネの胸に飛びつく。膨らんだ胸に顔を押し付ける。

「なるほど、アリサが、あの亜里沙で、リサが、あの理沙ね…」

 何かを思い出す様にリコが見つめる。綾の周辺交友について、リコは調べていた。亜里沙と理沙という姉妹の存在も把握しており、亜里沙がTDOのプレイヤーだという情報も握っていた。それが、魔砲少女アリサが、本人の亜里沙だという事に驚いていた。

「そうだ、リサちゃん。友達になってほしい人がいるのだけど」

 アヤネがリコを紹介する。

「アヤネの専属の編集者をしているリコです。リアル名はいずれ教えるわね」

「こちらこそ、よろしく」

 アヤネの紹介でリコがフレンド登録を行った。アヤネは時間通りに来たリサに、嬉しく感じながら、何となく、鑑定眼鏡を使用した。初めて会うアリサと、今のリサを見てしまい、愕然と口を開けてしまう。

 特に、別れる時よりレベルが上がっているリサのステータスに、呆けてしまった。  

 リサ
 種族:人間
 職業:ゴーレムクリエイター
 LV:45
 HP:690/690
 MP:1330/1330
 STR:95
 VIT:190
 AGI:170
 DEX:80
 INT:410
 LUK:40

 ステータスポイント:0【845】

 共通スキル
 HPアップ:LV3…+300【25】
 MPアップ:LV5…+500【85】
 STRアップ:LV2…+20【15】
 VITアップ:LV3…+30【25】
 AGIアップ:LV2…+20【15】
 DEXアップ:LV2…+20【15】
 INTアップ:LV3…+30【25】
 LUKアップ:LV2…+20【15】
 全異常耐性:LV2【15】
 全属性耐性:LV2【15】

 専用スキル
 MPゴーレム作成:LV2【60】
 HP自動回復:LV1【50】
 MP自動回復:LV1【50】
 共有スキル:LV3【80】
 ゴーレムクリエイト:LV1【50】
 魔改造強化:LV1【50】
 パーツ作成:LV1【50】
 ゴーレム格納庫:LV1【50】
 ゴーレムBOT:LV5【150】※プレゼントスキル

 スキルポイント:5【845】

 称号:ゴブリンハンター【20/20】ダンジョンマスター【0/0】

 隣に並ぶアリサのステータスも、流石、姉妹という程、異常に高く、見た事のない職業だった。

 アリサ
 種族:人間
 職業:魔砲少女
 LV:45
 HP:1670/1670【毎分20回復】
 MP:12690/12690【毎秒500回復】
 STR:120【+100】
 VIT:230【+400】
 AGI:420
 DEX:320
 INT:1140【+1000】
 LUK:45

 ステータスポイント:0【2125】

 共通スキル
 HPアップ:LV4…+400【45】
 MPアップ:LV4…+400【45】
 STRアップ:LV2…+20【15】
 VITアップ:LV3…+30【25】
 AGIアップ:LV2…+20【15】
 DEXアップ:LV2…+20【15】
 INTアップ:LV4…+40【45】
 LUKアップ:LV2…+20【15】
 全異常耐性:LV2【15】
 全属性耐性:LV2【15】

 専用スキル
 射撃魔砲:LV1【50】
 領域魔砲:LV1【50】
 散弾魔砲:LV1【50】
 ホーミング魔砲:LV1【50】
 飛行魔砲:LV5【200】
 急速チャージ:LV5…毎秒500回復【200】
 MPタンク:LV8…+8000【1270】※プレゼントスキル

 スキルポイント:5【2125】

 称号:ゴブリンハンター【100/100】ホブゴブリンハンター【100/100】王殺【500/500】獣ハンター【100/100】タワー制覇者【500/500】砲撃名手【100/100】

 リサ以上のMPを持つ。流石にアヤネも驚きのあまり一瞬、意識が飛びそうになる。

「あ…聞きたのだけど。この先にあるゴブリンの集落は、どうしました?」

 突然、思い出したようにリコが話す。アヤネは、ログインした時に話すと言っていた件だ。ホブゴブリンを倒しに来たのに、全く出会わない。その事に、彼女は疑問を感じていた。

「集落? あれなら私が手に入れたけど」

「リサお姉ちゃん、ダンジョンマスターになったんだよ!」

 自慢げに話すアリサに、リコは納得したように頷く。

「じゃ、リサさんにお願いがあるのだけど」

「うん?」

 アヤネは何となく把握した。

(私の為に?)

 ホブゴブリンを倒せなかったので、リサに出してもらえるか交渉をしようとしていた。

「ダンジョンマスターなら、ホブゴブリンを召喚出来ますわね? ドロップアイテムの魔石を渡すので、大量に出してもらえませんか?」

「あ~、これから始まりの街に戻ろうと思ったけど…アリサ」

「なに?」

「コアの前に行くぞ。街に戻っている間、サブマスターにするから、リコさんと、アヤネの狩りの手伝いをしてくれ」

「うぅ…私もリサお姉ちゃんと、街に戻りたかったのに」

 可愛く頬を膨らまして拗ねている姿に、アヤネは笑みを浮かべる。

「ごめんね、アリサちゃん」

「はぁ~、いいよ、アヤネお姉ちゃんの為だし…リコも一緒だけど」

「あら? 私と一緒だと嫌なの?」

 不敵に笑うリコにアリサがプイッを顔を背ける。

「決闘の勝負、何時か借りを返してやるから!」

 狂犬の如く、牙を向けそうな勢いでリコを睨んだ。

「彼女に興味があって、決闘を申し込んだのよ。勝負は私の勝ちだけど」

「アリサ、リコさんと闘ったのか?」

「そうよ。挑まれたからね。はぁ~勝つ自信があったけど」

 酷く落ち込んでいる様子だった。アヤネはアリサとリコのステータスを思い出す。レベルではリコの方が高いが、アリサは膨大なMPを持つ。

「空を飛んで、砲撃を撃ち込んだのに、全く当たらないし…当てたと思ったら、幻術の偽物だし…」

「空を飛ぶ相手は厄介でしたわ。距離がありましたし、私の攻撃が届く範囲に誘い込むのに苦労しましたわ」

 壮絶な戦いを思い浮かべ、アヤネは苦笑いを浮かべる。リサも呆れたように肩を落としていた。

「そろそろ、行くか?」

「そうね、案内、よろしくお願いします」

 リサに連れられアヤネはリコと一緒に奥へと進む。見えてきたのは木造の小屋で、周辺は更地になっていた。右上のマップを見ると、旧ゴブリンの集落と名前が記されている。

「ここに、集落がありましたのよ。でも、今は何もありませんわね」

「大量に召喚するのに、障害物が邪魔だからな」

 中に入り、コアの前でリサが操作をする。

「アリサ、サブマスターに任命したから、後、昨日と同じで、500討伐数を5万DPに変えておいた。ホブゴブリンは…1体5DPだな。好きなだけ、出すよ良い」

 ギルドカードを差し込んで、コアにDPをチャージし終えると、リサが振り返る。

「リコさん、だったね?」

「ええ、何かしら?」

「…アヤネの事、よろしく頼む」

 深々と頭を下げた。

「分かりましたわ。大切な仕事仲間ですもの、守り抜きますわ」

「アリサ、調子に乗って、大量に召喚するなよ。リコさんの実力なら問題ないと思うが、アヤネもいるんだし、加減しろよ」

「わ、分かってるよ~」

 不機嫌そうに返事をすると、コアを操作する。

「じゃ、私は街に戻るから。クエストの更新したら戻ってくる」

「分かりましたわ」

「うん、待ってるね」

 小屋を出ていく、リサを見送り、アヤネはアリサに話しかける。

「アリサちゃん、よろしくね」

「うん、リコの為じゃなく、アヤネお姉ちゃんの為に頑張る」

 そう言いながらコアを操作している。

「リコ、アヤネお姉ちゃんのレベル上げの手伝い?」

「そうよ。アリサもPTに入るかしら?」

「そうね。ホブゴブリン以外も召喚出来そうだし、1体5DPだから、試しに1000体召喚してみるわ。その後は、他のゴブリンも出してみよう」

「それ、危険じゃないの?」

 不安そうにアヤネが話す。

「大丈夫よ。私が守るから」

「私も手伝うよ。PT申請宜しく」

 PTリーダーはリコなので、彼女の申請でアリサがメンバーに加わった。リコとアリサのステータスから負けるとは考えにくいが、アヤネは強張った笑みを浮かべる。

「じゃ、ホブゴブリン、1000体、出したから、倒すよ。後、LUKが低いから魔石はドロップしないけど、リコは出せるでしょ?」

「ええ、出せますわ」

「なら、リサお姉ちゃんの為に手伝ってもらうわ」

 何を? と不思議そうにリコが首を傾げる。

「リサお姉ちゃん、ゴブリンキングの魔石が大量に欲しいらしいの。だから、残りのDPを全てゴブリンキングに使いたいわけ」

 その言葉にアヤネが蒼褪めた顔をする。

「ゴブリンキングね~いいわね。一度、大量に相手をしてみたかったのよ。私のレベルも上げたいし」

「なら、決まりね。1体、1000DPだから、40体出すよ。残りのDPはホブゴブリン、1000体に変えるね」

「なら、前菜に、追加でホブゴブリン1000体入れない? 2000体ぐらい、貴女と私で余裕でしょ」

「それもそうね」

 2人だけで話が進み、付いていけないアヤネは苦笑いを浮かべる。召喚が終わったと話したので、外に出ると、小屋から1m離れた先が全てホブゴブリンで埋まっていた。

「うわ~キモイ」

「ホブゴブリンだらけね」

「うぅ…大丈夫?」

 キモイと言いながらアリサが背中の杖を握りしめて構える。

「取り合えず、前方の敵を一掃するね」

 領域魔砲なのか、扇状に眩い閃光と共に杖の先端から砲撃が放たれ、ホブゴブリンを飲み込む。ざっと500体ぐらいは消えたと思う。アヤネのレベルが1つ上がった。

「じゃ、行くわね」

 リコが短剣を両手に持つとホブゴブリンの中へと飛び込んでいく。

「アヤネお姉ちゃんは、ここにいてね。小屋から1m以内は安全エリアだから、モンスターは入って来ないよ」

 アリサがインベントリからもう1本の杖を取り出す。地面に向けると魔法を放射しながら飛んでいく。右手で杖を操作しながら空中を飛び回り、地上へ砲撃を行っていた。

 空を飛んで行ったアリサに驚きながら、アヤネは、自分の無力さに溜息を吐いた。リコやアリサ、それに、リサの様に強くなりたい。皆と並ぶ強さが欲しい。そう思い、アヤネは、インベントリから椅子を取り出し、座りながら2人の戦闘を眺めるのだった。
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