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第一巻・我輩がゴアである
桜園田東高校
しおりを挟む『なんで我輩が男の手の中で弄(もてあそ)ばれておるのだ?』
「お前がキヨ子のスマホなんかに忍び込むからじゃないか」
『答えになっておらん。なぜ我輩がアキラに監視されなきゃいけないのかと訊いておる。それと忍び込んだのではない。移動手段として利用させてもらっただけである』
「でもキヨ子の着替えとか見たんだろう? それであの子怒って、管理を僕に任せたんだよ」
『見たくて見たのではない。スマホの前で平気な顔してワンピースを脱いだけのことである。できることならママさんの……あ、いや。何でもない』
「あ。今度さ、恭子ちゃんの携帯に忍び込んでくれない?」
『宇宙でも稀有な電磁生命体をそんなレベルの扱いをしてくれるな』
「ちぇっ。いいアイデアだったのにな……」
携帯へ語りかけながら学校へ向かうアキラの姿はスマホだけが友達という、ちょっとアレ的な青年に見える。しかし実際は携帯の中に閉じ込められた地球外生物と、スマホのマイクとスピーカーを通して会話をしているのである。
「なにが閉じ込められただよ。勝手に入ったくせに……。それと僕は友達もたくさんいるからね」
独り言を言ったつもりだったのに、きっちり聞こえたようだ。これもキヨ子の仕業である。音声回路の感度を最大に設定してくれたせいで、ちょっとした思いも音声となってスピーカーから流れ出てしまうのだ。
やれやれである。
『それにしても人類は太い神経をしておるな』
「どういうこと?」
『我輩のような未知の生命体に出会ったのだぞ。もう少し驚くとか、なにか派手なリアクションをするもんだろふつう。なぜにお前たちは平然としておれるのだ?』
「僕は量子コンピュータの作った仮想空間でイロイロ不思議な経験をしたこともあるし。それにマイボとキヨ子がやらかすことを考えれば、宇宙人なんて目じゃないのさ。だから喋る携帯がいてもちっとも不思議に思えないよ」
『喋る携帯ではない。我輩はゴアである。閉じ込められた電磁生命体なのだ』
アキラは我輩の話など聞いていない。
「それよりこれからどうするの? あんなにキヨ子を怒らせちゃって。分解されるかもしれないよ」
『携帯電話を分解できる小学一年生も末恐ろしいが……そんなに怒っておったか?』
「スマホの中に昨日の会話が録音されているから、ちょっと再生してみてよ」
すぐにCPUのコントロールを横取りして、メモリー内にあった音声データを再生する。
《――ったく。女性の寝室に忍び込んでいたとは、なんといかがわしい破廉恥な行い。許し難き行為です! そこから出ることを禁じます》
《こんな狭苦しいところは嫌なので……》
《うるさい! 絶対に許しません》
「ほらぁ、だいぶ怒ってるだろ?」
『ふむ……』
《……地球での滞在を希望するならこちらの条件を飲みなさい》
《それではまるで我輩は捕虜ではないか》
《チカン行為を働いたのです。アースに叩き落されるより、まだマシだとお思いなさい》
会話記録を止めながら、アキラと向き合う。
『たしかにお怒(いか)りのようだな』
「だろ……」
アキラも小さな溜め息を落とす。
「僕だって迷惑してんだ……」
『すまないな。ではこうしよう、このスマホに充電器を接続してくれぬか。そうすれば我輩はこんな狭いところからさっさと抜け出してやるぞ』
青年はギラリとスマホのカメラを睨み。
「それだけはダメ。今度は僕がキヨ子に叱られちゃうよ。お前を逃すなって厳命を受けてんだもん」
『ホント、あの子は怖いな』
我輩はブルッとバイブを震わせた。
「もうすぐ学校に着くからおとなしくしててよ」
『そうか。女子高生にいっぱい会えるな』
「ジイちゃんと同じこと言うなよ」
と言うとアキラはズボンの後ろポケットに我輩をねじ込んだ。
『提督と同意見とは恐縮するな。それよりアキラ。我輩の頼みを聞いてくれぬか?』
「充電はしないよ」
『そんな次元の低い頼みごとではない』
「なにさ?」
『スマホを尻のポケットに突っ込まないでくれぬか』
「なんで?」
『尻だぞ……人間はそこから不要になった老廃物や汚物を体内から排出するのであろう? そんな公衆衛生上問題のある場所に我輩を近づけないでくれ』
「だめだよ。先生に見つかると後々面倒だもん」
『鞄の中は?』
「抜き打ちの持ち物検査があったら困る」
『お前の学校は携帯電話を使用しなければ、緊急用として持込みだけは許されているんだろ?』
「よく知ってるな。宇宙人のクセに……」
感じ入るように嘆息したアキラ。
「でも。スマホは完全持ち込み禁止なんだ。ネットに夢中で勉強がおろそかになるっていう理由でさ」
『よくわからない校則だな。クレイ数学研究所が出す問題より難解であるな』
「お前なんか家に置いて来てもよかったんだ。それを一生のお願いだから学校に連れてってくれ、とか言うからさ。一生って……だいたい電磁生命体に寿命ってあるの?」
『あるぞ。たったの数千年しか生きられん』
「不老不死と一緒じゃないか。バカバカしい……」
『あぁぁ。だから――ズボンの前ポケットにも入れるな。尻と同じ理由で嫌だ』
「うるさいなぁ。どこならいいの?」
『そうだな……。三歩譲って胸の内ポケットがいい』
「九十七歩はどこ行ったのさ?」
『ハァ? 意味がわからん。そういうことわざがあっただろ?』
「ことわざじゃないよ……」
メモしておこう。『三歩』では少なすぎる……と。
「それより、なんでゴアは学校に行きたがるの?」
『なんではなかろう。日本の女子高生の姿を脳裏に焼き付けて故郷に帰りたいんだ。ハイビジョン画像でな』
「ブルーレイレコーダーみたいなこと言ってる。でもお断りだよ。それじゃまるで僕が盗撮少年みたいじゃないか」
『盗撮? なんだそれ?』
すぐに検索と。
ふむ……隠し撮りのことか。あまり良いことではないようだな。
『では、ちょっとナオミさんに協力要請をお願いするか』
「うぁぁだめ。あのヘンタイ犬が絡むとろくなことにならないんだ」
『それなら胸ポケットに』
「ポケットに入れたら、何も見えないだろ?」
最後まで言葉を聞かない子であるな。
『布地を浸透してくるわずかな光から我輩は外の様子が見えるのだ』
「見なくていいよ」
『それでは、ナオミさんに連絡して、校内の監視カメラの全映像データをこのスマホに送ってもらうことにするか。いやそのほうがいいな。こんなチンケなレンズではなく、同時に多方向から見るほうが都合がいいな。そうしよう』
「だめ! わかったよ」
アキラは制服のボタンを緩めると、内ポケットへキヨ子の黄色いスマホを滑らし込んだ。
『アキラ、感謝するぞ。うほほほ。お殿様が籠に乗って城下町を遊覧するようだ』
「いろんなテレビを見てるなぁ」
大勢の学生が見える見える。これはなかなかの景色である。
『おぉ。あの子、可愛いぞ』
「ゴア、音声止めてくれる。マイボを連れて歩いているみたいだよ」
『すまぬ。しかし我輩は地球外生物であるぞ。人類になど興味はない……おぉ。みごとなボディであるな、あの子』
アキラは我輩を胸ポケットから抜き出すと、尻のポケットに突っ込もうとするので、
『わ、わかった。おとなしくするから、そこだけは堪忍してほしい』
再び胸ポケットに戻った我輩は音声回路を遮断した。
校舎に入り、下駄箱で上履きに履き替えていたら、
「おはよ」
アキラの肩に誰かの手がポンと載った。
「あっ、恭子ちゃん!」
息を吹き返したカエルみたいにぴょんと体を旋回させると、明るい声に変化(へんげ)。
「おはようー。元気ぃ?」
今、ヘリウムガスでも飲んだのか?
いや違う。これは。なるほど――みごとな美形の少女であるな。
チェック柄のスカートをひらりと翻し、風になびく長い黒髪を首の辺りで結わえて、その先を背中に垂らした清楚な姿はとても美しく、大きなリボンタイが大輪の花かと見紛うほどにひときわ色鮮やかに見えた。
アキラの声がピッチを上げたのもうなずけるのである。
我輩は音声回路をオンにして、最低音量でアキラに尋ねた。
『この子は誰である? 制服がよく似合っておるな』
「藤本恭子ちゃん。クラスの、いや学校のアイドルさ」
小声で答えるアキラに我輩も大きく賛同した。
『よくわかるぞ……その辺の芸能人よりも存在感があるな』
「ね? 北野くん、最近博士はどうしてるの?」
その言葉で一気に肩を落とすアキラ。この子の声に何かの特殊な音波でも混ざっていたのだろうか。まるでボスキャラに捕らえられ、みるみるHP値を吸い上げられていく、間抜けなプレーヤーみたいだった。
一面クリアー手前でゲームオーバーになってしまったような消沈ぶりを見せたアキラは、
「どぉもしてないよ。アレからラブマシーンの改良に躍起になってる」
「あの量子コンピュータね。また仮想空間に行ってみたいな」
「う~ん。どうだろうね。前回は上手く機能停止できたからよかったけど、危なく恭子ちゃんも僕も中に閉じ込められるところだったからね」
「そっか……。じゃあさ、キヨ子先生の助手として、また手伝わせてもらえないかな?」
妙に積極的なのは、アキラに興味があるのだろうか。その割に肝心のアキラは浮かない顔をしておる。
「頼んでみてもいいけど……あのさ、」
意を決したように顔を上げた。
「今度、遊園地でも行かない?」
「あ、トモミだ。じゃぁね、北野くん。助手の件、聞いといてね」
羽ばたく直前の白鳥みたいな姿の少女は、やって来た友人のもとへと優雅に飛び去り、アキラがぽつねんと取り残されていた。
『なるほど。相手にされていないということだな』
「うるさいな。あとちょっとなんだよ。ジイちゃんの研究室にもよく来るし、キヨ子の相手だってするし……」
『でも相手にしてくれないわけであるな』
むくれながらも黙ってうなずく。どうやら図星のようだ。
「よ。なにふて腐れてんだよ、北野」
遅れてやってきた青年。メガネの奥に幼さを残した瞳を光らせて、背の低い体型ながら横幅に貫禄を見い出せるのは、
『誰である?』
しなびた菜っ葉みたいなアキラが顔を上げる。
「あぁ。塚本か……。おはよう」
友人であるか……。
「いいかげん諦めろよ北野。オマエには高嶺の花だぜ。いや身分が違うんだよ。俺たちにちょうどいいのは、あれぐらいさ」
指差す先では、上履きを履こうと腰を折る少女の姿。短いスカートであの体制は刺激が強いのでは……とは思えなかった。フラミンゴの極細脚を見るようで、逆に痛々しさが前面に出てしまう。
色気というモノに色があるのなら、その子は真っ白け。カラーデータで言うところの『FFFFFF』であるな。全ビットがそろって立っている。あるいは透明度100パーセント。存在すらしていない。
「八木原さんか……」
「ガリでひょろのメガネ女子はどうだ? 意外と人気があるかもよ」
「悪いけど痩せ型は僕の好みじゃないよ」
「なんだよぉ……メガネだぜ?」
友人は不服そうに口先を尖らせる。たぶんこいつは痩せ型メガネっ子が好みなのだろう。
「理科室の標本みたいじゃないか」
白骨体であるな。水ロケット発射実験の後、校内を散策していた時に見つけて肝をつぶしたヤツだ。
「じゃぁ。あれは?」
「松澤さん……」
観察するように、アキラはショートカットの女子をじっと見てから、
「背が低くすぎるな」
「でもあいつ体操部のエースだぜ。大会優勝者とお付き合いって、いい響きだろ?」
「体育会系はないな。やっぱり恭子ちゃんのほうがいい。あの子はすべてにおいて満点なんだよ」
「……重症だな、オマエ」
塚本くん。諦めないでくれ。我輩が代わりに頭を下げる。ぺこり。
「じゃ、北野。あいつはどうだ。目が覚めるぜ」
「うげげげ」
二人が同時に首をすくめた女子とは……。
「あんたたち、早く教室に入りなさいよ。遅刻するわよ」
我輩の背筋にゾゾゾと妙な不快感を走らせるこの音波はなんである?
新型のレーダー拡散実験でも始まったのか?
アキラも同感らしく、背中を逸らして肩甲骨辺りを上下に振っていた。
「どうだ北野。山岸みたいな女子は?」
小声で尋ねる塚本くんへ、アキラもその耳元で囁く。
「富士山みたいな体型は絶対無理だよ。女子と言うか、同属の哺乳類としても見られないな」
「だよなぁ~」
「何を見るってぇ!」
ガラス窓をビリビリ振動させるダミ声は、我輩が宿っていたスマホにまで轟いた。
「ほら、教室に入りなさい!」
アキラたちは、大魔神みたいな女子に鞄で追い払われるようにして廊下を進んだ。まるではぐれた羊を群に戻すような仕草は牧羊犬(ぼくようけん)ならぬ、牧羊猪(しし)であった。それもでっかいヤツな。
教室に入ると塚本くんは一番前の席、アキラは後ろから3番目と別れて座り、机の脇に鞄をぶら下げた。
「あのさ、北野……」
塚本くんは鞄を机の上に乱雑に置くや否やこちらに舞い戻り、前の席の椅子を引っ張り出して大股でまたいだ。
「そこ西村さんの席だよ」
「いいさ。来るまでこうしてたって。それより俺さ、いいこと思いついたんだぜ」
メガネの奥をきらりとさせて、アキラを上目遣いに覗き込んだ。
「なに?」
「男子それぞれ、女子の好みってあるだろ。だからどんな子が最も好まれるのか調べるんだ」
「何でそんなことをするのさ?」
「知って損はないだろ。自分の好みが世間とどれほどズレているか再認識もできるし。これって重要かもしれないぜ」
「でも、ちょっとマズいだろ? セクハラだとか、差別だとか、女子たち騒ぎ出すよ」
「俺の権限で男子だけにこっそり伝えて統計を取ればいい」
「生徒会を私的に使っていいの?」
「こう見えて俺は視聴覚委員会の委員長なんだぜ。部活動の裏情報をたくさん握っているからな。今年の野球部が無事に甲子園に出られたのも、見つかりそうになった喫煙者を俺が上手くごまかしてやったからさ。停学になったのは影武者のほうなんだ」
「うそ……あいつ影武者だったの? だけどさ、あいつよくその役引き受けたよな。気の毒だよ」
「だいじょうぶ。そいつは退学確定から停学3日で済んだんだ」
「え~。あいつ何したの?」
「それは言えない。ま、女性問題とだけ伝えておくよ」
退学になるような女性との関係とは……なんだろう。とても気になるのである。
「何したの?」
アキラはよくよく我輩の代弁をしてくれる人だな。
「不純異性交遊……」
「うはあ。クラス委員長の山岸がもっとも目を光らせるヤツだ」
不純……どういう意味だ?
検索、検索っと……。
――むむ?
生殖行動のどこが不純なのだ?
携帯電話といい、高校生活とは矛盾だらけなのだな。気の毒にな。
塚本くんが座っていた椅子の持ち主が登校して、話しは中断したが、その日の午後、彼は四つ折りになった紙を風に揺らしながら再び登場。
「北野、これが投票用紙だぜ。枠のところからハサミで切り離せば、八人分になる」
A4サイズを八等分に区切ったそれぞれに、『投票用紙』と書かれていた。
「手書きじゃないか」
「そうさ。証拠が残らないようにな」
「証拠?」
「そ。パソコンで印刷すると文章がハードディスクに残るだろ。だから手書きにして、最後は焼却炉で完全消滅さ」
「ハードディスクから削除すればいいじゃない」
塚本くんはアキラの脳天を人差し指で突(つつ)きながら言う。
「オマエは本当にあの北野博士の孫なのか? ハードディスクに書かれたモノを削除したって、消えるのは保存してある場所が書かれた部分だけなんだぜ。探そうと思えば簡単に見つけ出されるんだ」
「へぇ。詳しいね」
「ばぁか。常識だぜ」
笑みをこぼしながら鼻を鳴らした塚本くんは、アキラに紙の束を滑らせて、
「はい。あと50枚ね」
「はぁ、へ?」
気の抜けた頓狂な声だった。
「へ、じゃねえよ。これと同じモノを50枚。そして切り離して400枚だ。これぐらいあれば男子全員に行き渡るだろう。そしてこれはオマエが準備するんだよ」
「えぇぇぇ。やだよ~」
アキラは眉間にシワを寄せて拒否の姿勢。
「だめだ」
紙片を突っ返そうとするアキラの指先を塚本くんが阻止。
「藤本に一票入れたいんなら手伝え」
鞄から取り出したA4用紙の束をアキラの机にばさりと載せた。
「50枚。生徒会からくすねてきた」
「うへぇぇ」
「オマエんちならコピー機ぐらいあるだろ、それでコピーしてカッターで切り離せばいいだけだ。簡単な仕事だろ?」
「う、うん」
渋々承諾する様子。
「でもさ。これどうやって配るの?」
「簡単さ。もうすぐ文化祭だろ。そのアンケートだとか言って、男子クラブの部長宛てに送る。全員何かしら、後ろめたいことをやってる連中ばかりだから、俺の頼みは教師からの頼みより優先するはずさ」
「なんだか塚本が怖く思えてきたよ」
「なに言ってんだよ。オマエには持っていない個人的なネットワークを俺が持っているだけだぜ」
個人的なネットワークとは、何であろうか?
インターネットではないようなことを漏らしておったし、地球外生物の我輩としてはとても興味が湧いたのである。
その日の放課後──。
どこのクラブにも所属していないアキラは、授業が終わると真っ直ぐに帰宅である。
『なぁ。アキラ……』
「うん?」
『お前は科学部じゃないのか? ロケット打ち上げのとき校庭にいたぞ』
「そんなことまで知ってんのか……。あれはジイちゃんがクラブに顔を出す日だったからさ」
『爺さんのお守(も)りってわけか』
「ちがうよ。ジイちゃんは元気さ……」
ひと息吐いて、
「元気過ぎるぐらいさ。あの日は恭子ちゃんがいたからね」
『藤本さんか? 綺麗な子であるな』
「そうだろ。たぶん学校一綺麗だと思うよ」
『好きか?』
「うん」
正直な青年だな。アキラは……。
『我輩が仲を持ってやろうか?』
「地球外生物に頼むなんて、人類の恥だろ。それに恭子ちゃんはジイちゃんにメロメロなんだ」
『孫と一人の少女を取り合う……なんと地球人は低俗なんだ』
「へんな誤解しないでよゴア。確かにジイちゃんは女好きだけど、恭子ちゃんはジイちゃんの頭脳に惚れてんだよ」
『なるほどな。どこの星でもモテるヤツは外見がすぐれているか、頭脳明晰な者だけなんだ。同情するぞ、アキラ』
「ゴアもバカなの?」
はっきり物を言うガキだな。
「だって、誤って地球に落ちてきたんだろ?」
『……誤ってではない。好奇心から近づいただけだ』
「でも結果は宇宙に帰れなくなったんだ」
『……………………』
確かに言い返す言葉が無かった。
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