49 / 51
第49話 オリジナル
しおりを挟む
寝室で眠るボス、部下、女主人。そんな中現れた謎の女にボスは口元を押さえつけられていた。
助けを呼ぶ声は、押さえつけられた手にかき消される。ボスの隣ですやすやと眠る部下と女主人。
ボスはなんとか手を振り回し、目の前の女を自分からどかそうとする。大きく振った左手が女に当たる。
しかし、その殴打は何かに弾かれる。ボスにはとても既視感があった。
女は特に慌てる様子もなく、ボスの耳元で囁く。
「ちょっと黙りなさい。」
ボスは大人しく従う。まだ油断はできないが、特に敵意があるわけではなさそうだ。
それに、こんな夜中に寝室に忍び込んできて、自分が対処しきれない相手だ。きっとまともな人間じゃない。
ボスが静かになったのを確認して、女はボスの口元から手を離す。
「こんな手荒な真似しちゃってごめんなさいね。」
月に照らされたその女の髪は、トパーズのように輝く。
「貴方は一体誰なんですか?」
ボスはあくまでも小さな声でその女に尋ねた。女は少しだけ考えた後、口を開く。
「私はね、魔法少女を生み出した張本人よ。」
その女は微笑みを浮かべ、オリジナルとでも呼んでちょうだい。とボスにささやく。
やっとボスは先程の既視感に納得がいった。相手が魔法少女であれば、ボスも気付くことはできないだろうし、部下達が即座に寝てしまったのも理解できる。
しかし、相手が魔法少女であるのならば、自分は今、絶対絶命の状態にあるのではないかとボスは焦り出す。
その心を読んだかのように、オリジナルはボスの頬に手をやる。
「安心していいのよ。私は、別に貴方をどうにかしようなんて思っちゃいないわ。」
その手には、不思議な温もりがあった。そして、その温もりと同時にどこか懐かしさがあった。
「昔、僕に触れたことがありますか?」
気がつくとボスはオリジナルに尋ねていた。オリジナルは寂しそうに笑い、えぇ。と答えた。
ボスは、はっとした表情を浮かべる。彼は幼馴染の人質と出会った事もある。
それだけに、忘れ去ってしまった昔の記憶があるのではないかと必死に思い出そうとする。
しかし、何も思い出す事ができない。
「貴方は一体、何者なんですか?」
ボスは、ごくりと唾を飲み込んだ。魔法少女は、目を伏せて少しだけ首を振ると、ボスに向き直った。
「私は、電車内で貴方の右の尻を触っていた者よ。」
お前か!!!ボスは叫んだ。どうりでその手の温もりを懐かしく感じたわけだ!とボスは激しく合点がいく。
「なんか楽しそうだったから、つい。」
頭に手をやりながら、照れたように笑うオリジナル。ボスは、とりあえず布団の上に座る。
「それで、オリジナルが私に何の用です?」
ボスは、眠そうに目を擦りながら尋ねる。
「特に用はないのよ。ただ、あの子達が全然勝てないって言ってたから、どんな人間なのか気になっちゃって。」
オリジナルは、月を見つめている。しばらくの間、訪れる沈黙。
初めはオリジナルの方を向いていたボスだったが、その沈黙の中、ボスも月を見つめ始めた。
ボスの後ろで、影が揺らめいた。
助けを呼ぶ声は、押さえつけられた手にかき消される。ボスの隣ですやすやと眠る部下と女主人。
ボスはなんとか手を振り回し、目の前の女を自分からどかそうとする。大きく振った左手が女に当たる。
しかし、その殴打は何かに弾かれる。ボスにはとても既視感があった。
女は特に慌てる様子もなく、ボスの耳元で囁く。
「ちょっと黙りなさい。」
ボスは大人しく従う。まだ油断はできないが、特に敵意があるわけではなさそうだ。
それに、こんな夜中に寝室に忍び込んできて、自分が対処しきれない相手だ。きっとまともな人間じゃない。
ボスが静かになったのを確認して、女はボスの口元から手を離す。
「こんな手荒な真似しちゃってごめんなさいね。」
月に照らされたその女の髪は、トパーズのように輝く。
「貴方は一体誰なんですか?」
ボスはあくまでも小さな声でその女に尋ねた。女は少しだけ考えた後、口を開く。
「私はね、魔法少女を生み出した張本人よ。」
その女は微笑みを浮かべ、オリジナルとでも呼んでちょうだい。とボスにささやく。
やっとボスは先程の既視感に納得がいった。相手が魔法少女であれば、ボスも気付くことはできないだろうし、部下達が即座に寝てしまったのも理解できる。
しかし、相手が魔法少女であるのならば、自分は今、絶対絶命の状態にあるのではないかとボスは焦り出す。
その心を読んだかのように、オリジナルはボスの頬に手をやる。
「安心していいのよ。私は、別に貴方をどうにかしようなんて思っちゃいないわ。」
その手には、不思議な温もりがあった。そして、その温もりと同時にどこか懐かしさがあった。
「昔、僕に触れたことがありますか?」
気がつくとボスはオリジナルに尋ねていた。オリジナルは寂しそうに笑い、えぇ。と答えた。
ボスは、はっとした表情を浮かべる。彼は幼馴染の人質と出会った事もある。
それだけに、忘れ去ってしまった昔の記憶があるのではないかと必死に思い出そうとする。
しかし、何も思い出す事ができない。
「貴方は一体、何者なんですか?」
ボスは、ごくりと唾を飲み込んだ。魔法少女は、目を伏せて少しだけ首を振ると、ボスに向き直った。
「私は、電車内で貴方の右の尻を触っていた者よ。」
お前か!!!ボスは叫んだ。どうりでその手の温もりを懐かしく感じたわけだ!とボスは激しく合点がいく。
「なんか楽しそうだったから、つい。」
頭に手をやりながら、照れたように笑うオリジナル。ボスは、とりあえず布団の上に座る。
「それで、オリジナルが私に何の用です?」
ボスは、眠そうに目を擦りながら尋ねる。
「特に用はないのよ。ただ、あの子達が全然勝てないって言ってたから、どんな人間なのか気になっちゃって。」
オリジナルは、月を見つめている。しばらくの間、訪れる沈黙。
初めはオリジナルの方を向いていたボスだったが、その沈黙の中、ボスも月を見つめ始めた。
ボスの後ろで、影が揺らめいた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/entertainment.png?id=2f3902aa70cec36217dc)
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!
電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。
しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。
「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」
朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。
そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる!
――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。
そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。
二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる