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3.騎士団へ
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翌朝、美しい庭園に囲まれた広場の一角に、騎士の鎧に身を包んだ若者たちが整列していた。
「……というわけだ。皆、今日からこのライファンは我がアダラーマ騎士隊の見習いとして、一緒に学ぶことになった。なにかと分からぬことがあったら色々と教えてやって欲しい。さあ、ライファン、騎士道の体現を目指し、王国のために共に戦おうぞ」
騎士たちに混じって一人だけ初々しい小姓姿で立っていた少年は、隊長に紹介されると、おずおずと隊列の前に進み出た。
「あのー、ライファンです。よろしく」
ぺこりとおじぎをする彼に、騎士たちは一様にひそひそと囁きを交わし、彼の小姓姿やその腰に下げている大剣を見て何事かを言い合う様子だった。
「お前たち。なにをこそこそやっとる。言いたいことがあるのならはっきりと言え。誇りを持ってはきはきと。それが騎士道というものだ」
隊長に一喝され、騎士たちは押し黙った。がっしりとした体格の隊長ラガルドは、剣においては勇猛で国内屈指の使い手で、なおかつ人当たりもよく、騎士隊において全員の尊敬を集めている。
「しかし、隊長」」
「なんだ。意見があるのか。言ってみろ」
進み出た金髪の若い貴族騎士は、ライファンを指さしてつけつけと言った。
「そこの者は、聞くところによるともとは奴隷で、クシュルカ姫に道端で買われてきた卑賤の者だということですが、わが神聖なる騎士隊にそのような身分なき輩が入隊することなど、歴史上かつてありませんでした。はたしてそれでよいのでしょうか」
「よい」
隊長の言葉はいたって明確だった。
「何故なら、彼の騎士隊入りは王女殿下が認められたことだ。騎士隊は王国のため、国王陛下のため、王女殿下のために戦うものだ。したがって、王女殿下がそうと言われるのなら問題はないのである。また侍従長どののご推薦もあったことも付け加えておく。他!」
今度は赤毛のベテラン騎士が手を挙げた。
「リュースか、何だ」
「そのガキ……いや、見習いはずいぶんと立派な剣を持っているが、騎士隊の規則だと見習いの間は自分の剣は持てないことになっているはずだ。たいした実力もないのに適当にぶんぶんと大剣を振り回されては危なくってしかたない。そこのところはどうなんですかい?」
「うむ。……確かに」
隊長は腕を組むと、少年に尋ねた。
「どうだ。見習い騎士は入隊後しばらくは木剣で稽古をするのが普通なのだが」
「はあ」
「その剣はお前には大きすぎるのではないか?」
「はあ……でも」
少年は首をかしげた。
「でも、僕にはちょうどいいみたいですが」
にこにことして言う彼だったが、その態度が逆に騎士たちには気に入らなかったようだ。口々に「生意気だ」「そんな剣をまともに使えるはずがない」などという声が上がった。
「静粛に。静粛にするのだ。静謐と儀礼を重んじる。それこそが騎士道の体現なのだ」
騎士隊長は皆を制し、やがて何事かを思いついたように騎士たちに重々しくうなずきかけた。
「よかろう。ではこうしよう。このライファンの剣の腕を少しためしてみよう。もしそこそこにその大剣を使えるようなら、それを認めることも考えねばなるまい。よいか?ライファン」
「はい」
「では、このライファンと剣の試合をしたい者は?」
居並んだ騎士たちは皆いっせいに手を挙げた。ベテラン騎士も若者も、ライファンと同じくらいの少年騎士も、その顔に自信をみなぎらせて。
「そうだな……ではまずマーカス、お前だ」
「はいっ」
騎士隊長が選んだのは、ライファンよりもいくつか年長の少年騎士だった。実力的には騎士隊のなかで真ん中くらい。隊長はそういう点で丁度いい目安になる者を選んだのだ。
「では二人ともこちらへ」
隊長自らが審判役を買って出ると、二人を向かい合わせた。
「いいか。これは練習試合だ。まず頭部、顔面への攻撃はなしだ。原則として相手の剣を地面に落とした方の勝ちとする。では構え」
兜をかぶり、剣を抜いて構える二人。ライファンは大剣を両手で低く持ち、少年騎士は最近見習いから正式な騎士になって、授かったばかりのぴかぴかの剣を相手に向けてかざした。
「始め」
隊長のかけ声と同時に、少年騎士は剣を振り上げた。
「やれやれ!」
「やっちまえ、マーカス!」
周りの騎士たちから応援の声が上がる。
少年騎士はライファンに向かって、剣を振り下ろした。
カッシーン!
高らかな音が鳴り響いた。
一瞬、二人を取り囲んだ騎士たちは声を失った。くるくると、空中を舞う剣をぽかんと見つめて。
いったい何が起こったのか。剣はそのまま落下し地面に突き刺さった。
ぶるぶると、震えていたのは少年騎士、マーカスだった。
ライファンはきょとんとした様子で、そこに突っ立っていた。
「な……なんだ?今のは……」
「見えなかったけど……」
「何が起こったんだ……」
ざわざわと騎士たちが互いに顔を見合わせる。
「それまで。ライファンの勝ちだ」
隊長がそう告げた。
「そんな馬鹿な……」
「一瞬で……」
信じられないという様子で、少年騎士は自分の手を見て、地面につき立っている剣を見た。そしてがっくりとひざを落とす。
「まぐれだ!」
騎士たちから声が上がった。
「次は俺がやる!」
「よし。いいだろう」
隊長はうなずいた。
「できるか?ライファン」
「はい」
まったく興奮もなにもない声で、ライファンはうなずいた。
「始め」
結果は同じだった。
再び一瞬のうちに、騎士の剣は宙高くはね飛ばされていた。
ベテラン騎士は唇を噛みしめた。
「なんてこった……」
今度のは騎士隊のなかでも五指に入る腕前の騎士だった。それをほんの一撃で負かせてしまったのだ。騎士たちは静まりかえった。
「次は俺が……」
進み出た騎士。うなずく騎士隊長。きょとんとするライファン。
「始め」
さらに再び。剣は空中を舞った。
わずか数秒で。たった一度合わさっただけで、相手の剣が飛ばされる。
何度やっても同じことだった。
次々と指名され、ライファンと剣を交える騎士たちだったが、誰一人として二度と剣を合わせることはできなかった。
「次」
ベテラン騎士も、若者も、少年騎士も、誰もかなわなかった。それどころかまともな剣の打ち合いにもならなかった。あっと言う間の少年の一振りは、おそろしく完璧に相手の剣をたたき落とした。
ライファンは息を乱すことも、試合の後で喜んだりすることもない。ただ飛び込んでくる相手の剣をはね上げ、そして剣を下ろしは無表情で立っているだけだった。きょとんと首をかしげたその様子は、彼自身があるいは、一番自分の剣技に驚いてでもいるようだった。
「すごいな……」
思わずというように隊長がもらした。
すでに騎士隊のほぼ全員、五十名近くが彼の相手をして、敗れていた。
初めのうちは生意気な見習いの少年に痛い目を見せてやるかと、にやにやしていた騎士たちも、十人、二十人、三十人と、少年に負かされてゆくうち、その顔は蒼白になり、なにか信じられないものでも見ているように目をこするのだった。どうやっても誰一人、ただの一度も勝てないのだ。誰にももはや言葉はなかった。その場に座り込んだり、あっけにとられたり、ただただ皆が呆然となっていた。
「次……いないか」
もはや誰も手を挙げるものはなかった。汗もかかず、その手に剣をぶら下げて立っているこの少年に、これ以上誰が立ち向かうというのか。
「そうか。では……」
隊長は皆を見回して、誰も進み出る様子がないのを見ると、ここまでと手を挙げた。
「このライファンの剣の腕を認めて、正式に……」
「待ってください」
隊長の言葉をさえぎって、ずいと進み出た騎士がいた。
「お前か。レアリー」
「おお、副隊長が!」
「副隊長なら、やるかもしれん」
息を吹き返したように、周りの騎士たちはいっせいに声を上げた。アダラーマ騎士隊の副隊長は、絶大な人望があるようだった。
兜をかぶった若い騎士がずかずかとライファンに歩み寄った。
その背丈はさほどでもない。ライファンと同くらいだ。体格も同様にすらっとしてしなやかそうで、身のこなしは優雅といっていいほどだ。
「副隊長ー」
「頑張ってくださいよー。副隊長」
「レアリー副隊長、俺たちの仇をとってくださいよ!」
大きな声援を背中に受け、騎士はすらりと細身の剣を抜いた。ライファンも自然に下段の構えをとった。
間に立つ審判役の隊長は、この対決には大いに興味があるようすで、二人を交互に見比べた。
「よし、では始め」
掛け声が上がっても、兜の騎士は飛びかかってはこなかった。さっきから見ていた少年の戦い方は、突っ込んでくる相手の剣に狙いを定めて一瞬で下からはね上げるというものだ。うかつに飛び込んでは同じことになると読んだのだろう。
じりじりと間合いを計りながら、騎士は足場を移動した。
ライファンの方はまったく動かない。その目は相手を見ているのだかも分からぬようにじっと地面に注がれている。
二人を囲む他の騎士たちは、固唾をのんでこの対決を見守った。アダラーマ騎士隊において隊長のラガルドとともに、最も剣技に長けているのが、副隊長のレアリーであった。隊長を剛とすれば、副隊長は柔。やわらかで素早く、しなやかだが鋭いその剣さばきは、隊員全員の認めるところであった。
少しずつ足場を移動しながら、相手の隙をうかがう兜の騎士。ライファンもそれに合わせてか、わずかに手にする剣の角度を変える。
ライファンの口からはふうっと息がもれ、その手には力が込められるように血管が浮かんだ。相手の力量を無意識に感じているのだろう。審判をつとめるラガルドは、その様子に感心したようにうなずいていた。
対峙のときは数分にも及ぶかに思われた。太陽は中天に上り、じりじりと騎士たちを照りつける。鎧を着た背中に汗がにじむのを誰もが感じはじめたとき。
「せっ!」
静寂を切り裂くような声とともに、ついに副隊長が突進した。
一瞬の動きで相手のふところに飛び込み、横なぎに剣を繰り出す。もの凄い速さだ。
カッシュ!
ライファンの剣がそれを受けた。
どちらの剣も吹き飛ばなかった。
副隊長は剣を合わせてすぐに、左後ろにとびすさり、さらに左に回った。続けざまに飛び込んでゆく。
ライファンは剣を左手に持ち替えた。
ガッシュ……ガッ!
剣の合わさる響きが数回上がり、見守る騎士たちが「おお」と声を上げる。
兜の騎士は瞬間的に角度を変えては飛び込んで、また飛びのく、という攻撃を繰り返した。ライファンはそれをすべて受け止めたが、相手の素早さに剣をたたき落とすことまではできない。
「すげえや!」
「すごい勝負だ」
わあわあと騎士たちの歓声が上がる。
「さすが副隊長だ」
「でも、あのガキもやるぜ……」
「確かに。副隊長を相手に、まったく互角だぜ」
勝負を見守る騎士たちは、もはや己が敗北した憤りも忘れて、この見事な戦いに引き込まれていった。
はあはあ、とさすがに兜の騎士も肩で息をつきはじめていた。ライファンの方も流れる汗に、胴着の背中にはびっしょりと汗がにじんでいた。重い剣に疲れたように、その剣先を地面に置いた。
騎士はそれを見逃さなかった。
すかさず飛び込んで、細身の剣で右手のゴーントレッドを狙う。
それを待っていたかのように、
ライファンは剣を地面から上向きに突き上げた。
「なにっ」
騎士は瞬間的に、自分の剣を空中に放り投げた。
と、ライファンの剣が空を切る。
飛び上がった騎士は、空中で自分の投げた剣を受けとめると、着地と同時にそのままライファンの剣の鍔めがけて思い切り打ち下ろした。
ガッシーン!
鈍い響きが上がった。
ライファンは 剣を落とした。
「おおっ」と大歓声が上がる。
しかし、
副隊長の手からも剣は失われていた。鍔を打ったあまりの衝撃に、自ら剣を取り落とたのだ。
「ああっ。どっちだ」
「どっちが勝った?」
地面に落ちた二本の剣に、騎士たちはざわめきたった。
剣を吹き飛ばされる前に、自ら剣を投げたという兜の騎士の動きは恐るべきものだったが、剣を取り落とした者が負けるというルールであれば、勝ったのはどちらなのか。
「それまで。勝負あり」
隊長のラガルドが手を挙げた。
「双方引き分け。同時に剣が落ちたのだからな」
そのの判定に、周りの騎士たちはしばらく何も言わなかった。
ラガルドは、呆然とする兜の騎士の肩をぽんと叩いた。ライファンの方はほっとしたように、自分の剣を拾い、鞘に戻していた。
しばらくして騎士たちの誰かか手を叩いた。
「こんな戦い初めてだ……」
「ああ……」
ぱちぱちと、大きな拍手が起こった。
「やるぜ!お前」
「ああ。なんて野郎だ」
「すげえ使い手だ。副隊長と引き分けなんて」
きょとんとするライファンを騎士たちが取り囲んだ。
「おい。お前、いったいどこで剣を習ったんだ」
「いえ……あの」
「こりゃ見習いなんてレベルじゃないぜ。立派な騎士の腕だ」
「はあ。どうも」
次々に述べられる賛辞に、ライファンは照れながら頭を掻くだけだった。
納得のいかない様子で突っ立ったままの副隊長に、ラガルドが声をかけた。
「どうだ?レアリー副隊長。彼の腕は」
「……」
騎士は無言のまま自分の剣を拾った。隊長の問いには答えずに、他の騎士たちに取り囲まれたライファンの方につかつかと歩いてゆく。やれやれ、といった表情で隊長は苦笑した。
「お前。ライファン……とかいったな」
そばに来た副隊長に気づき、騎士たちが道を空ける。
「いい気になるなよ」
ライファンの前に立った兜の騎士は、腰に手を当てて挑むように言った。
「はい?」
「私が勝てなかったからといって。いい気になるな、と言っている」
「はい」
のんびりとした返事にいらいらしたように、騎士は乱暴に兜を脱いだ。長い黒髪がこぼれた。
ライファンは驚いたて相手をみつめていた。兜の下から現れたのは若い女の顔だった。
「副隊長……女の子?」
気の強そうにつり上がった眉。頭の両側で束ねられた髪。ほっそりとしたあごと細い鼻すじ。彼を睨むのは、ライファンと歳の変わらぬくらいの女騎士だったのだ。
汗に濡れた黒髪をうっとおしそうにかき上げて、彼女はライファンを睨んだ。
「確かに、お前の剣は見事だった。しかし、あんなに防御一方では実戦で役に立つはずがない。もう少し攻撃を学ぶのだな」
女騎士はそういって唇を尖らせた。その表情には騎士としての誇りと、新参者になど負けぬという気概がありありと見える。
「はい。ありがとうございます」
ライファンは素直に頭を下げた。女騎士はきゅっと眉を寄せ、
「……私はこの騎士隊の副隊長、レアリー・マスカールだ。今後見知りおくよう」
「はい」
にこにこと答えるライファンに調子が狂ったのか、女騎士はそれ以上怒ることもできずにそのまま踵を返した。
「珍しいな」
「何がです?」
肩越しに隊長に声をかけられ、女騎士は振り返った。
「いや。勝てなかったわりに、お前がくやしそうな顔をしていないなんて」
むっとしたように女騎士は答えた。
「別に。たかが見習い騎士との試合で、いちいち悔しがってもしかたないですから」
「そうか」
「そうです」
隊長のラガルドはにやりと笑い、騎士たちを集合させるために離れていった。
女騎士は、まだしびれている自分の左手にそっと右手を触れた。そして騎士たちに囲まれにこにこと嬉しそうなライファンにちらりと目をやった。
それからは、ライファンはもう立派に騎士隊の一員だった。
はじめの十日ほどで他の騎士たちは、彼が自分の剣を持ってきて稽古をすることに誰も文句を言わなくなった。ライファンは毎朝皆と一緒に稽古で汗を流し、剣を振った。
剣のみならず乗馬の方も彼は思いの外楽々とこなし、ひと月もするころには騎士隊で一二の乗り手になっていた。騎士たちはライファンの見事な剣技と、乗馬やその他に関してもその上達の速さに驚き、感心するばかりだった。
女騎士の方は、しばらくはライファンのことを気に食わなそうに遠目から見ているだけで声をかけたりはしなかった。しかしその後何度か剣の手合わせをするうちに、しだいに毎朝の稽古の最後にライファンと試合をすることが日課のようになりつつあった。
ライファンとの試合はいつもお互い白熱したものとなり、普段ではけっして負けることなど考えられない彼女が唯一本気で戦える瞬間でもあった。周りの騎士たちも毎回二人の対決を楽しみに観戦し、応援し、ときには昼飯を賭けたりもした。
試合はたいがい引き分けに終わることが多かった。その度に女騎士は悔しそうに「明日こそは、次こそは自分が勝つ」と言い残し稽古場を後にするのだった。ライファンの方は試合の前も後も、とくに悔しそうな様子も見せず、女騎士に睨まれかんしゃくをぶつけられたりしても、ただ頭をかいたり、にこにことしているだけだった。
レアリーの方は、はじめそんな相手の様子に不機嫌になったり、侮辱されたように怒っていたが、そのうちに彼のそうした性質に慣れると以前のようには怒らなくなった。どんなときでも大声を上げたり、怒ったりも怒鳴ったりもしない少年を見ていると、一人で勝手に腹を立てているのが馬鹿らしくなる。
そして、やがてに怒る気力も失せた。
女騎士はしだいに、ライファンの存在自体を認めはじめていたようだった。
稽古の後には必ず彼をつかまえ、試合をした。少年と試合をしたいのはいつでも彼女の方だった。そしてもちろん試合に勝てなければ悔しがり、彼女は自分の未熟さに地団太を踏んだ。引き分けの試合の後もくったくなく笑っている少年に、「あんたは勝てなくて悔しくないのか」と指をつきつけて怒り、その後で「さっきの技はどうやったのだ?」と尋ねてもう一度やってもらったりした。
そんなこんなで、二人の剣の実力はみるみるうちに上がっていった。隊長の方はそんな二人の様子を面白そうに見守っていたが、自分ではライファンと剣を交えようとはあえてしなかった。もしかしたらライファンの実力のほどを最も理解していたのは、ほかならぬ隊長ラガルドだったのかもしれない。
秋が終わり、冬が過ぎた。
ここアダラーマ国の気候は一年を通してだいたい温暖で、冬になっても寒さに震えたり食物に困ることはない。人々はおだやかに涼しい冬を過ごし、暖炉の前の薪をくべることは、ほんの数日ほどのことだった。
そうしてまた春がやってくる。
ライファンがこの国に来て、一年がたとうとしていた。
「……というわけだ。皆、今日からこのライファンは我がアダラーマ騎士隊の見習いとして、一緒に学ぶことになった。なにかと分からぬことがあったら色々と教えてやって欲しい。さあ、ライファン、騎士道の体現を目指し、王国のために共に戦おうぞ」
騎士たちに混じって一人だけ初々しい小姓姿で立っていた少年は、隊長に紹介されると、おずおずと隊列の前に進み出た。
「あのー、ライファンです。よろしく」
ぺこりとおじぎをする彼に、騎士たちは一様にひそひそと囁きを交わし、彼の小姓姿やその腰に下げている大剣を見て何事かを言い合う様子だった。
「お前たち。なにをこそこそやっとる。言いたいことがあるのならはっきりと言え。誇りを持ってはきはきと。それが騎士道というものだ」
隊長に一喝され、騎士たちは押し黙った。がっしりとした体格の隊長ラガルドは、剣においては勇猛で国内屈指の使い手で、なおかつ人当たりもよく、騎士隊において全員の尊敬を集めている。
「しかし、隊長」」
「なんだ。意見があるのか。言ってみろ」
進み出た金髪の若い貴族騎士は、ライファンを指さしてつけつけと言った。
「そこの者は、聞くところによるともとは奴隷で、クシュルカ姫に道端で買われてきた卑賤の者だということですが、わが神聖なる騎士隊にそのような身分なき輩が入隊することなど、歴史上かつてありませんでした。はたしてそれでよいのでしょうか」
「よい」
隊長の言葉はいたって明確だった。
「何故なら、彼の騎士隊入りは王女殿下が認められたことだ。騎士隊は王国のため、国王陛下のため、王女殿下のために戦うものだ。したがって、王女殿下がそうと言われるのなら問題はないのである。また侍従長どののご推薦もあったことも付け加えておく。他!」
今度は赤毛のベテラン騎士が手を挙げた。
「リュースか、何だ」
「そのガキ……いや、見習いはずいぶんと立派な剣を持っているが、騎士隊の規則だと見習いの間は自分の剣は持てないことになっているはずだ。たいした実力もないのに適当にぶんぶんと大剣を振り回されては危なくってしかたない。そこのところはどうなんですかい?」
「うむ。……確かに」
隊長は腕を組むと、少年に尋ねた。
「どうだ。見習い騎士は入隊後しばらくは木剣で稽古をするのが普通なのだが」
「はあ」
「その剣はお前には大きすぎるのではないか?」
「はあ……でも」
少年は首をかしげた。
「でも、僕にはちょうどいいみたいですが」
にこにことして言う彼だったが、その態度が逆に騎士たちには気に入らなかったようだ。口々に「生意気だ」「そんな剣をまともに使えるはずがない」などという声が上がった。
「静粛に。静粛にするのだ。静謐と儀礼を重んじる。それこそが騎士道の体現なのだ」
騎士隊長は皆を制し、やがて何事かを思いついたように騎士たちに重々しくうなずきかけた。
「よかろう。ではこうしよう。このライファンの剣の腕を少しためしてみよう。もしそこそこにその大剣を使えるようなら、それを認めることも考えねばなるまい。よいか?ライファン」
「はい」
「では、このライファンと剣の試合をしたい者は?」
居並んだ騎士たちは皆いっせいに手を挙げた。ベテラン騎士も若者も、ライファンと同じくらいの少年騎士も、その顔に自信をみなぎらせて。
「そうだな……ではまずマーカス、お前だ」
「はいっ」
騎士隊長が選んだのは、ライファンよりもいくつか年長の少年騎士だった。実力的には騎士隊のなかで真ん中くらい。隊長はそういう点で丁度いい目安になる者を選んだのだ。
「では二人ともこちらへ」
隊長自らが審判役を買って出ると、二人を向かい合わせた。
「いいか。これは練習試合だ。まず頭部、顔面への攻撃はなしだ。原則として相手の剣を地面に落とした方の勝ちとする。では構え」
兜をかぶり、剣を抜いて構える二人。ライファンは大剣を両手で低く持ち、少年騎士は最近見習いから正式な騎士になって、授かったばかりのぴかぴかの剣を相手に向けてかざした。
「始め」
隊長のかけ声と同時に、少年騎士は剣を振り上げた。
「やれやれ!」
「やっちまえ、マーカス!」
周りの騎士たちから応援の声が上がる。
少年騎士はライファンに向かって、剣を振り下ろした。
カッシーン!
高らかな音が鳴り響いた。
一瞬、二人を取り囲んだ騎士たちは声を失った。くるくると、空中を舞う剣をぽかんと見つめて。
いったい何が起こったのか。剣はそのまま落下し地面に突き刺さった。
ぶるぶると、震えていたのは少年騎士、マーカスだった。
ライファンはきょとんとした様子で、そこに突っ立っていた。
「な……なんだ?今のは……」
「見えなかったけど……」
「何が起こったんだ……」
ざわざわと騎士たちが互いに顔を見合わせる。
「それまで。ライファンの勝ちだ」
隊長がそう告げた。
「そんな馬鹿な……」
「一瞬で……」
信じられないという様子で、少年騎士は自分の手を見て、地面につき立っている剣を見た。そしてがっくりとひざを落とす。
「まぐれだ!」
騎士たちから声が上がった。
「次は俺がやる!」
「よし。いいだろう」
隊長はうなずいた。
「できるか?ライファン」
「はい」
まったく興奮もなにもない声で、ライファンはうなずいた。
「始め」
結果は同じだった。
再び一瞬のうちに、騎士の剣は宙高くはね飛ばされていた。
ベテラン騎士は唇を噛みしめた。
「なんてこった……」
今度のは騎士隊のなかでも五指に入る腕前の騎士だった。それをほんの一撃で負かせてしまったのだ。騎士たちは静まりかえった。
「次は俺が……」
進み出た騎士。うなずく騎士隊長。きょとんとするライファン。
「始め」
さらに再び。剣は空中を舞った。
わずか数秒で。たった一度合わさっただけで、相手の剣が飛ばされる。
何度やっても同じことだった。
次々と指名され、ライファンと剣を交える騎士たちだったが、誰一人として二度と剣を合わせることはできなかった。
「次」
ベテラン騎士も、若者も、少年騎士も、誰もかなわなかった。それどころかまともな剣の打ち合いにもならなかった。あっと言う間の少年の一振りは、おそろしく完璧に相手の剣をたたき落とした。
ライファンは息を乱すことも、試合の後で喜んだりすることもない。ただ飛び込んでくる相手の剣をはね上げ、そして剣を下ろしは無表情で立っているだけだった。きょとんと首をかしげたその様子は、彼自身があるいは、一番自分の剣技に驚いてでもいるようだった。
「すごいな……」
思わずというように隊長がもらした。
すでに騎士隊のほぼ全員、五十名近くが彼の相手をして、敗れていた。
初めのうちは生意気な見習いの少年に痛い目を見せてやるかと、にやにやしていた騎士たちも、十人、二十人、三十人と、少年に負かされてゆくうち、その顔は蒼白になり、なにか信じられないものでも見ているように目をこするのだった。どうやっても誰一人、ただの一度も勝てないのだ。誰にももはや言葉はなかった。その場に座り込んだり、あっけにとられたり、ただただ皆が呆然となっていた。
「次……いないか」
もはや誰も手を挙げるものはなかった。汗もかかず、その手に剣をぶら下げて立っているこの少年に、これ以上誰が立ち向かうというのか。
「そうか。では……」
隊長は皆を見回して、誰も進み出る様子がないのを見ると、ここまでと手を挙げた。
「このライファンの剣の腕を認めて、正式に……」
「待ってください」
隊長の言葉をさえぎって、ずいと進み出た騎士がいた。
「お前か。レアリー」
「おお、副隊長が!」
「副隊長なら、やるかもしれん」
息を吹き返したように、周りの騎士たちはいっせいに声を上げた。アダラーマ騎士隊の副隊長は、絶大な人望があるようだった。
兜をかぶった若い騎士がずかずかとライファンに歩み寄った。
その背丈はさほどでもない。ライファンと同くらいだ。体格も同様にすらっとしてしなやかそうで、身のこなしは優雅といっていいほどだ。
「副隊長ー」
「頑張ってくださいよー。副隊長」
「レアリー副隊長、俺たちの仇をとってくださいよ!」
大きな声援を背中に受け、騎士はすらりと細身の剣を抜いた。ライファンも自然に下段の構えをとった。
間に立つ審判役の隊長は、この対決には大いに興味があるようすで、二人を交互に見比べた。
「よし、では始め」
掛け声が上がっても、兜の騎士は飛びかかってはこなかった。さっきから見ていた少年の戦い方は、突っ込んでくる相手の剣に狙いを定めて一瞬で下からはね上げるというものだ。うかつに飛び込んでは同じことになると読んだのだろう。
じりじりと間合いを計りながら、騎士は足場を移動した。
ライファンの方はまったく動かない。その目は相手を見ているのだかも分からぬようにじっと地面に注がれている。
二人を囲む他の騎士たちは、固唾をのんでこの対決を見守った。アダラーマ騎士隊において隊長のラガルドとともに、最も剣技に長けているのが、副隊長のレアリーであった。隊長を剛とすれば、副隊長は柔。やわらかで素早く、しなやかだが鋭いその剣さばきは、隊員全員の認めるところであった。
少しずつ足場を移動しながら、相手の隙をうかがう兜の騎士。ライファンもそれに合わせてか、わずかに手にする剣の角度を変える。
ライファンの口からはふうっと息がもれ、その手には力が込められるように血管が浮かんだ。相手の力量を無意識に感じているのだろう。審判をつとめるラガルドは、その様子に感心したようにうなずいていた。
対峙のときは数分にも及ぶかに思われた。太陽は中天に上り、じりじりと騎士たちを照りつける。鎧を着た背中に汗がにじむのを誰もが感じはじめたとき。
「せっ!」
静寂を切り裂くような声とともに、ついに副隊長が突進した。
一瞬の動きで相手のふところに飛び込み、横なぎに剣を繰り出す。もの凄い速さだ。
カッシュ!
ライファンの剣がそれを受けた。
どちらの剣も吹き飛ばなかった。
副隊長は剣を合わせてすぐに、左後ろにとびすさり、さらに左に回った。続けざまに飛び込んでゆく。
ライファンは剣を左手に持ち替えた。
ガッシュ……ガッ!
剣の合わさる響きが数回上がり、見守る騎士たちが「おお」と声を上げる。
兜の騎士は瞬間的に角度を変えては飛び込んで、また飛びのく、という攻撃を繰り返した。ライファンはそれをすべて受け止めたが、相手の素早さに剣をたたき落とすことまではできない。
「すげえや!」
「すごい勝負だ」
わあわあと騎士たちの歓声が上がる。
「さすが副隊長だ」
「でも、あのガキもやるぜ……」
「確かに。副隊長を相手に、まったく互角だぜ」
勝負を見守る騎士たちは、もはや己が敗北した憤りも忘れて、この見事な戦いに引き込まれていった。
はあはあ、とさすがに兜の騎士も肩で息をつきはじめていた。ライファンの方も流れる汗に、胴着の背中にはびっしょりと汗がにじんでいた。重い剣に疲れたように、その剣先を地面に置いた。
騎士はそれを見逃さなかった。
すかさず飛び込んで、細身の剣で右手のゴーントレッドを狙う。
それを待っていたかのように、
ライファンは剣を地面から上向きに突き上げた。
「なにっ」
騎士は瞬間的に、自分の剣を空中に放り投げた。
と、ライファンの剣が空を切る。
飛び上がった騎士は、空中で自分の投げた剣を受けとめると、着地と同時にそのままライファンの剣の鍔めがけて思い切り打ち下ろした。
ガッシーン!
鈍い響きが上がった。
ライファンは 剣を落とした。
「おおっ」と大歓声が上がる。
しかし、
副隊長の手からも剣は失われていた。鍔を打ったあまりの衝撃に、自ら剣を取り落とたのだ。
「ああっ。どっちだ」
「どっちが勝った?」
地面に落ちた二本の剣に、騎士たちはざわめきたった。
剣を吹き飛ばされる前に、自ら剣を投げたという兜の騎士の動きは恐るべきものだったが、剣を取り落とした者が負けるというルールであれば、勝ったのはどちらなのか。
「それまで。勝負あり」
隊長のラガルドが手を挙げた。
「双方引き分け。同時に剣が落ちたのだからな」
そのの判定に、周りの騎士たちはしばらく何も言わなかった。
ラガルドは、呆然とする兜の騎士の肩をぽんと叩いた。ライファンの方はほっとしたように、自分の剣を拾い、鞘に戻していた。
しばらくして騎士たちの誰かか手を叩いた。
「こんな戦い初めてだ……」
「ああ……」
ぱちぱちと、大きな拍手が起こった。
「やるぜ!お前」
「ああ。なんて野郎だ」
「すげえ使い手だ。副隊長と引き分けなんて」
きょとんとするライファンを騎士たちが取り囲んだ。
「おい。お前、いったいどこで剣を習ったんだ」
「いえ……あの」
「こりゃ見習いなんてレベルじゃないぜ。立派な騎士の腕だ」
「はあ。どうも」
次々に述べられる賛辞に、ライファンは照れながら頭を掻くだけだった。
納得のいかない様子で突っ立ったままの副隊長に、ラガルドが声をかけた。
「どうだ?レアリー副隊長。彼の腕は」
「……」
騎士は無言のまま自分の剣を拾った。隊長の問いには答えずに、他の騎士たちに取り囲まれたライファンの方につかつかと歩いてゆく。やれやれ、といった表情で隊長は苦笑した。
「お前。ライファン……とかいったな」
そばに来た副隊長に気づき、騎士たちが道を空ける。
「いい気になるなよ」
ライファンの前に立った兜の騎士は、腰に手を当てて挑むように言った。
「はい?」
「私が勝てなかったからといって。いい気になるな、と言っている」
「はい」
のんびりとした返事にいらいらしたように、騎士は乱暴に兜を脱いだ。長い黒髪がこぼれた。
ライファンは驚いたて相手をみつめていた。兜の下から現れたのは若い女の顔だった。
「副隊長……女の子?」
気の強そうにつり上がった眉。頭の両側で束ねられた髪。ほっそりとしたあごと細い鼻すじ。彼を睨むのは、ライファンと歳の変わらぬくらいの女騎士だったのだ。
汗に濡れた黒髪をうっとおしそうにかき上げて、彼女はライファンを睨んだ。
「確かに、お前の剣は見事だった。しかし、あんなに防御一方では実戦で役に立つはずがない。もう少し攻撃を学ぶのだな」
女騎士はそういって唇を尖らせた。その表情には騎士としての誇りと、新参者になど負けぬという気概がありありと見える。
「はい。ありがとうございます」
ライファンは素直に頭を下げた。女騎士はきゅっと眉を寄せ、
「……私はこの騎士隊の副隊長、レアリー・マスカールだ。今後見知りおくよう」
「はい」
にこにこと答えるライファンに調子が狂ったのか、女騎士はそれ以上怒ることもできずにそのまま踵を返した。
「珍しいな」
「何がです?」
肩越しに隊長に声をかけられ、女騎士は振り返った。
「いや。勝てなかったわりに、お前がくやしそうな顔をしていないなんて」
むっとしたように女騎士は答えた。
「別に。たかが見習い騎士との試合で、いちいち悔しがってもしかたないですから」
「そうか」
「そうです」
隊長のラガルドはにやりと笑い、騎士たちを集合させるために離れていった。
女騎士は、まだしびれている自分の左手にそっと右手を触れた。そして騎士たちに囲まれにこにこと嬉しそうなライファンにちらりと目をやった。
それからは、ライファンはもう立派に騎士隊の一員だった。
はじめの十日ほどで他の騎士たちは、彼が自分の剣を持ってきて稽古をすることに誰も文句を言わなくなった。ライファンは毎朝皆と一緒に稽古で汗を流し、剣を振った。
剣のみならず乗馬の方も彼は思いの外楽々とこなし、ひと月もするころには騎士隊で一二の乗り手になっていた。騎士たちはライファンの見事な剣技と、乗馬やその他に関してもその上達の速さに驚き、感心するばかりだった。
女騎士の方は、しばらくはライファンのことを気に食わなそうに遠目から見ているだけで声をかけたりはしなかった。しかしその後何度か剣の手合わせをするうちに、しだいに毎朝の稽古の最後にライファンと試合をすることが日課のようになりつつあった。
ライファンとの試合はいつもお互い白熱したものとなり、普段ではけっして負けることなど考えられない彼女が唯一本気で戦える瞬間でもあった。周りの騎士たちも毎回二人の対決を楽しみに観戦し、応援し、ときには昼飯を賭けたりもした。
試合はたいがい引き分けに終わることが多かった。その度に女騎士は悔しそうに「明日こそは、次こそは自分が勝つ」と言い残し稽古場を後にするのだった。ライファンの方は試合の前も後も、とくに悔しそうな様子も見せず、女騎士に睨まれかんしゃくをぶつけられたりしても、ただ頭をかいたり、にこにことしているだけだった。
レアリーの方は、はじめそんな相手の様子に不機嫌になったり、侮辱されたように怒っていたが、そのうちに彼のそうした性質に慣れると以前のようには怒らなくなった。どんなときでも大声を上げたり、怒ったりも怒鳴ったりもしない少年を見ていると、一人で勝手に腹を立てているのが馬鹿らしくなる。
そして、やがてに怒る気力も失せた。
女騎士はしだいに、ライファンの存在自体を認めはじめていたようだった。
稽古の後には必ず彼をつかまえ、試合をした。少年と試合をしたいのはいつでも彼女の方だった。そしてもちろん試合に勝てなければ悔しがり、彼女は自分の未熟さに地団太を踏んだ。引き分けの試合の後もくったくなく笑っている少年に、「あんたは勝てなくて悔しくないのか」と指をつきつけて怒り、その後で「さっきの技はどうやったのだ?」と尋ねてもう一度やってもらったりした。
そんなこんなで、二人の剣の実力はみるみるうちに上がっていった。隊長の方はそんな二人の様子を面白そうに見守っていたが、自分ではライファンと剣を交えようとはあえてしなかった。もしかしたらライファンの実力のほどを最も理解していたのは、ほかならぬ隊長ラガルドだったのかもしれない。
秋が終わり、冬が過ぎた。
ここアダラーマ国の気候は一年を通してだいたい温暖で、冬になっても寒さに震えたり食物に困ることはない。人々はおだやかに涼しい冬を過ごし、暖炉の前の薪をくべることは、ほんの数日ほどのことだった。
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ライファンがこの国に来て、一年がたとうとしていた。
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