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1.王女との出会い
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少年はぴくりとも動かず、檻の中に横たわっていた。
ひどくせまい檻だった。後ろ手に両腕を木製の枷にはめられ、身を折るようにして、彼はただじっとそこに横たわっている。
その顔は死んだように青白く、眉を寄せた苦悶の表情のまま凍りついたかのようだ。ときおりかすかな吐息がその唇からもれるのが、少年がまだ生きているという証であった。
覆いかけられたボロ布を通して、檻の中にうっすらと光が差し込む。すると、ゆっくりと、少年が寝返りを打った。といっても、人一人がかろうじて入れるくらいの狭い檻だ。かちんと鉄製の柵に膝をぶつけながら。
いったい彼は、幾度こうしてこの檻の中で朝を迎えたのだろう。
「う……ん」
可愛らしい口から声がもれた。しかしまだその瞼は閉じられたままだ。上を向いたその顔が、差し込む朝の光に照らされ、亜麻色の髪がきらきらと光った。
歳は十四、五歳、というところだろう。なめらかな白い肌に、肩の上までかかる髪。着ているものは粗末なグレーの胴着とズボンだけで、靴ははいていない。あどけなさも残した顔は、歳相応に少年めいてはいたが、目立つのは、右頬から左の頬にかけて長い傷痕があることだった。いや、よく見れば顔だけではない、胴着から出した腕や、足にも無数のあざや擦り傷の痕がある。中にはまだ生々しい、血のにじんだ新しい傷もあった。
「うう……んん」
夢でも見ているのか、少年の顔が苦悶に歪んだ。ぴくりとその手が動く。
「いつまで寝ていやがるんだ。起きろ!ガキ」
いきなり、頭上から男の怒声が降り注ぎ、檻にかけられた布がはずされた。
日の光が直接当たって、少年はまぶしそうに手のひらをかざした。
「起きろってんだよ。さっさとしねえかこの馬鹿!」
怒鳴り声とともに、がつんと檻が蹴られた。
「……んん」
ようやく少年は目を開いた。空色の瞳を何度かまたたいて。。
「そろそろ市が始まる。いいか。今日中に売れなかったら、てめえはきざまれてガウの餌だ。分かったか」
いらついたような男の声に、少年はのろのろと上体を起こすと、ぼんやりと檻の外を見た。
さっきからしきりに怒鳴っているのは、そういえば見覚えのある男だった。あまり好きではない。いつもこうやって乱暴に起こされるのだ。
少年は眠たそうにあくびをしながら、今や見慣れてしまったその景色に目をやった。
通りの両側にはすでに組みおえられた露店が立ち並び、がやがやとした喧騒の空気とともに、多くの人々の往来が始まっている。少年のいる檻もそんな露店の一つだ。食べ物や、服や、あやしげな宝石などを売る店に混じって、同じように檻に入れられた少年、少女の姿もそこかしこで見られる。
アダラーマ国の朝市。にぎやかな、いつもの朝がすっかり始まっていた。
だが檻の中の少年は、それら通りの様子にはとくに興味もなさそうに、本日何度目かのあくびをした。
「なんだ、ガキ。その態度は……」
男はまた怒鳴ろうとしかけたが、客の往来が増えた手前、いくぶん声をやわらかくした。
「ほら、とっととその髪をとかせ。にっこり笑うんだぞ。いいか。てめえは大事な商品なんだからな。高く、高ーく、売れればそれだけてめえもいい金持ちの家に行けるってことだ。そしてこの俺も儲かって、万々歳。いいか、にっこりと、可愛らしく笑うんだぞ。お客が通りかかる度にだ。こんな風に」
にいいっ、と不気味に笑った髭面の男は、檻の中に櫛を放り込んだ。少年は、仕方なさそうに櫛をひろうと、髪をとかし始めた。そうしておけば、少なくとも食事はもらえるのだから。
男は満足げにうなずくと、檻の前に腰掛けて、手を叩きながら威勢よく呼び込みを始めた。
「さあ、寄ってらっしゃい。可愛い少年奴隷だよ。働き者で、性格は素直。歳の頃は十四歳。つるつるの肌に青いお目目。小姓にもってこいの美少年だよ。さあ寄ってらっしゃい」
男の声をぼんやりと聞きながら、少年はまたあくびをした。他にすることもないとばかりに。
日が昇るにつれて、じりじりした日差しが檻を照りつける。まだ昼前だというのに、檻のなかは大変な暑さだ。
「あのう……水下さい」
おずおずと男の背中に声をかけた少年に、
「なんだと?」
男はカッと睨んだ。
「今なんていった?」
「は?……いえ、ですから水を」
少年はにこにこと可愛らしい笑顔で繰り返した。
「ふざけるな」
男が声を荒らげた。通行人たちが立ち止まってこちらを振り返ると、あわてて筋肉の笑みをつくり、
「いかがです?若く綺麗な少年奴隷。只今格安五千ルナでお買い得!」
そう、お決まりの台詞を述べるも、人々は興味もなさそうにまた歩き出す。男はしかめ面に戻ると、ぎろりと少年を睨んだ。
「てめえ」
「あの……水」
「うるせえ。この馬鹿。あのなあ、てめえは、ちゃんと売れる気があるのか?いったい何人が立ち止まって、お前を見た?」
「ええと……二人くらいですかね」
「そうだ!数時間でたった二人だ。本来ならなあおまえくらいの歳で、そこそこツラがよけりゃあ奴隷の買い手なんてすぐに付くんだよ」
「……」
「ったく、今日でもう何日目だ。俺はな、とっととてめえを売った金でラダックを買って、砂漠を越え、花とオアシスの町セードルで、のんびりと女に囲まれて暮らしたいんだ。その計画だった。しかし、お前は、……めっきり売れない」
口をゆがめて男は嘆いた。
「はあ……すいませんねえ」
少年は頭をかいた。男はいまいましげに檻をがつんと蹴り上げる。
「それだ。てめえはそこそこツラが良くて、どっかの女主人なら喜んで奴隷か下働きかに買っていくはずなんだ。だが、なぜか……そうだ。そのてめえの奇妙に落ちつきはらった、なんつうか、ふざけた態度、顔つき、とぼけた声が気に食わないんだ。そうにきまってやがる。可愛げがねえというのか、小憎らしいというのか」
「ははあ……」
少年はちょこんと首をかしげた。
「あああ。ちくしょう。今日もまた売れねえのか。今日もまた下町の安酒屋で水で薄めたワインをしなびたカビつきチーズをちぎりながら、ちまちまと飲まなきゃならねえのか。あああ」
「まあそう気を落とさずに。まだお昼前ですし。そのうちに売れますよ」
のんびりと言う少年に、男はわなわなと震える指をつきつける。
「あああ、なんなんだ!それが売りに出された奴隷の言葉か。なんで俺が、貴様からなぐさめられなきゃならねえんだ。奴隷のガキなんかに!あああ」
頭を抱えて首を振る。そうしているうちだんだんとまた腹がたってきたのか、男が再び檻を蹴りつけようかと立ち上がったとき。
「もし」
声に振り返ると、露店の前に女が一人立っていた。
「もし。そこの少年はおいくらですか?」
とたんに男の目が輝いた。
よく見ると、女はまだ若いがたいそう綺麗な身なりをした美人だった。
男は身を乗り出した。女性はたじろいだ様子もなく、気品あるやわらかな笑みが浮かんでいる。
男は「これはいける」と、さっそく売り込みを始めた。
「お客さん。お目が高い。この少年。歳の頃は十四歳。見てください、白い肌に亜麻色の髪、すらっとした手足は掃除洗濯お茶汲み、その他なんでもオーケー。性格は従順かつ素直、小鳥のような美しい声は毎夜貴女のために愛の歌を歌い、軽い身のこなしでよろける貴女を支え、しなやかに馬車を御し、芋の皮さえむくのです。もちろんその他、どんな言いつけでも守ります」
「ふああ」とまた少年があくびをした。男が睨みつけると、あわてて檻のなかで正座し、彼はにこにこと微笑んだ。
「どうです?可愛らしいでしょう?お買い得ですぜ。奥さん」
「いいえ。奥さんではありませんわ、私は。ただのお付きの女官です」
「ほう……」
男はあごに手を当てて考える。女官だって?……てえことはだ。この女のご主人様はたいそうな大金持ち。そうにちげえねえ、とにやりと笑みを作り、
「よろしい。特別に一万ルナでお売りしましょう」
「一万……」
女はさほど驚いた様子もなく、檻の少年を値踏みするようにじっと見た。
一万ルナといえば奴隷一人の代金としては法外だ。それなら馬もラダックも最高のものが買えてしまう。
「ちょっとお待ちを。姫さま……いえ、私の女主人様にうかがってまいります」
そう言うと、女はいそいそと往来の方へ戻っていった。
人々でにぎわう通りの向かいの狭い路地に、天蓋付きの立派な馬車がとめられていた。女はビロードの窓布がかけられた車の中に顔を入れ、誰かと話をする様子だった。
「へっへ。こりゃそうとうな富豪の女主人かなにかだぜ。一万ルナって言っても眉ひとすじ動かしやしねえ。こいつはとんだ大ラッキー、ってなもんよ」
男は舌なめずりしながら、女が戻るのを待った。
「いいか、よけいなことを言うなよ」
「はい」
檻の少年は素直に答えたが、男はもう一度凄みを効かせて睨んでおいた。
しばらくして女が戻ってきた。その後ろにはもう一人、ヴェールで顔を隠した女性を連れて。
「お待たせしました。ただいま私の主とお話をいたしまして、直接少年を見たいと申されましたのでお連れいたしました。さ、姫」
ヴェールの女性が少年の檻の前に立った。こうして見ると、その服装は連れの女官などよりもずっと手の込んだ高価なもので、白いサテンのドレスには数えきれないほどの真珠が縫い込まれ、肩に掛かった薄紅のショールには金糸のししゅうが細密にほどこされている。手袋は薄い絹地で、その細い可憐な手が透けて見えるほどだった。
男は思わず息を呑んだ。
(こりゃ……とんでもねえ金持ちか……もしかすると)
その女性がゆっくりとヴェールをはずした。プラチナの髪が陽光のもとで輝いた。
「姫様……よろしいのですか」
女官にうなずきかけると、女性は檻のなかの少年にまっすぐに顔を向けた。
なにかに気づいたのか、男は少女を指さした。
「あ……あんた……もしや」
「しっ」
驚く男を女官が制した。
「お、おい……この、この御方は……まさか」
「お黙りなさい。往来の人々に聞こえてしまうでしょう」
「ああ……ああ、でも……あんた……いやあなた様は……」
「さあ、姫様。もうよろしいでしょう」
「もうちょっと待って、セナ」
可愛らしい声で少女は女官の名を呼んだ。
ヴェールの下のその顔は、まだ少女といってもよい年齢に見えるが……、つんとあごを持ち上げ相手を見るその表情には類まれな気高さがあった。少女はこの年齢にしてすでに、美しくも高貴な、特別な空気をまとっていた。
口をぽかんと開け、男は少女を見てつぶやいた。
「し、知ってるぞ。いくらよそものの俺だって。……あんたは……本物のおうじょ……」
「お黙りなさいというのに。これだからしもじもの民は……」
「往来から、こちらを見ている通行人が増えているのを気にして、女官は言った。
「さ、姫様、騒ぎが大きくなりますので、お早く」
女官の方は、連れの少女よりもいくつか年上のようだった。確かに品もよく、長い黒髪を結い上げた相当の美人であるが、少女のもつ特別な気品とは根本的に違うものであった。
「……」
少女は、檻のなかにちょこんと座っている少年を見つめていた。少年の方も、突然現れたこの銀色の髪の少女を不思議そうに見つめる。
それにしても、なんと美しい少女だろう。歳はきっと、十五、六歳というところだろう。陽光にきらきらと輝く髪は、そのものがまるでプラチナか銀糸でできているようだ。白い肌はなめらかな絹のようで、湖のように透き通った瞳は、まだ少女と女性の境目にあるように無垢な好奇心に輝いている。その可愛らしいサンゴ色の唇は、これから数年もすれば、たった一回の祝福の口づけのために、命をかける数百人の騎士が集まるのだろうと思わせた。
アザレアの花のように、美しく、気高くも慈愛に満ちたまなざしをもった、そんな少女が、まるで陽光のように微笑んだ。
うっすらと、その頬を紅潮させながら、
「決めたわ。セナ」
そう告げると、男の方を振り向き、
「一万ルナでよろしいのですね」
「お……おお。よろしいようで」
直接声をかけられて、緊張に男は直立した。
「じゃあ、セナ」
「はい。姫様」
女官は仕方なさそうにため息をついて、懐から中身の詰まった革袋をとりだした。
じゃらじゃらと音をたてて金貨が机の上にこぼれた。男は目を丸くした。こんな大金は生まれてから見たことがない。
「では金貨で百枚。一万ルナを……」
「あ、ああ……はい」
男は平静を装うように、金貨と女官の持つ金袋とを見比べた。そしてなにやら考えついたのか、ひとつ咳払いをすると、
「いやちょいと、お待ちを」
「なにか?」
「いえね……へへへ。その……この少年には実は持ち物がありまして」
男はい女官を横目に、いやらしそうににやにやと笑みを作った。
「持ち物……ですって?」
「ええ。そうでさ。ほれ、そこの大きな剣」
男が店の隅を指さした。棚に並んだあやしげな首飾りや彫刻などと一緒に、薄汚れた大きな鞘入りの剣があった。
「あれは、このガキ……、いいえ子供と一緒にあったものでして。一万ルナというのはその少年のみの値段。この剣の方はですね……」
「いくらなの?」
「へえ。五千ルナでさ」
「それはひどいわ」
女官は口を引き結んだ。
「姫様。だまされてはいけませんよ。このサギ師に。あんなボロ剣をついでに押しつけて儲けようっていう悪巧みに違いないわ」
「いいえ。そんなことはございません。あの剣はこの少年にとって命のようなもの。親の形見も同然。引き離してはいけません。この剣と離れたらきっと少年は悲嘆のあまり飯ものどを通らず痩せ細り、やがては死んでしまうでしょう。ああなんということだ」
男はわざとらしく両手で頭を抱えてみせた。
「セナ。じゃあその剣も一緒に……」
「いけませんよ。姫。こんな山師の手に乗っては。こちらにお金があるのを見てとっさに作った嘘に決まってます」
「いいええ。そんなことは決して。俺……いえ私は善良な奴隷売り。嘘をついたことなどは、シンフォニアの大神デッラ・ルーナに誓ってございません」
男は両手を組み合わせ、殊勝な面持ちで頭をたれる。
「今なら少年と剣をセットで、今ならきっかり一万二千ルナ。いかがです」
「なんてやつなの。姫様、帰りましょう」
女官はあきれたように金袋の紐を締め直すと、少女の手を取り店を出ようとした。
「こんな店よりもっとましな奴隷はいくらもいるでしょう。さ」
「待って。セナ」
少女が引き止めた。一瞬だけ檻のなかの少年と目が合ったのだ。
なにを思ったか、彼女はそのままかがみこんで、覗き込むように少年の顔を見た。
「ねえ……あなた」
やさしく問いかける。
「本当なの?あの剣が一緒じゃないといやかしら?」
少年はちらりと剣の方を見てから、ぽりぽりと頭をかいた。横から男が熱い視線を送ってくるのが分かる。
「はい」
しばらくして、少年はこくりとうなずいた。
「あの剣がないと、僕は少し困ります」
男は「かあーっ、そんな言い方じゃ押しが弱いんだよっ」といわんばかりに歯をむき出した。
少女はすっと立つと、女官を振り返った。男は、はらはらとそれを見守る。
「私のおこずかい。ひと月ぶん消えてしまうわね」
くすりと笑って言った。 それを聞くなり男は歓喜に拳を突き上げた。女官はため息である。
こうして、少年は檻を出ることになった。
アダラーマ王国の第一王女、クシュルカ姫に買われて。
ひどくせまい檻だった。後ろ手に両腕を木製の枷にはめられ、身を折るようにして、彼はただじっとそこに横たわっている。
その顔は死んだように青白く、眉を寄せた苦悶の表情のまま凍りついたかのようだ。ときおりかすかな吐息がその唇からもれるのが、少年がまだ生きているという証であった。
覆いかけられたボロ布を通して、檻の中にうっすらと光が差し込む。すると、ゆっくりと、少年が寝返りを打った。といっても、人一人がかろうじて入れるくらいの狭い檻だ。かちんと鉄製の柵に膝をぶつけながら。
いったい彼は、幾度こうしてこの檻の中で朝を迎えたのだろう。
「う……ん」
可愛らしい口から声がもれた。しかしまだその瞼は閉じられたままだ。上を向いたその顔が、差し込む朝の光に照らされ、亜麻色の髪がきらきらと光った。
歳は十四、五歳、というところだろう。なめらかな白い肌に、肩の上までかかる髪。着ているものは粗末なグレーの胴着とズボンだけで、靴ははいていない。あどけなさも残した顔は、歳相応に少年めいてはいたが、目立つのは、右頬から左の頬にかけて長い傷痕があることだった。いや、よく見れば顔だけではない、胴着から出した腕や、足にも無数のあざや擦り傷の痕がある。中にはまだ生々しい、血のにじんだ新しい傷もあった。
「うう……んん」
夢でも見ているのか、少年の顔が苦悶に歪んだ。ぴくりとその手が動く。
「いつまで寝ていやがるんだ。起きろ!ガキ」
いきなり、頭上から男の怒声が降り注ぎ、檻にかけられた布がはずされた。
日の光が直接当たって、少年はまぶしそうに手のひらをかざした。
「起きろってんだよ。さっさとしねえかこの馬鹿!」
怒鳴り声とともに、がつんと檻が蹴られた。
「……んん」
ようやく少年は目を開いた。空色の瞳を何度かまたたいて。。
「そろそろ市が始まる。いいか。今日中に売れなかったら、てめえはきざまれてガウの餌だ。分かったか」
いらついたような男の声に、少年はのろのろと上体を起こすと、ぼんやりと檻の外を見た。
さっきからしきりに怒鳴っているのは、そういえば見覚えのある男だった。あまり好きではない。いつもこうやって乱暴に起こされるのだ。
少年は眠たそうにあくびをしながら、今や見慣れてしまったその景色に目をやった。
通りの両側にはすでに組みおえられた露店が立ち並び、がやがやとした喧騒の空気とともに、多くの人々の往来が始まっている。少年のいる檻もそんな露店の一つだ。食べ物や、服や、あやしげな宝石などを売る店に混じって、同じように檻に入れられた少年、少女の姿もそこかしこで見られる。
アダラーマ国の朝市。にぎやかな、いつもの朝がすっかり始まっていた。
だが檻の中の少年は、それら通りの様子にはとくに興味もなさそうに、本日何度目かのあくびをした。
「なんだ、ガキ。その態度は……」
男はまた怒鳴ろうとしかけたが、客の往来が増えた手前、いくぶん声をやわらかくした。
「ほら、とっととその髪をとかせ。にっこり笑うんだぞ。いいか。てめえは大事な商品なんだからな。高く、高ーく、売れればそれだけてめえもいい金持ちの家に行けるってことだ。そしてこの俺も儲かって、万々歳。いいか、にっこりと、可愛らしく笑うんだぞ。お客が通りかかる度にだ。こんな風に」
にいいっ、と不気味に笑った髭面の男は、檻の中に櫛を放り込んだ。少年は、仕方なさそうに櫛をひろうと、髪をとかし始めた。そうしておけば、少なくとも食事はもらえるのだから。
男は満足げにうなずくと、檻の前に腰掛けて、手を叩きながら威勢よく呼び込みを始めた。
「さあ、寄ってらっしゃい。可愛い少年奴隷だよ。働き者で、性格は素直。歳の頃は十四歳。つるつるの肌に青いお目目。小姓にもってこいの美少年だよ。さあ寄ってらっしゃい」
男の声をぼんやりと聞きながら、少年はまたあくびをした。他にすることもないとばかりに。
日が昇るにつれて、じりじりした日差しが檻を照りつける。まだ昼前だというのに、檻のなかは大変な暑さだ。
「あのう……水下さい」
おずおずと男の背中に声をかけた少年に、
「なんだと?」
男はカッと睨んだ。
「今なんていった?」
「は?……いえ、ですから水を」
少年はにこにこと可愛らしい笑顔で繰り返した。
「ふざけるな」
男が声を荒らげた。通行人たちが立ち止まってこちらを振り返ると、あわてて筋肉の笑みをつくり、
「いかがです?若く綺麗な少年奴隷。只今格安五千ルナでお買い得!」
そう、お決まりの台詞を述べるも、人々は興味もなさそうにまた歩き出す。男はしかめ面に戻ると、ぎろりと少年を睨んだ。
「てめえ」
「あの……水」
「うるせえ。この馬鹿。あのなあ、てめえは、ちゃんと売れる気があるのか?いったい何人が立ち止まって、お前を見た?」
「ええと……二人くらいですかね」
「そうだ!数時間でたった二人だ。本来ならなあおまえくらいの歳で、そこそこツラがよけりゃあ奴隷の買い手なんてすぐに付くんだよ」
「……」
「ったく、今日でもう何日目だ。俺はな、とっととてめえを売った金でラダックを買って、砂漠を越え、花とオアシスの町セードルで、のんびりと女に囲まれて暮らしたいんだ。その計画だった。しかし、お前は、……めっきり売れない」
口をゆがめて男は嘆いた。
「はあ……すいませんねえ」
少年は頭をかいた。男はいまいましげに檻をがつんと蹴り上げる。
「それだ。てめえはそこそこツラが良くて、どっかの女主人なら喜んで奴隷か下働きかに買っていくはずなんだ。だが、なぜか……そうだ。そのてめえの奇妙に落ちつきはらった、なんつうか、ふざけた態度、顔つき、とぼけた声が気に食わないんだ。そうにきまってやがる。可愛げがねえというのか、小憎らしいというのか」
「ははあ……」
少年はちょこんと首をかしげた。
「あああ。ちくしょう。今日もまた売れねえのか。今日もまた下町の安酒屋で水で薄めたワインをしなびたカビつきチーズをちぎりながら、ちまちまと飲まなきゃならねえのか。あああ」
「まあそう気を落とさずに。まだお昼前ですし。そのうちに売れますよ」
のんびりと言う少年に、男はわなわなと震える指をつきつける。
「あああ、なんなんだ!それが売りに出された奴隷の言葉か。なんで俺が、貴様からなぐさめられなきゃならねえんだ。奴隷のガキなんかに!あああ」
頭を抱えて首を振る。そうしているうちだんだんとまた腹がたってきたのか、男が再び檻を蹴りつけようかと立ち上がったとき。
「もし」
声に振り返ると、露店の前に女が一人立っていた。
「もし。そこの少年はおいくらですか?」
とたんに男の目が輝いた。
よく見ると、女はまだ若いがたいそう綺麗な身なりをした美人だった。
男は身を乗り出した。女性はたじろいだ様子もなく、気品あるやわらかな笑みが浮かんでいる。
男は「これはいける」と、さっそく売り込みを始めた。
「お客さん。お目が高い。この少年。歳の頃は十四歳。見てください、白い肌に亜麻色の髪、すらっとした手足は掃除洗濯お茶汲み、その他なんでもオーケー。性格は従順かつ素直、小鳥のような美しい声は毎夜貴女のために愛の歌を歌い、軽い身のこなしでよろける貴女を支え、しなやかに馬車を御し、芋の皮さえむくのです。もちろんその他、どんな言いつけでも守ります」
「ふああ」とまた少年があくびをした。男が睨みつけると、あわてて檻のなかで正座し、彼はにこにこと微笑んだ。
「どうです?可愛らしいでしょう?お買い得ですぜ。奥さん」
「いいえ。奥さんではありませんわ、私は。ただのお付きの女官です」
「ほう……」
男はあごに手を当てて考える。女官だって?……てえことはだ。この女のご主人様はたいそうな大金持ち。そうにちげえねえ、とにやりと笑みを作り、
「よろしい。特別に一万ルナでお売りしましょう」
「一万……」
女はさほど驚いた様子もなく、檻の少年を値踏みするようにじっと見た。
一万ルナといえば奴隷一人の代金としては法外だ。それなら馬もラダックも最高のものが買えてしまう。
「ちょっとお待ちを。姫さま……いえ、私の女主人様にうかがってまいります」
そう言うと、女はいそいそと往来の方へ戻っていった。
人々でにぎわう通りの向かいの狭い路地に、天蓋付きの立派な馬車がとめられていた。女はビロードの窓布がかけられた車の中に顔を入れ、誰かと話をする様子だった。
「へっへ。こりゃそうとうな富豪の女主人かなにかだぜ。一万ルナって言っても眉ひとすじ動かしやしねえ。こいつはとんだ大ラッキー、ってなもんよ」
男は舌なめずりしながら、女が戻るのを待った。
「いいか、よけいなことを言うなよ」
「はい」
檻の少年は素直に答えたが、男はもう一度凄みを効かせて睨んでおいた。
しばらくして女が戻ってきた。その後ろにはもう一人、ヴェールで顔を隠した女性を連れて。
「お待たせしました。ただいま私の主とお話をいたしまして、直接少年を見たいと申されましたのでお連れいたしました。さ、姫」
ヴェールの女性が少年の檻の前に立った。こうして見ると、その服装は連れの女官などよりもずっと手の込んだ高価なもので、白いサテンのドレスには数えきれないほどの真珠が縫い込まれ、肩に掛かった薄紅のショールには金糸のししゅうが細密にほどこされている。手袋は薄い絹地で、その細い可憐な手が透けて見えるほどだった。
男は思わず息を呑んだ。
(こりゃ……とんでもねえ金持ちか……もしかすると)
その女性がゆっくりとヴェールをはずした。プラチナの髪が陽光のもとで輝いた。
「姫様……よろしいのですか」
女官にうなずきかけると、女性は檻のなかの少年にまっすぐに顔を向けた。
なにかに気づいたのか、男は少女を指さした。
「あ……あんた……もしや」
「しっ」
驚く男を女官が制した。
「お、おい……この、この御方は……まさか」
「お黙りなさい。往来の人々に聞こえてしまうでしょう」
「ああ……ああ、でも……あんた……いやあなた様は……」
「さあ、姫様。もうよろしいでしょう」
「もうちょっと待って、セナ」
可愛らしい声で少女は女官の名を呼んだ。
ヴェールの下のその顔は、まだ少女といってもよい年齢に見えるが……、つんとあごを持ち上げ相手を見るその表情には類まれな気高さがあった。少女はこの年齢にしてすでに、美しくも高貴な、特別な空気をまとっていた。
口をぽかんと開け、男は少女を見てつぶやいた。
「し、知ってるぞ。いくらよそものの俺だって。……あんたは……本物のおうじょ……」
「お黙りなさいというのに。これだからしもじもの民は……」
「往来から、こちらを見ている通行人が増えているのを気にして、女官は言った。
「さ、姫様、騒ぎが大きくなりますので、お早く」
女官の方は、連れの少女よりもいくつか年上のようだった。確かに品もよく、長い黒髪を結い上げた相当の美人であるが、少女のもつ特別な気品とは根本的に違うものであった。
「……」
少女は、檻のなかにちょこんと座っている少年を見つめていた。少年の方も、突然現れたこの銀色の髪の少女を不思議そうに見つめる。
それにしても、なんと美しい少女だろう。歳はきっと、十五、六歳というところだろう。陽光にきらきらと輝く髪は、そのものがまるでプラチナか銀糸でできているようだ。白い肌はなめらかな絹のようで、湖のように透き通った瞳は、まだ少女と女性の境目にあるように無垢な好奇心に輝いている。その可愛らしいサンゴ色の唇は、これから数年もすれば、たった一回の祝福の口づけのために、命をかける数百人の騎士が集まるのだろうと思わせた。
アザレアの花のように、美しく、気高くも慈愛に満ちたまなざしをもった、そんな少女が、まるで陽光のように微笑んだ。
うっすらと、その頬を紅潮させながら、
「決めたわ。セナ」
そう告げると、男の方を振り向き、
「一万ルナでよろしいのですね」
「お……おお。よろしいようで」
直接声をかけられて、緊張に男は直立した。
「じゃあ、セナ」
「はい。姫様」
女官は仕方なさそうにため息をついて、懐から中身の詰まった革袋をとりだした。
じゃらじゃらと音をたてて金貨が机の上にこぼれた。男は目を丸くした。こんな大金は生まれてから見たことがない。
「では金貨で百枚。一万ルナを……」
「あ、ああ……はい」
男は平静を装うように、金貨と女官の持つ金袋とを見比べた。そしてなにやら考えついたのか、ひとつ咳払いをすると、
「いやちょいと、お待ちを」
「なにか?」
「いえね……へへへ。その……この少年には実は持ち物がありまして」
男はい女官を横目に、いやらしそうににやにやと笑みを作った。
「持ち物……ですって?」
「ええ。そうでさ。ほれ、そこの大きな剣」
男が店の隅を指さした。棚に並んだあやしげな首飾りや彫刻などと一緒に、薄汚れた大きな鞘入りの剣があった。
「あれは、このガキ……、いいえ子供と一緒にあったものでして。一万ルナというのはその少年のみの値段。この剣の方はですね……」
「いくらなの?」
「へえ。五千ルナでさ」
「それはひどいわ」
女官は口を引き結んだ。
「姫様。だまされてはいけませんよ。このサギ師に。あんなボロ剣をついでに押しつけて儲けようっていう悪巧みに違いないわ」
「いいえ。そんなことはございません。あの剣はこの少年にとって命のようなもの。親の形見も同然。引き離してはいけません。この剣と離れたらきっと少年は悲嘆のあまり飯ものどを通らず痩せ細り、やがては死んでしまうでしょう。ああなんということだ」
男はわざとらしく両手で頭を抱えてみせた。
「セナ。じゃあその剣も一緒に……」
「いけませんよ。姫。こんな山師の手に乗っては。こちらにお金があるのを見てとっさに作った嘘に決まってます」
「いいええ。そんなことは決して。俺……いえ私は善良な奴隷売り。嘘をついたことなどは、シンフォニアの大神デッラ・ルーナに誓ってございません」
男は両手を組み合わせ、殊勝な面持ちで頭をたれる。
「今なら少年と剣をセットで、今ならきっかり一万二千ルナ。いかがです」
「なんてやつなの。姫様、帰りましょう」
女官はあきれたように金袋の紐を締め直すと、少女の手を取り店を出ようとした。
「こんな店よりもっとましな奴隷はいくらもいるでしょう。さ」
「待って。セナ」
少女が引き止めた。一瞬だけ檻のなかの少年と目が合ったのだ。
なにを思ったか、彼女はそのままかがみこんで、覗き込むように少年の顔を見た。
「ねえ……あなた」
やさしく問いかける。
「本当なの?あの剣が一緒じゃないといやかしら?」
少年はちらりと剣の方を見てから、ぽりぽりと頭をかいた。横から男が熱い視線を送ってくるのが分かる。
「はい」
しばらくして、少年はこくりとうなずいた。
「あの剣がないと、僕は少し困ります」
男は「かあーっ、そんな言い方じゃ押しが弱いんだよっ」といわんばかりに歯をむき出した。
少女はすっと立つと、女官を振り返った。男は、はらはらとそれを見守る。
「私のおこずかい。ひと月ぶん消えてしまうわね」
くすりと笑って言った。 それを聞くなり男は歓喜に拳を突き上げた。女官はため息である。
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