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晩餐会の会談2
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それから一刻ほどののち、
話し終えたレークは大きく息をつき、ぐっとワインを飲み干した。
「ふむ……なるほど。大体のところは分かった」
たった今聞かされた話をもう一度咀嚼するかのように、レード公は何度もうなずき、二人の貴族に向かって切り出した。
「いかがですかな?皆さん。今のレーク殿の話を。私としては……そう、ほぼ納得のゆく説明であったと、そう思うところですが。何かご質問はありますかな」
「……それでは、私からひとつ」
やわらかな仕種で軽く手をあげたのは、スタルナー公だった。まだ若い公爵はその穏やかな顔をレークに向けた。
「私は今のレーク殿のお話から、おおむね得心がゆきました。お二人があの大国アスカの出身であられるという点、そしてとくにアレイエン殿については、地方貴族とはいえ、元はアスカの身分ある貴公子であられた、ということも非常に納得がいきます。私はじかにアレイエン殿とお話をしたことはありませぬが、何度か舞踏会などで顔を合わせたことはあります。外見でなく、あの物腰、雰囲気を見ていれば、彼が貴族であるということについて、何ら疑問は持ちませんな。むしろそうだと聞いて、やはりと内心で思ったほどで。彼はそれだけの品格をそなえておられる」
横で聞いていたモスレイ侍従長も大きくうなずく。スタルナー公は続けた。
「そして、そのお二人がアスカを出奔して旅に出た経緯、お父君の形見の剣を探しているという目的についても、旅の費用をかせぐために傭兵になったり、あるいは今回のように剣技会に出場することにしても筋が通っております。そうして、お二人は我がトレミリアの大剣技会においてみごとに優勝なされた、というわけですな。これはそう……いうなれば、素晴らしき成功談の物語として吟遊詩人に語らせたいほどのものですぞ」
ほっとしたようにレークはうなずいた。
「ああ……いかにも。そのように納得いただいて、俺……いや私も嬉しく思うところ」
「では、一つだけお聞かせくだされ」
若き公爵はレークの顔をじっと見据えた。その声は穏やかであったが、相手の内面を覗き込むようなその眼差しは、表面上の優しく紳士的な物腰とは裏腹に、この人物が見かけほどは凡庸ではないのだということを物語っていた。
レークは額の汗をぬぐいたいのをこらえ、スタルナー公の目を正面から受け止めた。
「今や、レーク殿は宮廷騎士となり、そしてアレイエン殿は式部宮の講師としての地位を得られた。形見の剣を探して旅をしていたお二人が、期せずしてこのような形でトレミリア宮廷に住まわれることになったわけですが。私がお聞きしたいのは、それでは、今現在のお二人の目指すものは何かということです」
「目指すもの……とは?」
レークは慎重に聞き返した。
隣にいるレード公も侍従長もじっと黙ったまま、二人のやりとりに耳を傾けている。
「さよう。先程のお話では、お二人は剣を探すために旅をしておられたという。そして旅の資金を得るために剣技会に参加し、そして見事に優勝し、こうしてお望みの金も地位も得られた。それでは、今はどうなのか?今でもその形見の剣を探しておられるのか。だとすれば、いずれはまたトレミリアを出奔し剣を探す旅に出るおつもりなのか。その際は、宮廷人としての権利と責務とはどうなされるおつもりなのか。それらを何もかも投げ出して許されると考えておられるのかどうか。つまり、そのあたりをお聞かせ願いたい」
「あ、ああ……」
スタルナー公からのまったく論理的な質問に、レークは口ごもった。
実のところ、アレンと打ち合わせをしておいた事項以外については、まったく何も考えていなかったレークである。ここに来るまでに、レード公と二人だけでの密談と予想していただけに、このような他の人間からの予期せぬ追求に対して、なんと答えれば良いのか。
「……」
レークは返答に窮した。
正面に座るレード公は、さっきから腕を組んだまま目を閉じており、その横のモスレイ侍従長は、あごひげを撫でながら静かにこちらを見ている。
「いかがかな?」
答えを催促するようにスタルナー公が首を傾げた。その声は、まるで友人にワインを勧めるかのような穏やかな口調だったが、それだけにレークには真綿で首を締められるような息苦しさがあった。
額の汗が頬に伝い落ちる。
「……」
ここで何をどう言えばいいのか。レークには分からなかった。アレンさえいれば、きっとうまく言葉巧みに逃れたに違いない。だが頼りになる相棒は今はここにはいない。この場は自分一人だけで、なんとか切り抜けるしかないのだ。
「……ええと」
ようやく声を発したレークに、トレミリアの重鎮たちがさっと注目する。
「これまでも、実は、宰相であるオライア公爵とは同じように会談をしたんだ……いや、しました」
「こうなったらなるようになれ、だ」と、レークは己の全知をかたむけて切り出した。
「二度ほど、アレンと俺とで、オライア公と内密で話をした……んです」
「ほう」
そのようなことは、とうに知っていたとばかりに、レード公は驚きも見せずにうなずいた。オライア公とレード公とが、宰相と将軍という地位を別にしても、昔からの親友であるということは、宮廷内でも周知の事実である。なので、ここにいるレード公がある程度のことをオライア公から聞かされていたとしても、それは何ら不思議ではなかった。
「それで?」
目の前の公爵はレークを威嚇するように大きく腕を組み直した。そうすると、さすがの大将軍で武人である見事な体躯と相まって、見るものに強い威厳と圧力とを感じさせた。
「ああ……だから、もうオライア公には、だいたい全部のことは話してある。俺もアレンも、オライア公爵には何も隠せない……というか隠す必要もないと考えた。だから、オライア公と同じくらいにこの国では地位のあるレード公……あんたからも、やはり同じような信用が欲しい。だから……」
レークは唾を飲み込んだ。
自分が何を言おうとしているのかが、彼自身にもまったく分かっていなかった。かといって、口からでまかせなどを言っても通じる相手ではないこともまた確かである。
レークは必死に頭を巡らせた。このように考えて考えて、ということは彼には全く苦手な事だった。
がんがんと耳鳴りがするような心地がした。ここで何かを間違えれば、それは自分たちにとって致命的な失敗となる。それはレークにすらはっきりと分かっていた。
まったくの嘘ではなく、しかも自分たちの目的に不利益にならない答え。そんな返答を……レークは絞り出すようにして考えた。
「オレを……」
やや震えるような声が、狭い室内に響いた。
「オレを、ウェルドスラーブへ行かせてくれ」
「……なに?」
レード公は驚いたようにその目を見開いた。
遠くでワルツの音が聞こえていた。
音楽と、楽しげな人々の声……社交のさんざめきが、壁の向こうからかすかに聞こえてくる。盛大華麗な晩餐が行われているその一方で、この奥まった一室では国の重鎮たちと一人の浪剣士との奇妙な駆け引きが行われている。それはなんとも不思議で、皮肉めいた場であろうと、アレンであれば思ったかもしれない。
「それは……」
レード公のみならず、モスレイ侍従長も、そして質問をした当のスタルナー公も、浪剣士の意外な言葉に一様に顔を見合せた。
「ウェルドスラーブ?それはどういうことなのだ?」
眉をひそめたレード公が、やや低い声で聞き返した。
「それは……その」
レークは唇をなめた。いったん口にしてしまった以上は、その勢いに乗ってしまう、というのが、彼のやり方……というかいつもの癖だった。
「……さっきも、少し言いましたがね」
自分の言葉で心が決まった、とでもいうように、次の瞬間、レークはまるで開き直ったような自信ありげな顔つきになった。
「ジャリアのことですよ」
「……」
スタルナー公と侍従長はまたしても顔を見合わせた。レード公だけは、じろりと強い目つきでレークを睨んだ。
「なるほど。そうか」
公爵と浪剣士の視線が合わさる。
「おぬし……どこまで知っている?」
「そう。それそれ」
得たり、というように、レークは口の端をつり上げた。その狡猾そうな表情は、一国の公爵に対するにはあまりに不敵な様子であった。
「同じことをつい先日、オライア公にも言われましたぜ。そんな風におっかない顔してね」
レークの軽口に、公爵は一瞬かっとしたように眉をつり上げ、何かを言いかけたが、すぐに軽く首を振ると、自らを落ち着かせるように椅子の背に寄り掛かかった。
あるいは、気押されていたのは公爵の方だったかもしれぬ。しかし、決して内心の驚きを見せぬかのように、公爵はワイングラスを手に、ゆっくりとそれに口を付けると、おおらかな様子でレークを促した。
「それで?」
レークは話しだした。
「俺が知っているのは、そう、今から数カ月前……ちょうど例の剣技会が開かれる少し前ですかね。……ジャリア軍が二万の兵をともない、国境を超え、ヴォルス内海北側の自由国境地帯に進入したこと。そんでもって、奴らはウェルドスラーブ北端の都市バーネィの対岸に陣を張った」
一度方向を決めてしまえば、もう怖いものはない。重要機密であるはずのその情報を、レークはまるでただの茶飲み話であるように軽い口調で切り出した。
「あ、ジャリアとアルディはその前から大陸間相互会議ってやつを脱退しているけど、これはもう周知の事実なわけだよな。……で、たぶん、剣技会期間中になんらかの動きがあったのか、レード公爵はローリングを連れて実際にウェルドスラーブへ行ってみた。すると、そこで事態はけっこう一刻を争うってことを知り、ウェルドスラーブ側からの援軍要請も正式に受けて、大急ぎで剣技会の日程を一日短縮することを決めたわけだ。剣技会が終わるやいなや、集めた傭兵を急いで編成しながら、またウェルドスラーブを行ったりきたりしつつ出兵のタイミングを測って……それで、」
「待て。……しばし待て」
ここまでは口をはさむことなく、レークの口から漏れる言葉をじっと聞いていた公爵だったが、ついに我慢出来なくなったように唐突に話を遮った。
「侍従長、スタルナー公、すまぬが……ここはちと席を……」
「……心得た」
公爵がうなずきかけるようにすると、すぐにその意を察したモスレイ侍従長が立ち上がった。スタルナー公も慌てて席を立つ。
「すみませぬな。こちらからお呼びしておきながら」
侍従長は笑いながらレード公に言った。
「なに。おぬしはこの国の大将軍、そしてオライア公と同じく王国の両輪を担う立場よ。わしらが余分な事柄を知ってしまっては、なにかと気を配ることにもなろう。スタルナー公、では我らは早速にぎやかな晩餐を楽しむとしようか」
「はい」
室内にはレークと公爵の二人だけになった。日が沈み、暗くなった室内に、燭台の蝋燭の火だけが赤々と燃えている。
「……さて、すまぬな。続けるがいい」
「ええ……どこまで言ったのか分からなくなっちまったけど。そうだ。ようするに……、トレミリアとしては、出兵のタイミングを測っている。そして今現在、ジャリア軍は当初の予想よりはどうも動きが鈍くなった。そのおかげで、公爵もこうしてウェルドスラーブからいったんは戻ってきて、呑気に晩餐なんぞに出席していられるってわけだよな」
公爵は思わず苦笑した。
「そう呑気にしてもいられないのだがな。……まあいい、それで?」
「それでって?」
なに食わぬ顔で聞き返すレークに、公爵はにやりと笑った。
「おぬしも、見かけほど馬鹿ではないようだな?とぼけるのがうまい」
「そりゃ、ひでえや。それじゃ見かけはただの馬鹿ってことですかい」
憤慨して唇を尖らせるレーク。公爵の方は真顔だった。
「さっき言っていた、おぬしをウェルドスラーブへ行かせる、ということだが?」
「ああ、それね……」
レークはぼりぼりと頭を掻いた。
今更、あれはただの口から出たでまかせでした、などとは到底言えそうもない。
内心の困惑を隠すように、レークはひとつ咳払いをした。
「ええと……、アレンのやつが教えてくれた情報では、ジャリア軍が一時停滞しているのには訳があるとかで……」
「ほう、どんな?」
興味深そうに公爵が尋ねた。
「たとえば……、兵の指揮官……てことは親玉であるジャリアの黒竜、フェルス王子がやむなく陣を離れざるをえない事態が起きた、とか」
「何故そこまで知っている?」
レード公の鋭い声が飛んだ。慌ててレークは付け足した。
「……いや、アレンの奴がさ、そういう可能性もあるかもしれん、とか言っていたんでさ……」
「……なるほどな」
公爵は考えるようにあごに手をやり、それからゆっくりと首を振って見せた。
「しかし、おぬしらは、やはりどう考えてもただの浪剣士などではないな。もしかしたら、そのアスカの貴族云々という話もまんざら嘘ではないようだ」
「だから、嘘じゃないんだって。俺はともかく、アレンの奴はじっさいそうなんだよ。だから、俺たちは二人とも古代アスカ語の読み書きも出来るし、そのおかげでアレンはさっきの侍従長に見込まれて教師なんかにもなれたんだしさ」
アレンから散々釘を刺されていたにもかかわらず、レークはすっかり公爵に対して敬語で話すことも忘れて、普段の口調になっていた。そればかりか、長い間座っているのに疲れたといわんばかりに椅子から乱暴に足を投げ出しさえしていたのである。
レード公は、その粗暴な様子を見てもさして怒るでもなく、むしろ逆に面白そうに口許をゆるめて目の前の相手を眺めていた。
「なるほど。オライアの言っていたとおり面白い男だな、おぬしは。この次はそのアレイエン……アレンか、その者とも一緒に話したいものだな」
「ああ、それがいいや」
レークはぽんと手を叩いた。
「俺はどうも、こういうお固い会談とか密談てやつが苦手でね。とくに公爵閣下の前なんかじゃ、まったく気疲れしちまっていけない」
「嘘をつけ」
公爵は声を上げて笑った。
「さっきから目一杯くつろいでワインを飲み、足をテーブルに乗せてふんぞり返っておる奴の言うことか」
「あ、こりゃ失礼」
慌ててレークは足をひっこめた。ついでにぺろりと舌を出す。
「おぬしの剣の実力はいろいろな者から聞いている」
そう言った公爵の顔は、にわかに真剣な色を帯びた。
「あの数々の猛者たちが集った剣技大会で、圧倒的な強さで優勝したという、その妙技、直に見たかったものだな」
「はあ、どうも」
レークは素直に頭を下げた。トレミリアの軍事を司り、偉大な剣士でもある公爵から褒められる、という栄誉がどれほどのものかは分かってはいない様子だが。
公爵はにやりと笑った。レークを見る公爵の目つきは、この部屋に入った当初とは明らかに変わっていた。
「ウェルドスラーブは……戦場になるかも知れんぞ」
静かな声でレード公は言った。
「おぬしらの目的がなんであろうが、この際はもはや問題ではない。今必要なのは、実戦で使える強力な剣士たちだ。そう、おぬしのような、な」
そう言って、公爵はレークの目を見据えた。
しばしの沈黙の後、
「いいですよ」
ゆるやかなワルツの音をかすかに聞きながら、レークは答えた。
「そういってくれるんなら有り難い。俺たちもこの国にいる以上は、この国のために働くことにためらいはない。それに……」
トレミリアの栄えある大将軍を目の前にして、浪剣士は不敵に微笑んだ。
「戦いは嫌いじゃない」
黒い髪と黒い目を持つ、この横柄で陽気な浪剣士を、レード公はしばし息を呑むように凝視していた。
彼らの耳には、それまで聞こえていたワルツの音が、ふと一瞬だけ消えたように思えたに違いない。
トレミリアの大将軍、レード公爵ダルフォンスと、元浪剣士レーク・ドップ……二人の目と目が重なった。互いに、その心中の奥にどんな思惑を抱いてか、それはまるで双眸による静かな攻防だった。
やがて、遠くから聞こえる晩餐のざわめきに我に帰ったのか、公爵はひとつ大きく息を吸い込むと、低くつぶやいた。
「よかろう」
それが全てのはじまりだった。
これからこの一人の浪剣士の、戦乱への奔走が幕を開けたのだと、もしこの場を見下ろす神がいたならば告げたことだろう。
レーク・ドップ……一人の腕の立つ剣士が、名実共にトレミリアの騎士となったことを公爵は理解した。
「おぬしは、身分上はもはや浪剣士ではない。ましてや傭兵でもないわけだからな。一人の騎士に対して、金を報酬にして一兵士に雇うことはできないわけだが……」
「金をくれるってんなら断る理由もないですがね」
冗談めかして言ったレークに、公爵も笑みを浮かべた。
「おそらく、出兵は近いだろう。ウェルドスラーブへ……行ってくれるか」
「ああ、いいよ」
レークはまるで近所の使いに行くかのような気軽さで答えた。
「さっき、オライア公とも話をしたって言いましたがね。そのときも、同じように答えたもんさ。騎士になった以上は、俺はこの国のために剣を振るう、とね。ただし、その代わり俺たち、俺とアレンの目的については……」
「分かっておる」
これは一国を預かる将軍と、地位ある騎士との正規の取引であることを、二人ともが暗黙のうちに了解していた。
「おぬしらの、その形見の剣を見つけるという目的に関しては、なんら関知はせぬ。我が国の騎士としての行動を逸脱しない限りにおいてはな。むろんウェルドスラーブにおいても……だ」
「話が早い」
レークはぴしゃりと膝を叩いた。
「では、聞かせてもらえますかね。ジャリアに関する現在の最新の情報ってやつを」
「うむ」
壁の向こうでは、優雅なワルツから景気のいいポルカのリズムへと変わっていた。
晩餐を楽しむ人々は、今頃は酔いもたけなわと広間や庭園で陽気に踊り、杯を片手に笑い合い、あるいは意中の相手との駆け引きに盛り上がっている時分だろう。
そうした、一見平和で楽しげな夜が更けてゆく一方で、トレミリアの大将軍ともと浪剣士とのこの不思議な密談は、広間の客たちの喧騒を遠くに、密かに続けられた。
話し終えたレークは大きく息をつき、ぐっとワインを飲み干した。
「ふむ……なるほど。大体のところは分かった」
たった今聞かされた話をもう一度咀嚼するかのように、レード公は何度もうなずき、二人の貴族に向かって切り出した。
「いかがですかな?皆さん。今のレーク殿の話を。私としては……そう、ほぼ納得のゆく説明であったと、そう思うところですが。何かご質問はありますかな」
「……それでは、私からひとつ」
やわらかな仕種で軽く手をあげたのは、スタルナー公だった。まだ若い公爵はその穏やかな顔をレークに向けた。
「私は今のレーク殿のお話から、おおむね得心がゆきました。お二人があの大国アスカの出身であられるという点、そしてとくにアレイエン殿については、地方貴族とはいえ、元はアスカの身分ある貴公子であられた、ということも非常に納得がいきます。私はじかにアレイエン殿とお話をしたことはありませぬが、何度か舞踏会などで顔を合わせたことはあります。外見でなく、あの物腰、雰囲気を見ていれば、彼が貴族であるということについて、何ら疑問は持ちませんな。むしろそうだと聞いて、やはりと内心で思ったほどで。彼はそれだけの品格をそなえておられる」
横で聞いていたモスレイ侍従長も大きくうなずく。スタルナー公は続けた。
「そして、そのお二人がアスカを出奔して旅に出た経緯、お父君の形見の剣を探しているという目的についても、旅の費用をかせぐために傭兵になったり、あるいは今回のように剣技会に出場することにしても筋が通っております。そうして、お二人は我がトレミリアの大剣技会においてみごとに優勝なされた、というわけですな。これはそう……いうなれば、素晴らしき成功談の物語として吟遊詩人に語らせたいほどのものですぞ」
ほっとしたようにレークはうなずいた。
「ああ……いかにも。そのように納得いただいて、俺……いや私も嬉しく思うところ」
「では、一つだけお聞かせくだされ」
若き公爵はレークの顔をじっと見据えた。その声は穏やかであったが、相手の内面を覗き込むようなその眼差しは、表面上の優しく紳士的な物腰とは裏腹に、この人物が見かけほどは凡庸ではないのだということを物語っていた。
レークは額の汗をぬぐいたいのをこらえ、スタルナー公の目を正面から受け止めた。
「今や、レーク殿は宮廷騎士となり、そしてアレイエン殿は式部宮の講師としての地位を得られた。形見の剣を探して旅をしていたお二人が、期せずしてこのような形でトレミリア宮廷に住まわれることになったわけですが。私がお聞きしたいのは、それでは、今現在のお二人の目指すものは何かということです」
「目指すもの……とは?」
レークは慎重に聞き返した。
隣にいるレード公も侍従長もじっと黙ったまま、二人のやりとりに耳を傾けている。
「さよう。先程のお話では、お二人は剣を探すために旅をしておられたという。そして旅の資金を得るために剣技会に参加し、そして見事に優勝し、こうしてお望みの金も地位も得られた。それでは、今はどうなのか?今でもその形見の剣を探しておられるのか。だとすれば、いずれはまたトレミリアを出奔し剣を探す旅に出るおつもりなのか。その際は、宮廷人としての権利と責務とはどうなされるおつもりなのか。それらを何もかも投げ出して許されると考えておられるのかどうか。つまり、そのあたりをお聞かせ願いたい」
「あ、ああ……」
スタルナー公からのまったく論理的な質問に、レークは口ごもった。
実のところ、アレンと打ち合わせをしておいた事項以外については、まったく何も考えていなかったレークである。ここに来るまでに、レード公と二人だけでの密談と予想していただけに、このような他の人間からの予期せぬ追求に対して、なんと答えれば良いのか。
「……」
レークは返答に窮した。
正面に座るレード公は、さっきから腕を組んだまま目を閉じており、その横のモスレイ侍従長は、あごひげを撫でながら静かにこちらを見ている。
「いかがかな?」
答えを催促するようにスタルナー公が首を傾げた。その声は、まるで友人にワインを勧めるかのような穏やかな口調だったが、それだけにレークには真綿で首を締められるような息苦しさがあった。
額の汗が頬に伝い落ちる。
「……」
ここで何をどう言えばいいのか。レークには分からなかった。アレンさえいれば、きっとうまく言葉巧みに逃れたに違いない。だが頼りになる相棒は今はここにはいない。この場は自分一人だけで、なんとか切り抜けるしかないのだ。
「……ええと」
ようやく声を発したレークに、トレミリアの重鎮たちがさっと注目する。
「これまでも、実は、宰相であるオライア公爵とは同じように会談をしたんだ……いや、しました」
「こうなったらなるようになれ、だ」と、レークは己の全知をかたむけて切り出した。
「二度ほど、アレンと俺とで、オライア公と内密で話をした……んです」
「ほう」
そのようなことは、とうに知っていたとばかりに、レード公は驚きも見せずにうなずいた。オライア公とレード公とが、宰相と将軍という地位を別にしても、昔からの親友であるということは、宮廷内でも周知の事実である。なので、ここにいるレード公がある程度のことをオライア公から聞かされていたとしても、それは何ら不思議ではなかった。
「それで?」
目の前の公爵はレークを威嚇するように大きく腕を組み直した。そうすると、さすがの大将軍で武人である見事な体躯と相まって、見るものに強い威厳と圧力とを感じさせた。
「ああ……だから、もうオライア公には、だいたい全部のことは話してある。俺もアレンも、オライア公爵には何も隠せない……というか隠す必要もないと考えた。だから、オライア公と同じくらいにこの国では地位のあるレード公……あんたからも、やはり同じような信用が欲しい。だから……」
レークは唾を飲み込んだ。
自分が何を言おうとしているのかが、彼自身にもまったく分かっていなかった。かといって、口からでまかせなどを言っても通じる相手ではないこともまた確かである。
レークは必死に頭を巡らせた。このように考えて考えて、ということは彼には全く苦手な事だった。
がんがんと耳鳴りがするような心地がした。ここで何かを間違えれば、それは自分たちにとって致命的な失敗となる。それはレークにすらはっきりと分かっていた。
まったくの嘘ではなく、しかも自分たちの目的に不利益にならない答え。そんな返答を……レークは絞り出すようにして考えた。
「オレを……」
やや震えるような声が、狭い室内に響いた。
「オレを、ウェルドスラーブへ行かせてくれ」
「……なに?」
レード公は驚いたようにその目を見開いた。
遠くでワルツの音が聞こえていた。
音楽と、楽しげな人々の声……社交のさんざめきが、壁の向こうからかすかに聞こえてくる。盛大華麗な晩餐が行われているその一方で、この奥まった一室では国の重鎮たちと一人の浪剣士との奇妙な駆け引きが行われている。それはなんとも不思議で、皮肉めいた場であろうと、アレンであれば思ったかもしれない。
「それは……」
レード公のみならず、モスレイ侍従長も、そして質問をした当のスタルナー公も、浪剣士の意外な言葉に一様に顔を見合せた。
「ウェルドスラーブ?それはどういうことなのだ?」
眉をひそめたレード公が、やや低い声で聞き返した。
「それは……その」
レークは唇をなめた。いったん口にしてしまった以上は、その勢いに乗ってしまう、というのが、彼のやり方……というかいつもの癖だった。
「……さっきも、少し言いましたがね」
自分の言葉で心が決まった、とでもいうように、次の瞬間、レークはまるで開き直ったような自信ありげな顔つきになった。
「ジャリアのことですよ」
「……」
スタルナー公と侍従長はまたしても顔を見合わせた。レード公だけは、じろりと強い目つきでレークを睨んだ。
「なるほど。そうか」
公爵と浪剣士の視線が合わさる。
「おぬし……どこまで知っている?」
「そう。それそれ」
得たり、というように、レークは口の端をつり上げた。その狡猾そうな表情は、一国の公爵に対するにはあまりに不敵な様子であった。
「同じことをつい先日、オライア公にも言われましたぜ。そんな風におっかない顔してね」
レークの軽口に、公爵は一瞬かっとしたように眉をつり上げ、何かを言いかけたが、すぐに軽く首を振ると、自らを落ち着かせるように椅子の背に寄り掛かかった。
あるいは、気押されていたのは公爵の方だったかもしれぬ。しかし、決して内心の驚きを見せぬかのように、公爵はワイングラスを手に、ゆっくりとそれに口を付けると、おおらかな様子でレークを促した。
「それで?」
レークは話しだした。
「俺が知っているのは、そう、今から数カ月前……ちょうど例の剣技会が開かれる少し前ですかね。……ジャリア軍が二万の兵をともない、国境を超え、ヴォルス内海北側の自由国境地帯に進入したこと。そんでもって、奴らはウェルドスラーブ北端の都市バーネィの対岸に陣を張った」
一度方向を決めてしまえば、もう怖いものはない。重要機密であるはずのその情報を、レークはまるでただの茶飲み話であるように軽い口調で切り出した。
「あ、ジャリアとアルディはその前から大陸間相互会議ってやつを脱退しているけど、これはもう周知の事実なわけだよな。……で、たぶん、剣技会期間中になんらかの動きがあったのか、レード公爵はローリングを連れて実際にウェルドスラーブへ行ってみた。すると、そこで事態はけっこう一刻を争うってことを知り、ウェルドスラーブ側からの援軍要請も正式に受けて、大急ぎで剣技会の日程を一日短縮することを決めたわけだ。剣技会が終わるやいなや、集めた傭兵を急いで編成しながら、またウェルドスラーブを行ったりきたりしつつ出兵のタイミングを測って……それで、」
「待て。……しばし待て」
ここまでは口をはさむことなく、レークの口から漏れる言葉をじっと聞いていた公爵だったが、ついに我慢出来なくなったように唐突に話を遮った。
「侍従長、スタルナー公、すまぬが……ここはちと席を……」
「……心得た」
公爵がうなずきかけるようにすると、すぐにその意を察したモスレイ侍従長が立ち上がった。スタルナー公も慌てて席を立つ。
「すみませぬな。こちらからお呼びしておきながら」
侍従長は笑いながらレード公に言った。
「なに。おぬしはこの国の大将軍、そしてオライア公と同じく王国の両輪を担う立場よ。わしらが余分な事柄を知ってしまっては、なにかと気を配ることにもなろう。スタルナー公、では我らは早速にぎやかな晩餐を楽しむとしようか」
「はい」
室内にはレークと公爵の二人だけになった。日が沈み、暗くなった室内に、燭台の蝋燭の火だけが赤々と燃えている。
「……さて、すまぬな。続けるがいい」
「ええ……どこまで言ったのか分からなくなっちまったけど。そうだ。ようするに……、トレミリアとしては、出兵のタイミングを測っている。そして今現在、ジャリア軍は当初の予想よりはどうも動きが鈍くなった。そのおかげで、公爵もこうしてウェルドスラーブからいったんは戻ってきて、呑気に晩餐なんぞに出席していられるってわけだよな」
公爵は思わず苦笑した。
「そう呑気にしてもいられないのだがな。……まあいい、それで?」
「それでって?」
なに食わぬ顔で聞き返すレークに、公爵はにやりと笑った。
「おぬしも、見かけほど馬鹿ではないようだな?とぼけるのがうまい」
「そりゃ、ひでえや。それじゃ見かけはただの馬鹿ってことですかい」
憤慨して唇を尖らせるレーク。公爵の方は真顔だった。
「さっき言っていた、おぬしをウェルドスラーブへ行かせる、ということだが?」
「ああ、それね……」
レークはぼりぼりと頭を掻いた。
今更、あれはただの口から出たでまかせでした、などとは到底言えそうもない。
内心の困惑を隠すように、レークはひとつ咳払いをした。
「ええと……、アレンのやつが教えてくれた情報では、ジャリア軍が一時停滞しているのには訳があるとかで……」
「ほう、どんな?」
興味深そうに公爵が尋ねた。
「たとえば……、兵の指揮官……てことは親玉であるジャリアの黒竜、フェルス王子がやむなく陣を離れざるをえない事態が起きた、とか」
「何故そこまで知っている?」
レード公の鋭い声が飛んだ。慌ててレークは付け足した。
「……いや、アレンの奴がさ、そういう可能性もあるかもしれん、とか言っていたんでさ……」
「……なるほどな」
公爵は考えるようにあごに手をやり、それからゆっくりと首を振って見せた。
「しかし、おぬしらは、やはりどう考えてもただの浪剣士などではないな。もしかしたら、そのアスカの貴族云々という話もまんざら嘘ではないようだ」
「だから、嘘じゃないんだって。俺はともかく、アレンの奴はじっさいそうなんだよ。だから、俺たちは二人とも古代アスカ語の読み書きも出来るし、そのおかげでアレンはさっきの侍従長に見込まれて教師なんかにもなれたんだしさ」
アレンから散々釘を刺されていたにもかかわらず、レークはすっかり公爵に対して敬語で話すことも忘れて、普段の口調になっていた。そればかりか、長い間座っているのに疲れたといわんばかりに椅子から乱暴に足を投げ出しさえしていたのである。
レード公は、その粗暴な様子を見てもさして怒るでもなく、むしろ逆に面白そうに口許をゆるめて目の前の相手を眺めていた。
「なるほど。オライアの言っていたとおり面白い男だな、おぬしは。この次はそのアレイエン……アレンか、その者とも一緒に話したいものだな」
「ああ、それがいいや」
レークはぽんと手を叩いた。
「俺はどうも、こういうお固い会談とか密談てやつが苦手でね。とくに公爵閣下の前なんかじゃ、まったく気疲れしちまっていけない」
「嘘をつけ」
公爵は声を上げて笑った。
「さっきから目一杯くつろいでワインを飲み、足をテーブルに乗せてふんぞり返っておる奴の言うことか」
「あ、こりゃ失礼」
慌ててレークは足をひっこめた。ついでにぺろりと舌を出す。
「おぬしの剣の実力はいろいろな者から聞いている」
そう言った公爵の顔は、にわかに真剣な色を帯びた。
「あの数々の猛者たちが集った剣技大会で、圧倒的な強さで優勝したという、その妙技、直に見たかったものだな」
「はあ、どうも」
レークは素直に頭を下げた。トレミリアの軍事を司り、偉大な剣士でもある公爵から褒められる、という栄誉がどれほどのものかは分かってはいない様子だが。
公爵はにやりと笑った。レークを見る公爵の目つきは、この部屋に入った当初とは明らかに変わっていた。
「ウェルドスラーブは……戦場になるかも知れんぞ」
静かな声でレード公は言った。
「おぬしらの目的がなんであろうが、この際はもはや問題ではない。今必要なのは、実戦で使える強力な剣士たちだ。そう、おぬしのような、な」
そう言って、公爵はレークの目を見据えた。
しばしの沈黙の後、
「いいですよ」
ゆるやかなワルツの音をかすかに聞きながら、レークは答えた。
「そういってくれるんなら有り難い。俺たちもこの国にいる以上は、この国のために働くことにためらいはない。それに……」
トレミリアの栄えある大将軍を目の前にして、浪剣士は不敵に微笑んだ。
「戦いは嫌いじゃない」
黒い髪と黒い目を持つ、この横柄で陽気な浪剣士を、レード公はしばし息を呑むように凝視していた。
彼らの耳には、それまで聞こえていたワルツの音が、ふと一瞬だけ消えたように思えたに違いない。
トレミリアの大将軍、レード公爵ダルフォンスと、元浪剣士レーク・ドップ……二人の目と目が重なった。互いに、その心中の奥にどんな思惑を抱いてか、それはまるで双眸による静かな攻防だった。
やがて、遠くから聞こえる晩餐のざわめきに我に帰ったのか、公爵はひとつ大きく息を吸い込むと、低くつぶやいた。
「よかろう」
それが全てのはじまりだった。
これからこの一人の浪剣士の、戦乱への奔走が幕を開けたのだと、もしこの場を見下ろす神がいたならば告げたことだろう。
レーク・ドップ……一人の腕の立つ剣士が、名実共にトレミリアの騎士となったことを公爵は理解した。
「おぬしは、身分上はもはや浪剣士ではない。ましてや傭兵でもないわけだからな。一人の騎士に対して、金を報酬にして一兵士に雇うことはできないわけだが……」
「金をくれるってんなら断る理由もないですがね」
冗談めかして言ったレークに、公爵も笑みを浮かべた。
「おそらく、出兵は近いだろう。ウェルドスラーブへ……行ってくれるか」
「ああ、いいよ」
レークはまるで近所の使いに行くかのような気軽さで答えた。
「さっき、オライア公とも話をしたって言いましたがね。そのときも、同じように答えたもんさ。騎士になった以上は、俺はこの国のために剣を振るう、とね。ただし、その代わり俺たち、俺とアレンの目的については……」
「分かっておる」
これは一国を預かる将軍と、地位ある騎士との正規の取引であることを、二人ともが暗黙のうちに了解していた。
「おぬしらの、その形見の剣を見つけるという目的に関しては、なんら関知はせぬ。我が国の騎士としての行動を逸脱しない限りにおいてはな。むろんウェルドスラーブにおいても……だ」
「話が早い」
レークはぴしゃりと膝を叩いた。
「では、聞かせてもらえますかね。ジャリアに関する現在の最新の情報ってやつを」
「うむ」
壁の向こうでは、優雅なワルツから景気のいいポルカのリズムへと変わっていた。
晩餐を楽しむ人々は、今頃は酔いもたけなわと広間や庭園で陽気に踊り、杯を片手に笑い合い、あるいは意中の相手との駆け引きに盛り上がっている時分だろう。
そうした、一見平和で楽しげな夜が更けてゆく一方で、トレミリアの大将軍ともと浪剣士とのこの不思議な密談は、広間の客たちの喧騒を遠くに、密かに続けられた。
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