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碧のガイア
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「くそ」
イホークはどうするか考えているようだ。外の兵士はどうなっているのかが律には気がかりだった。呻き声は一矢目に比べると明らかに減っている。いくつもの命が失われたのだろう。赤ん坊の死体が頭の中に浮かんできたが、今は考えるなと自分に言い聞かせた。
「なんか臭くないですか」
ジェムの言葉に、律は鼻をクンクンとさせると確かに焦げ臭い。
イホークが「火矢だ」と呟いた。乾燥している時期であるし、木の建物だ。すぐに燃えてしまうだろう。
「火を消す」
「どうやって?」
水も不足しているし、なにより消火のために隣室に入ればすぐに射られてしまうだろう。
「酸素とやらを断てばいいのだろう」
「え?」
「なんて顔をしている。リツが言ったのだろう。燃えるためには酸素が必要だと。講義中、ただ突っ立ていただけではない」
講義とは、主にガーディアンを相手に行った分子構造の講義のことだろう。より多くの物質を操れるようにと教えていた。確かにイホークは律の護衛として常に講義を聞いていただろうが、聞いていたからといってガーディアンではないイホークにそんなことができるはずはない。
「言ったって、え? でも、そんなことはできないよ」
「俺はガーディアンだ」
「え?」
イホークがガーディアン? そんな話聞いたことはない。ただでさえこんな事態だ。律の頭は全く追いついていなかったが、イホークは律に説明をすることもなく手を宙に向け集中するように目を瞑った。
「待って!」
律はイホークの肩に手をかけると、周りに視線を素早く這わせた頭の引き出しを次々と開けていく。今まで、これほどまで素早く開いたことなどなかっただろう。
「火が消えたら踏み込まれるかもしれない」
「そうだが、焼け死ぬつもりはない」
「斬り殺されるつもりもないです。酸素を操るのはどれくらいの距離まで有効?」
「五十メートル程度だろうか」
「なんでわかる?」
「試してみたからだ」
「色々聞きたいけど、取りあえずあとで聞きます」
律は羊の胃袋でできた水筒に蛭のいる水槽の水を入れると、その水槽を割ってガラス片と蛭をその中にぶちこみ、しっかりと口を結んだ。
「じゃあ、これ、どこまで飛ばせる? ガーディアンならできるでしょ? やっぱり五十メートルくらい?」
「物体ならもっと操れる。この重さならもっといけるはずだ」
「敵の位置までは?」
「可能だ」
「投げた後、中に入っている水の温度は上げられる? 一瞬で水を沸騰させてほしいけど、さすがにそれは難しいよね」
「形になっている物であれば、糸をつけられる」
「糸?」
「人によって言い方はそれぞれだが、私は糸と言っている。意識の一端をくくりつけるというか、なんというべきか……糸が繋がっていれば温度を上昇させることは可能だろう」
「じゃあ、お願いがあるんだ。燃焼とは酸化反応だ。酸素がないと燃焼はできない。だからその酸素が足りないと不完全燃焼になる。不完全燃焼をすると煙が発生するんだけど、その煙には主に二種類あって……」
「リツ」
「その中で特に黒い煙は化学物質なんかが……あ、でもこの世界には化学物質が……」
「リツ! いいから要点を言え。何をすればいい」
イホークに肩を揺すぶられ、我に返る。
「あ、ご、ごめん。そうだね。弓隊は風上である北にいる。その他の兵士は俺達が来るのを待ち構えて建物を囲んでいるはずだ。だから身を隠すために煙を利用して風下に逃げるしかないと思う」
「そうだが、煙が発生するまでここで待つのか? 焼け死ぬか、蒸し殺されるぞ」
「酸素の供給量を減らして、早々に煙を出せばいい」
「よくわからないが、それが可能ならいい作戦かもしれない。だが、煙から出たらすぐに見つかるぞ」
「わかってる。だから煙から出る瞬間、この水を一瞬で沸騰させてほしいんだ。突沸といって一気に空気が膨張して爆発が起こるはずだ。こんな入れ物でどこまで圧力が高まるのかわからないけど馬は驚くはずだ」
幼い頃に龍司と行った危険な遊びを思い出す。好奇心旺盛で怖い物知らずの龍司はどこで知ったのか、水蒸気爆発をやってみたいと言い出した。あの頃の龍司は爆発に興味を持っており、律は龍司がユナボマーになるのではないかと心配したほどだった。
そのときは水を入れた大きなビーカーに蓋をして密閉したものを使った。龍司の家の庭で卓上コンロを使ってビーカーを温め、龍司と二人離れてそれを見ていた。
どこから持ってきたのか龍司は機動隊が使うような盾を持ってきており、そこに二人で身を隠して、透明の窓からその様子を見たのだ。律自身はとても怖かったのだが、龍司が律の肩を抱いてぎゅっと体を寄せてくれたのが嬉しくて、次第に二人だけで悪いことをしているワクワク感のほうが上回っていった。
しばらく見ていると、大きな爆発音と共にビーカーが弾けた。それは想像以上に凄まじい爆発だった。家の中からは何人も出てきて「襲撃か!」という声も聞こえてきた。
誰が通報したのか警察まで駆けつけてきて、それはそれは大騒ぎになった。勿論龍司も律もこっぴどく叱られたが、龍司の父親は龍司のそういった面を愛していたようで、よくやったと褒められたらしい。
龍司の「テロとかでは圧力鍋を使うらしい」という言葉に嫌な予感がしたが、予感は的中し、今度は圧力鍋でやってみたいと言いだした。「誰もいない山ならいいじゃん」との言葉にさすがの律も全力で止めた。龍司の言うことには大抵賛成していた律も、それはまずいと幼心に思ったのだ。
龍司のことを思い出し律は首を振る。龍司に会うためにも今は取りあえず生き延びたい。そのためにできることをするだけだ。あのときのようにうまくはいかなくても、爆発など経験したことのない彼らは驚くだろうから少しの足止めにはなるはずだ。
「あ、でも、川の方に逃げても、結局すぐに追いつかれるから意味がないか。町の方に逃げた方がいいね。ごめん、役に立たない作戦だった」
「いや、兵は北に大勢を配置している。城に帰す気がないのだろう。だから川の方向に逃げた方が勝算は高いだろうな。やってみよう。失敗しても恨むなよ」
イホークがうなずくのに、律もうなずいた。
「袋には水と、爆発したときの威力を増すためになんでもいいから適当に入れて」
ジェムとイホークに水筒を渡すと、二人は水道から水を汲んだ。外の井戸から水を引いていたのが幸運だった。
火はすぐに回っていき室温は一気に上がっていった。時間はもう残されていない。
「まず、袋を窓から一気に放って、それから酸素を減らす。酸素は全体的に減らして。ここだけ酸素を残したら、一気に下に燃え広がってくるだろうから危険だ。それで、煙が出てきたら川に向かって走る。濡れた布を口に当てて、なるべく息を止めるんだ。一酸化炭素を吸い込んだら意識が朦朧としてしまうし、死ぬかもしれないから」
律は裏口の方を指差すと、ジェムの顔を見た。口にこそ出さないが、体を強ばらせて不安そうな顔をしている。
「ジェム、大丈夫だ。敵は燃えやすくするために、風の強い時間を選んだんだと思うけど、それが裏目に出た。お陰で煙は広く広がる。それに、水路を走れば煙で見えなくても迷うことはない。煙は想像以上に前が見えなくなるけど、一直線に進もう。いいね。神は俺達に味方している」
律だって煙の中を歩いたことなどない。それに神など信じていなかったが、ジェムが少しでも安心できればいいと思って自信があるようにみせた。
「はい」
ジャムは覚悟を決めたようにうなずいた。
イホークは水の入った袋全てに触れて「糸」をつけると、律の顔を見てくる。
「投げるぞ」
イホークが袋浮かせると、次々と窓の外から外に投げていった。飛ばせているというのが正解か。
状況も忘れて、律は思わず見入ってしまう。他のガーディアンの力を見たことはあったが、ここまで強い力を見たのは初めてだった。
イホークはどうするか考えているようだ。外の兵士はどうなっているのかが律には気がかりだった。呻き声は一矢目に比べると明らかに減っている。いくつもの命が失われたのだろう。赤ん坊の死体が頭の中に浮かんできたが、今は考えるなと自分に言い聞かせた。
「なんか臭くないですか」
ジェムの言葉に、律は鼻をクンクンとさせると確かに焦げ臭い。
イホークが「火矢だ」と呟いた。乾燥している時期であるし、木の建物だ。すぐに燃えてしまうだろう。
「火を消す」
「どうやって?」
水も不足しているし、なにより消火のために隣室に入ればすぐに射られてしまうだろう。
「酸素とやらを断てばいいのだろう」
「え?」
「なんて顔をしている。リツが言ったのだろう。燃えるためには酸素が必要だと。講義中、ただ突っ立ていただけではない」
講義とは、主にガーディアンを相手に行った分子構造の講義のことだろう。より多くの物質を操れるようにと教えていた。確かにイホークは律の護衛として常に講義を聞いていただろうが、聞いていたからといってガーディアンではないイホークにそんなことができるはずはない。
「言ったって、え? でも、そんなことはできないよ」
「俺はガーディアンだ」
「え?」
イホークがガーディアン? そんな話聞いたことはない。ただでさえこんな事態だ。律の頭は全く追いついていなかったが、イホークは律に説明をすることもなく手を宙に向け集中するように目を瞑った。
「待って!」
律はイホークの肩に手をかけると、周りに視線を素早く這わせた頭の引き出しを次々と開けていく。今まで、これほどまで素早く開いたことなどなかっただろう。
「火が消えたら踏み込まれるかもしれない」
「そうだが、焼け死ぬつもりはない」
「斬り殺されるつもりもないです。酸素を操るのはどれくらいの距離まで有効?」
「五十メートル程度だろうか」
「なんでわかる?」
「試してみたからだ」
「色々聞きたいけど、取りあえずあとで聞きます」
律は羊の胃袋でできた水筒に蛭のいる水槽の水を入れると、その水槽を割ってガラス片と蛭をその中にぶちこみ、しっかりと口を結んだ。
「じゃあ、これ、どこまで飛ばせる? ガーディアンならできるでしょ? やっぱり五十メートルくらい?」
「物体ならもっと操れる。この重さならもっといけるはずだ」
「敵の位置までは?」
「可能だ」
「投げた後、中に入っている水の温度は上げられる? 一瞬で水を沸騰させてほしいけど、さすがにそれは難しいよね」
「形になっている物であれば、糸をつけられる」
「糸?」
「人によって言い方はそれぞれだが、私は糸と言っている。意識の一端をくくりつけるというか、なんというべきか……糸が繋がっていれば温度を上昇させることは可能だろう」
「じゃあ、お願いがあるんだ。燃焼とは酸化反応だ。酸素がないと燃焼はできない。だからその酸素が足りないと不完全燃焼になる。不完全燃焼をすると煙が発生するんだけど、その煙には主に二種類あって……」
「リツ」
「その中で特に黒い煙は化学物質なんかが……あ、でもこの世界には化学物質が……」
「リツ! いいから要点を言え。何をすればいい」
イホークに肩を揺すぶられ、我に返る。
「あ、ご、ごめん。そうだね。弓隊は風上である北にいる。その他の兵士は俺達が来るのを待ち構えて建物を囲んでいるはずだ。だから身を隠すために煙を利用して風下に逃げるしかないと思う」
「そうだが、煙が発生するまでここで待つのか? 焼け死ぬか、蒸し殺されるぞ」
「酸素の供給量を減らして、早々に煙を出せばいい」
「よくわからないが、それが可能ならいい作戦かもしれない。だが、煙から出たらすぐに見つかるぞ」
「わかってる。だから煙から出る瞬間、この水を一瞬で沸騰させてほしいんだ。突沸といって一気に空気が膨張して爆発が起こるはずだ。こんな入れ物でどこまで圧力が高まるのかわからないけど馬は驚くはずだ」
幼い頃に龍司と行った危険な遊びを思い出す。好奇心旺盛で怖い物知らずの龍司はどこで知ったのか、水蒸気爆発をやってみたいと言い出した。あの頃の龍司は爆発に興味を持っており、律は龍司がユナボマーになるのではないかと心配したほどだった。
そのときは水を入れた大きなビーカーに蓋をして密閉したものを使った。龍司の家の庭で卓上コンロを使ってビーカーを温め、龍司と二人離れてそれを見ていた。
どこから持ってきたのか龍司は機動隊が使うような盾を持ってきており、そこに二人で身を隠して、透明の窓からその様子を見たのだ。律自身はとても怖かったのだが、龍司が律の肩を抱いてぎゅっと体を寄せてくれたのが嬉しくて、次第に二人だけで悪いことをしているワクワク感のほうが上回っていった。
しばらく見ていると、大きな爆発音と共にビーカーが弾けた。それは想像以上に凄まじい爆発だった。家の中からは何人も出てきて「襲撃か!」という声も聞こえてきた。
誰が通報したのか警察まで駆けつけてきて、それはそれは大騒ぎになった。勿論龍司も律もこっぴどく叱られたが、龍司の父親は龍司のそういった面を愛していたようで、よくやったと褒められたらしい。
龍司の「テロとかでは圧力鍋を使うらしい」という言葉に嫌な予感がしたが、予感は的中し、今度は圧力鍋でやってみたいと言いだした。「誰もいない山ならいいじゃん」との言葉にさすがの律も全力で止めた。龍司の言うことには大抵賛成していた律も、それはまずいと幼心に思ったのだ。
龍司のことを思い出し律は首を振る。龍司に会うためにも今は取りあえず生き延びたい。そのためにできることをするだけだ。あのときのようにうまくはいかなくても、爆発など経験したことのない彼らは驚くだろうから少しの足止めにはなるはずだ。
「あ、でも、川の方に逃げても、結局すぐに追いつかれるから意味がないか。町の方に逃げた方がいいね。ごめん、役に立たない作戦だった」
「いや、兵は北に大勢を配置している。城に帰す気がないのだろう。だから川の方向に逃げた方が勝算は高いだろうな。やってみよう。失敗しても恨むなよ」
イホークがうなずくのに、律もうなずいた。
「袋には水と、爆発したときの威力を増すためになんでもいいから適当に入れて」
ジェムとイホークに水筒を渡すと、二人は水道から水を汲んだ。外の井戸から水を引いていたのが幸運だった。
火はすぐに回っていき室温は一気に上がっていった。時間はもう残されていない。
「まず、袋を窓から一気に放って、それから酸素を減らす。酸素は全体的に減らして。ここだけ酸素を残したら、一気に下に燃え広がってくるだろうから危険だ。それで、煙が出てきたら川に向かって走る。濡れた布を口に当てて、なるべく息を止めるんだ。一酸化炭素を吸い込んだら意識が朦朧としてしまうし、死ぬかもしれないから」
律は裏口の方を指差すと、ジェムの顔を見た。口にこそ出さないが、体を強ばらせて不安そうな顔をしている。
「ジェム、大丈夫だ。敵は燃えやすくするために、風の強い時間を選んだんだと思うけど、それが裏目に出た。お陰で煙は広く広がる。それに、水路を走れば煙で見えなくても迷うことはない。煙は想像以上に前が見えなくなるけど、一直線に進もう。いいね。神は俺達に味方している」
律だって煙の中を歩いたことなどない。それに神など信じていなかったが、ジェムが少しでも安心できればいいと思って自信があるようにみせた。
「はい」
ジャムは覚悟を決めたようにうなずいた。
イホークは水の入った袋全てに触れて「糸」をつけると、律の顔を見てくる。
「投げるぞ」
イホークが袋浮かせると、次々と窓の外から外に投げていった。飛ばせているというのが正解か。
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