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㉕令嬢の2つの顔
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黒崎 玲(くろさき れい)
…黒崎財閥のお嬢様。親の命令は絶対と思っていて、逆らうことすら出来ない小心者。自分の意見などない。
れいな
…玲の裏人格。小さい時から玲の中に住んでいたが、表に出ることはなかった。ある日から表に出ることが多くなり、その度に、玲にはれいなの時の記憶が消えていく。玲も知らない秘密の部屋で何やら怪しいことをしているとか…。
※玲視点
「玲様、この頃、執事やメイドが消えているのです」
「……え?それって…」
「玲様がお気に入りなさっている執事やメイドが、行方不明になっているのです」
「行方不明…?」
「えぇ。行方不明になっている者すべてが、女性なのです」
「……それは、不思議ね…捜索願は…?」
「旦那様も奥様も、執事やメイドくらい代わりがいるからと出さないようにと仰って…」
「……そう」
私は黒崎財閥令嬢、黒崎玲。小さい時から親の命令は絶対だと教育されてきた。娘の私に、意見を持つ資格なんてないのだと、この体と心に深く刻まれてきた。だから私は、親の決めたことに逆らうことなどできない、いや、逆らうことすら選択肢を与えられない。私は親にとって、ただの人形でしかないの。
「……少し屋敷の中を歩くわ、下がって。着いてこなくていいわ」
「…かしこまりました」
私は自室を出て、屋敷の中を歩く。
地下に足を踏み入れた時、右側に見覚えのない部屋があるのに気づいた。
こんな部屋、あったのかしら。そう思いつつ、部屋のドアに近づきノックをした。だけど返事はなし。ドアノブに手を伸ばし引っ張るとドアが開いた。そして私は、目に飛び込んできた景色に驚愕したの。
「なに、これ…」
そこにあったのは、牢屋と、その中で倒れている執事やメイドたちだった。
「……あれは…美谷!なんでここに」
「………」
「……美谷、目を開けて?!」
美谷は私のお気に入りの執事。その美谷が、なぜここに…。
「………あーらら、ダメじゃない…ここに来ちゃ…玲?」
「……誰?」
部屋の奥にあるプロジェクターが起動し、上から幕が下ろされる。その幕には、私が映っていた。
「…こんなに早くバレるとは思わなかったなー…まぁいいっか」
「あなた、誰?」
「私?…やだなぁ、私は貴女だけど?」
「…え?」
「私はあなた。名を名乗るとしたら、れいな、かな。でも私は貴女だからね」
「……どういうこと?」
意味がわからない。この子は私?いったい…何が起こってるの…?
「説明するからよく聞いてね?私はれいな。玲のもう1つの人格だよ。玲は私を知らないはず。だって、私の時は玲に記憶残らないから」
「れいな、私のもう1つの人格…?」
「そう、そういうこと。大丈夫。言いたいことも全てわかるよ。私は貴女だから」
「……それより、この部屋は?」
「…そうだよね、この部屋のこと知らないよね。…この部屋は私の部屋だよ。つまり、玲の部屋でもあるの」
「私の部屋?」
「そう。玲はさ、親の命令は絶対って思ってきたでしょ?でも分かるの。貴女は、親に逆らいたいって気持ちがあるってことを」
「……な、に、を」
「ふふ。玲が気に入ってる執事とメイドたちをここに連れてきたのは、玲の願いを叶えるためなの。ここに閉じ込めれば、玲は好きなようにこの子達を愛せる。この子達も玲に愛されて嬉しいと思うはずだからね」
「…ちょ、っと」
「ああ、心配しないで。あんな親だからこの事なんて気にもしないよ。代わりはいくらでもいる、でしょ?だから玲はこの子達と一緒にいればいいんだよ?」
「……そ、そんな、こと…」
こんなこと、願ったことなんて…
「そんなこと願ってない…」
「願ってない?……おかしいなぁ。願ったはずだよ?私には分かる、私は貴女なんだから」
「……っ、でも!!」
「玲って本当に…素敵だね。表では親の言うこと聞いてるのに、裏で、はしたないことを考えてるなんて。そんな玲が好きだよ、私」
「……れいな、やめて」
「やめて?……やだ。やめないよ。これを望んでるくせに、強がらないで。分かる、私の気持ちは私がよく知ってるから。……こんなことを考える玲も、表の玲も、全部好きだよ。れいなが玲を愛してあげる。大丈夫だよ、私に全てを委ねて。玲のためなら何でもするよ。だから…」
「……………」
これが私の望んでたこと…?
そんなこと…あるはずない…
「……っ」
「ねぇ…玲?…素直になりなよ。こういうこと、したかったんでしょ?」
耳元で囁かれる。どうやって?
「なんで、私の耳元で…貴女の声が…」
「ふふ。玲の体を乗っ取ったからだよ。ほら、私の声、聞こえるでしょ?」
「……っ、ほんと…」
「これで玲は私のもの。れいなも、玲のものだよ。だから2人でこの子達のお世話、しよう?私は玲の望むことを手伝うし、ずっとこうして…そばにいるよ。ね?」
……れいなは私。
つまり、これが本当の私。
私の願いが込められた、れいなという私のもう1つの人格。私は、れいなを愛していこうと決めた。
そう、私の本当の姿はこうなのよ。女が欲しいの、男なんて要らない。親の前で見せる娘の姿は偽り。今こうして見せているのが、この私、黒崎玲の姿。
だから…私に、全てを捧げなさい。それが、私に気に入られた者たちの定めなのよ。私から逃げることは許さない、覚悟しなさい、あなた達…。
…黒崎財閥のお嬢様。親の命令は絶対と思っていて、逆らうことすら出来ない小心者。自分の意見などない。
れいな
…玲の裏人格。小さい時から玲の中に住んでいたが、表に出ることはなかった。ある日から表に出ることが多くなり、その度に、玲にはれいなの時の記憶が消えていく。玲も知らない秘密の部屋で何やら怪しいことをしているとか…。
※玲視点
「玲様、この頃、執事やメイドが消えているのです」
「……え?それって…」
「玲様がお気に入りなさっている執事やメイドが、行方不明になっているのです」
「行方不明…?」
「えぇ。行方不明になっている者すべてが、女性なのです」
「……それは、不思議ね…捜索願は…?」
「旦那様も奥様も、執事やメイドくらい代わりがいるからと出さないようにと仰って…」
「……そう」
私は黒崎財閥令嬢、黒崎玲。小さい時から親の命令は絶対だと教育されてきた。娘の私に、意見を持つ資格なんてないのだと、この体と心に深く刻まれてきた。だから私は、親の決めたことに逆らうことなどできない、いや、逆らうことすら選択肢を与えられない。私は親にとって、ただの人形でしかないの。
「……少し屋敷の中を歩くわ、下がって。着いてこなくていいわ」
「…かしこまりました」
私は自室を出て、屋敷の中を歩く。
地下に足を踏み入れた時、右側に見覚えのない部屋があるのに気づいた。
こんな部屋、あったのかしら。そう思いつつ、部屋のドアに近づきノックをした。だけど返事はなし。ドアノブに手を伸ばし引っ張るとドアが開いた。そして私は、目に飛び込んできた景色に驚愕したの。
「なに、これ…」
そこにあったのは、牢屋と、その中で倒れている執事やメイドたちだった。
「……あれは…美谷!なんでここに」
「………」
「……美谷、目を開けて?!」
美谷は私のお気に入りの執事。その美谷が、なぜここに…。
「………あーらら、ダメじゃない…ここに来ちゃ…玲?」
「……誰?」
部屋の奥にあるプロジェクターが起動し、上から幕が下ろされる。その幕には、私が映っていた。
「…こんなに早くバレるとは思わなかったなー…まぁいいっか」
「あなた、誰?」
「私?…やだなぁ、私は貴女だけど?」
「…え?」
「私はあなた。名を名乗るとしたら、れいな、かな。でも私は貴女だからね」
「……どういうこと?」
意味がわからない。この子は私?いったい…何が起こってるの…?
「説明するからよく聞いてね?私はれいな。玲のもう1つの人格だよ。玲は私を知らないはず。だって、私の時は玲に記憶残らないから」
「れいな、私のもう1つの人格…?」
「そう、そういうこと。大丈夫。言いたいことも全てわかるよ。私は貴女だから」
「……それより、この部屋は?」
「…そうだよね、この部屋のこと知らないよね。…この部屋は私の部屋だよ。つまり、玲の部屋でもあるの」
「私の部屋?」
「そう。玲はさ、親の命令は絶対って思ってきたでしょ?でも分かるの。貴女は、親に逆らいたいって気持ちがあるってことを」
「……な、に、を」
「ふふ。玲が気に入ってる執事とメイドたちをここに連れてきたのは、玲の願いを叶えるためなの。ここに閉じ込めれば、玲は好きなようにこの子達を愛せる。この子達も玲に愛されて嬉しいと思うはずだからね」
「…ちょ、っと」
「ああ、心配しないで。あんな親だからこの事なんて気にもしないよ。代わりはいくらでもいる、でしょ?だから玲はこの子達と一緒にいればいいんだよ?」
「……そ、そんな、こと…」
こんなこと、願ったことなんて…
「そんなこと願ってない…」
「願ってない?……おかしいなぁ。願ったはずだよ?私には分かる、私は貴女なんだから」
「……っ、でも!!」
「玲って本当に…素敵だね。表では親の言うこと聞いてるのに、裏で、はしたないことを考えてるなんて。そんな玲が好きだよ、私」
「……れいな、やめて」
「やめて?……やだ。やめないよ。これを望んでるくせに、強がらないで。分かる、私の気持ちは私がよく知ってるから。……こんなことを考える玲も、表の玲も、全部好きだよ。れいなが玲を愛してあげる。大丈夫だよ、私に全てを委ねて。玲のためなら何でもするよ。だから…」
「……………」
これが私の望んでたこと…?
そんなこと…あるはずない…
「……っ」
「ねぇ…玲?…素直になりなよ。こういうこと、したかったんでしょ?」
耳元で囁かれる。どうやって?
「なんで、私の耳元で…貴女の声が…」
「ふふ。玲の体を乗っ取ったからだよ。ほら、私の声、聞こえるでしょ?」
「……っ、ほんと…」
「これで玲は私のもの。れいなも、玲のものだよ。だから2人でこの子達のお世話、しよう?私は玲の望むことを手伝うし、ずっとこうして…そばにいるよ。ね?」
……れいなは私。
つまり、これが本当の私。
私の願いが込められた、れいなという私のもう1つの人格。私は、れいなを愛していこうと決めた。
そう、私の本当の姿はこうなのよ。女が欲しいの、男なんて要らない。親の前で見せる娘の姿は偽り。今こうして見せているのが、この私、黒崎玲の姿。
だから…私に、全てを捧げなさい。それが、私に気に入られた者たちの定めなのよ。私から逃げることは許さない、覚悟しなさい、あなた達…。
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