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姫の存在

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??「あぁもう!だから私、嫌だったのよ!あなた!」

??「お前は穆家の恥だ。お前のような子供など要らぬ!」


……また、始まった

そのようなことを言われても私は何も思わぬ

それ程、私が要らぬ子供ならば

母の中に居た時に殺せば良かったものを

私を生かしておきながら

都合のいいように扱う


まあ、よい

私はいづれ、この世から消滅するのだから


黒猫は災いをもたらすなどという妄信が流行っているこの時代に、私は産まれた

この世に生を受けたからといって

何の感情もなく、只、運命で定められたように生きていくことしか考えておらぬ

この者らは、黒猫がやって来るのは私の存在が悪だと知らしめる為だと言い張る

それならば、そうなのだろう

何を反対する必要がある?
運命には逆らえぬのに、なぜ、あの二人は逆らおうとするのだ?


天佑「……姉上を、災いだって?……僕が間違えて連れてきただけなのに!僕を叱るべきなのに!!何で母上も父上も、姉上を傷付けるの!?」

未央「…傷付く?…私のことを知っているというのに、なぜそのようなことを言う」

華弥「…未央様!」

天佑「僕は姉上が大好きなんだ!!姉上を失うなんて、考えたくない!!僕が悪いのに!!…華弥、姉上をお願い」

華弥「っ、天佑様!」

未央「……煩い男達だ」

華弥「…宜しいのですか!?」

未央「何が」

華弥「天佑様を追いかけなくても良いのですか? 若様はお身体が弱く、あの気性です。旦那様と奥様に罰を与えるようせがむかもしれませんよ?」

未央「…そのようなこと、私には興味無い。好きにすればいいだろう」

華弥「……そんなこと」

未央「疲れた。部屋に戻る」


それ程、あの者が気にかかるのならば
そなたが行けばよいものを
なぜ、私に追いかけさせようとするのか
この者の考えることはよく分からぬ



天佑「……姉…上……もう……いい…」


私のためにそこまでするとは


天佑「……姉上を、守ったよ…」


体に傷跡…か
誠に罰を受けたというか


天佑「………姉上は、僕が、守る。今はまだ、頼りがいは無い…かもしれないけど…必ず、姉上を守れる男になるよ…だから、待ってて…姉上」


私を守る…
この男は一体、どこまでいけば気が済む
どこまで愚か者になれれば満足するのか

華弥「天佑様、医者を呼びますゆえ、お部屋に戻りましょう」


天佑「……」


未央「………好きにすればいい」


どれだけ足掻いても
結末は同じ

それが分からぬそなたには
何も分からぬだろう

私という存在が消滅するのは、
早いか遅いかというだけの違い
私が災いと言うのなら すぐに消せばいい
殺せばいい


そもそも私は誰のことも信じてなどおらぬ
この二人のこともそうだ


なぜか、
頭のイイ人間ならば、分かるはず

あの二人は、私の敵、なのだ
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