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潮の町の神様
これからのこと
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「ふう、ただいまー。」
「おかえりー。」
「おかえりなさい、渉さん。」
俺の家に着いたら、なぜかナツミちゃんにお帰りといわれ、カモメにもそうされてしまったのだった。随分と仲良くなったな、俺たち。
「あはは……ありがとう。それじゃあ、お好み焼きでも食べる?」
「それにしてもいつも、綺麗な家よねー、ここ。」
ナツミちゃんは俺の家の中を見て、その綺麗さに感心している。カモメのことは聞いていたんだろうけど、ほぼ一人暮らしみたいなもんだし、散らかった部屋をどこにも作っていないのが珍しいのだろう。
「毎日こまめにお掃除と片づけをしていれば大丈夫ですよ。」
「うん、部屋が綺麗な人はみんなそう言うんだけどさ。
でも掃除ってそういうものなのよね。放置して気づいたら大変なことに。」
ナツミちゃんは家のことは手伝うが、掃除はそんなに得意じゃないようだ。
「とにかく行こうか。」
この話はさっさと止めることにして、お好み焼きをみんなで食べることにした。
・・・・・・。
「いやー今日は、長い一日だったね。」
「そうね。」
「ナツミさんもお疲れさまでした。」
歓迎会を取り仕切ってくれたのはナツミちゃんなんだからねぎらう相手もそうだろう。俺たちはナツミちゃんに買ってきたペットボトルのお茶で乾杯をした。
「さすがに二日連ちゃんで酒はね。」
ナツミちゃんが買ってきてくれたお酒はまだあったが、昨日は酔いつぶれて大変なことになったため用意していなかった。ナツミちゃんにも危うくトラウマを残すところだったからな。
「そうね。私も昨日は飲みすぎたから。明日に響くと良くないし。」
「ナツミさん、今日は泊っていかれないんですか?」
「昨日だって泊まるつもりはなかったのよ。大体、朝早いのはカモメも同じでしょ。」
「そうですね。明日は……金曜日ですし。」
定食屋の定休日は木曜日と日曜日だった。商店街だと日曜には閉まってしまうところもあるし、それに合わせたのもあるが個人経営でも週に二日、片方は週末に欲しいのは切なる願いでもあるのだろう。町内会のお祭りや催し物があればまた、日程は別なのだろうけど。
「まあ、明日を乗り切ればまた休みだから。
そうしたらまた、厭じゃなかったら、あんたんちに来てあげるわよ。」
「ありがとう、全然、厭じゃないよ。寧ろこんなに付き合ってくれて、ありがたいぐらい。」
「……う、うん。アンタもお礼、ちゃんと言うのよね。」
「お、俺、ナツミちゃんにはここに来てもらいたいって。思っているからで。」
「う……。」
俺の言葉にナツミちゃんも戸惑っているようだが厭ではなさそうだった。
「……。」
カモメはそれを微笑まし気に眺めていた。
「あ、ごめんねカモメ。カモメもいたのに。」
「いえ、いいんですよ。
ナツミさんと渉さんがそうされるのは私にとっても、いいことですから。」
「あはは……カモメにそう言われちゃうとね。」
ナツミちゃんとカモメも、多分カモメの真意は伝わっていないだろうけど和気あいあいと話している。俺と同居しているし親戚でも親しげだし、それでナツミちゃんも焦っていたのはあるかもしれないな。じゃなきゃこんなに早く動くはずがない。
「……お、うまい。」
俺はウケ狙いで買ったタコ入りお好み焼きを口に運んだが、さすがのタコ焼き味だった。
「これは本当に、タコ焼き味だな。」
「タコ焼きとしか言いようがないわよね。ホタテも美味しいわよ。」
「エビもですね。」
みんなそれぞれ、買ったお好み焼きをつまんでいる。生地もソースもみんなうまい。
「うーん、しかし美味しいお好み焼きだな。
次はここの地元のお好み焼きも行ってみるかな。」
「あ、あれは店に行くか、自分ちの焼き立てじゃないと。
インスタント乾麺掛けてもしけるわよ。」
「そこなんだよなー。ソース生地のあのボリボリ感がいいんだよ。」
俺の地元にもご当地お好み焼きみたいなのがあって。それも地元のジャンクフードは子供の頃、よく食べていたから知っていた。味としては、もんじゃ焼きみたいなのだがそれよりも少し固めの、生地をゆるくしたお好み焼きである。焼き立ての所に砕いてそのまま食べられる味の付いたインスタントの乾麺のお菓子を入れて、ボリボリした歯ごたえを楽しむのだった。味もレシピも全然、違うが食感のイメージは皿うどんみたいと言うと長崎の人に怒られるやつだが。
「でも良かったです、渉さんもナツミさんも仲良くなられたみたいで。」
「え、そ、そう? カモメからもそう見える?」
「ん……何よいきなり。」
「はい。私……そろそろここをお暇するかもしれなくて。」
「あ……。」
そういえばカモメは、俺とナツミちゃんの縁結びが終わったらここを出ていく予定だったのだ。
「そういえば長居は出来ないって言ってたわよね。家の事情で戻るかなんかなの?」
「まだはっきりとは。でも、お祭りが過ぎて……今年中には。」
「ふうん。でもまた、ここには来るんでしょ?」
「……それはちょっと、まだ分かりませんね。」
「どうなっているのよ、あんたんち。
一人で渉と住まわせたり、帰ったら会わせなかったりで。」
ナツミちゃんはカモメが神の遣いで、俺とナツミちゃんの縁を結ぶのが修行だから俺と同居しているのを知らないし教えられない。
「家に帰ったら、私も向こうでお仕事を探すんです。」
「あ、それじゃあ説明のしようがないわね。どんな仕事か分からないし。」
神の遣いになれてもその先は分からないという事か。
「ん……じゃあしばらくしたら、カモメとお別れなのね。」
「はい。今年中にはそうなると思いますが、後は渉さんの仕事次第ですね。」
「あはは……なるべくカモメには負担にならないようにするよ。」
カモメも仕事ではアッサリ馴染んだし、俺はナツミちゃんと仲良くなっちゃったしで、後は本当に、俺が仕事を見つけるか、ナツミちゃんのところで働けるようになるかなんだな。
「そっか……俺も今、いなくなる日付は初めて知ったけど。
カモメは俺がここでやっていけるようになるまでって元々の約束だったんだ。」
本当は縁結びなのだが縁結びをする条件がナツミちゃんとくっつくことで、その条件がナツミちゃんの店で成功することなのだから嘘ではない。
「そうだったんだ。」
ナツミちゃんも別に不思議な話じゃないのか、ようやく納得したようだった。
「でも、お別れって知っちゃうとシンミリしちゃうわね。
まだ気は早いけど今までありがとう、カモメ。」
「お、俺も。今までありがとう。」
「ありがとうございます、皆さん。」
「ん……酒は呑まないはずだったけど、こうなったら開けちゃおう。」
「はい。私……持ってきますね。」
「あ、俺も手伝うよ。」
という訳でまた、ナツミちゃんが仕切って飲み会に結局なってしまい。
「うう……呑んだ。」
案の定、またナツミちゃんが場を持たせるために飲みすぎてしまっていた。
「俺も……呑みすぎた。」
カモメは俺が成功するかどうか見極めたからでの、あの発言なんだろう。俺も寂しさはあったが、カモメは俺が成功すると思ったならそれは嬉しい事でもあり。やはり飲みすぎてしまった。
「お水、持ってきますね。」
カモメが台所に向かってしまい、またこのパターンになった。違うのは……俺がナツミちゃんとくっついたことか。
「明日は……しっかりしないとな。」
カモメだって俺に告げたのはそういうことだろう。きちんと仕事をしてカモメに大丈夫だって言わないとな。
「ん……しっかりしてくれるんだ、渉。」
「ナツミちゃん?」
ナツミちゃんが俺の方を見ていた。表情は嬉しそうで。今日まで俺を元気づけるためにどのくらいのことをしてくれたのかと思うと、ナツミちゃんは俺に、どれだけこうなって欲しかったんだろうなと思ってしまう。
「何か、さ。カモメもあんたが軌道に乗るまでの約束だったんだろうし。
カモメはカモメでこっちで職業訓練みたいなことだってしたんだろうし。
みんな……きちんと動けるようになって良かったなって思ったの。」
「うん……一番大変なのは休日と連休だから、それにさえ体が慣れれば。」
「そんなこと言って。本当に大丈夫なの?」
「俺も……そうなるためにやる事とかいっぱいあるんだろうなって思っているよ。
ナツミちゃんの家に……そこまで置いて貰える保証があるかは分からないけど。」
一応、俺の今の職も家族経営の内に入るんだろうな、と思ってはいる。交通費はかからないし。気心は知れているし融通も利かせられるんだろう。
「アンタはさ、心配することとかもあるんだろうけど。
まずはやってみてからそう思いなさいよ。」
「い、いやだってさ。俺だってついていけるようにしたいけど。
まだまだなんだって自覚しているんだよ。」
「ん……でも、カモメはもういいってアンタの事は思ったんでしょ?」
「う、うん。あの口ぶりからだとそうだと思う。」
「まあ、半年もしないでそう言って貰えたんだから、アンタは見込みがあるって事よ。」
「……。」
ナツミちゃんはこれだけ俺のことを励ましてくれているし。随分と嬉しそうだし俺を買ってくれている。一昨日はカモメもそうしてくれたし、二人がこうしてくれなかったら俺はきっとこんなに早く立ち直ろうとは思わなかったんだろうな。
「うん。ありがとう……ナツミちゃん。」
「アンタも。見込んで貰えたんだからシャキッとしなさいよ。」
「そうだね。」
「ん……。」
いつの間にかナツミちゃんと唇を寄せてしまい。
「……ちゅ。」
ナツミちゃんとまたキスをしていた。
「また、しちゃったね。」
「うん。でも今度は。ナツミちゃんとこれからもこうしたいっていう。」
「昨日のアンタもそうだったんじゃないの?」
「お、俺だって昨日とは違うようになったんだよ!」
「それならもっと、元気になれるようにしないとですね。」
「あ……。」
「か、カモメ?」
俺とナツミちゃんがキスしていたところをまたカモメに見られてしまった。また……? そう、まただ。そこまでは覚えているんだが、その先が思い出せない。
「大丈夫です。これは、渉さんにもっと働いてもらうための行為ですから……。」
「う、ううん……そう。カモメとはキチンとお別れだってしないとだし。」
「え、ええ……私も渉にはシャキッとして貰わないと。」
こんなことが前にもあったような気がしたが俺とナツミちゃんの意識はどんどん落ちていった。
「おかえりー。」
「おかえりなさい、渉さん。」
俺の家に着いたら、なぜかナツミちゃんにお帰りといわれ、カモメにもそうされてしまったのだった。随分と仲良くなったな、俺たち。
「あはは……ありがとう。それじゃあ、お好み焼きでも食べる?」
「それにしてもいつも、綺麗な家よねー、ここ。」
ナツミちゃんは俺の家の中を見て、その綺麗さに感心している。カモメのことは聞いていたんだろうけど、ほぼ一人暮らしみたいなもんだし、散らかった部屋をどこにも作っていないのが珍しいのだろう。
「毎日こまめにお掃除と片づけをしていれば大丈夫ですよ。」
「うん、部屋が綺麗な人はみんなそう言うんだけどさ。
でも掃除ってそういうものなのよね。放置して気づいたら大変なことに。」
ナツミちゃんは家のことは手伝うが、掃除はそんなに得意じゃないようだ。
「とにかく行こうか。」
この話はさっさと止めることにして、お好み焼きをみんなで食べることにした。
・・・・・・。
「いやー今日は、長い一日だったね。」
「そうね。」
「ナツミさんもお疲れさまでした。」
歓迎会を取り仕切ってくれたのはナツミちゃんなんだからねぎらう相手もそうだろう。俺たちはナツミちゃんに買ってきたペットボトルのお茶で乾杯をした。
「さすがに二日連ちゃんで酒はね。」
ナツミちゃんが買ってきてくれたお酒はまだあったが、昨日は酔いつぶれて大変なことになったため用意していなかった。ナツミちゃんにも危うくトラウマを残すところだったからな。
「そうね。私も昨日は飲みすぎたから。明日に響くと良くないし。」
「ナツミさん、今日は泊っていかれないんですか?」
「昨日だって泊まるつもりはなかったのよ。大体、朝早いのはカモメも同じでしょ。」
「そうですね。明日は……金曜日ですし。」
定食屋の定休日は木曜日と日曜日だった。商店街だと日曜には閉まってしまうところもあるし、それに合わせたのもあるが個人経営でも週に二日、片方は週末に欲しいのは切なる願いでもあるのだろう。町内会のお祭りや催し物があればまた、日程は別なのだろうけど。
「まあ、明日を乗り切ればまた休みだから。
そうしたらまた、厭じゃなかったら、あんたんちに来てあげるわよ。」
「ありがとう、全然、厭じゃないよ。寧ろこんなに付き合ってくれて、ありがたいぐらい。」
「……う、うん。アンタもお礼、ちゃんと言うのよね。」
「お、俺、ナツミちゃんにはここに来てもらいたいって。思っているからで。」
「う……。」
俺の言葉にナツミちゃんも戸惑っているようだが厭ではなさそうだった。
「……。」
カモメはそれを微笑まし気に眺めていた。
「あ、ごめんねカモメ。カモメもいたのに。」
「いえ、いいんですよ。
ナツミさんと渉さんがそうされるのは私にとっても、いいことですから。」
「あはは……カモメにそう言われちゃうとね。」
ナツミちゃんとカモメも、多分カモメの真意は伝わっていないだろうけど和気あいあいと話している。俺と同居しているし親戚でも親しげだし、それでナツミちゃんも焦っていたのはあるかもしれないな。じゃなきゃこんなに早く動くはずがない。
「……お、うまい。」
俺はウケ狙いで買ったタコ入りお好み焼きを口に運んだが、さすがのタコ焼き味だった。
「これは本当に、タコ焼き味だな。」
「タコ焼きとしか言いようがないわよね。ホタテも美味しいわよ。」
「エビもですね。」
みんなそれぞれ、買ったお好み焼きをつまんでいる。生地もソースもみんなうまい。
「うーん、しかし美味しいお好み焼きだな。
次はここの地元のお好み焼きも行ってみるかな。」
「あ、あれは店に行くか、自分ちの焼き立てじゃないと。
インスタント乾麺掛けてもしけるわよ。」
「そこなんだよなー。ソース生地のあのボリボリ感がいいんだよ。」
俺の地元にもご当地お好み焼きみたいなのがあって。それも地元のジャンクフードは子供の頃、よく食べていたから知っていた。味としては、もんじゃ焼きみたいなのだがそれよりも少し固めの、生地をゆるくしたお好み焼きである。焼き立ての所に砕いてそのまま食べられる味の付いたインスタントの乾麺のお菓子を入れて、ボリボリした歯ごたえを楽しむのだった。味もレシピも全然、違うが食感のイメージは皿うどんみたいと言うと長崎の人に怒られるやつだが。
「でも良かったです、渉さんもナツミさんも仲良くなられたみたいで。」
「え、そ、そう? カモメからもそう見える?」
「ん……何よいきなり。」
「はい。私……そろそろここをお暇するかもしれなくて。」
「あ……。」
そういえばカモメは、俺とナツミちゃんの縁結びが終わったらここを出ていく予定だったのだ。
「そういえば長居は出来ないって言ってたわよね。家の事情で戻るかなんかなの?」
「まだはっきりとは。でも、お祭りが過ぎて……今年中には。」
「ふうん。でもまた、ここには来るんでしょ?」
「……それはちょっと、まだ分かりませんね。」
「どうなっているのよ、あんたんち。
一人で渉と住まわせたり、帰ったら会わせなかったりで。」
ナツミちゃんはカモメが神の遣いで、俺とナツミちゃんの縁を結ぶのが修行だから俺と同居しているのを知らないし教えられない。
「家に帰ったら、私も向こうでお仕事を探すんです。」
「あ、それじゃあ説明のしようがないわね。どんな仕事か分からないし。」
神の遣いになれてもその先は分からないという事か。
「ん……じゃあしばらくしたら、カモメとお別れなのね。」
「はい。今年中にはそうなると思いますが、後は渉さんの仕事次第ですね。」
「あはは……なるべくカモメには負担にならないようにするよ。」
カモメも仕事ではアッサリ馴染んだし、俺はナツミちゃんと仲良くなっちゃったしで、後は本当に、俺が仕事を見つけるか、ナツミちゃんのところで働けるようになるかなんだな。
「そっか……俺も今、いなくなる日付は初めて知ったけど。
カモメは俺がここでやっていけるようになるまでって元々の約束だったんだ。」
本当は縁結びなのだが縁結びをする条件がナツミちゃんとくっつくことで、その条件がナツミちゃんの店で成功することなのだから嘘ではない。
「そうだったんだ。」
ナツミちゃんも別に不思議な話じゃないのか、ようやく納得したようだった。
「でも、お別れって知っちゃうとシンミリしちゃうわね。
まだ気は早いけど今までありがとう、カモメ。」
「お、俺も。今までありがとう。」
「ありがとうございます、皆さん。」
「ん……酒は呑まないはずだったけど、こうなったら開けちゃおう。」
「はい。私……持ってきますね。」
「あ、俺も手伝うよ。」
という訳でまた、ナツミちゃんが仕切って飲み会に結局なってしまい。
「うう……呑んだ。」
案の定、またナツミちゃんが場を持たせるために飲みすぎてしまっていた。
「俺も……呑みすぎた。」
カモメは俺が成功するかどうか見極めたからでの、あの発言なんだろう。俺も寂しさはあったが、カモメは俺が成功すると思ったならそれは嬉しい事でもあり。やはり飲みすぎてしまった。
「お水、持ってきますね。」
カモメが台所に向かってしまい、またこのパターンになった。違うのは……俺がナツミちゃんとくっついたことか。
「明日は……しっかりしないとな。」
カモメだって俺に告げたのはそういうことだろう。きちんと仕事をしてカモメに大丈夫だって言わないとな。
「ん……しっかりしてくれるんだ、渉。」
「ナツミちゃん?」
ナツミちゃんが俺の方を見ていた。表情は嬉しそうで。今日まで俺を元気づけるためにどのくらいのことをしてくれたのかと思うと、ナツミちゃんは俺に、どれだけこうなって欲しかったんだろうなと思ってしまう。
「何か、さ。カモメもあんたが軌道に乗るまでの約束だったんだろうし。
カモメはカモメでこっちで職業訓練みたいなことだってしたんだろうし。
みんな……きちんと動けるようになって良かったなって思ったの。」
「うん……一番大変なのは休日と連休だから、それにさえ体が慣れれば。」
「そんなこと言って。本当に大丈夫なの?」
「俺も……そうなるためにやる事とかいっぱいあるんだろうなって思っているよ。
ナツミちゃんの家に……そこまで置いて貰える保証があるかは分からないけど。」
一応、俺の今の職も家族経営の内に入るんだろうな、と思ってはいる。交通費はかからないし。気心は知れているし融通も利かせられるんだろう。
「アンタはさ、心配することとかもあるんだろうけど。
まずはやってみてからそう思いなさいよ。」
「い、いやだってさ。俺だってついていけるようにしたいけど。
まだまだなんだって自覚しているんだよ。」
「ん……でも、カモメはもういいってアンタの事は思ったんでしょ?」
「う、うん。あの口ぶりからだとそうだと思う。」
「まあ、半年もしないでそう言って貰えたんだから、アンタは見込みがあるって事よ。」
「……。」
ナツミちゃんはこれだけ俺のことを励ましてくれているし。随分と嬉しそうだし俺を買ってくれている。一昨日はカモメもそうしてくれたし、二人がこうしてくれなかったら俺はきっとこんなに早く立ち直ろうとは思わなかったんだろうな。
「うん。ありがとう……ナツミちゃん。」
「アンタも。見込んで貰えたんだからシャキッとしなさいよ。」
「そうだね。」
「ん……。」
いつの間にかナツミちゃんと唇を寄せてしまい。
「……ちゅ。」
ナツミちゃんとまたキスをしていた。
「また、しちゃったね。」
「うん。でも今度は。ナツミちゃんとこれからもこうしたいっていう。」
「昨日のアンタもそうだったんじゃないの?」
「お、俺だって昨日とは違うようになったんだよ!」
「それならもっと、元気になれるようにしないとですね。」
「あ……。」
「か、カモメ?」
俺とナツミちゃんがキスしていたところをまたカモメに見られてしまった。また……? そう、まただ。そこまでは覚えているんだが、その先が思い出せない。
「大丈夫です。これは、渉さんにもっと働いてもらうための行為ですから……。」
「う、ううん……そう。カモメとはキチンとお別れだってしないとだし。」
「え、ええ……私も渉にはシャキッとして貰わないと。」
こんなことが前にもあったような気がしたが俺とナツミちゃんの意識はどんどん落ちていった。
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