潮の町の神様

白石華

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潮の町の神様

渉の散策

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「今日から早く、家を出ますね。」
「うん。」

 カモメの仕込みは定食用の生野菜の加工全般といった、当日中に仕込まないと傷んでしまうものの仕込みだった。生肉だったら数日は持つが、野菜は切ってしまうとあっという間に傷んでしまう。特に夏場は気を付けなければだった。最初だから仕込みと言っても実際に料理する方には向かわないんだろうけど。

「俺は俺で、やれるようにならないとな。」

 俺もちょっとだけ自分で家事をするようになり。洗濯干しと布団干し。出かける時間になったら取り込んで片付けておく、というくらいはするようにした。部屋の片づけや掃除もあるが、この広い一軒家である。カモメにやり方を聞いてからにしよう。たしか部屋用のワイパーで簡単に拭くだけならこまめに毎日していれば床はほこりが目立たないらしいけど。そんなことをしつつ、ちょいちょい家事をやっていき。

「……一人の家に戻ったけど。」

 隣にはナツミちゃんの定食屋があって。時間になればカモメが帰ってきて。そういう心の余裕があるからか、一人でいても張り合いがある。だけどもし、一人きりにまたなってしまったら、俺はどうすればいいのだろうか。

「時間まで、もうちょっと町を歩いてみるか。」

 ナツミちゃんに案内されたのは商店街と海沿いと魚市場。もうちょっと探索してみることにした。

 ・・・・・・。

「うー暑い。こりゃ日除けになんか買うようかな。」

 俺は別に町歩きだって苦にはならないが。朝型であっても夏の日差しを舐めていた。次は歩くときはタオルとペットボトルの水くらいは持参しよう。ぽくぽくとレトロな街並みと品ぞろえの商店街を歩いていき、駅近くの所まで行くと今度は海側へ。駅近くは歩道や道路が整備されていて、広い道路と歩道があり、店も建て直されているところもある。昔ながらの町であっても、少しづつ整備はされているのだろう。町を眺めて歩いていれば、行きつけになる場所も見つかるかもしれないし、出ていったとは言え俺が住む場所である。町のことはよく知っておきたかった。

「へーカフェに、食べ物屋に。服屋もあるか。ここは食べるところはホント困らなそうだな。」

 そうして、歩いていくと、大型ショッピングモールが現れた。

「でかい。そして混んでいる。ここでみんな集まって買い物をするのか。」

 複合型テナントの集まる大型ショッピングモールで、衣料品や食料品、ビーチリゾートグッズ、夏だからマリンスポーツグッズも扱った店で、買い物に疲れたらレストランとバーベキュー、カフェで飲み食い可能だし、海に来て遊ぶ人向けの場所のようだ。

「海か。俺もなんか海でやれることでも趣味に持とうかな。」

 昼前には戻って定食屋の手伝いもあるし、簡単な調理施設のある土産物屋でジュースを買うと。一通り眺めて帰ることにした。

「意外と、若い人向けにも町って発展していたんだな。」

 出ていった町でも都心からそう離れていなければ。しかも観光地で集客が見込めるなら。暫く経てば町って発展してくれるんだなと思って俺は少し、ここの町の見方も変わった。しかし変えたのは俺ではなくここに残って発展させてくれた人たちのお陰である。俺もそういうこと、やれればいいんだけどな。

「……お。藤棚だ。」

 ぐるりと回ってまた帰ろうとしたとき。すでに藤の花は終わってしまった後だが。通りに藤棚を見つける。蔓が日陰になっていてちょっとだけ涼しかった。町の美化もされているようだ。

「……帰るか。」

 俺はまた歩いて帰ることにしたが、町が意外と観光しやすさもあるのだろうが、住みやすいように整備されていることが収穫だった。暫くは町歩きをして時間潰しをしてもいいかもしれないな。
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