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喫茶モフモフ
フェアが終わってみんなで打ち上げ
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「今回も無事、最後までやり切れました。これも皆さんのお陰です。」
フェアも初日を大きく超える勢いで最終日まで続き、終わった後にサナダさんがまた、みんなに声を掛ける。
「ありがとうございます。」
「我々にもこういう時間を提供可能になれたんですね。」
「はい、王子の国の旅行への希望者も出ましたし。これで夏休み前の仕事も無事。
行えたようですね。」
隣国でも食べられる南国産のフルーツや、美味しいお菓子、お茶にコーヒーにチーズフォンデュと、夏のバカンスに向けての宣伝もシッカリ行えたモフモフ喫茶だった。
「最終日は王子様も来られなかったようですが、初日にあれだけ目立った後。
閉店時間まで入り浸っていたらいいでしょう。」
「前々から、こんなに来ること自体、我々の店の規模ではありえませんでしたからね。」
「不審者がうろついているとお客様の入りにもフェアの評判にも関わるから。
初日だけで我慢したのかもしれませんね。」
三人が王子は一回でもこっちに来れば印象に残るのに、その後の入り浸り様を見ていると、来ない方が当たり前なのだと改めて思っていた。
「しかし、王子様の事だからどこかで見守っていたような気もします。来なかっただけで。」
「ですな。」
「ははは……。」
すっかり王子様のキャラクターを把握していた三人、特にサナダさんだった。
「という訳で、初日にも行いましたが、今回は皆さんもお疲れだと思いますし。
ちょっと打ち上げをここでやって帰りますか?」
サナダさんの提案に。
「やりますか。」
ゴンドウさんが乗り。
「私も。」
マスエさんも参加することにした。
「じゃあ、今回のフェアで残っていた、トリュフと、コーヒーと。
チーズフォンデュでお祝いしますか。」
「我々も食べられるんですね。」
「やったー。」
隣国でも食べてきたがそれはそれ。サナダさんの粋な計らいでゴンドウさんとマスエさんも今回のフェアの料理にありつけたのだった。
「改めて、皆さん、お疲れさまでした。僕たちも明日から休みですし。
来月の夏休み商戦に向けて、また旅行も企画していますから。
そちらもよろしくお願いします。」
チーズフォンデュを三人で突きながら話をするサナダさん。
「今度はどこに行くんですか?」
ゴンドウさんが質問する。
「僕たちの国から見て南の隣国です。モフモフ喫茶はそこから入ったみたいです。
そこの研修にも向かえるみたいですよ。」
「ほう。南の隣国もご飯が美味しい所。」
「ええ。カフェメニューもピッツァやジェラートがあると思いますが。
アフォガートやエスプレッソ、カプチーノと多彩なメニューになりそうです。
それでも……僕たちのメインはクワトロフォルマッジになりそうですが。」
「クワトロフォルマッジ(四種類のチーズのピザ)でしょうな。」
「はい。景気よくチーズマシマシにしましょう。モッツアレラチーズはブッファにして。
真ん中に乗せてはいかがでしょうか。」
「ですな。」
サナダさんと会話をずっとしていたゴンドウさんが同意するようにうなずく。
「向こうはどういう方が運営されているんですか?」
「僕たちがやってきた国と同じですよ。確か……。」
「ほう……。」
「あっ、またお焦げ。」
マスエさんが底に固まったお焦げを剥がしていく。
「しかし僕たちもスッカリ、フェアが日常化してきましたね。いい事です。」
「ええ。願わくば、こういう日が続けられることを。」
「旅行と美味しい物と、その土地の名物を紹介して、私たちも研修に行けてますね。
本当に、こういう日が……。」
三人がフェアの感慨に耽りつつ、まとめに取り掛かろうとすると。
「やあ諸君! フェアも無事、終わったようじゃないですか! 私もこっちに来られたから。
これから打ち上げなど……おっと。」
勢いよくドアが開き、王子が入ってくると。
「おや、もう打ち上げをしていましたか。まだお腹は空いていますかな?」
「当たり前のように入ってこないでください。」
「今回は私もフェアの打ち上げに参加してもいいはずです。」
「アポなしで突然来ないでくださいって話です。」
初日同様、アポなしで来た王子だった。
「ふふふ。私がアポなしで来たのは今回はサプライズ。ですが無礼は詫びましょう。
ひとまずその話は置いておいて。今日はお菓子を持ってきました!」
「皆さんでお召し上がりください。」
王子の声で従者が入ってきて、隣国のお菓子(主に保存の利く焼き菓子)が持ち込まれる。
「プラリネもありますね。」
目を引かれたサナダさんが言う。
「ええ。甘いものでも食べて疲れを取られてください。宜しければコーヒーもお淹れしますよ。」
「丁度しょっぱいのを食べた後で甘いのとコーヒーも飲みたかった気分……。」
マスエさんがアッサリ揺らいでいる。
「はい。何しろバカンスが終わる秋口には我らの国にとってはアップルパイの季節。
また是非、ウチの国に来て貰おうかと。国境近くにしておきますよ。」
王子が話を勧めようとしている。
「そうなんですね。次はもう決まっているから、丁度その次あたりでお願いします。」
「おや、もうでしたか。場所はどこなんです?」
「秘密です。情報はまだリークできません。」
王子には口を堅くしておかないとどんな競合の仕方をしてくるか分からないから対処をしているサナダさんだった。何せ南の隣国もご飯が美味しかった。
「ふふ。まあ、次の次の話は置いておいて。折角持ってきたから食べてください。」
「では。いただきます。」
サナダさんがプラリネをひょいぱくすると。
「我々も頂きますか。」
「わーい、ケーキもある! チョコもだ!」
ゴンドウさんとマスエさんもお菓子を食べ始めた。
「そう言えばサナダさん。杏の季節がそろそろやってくるんですよ。いかがですか。
チョコやフロマージュと合わせてみては。」
「それもいいですねぇ。」
「アップルパイにも塗るんですが。」
「杏のパイでもいいですね。」
既に食べながら雑談をしつつ、また自国の農産物を売り込んでいる王子。社交界などで売り込むのは慣れたものなのだろう。
「おいし~い。」
「このプラリネ、癖になりますね。」
ケーキとプラリネを食べながらコーヒーも飲んでいるマスエさんとゴンドウさん。
「ふふ。やはり……こういう景色はいい。」
王子が満足したように言う。
「ええ。今回は王子様の助力もあってのフェアですから。堪能されてください。」
「そうですね。いつの間にか私も……ここのカフェが気に入ってしまっていたようです。」
「あれだけ入り浸って気に入らなかったら僕も困ります。」
「ははは……そういう話がしたかったんじゃなくて。いい所じゃないですか、ここ。」
ふと漏らした、王子の言葉に。
「そうでしょう?」
「ええ。いい所ですよ。」
サナダさんが返し、王子が再び言う。
「ふふ。王子様だったら他にもいい所をご存知でしょうに。」
「そういう場所だけじゃないって事ですよ。いい所は。息抜きって言うのかな。
カフェってそういう場所でしょう?」
「王子様にそう思って貰えるなら光栄ですね。」
「ふっ、いつもあなたはそう言ってくれるんですね。」
「あなただってそうじゃないですか。」
王子とサナダさん。依頼が結んだ不思議な縁はこれからも続いていきそうだった。
フェアも初日を大きく超える勢いで最終日まで続き、終わった後にサナダさんがまた、みんなに声を掛ける。
「ありがとうございます。」
「我々にもこういう時間を提供可能になれたんですね。」
「はい、王子の国の旅行への希望者も出ましたし。これで夏休み前の仕事も無事。
行えたようですね。」
隣国でも食べられる南国産のフルーツや、美味しいお菓子、お茶にコーヒーにチーズフォンデュと、夏のバカンスに向けての宣伝もシッカリ行えたモフモフ喫茶だった。
「最終日は王子様も来られなかったようですが、初日にあれだけ目立った後。
閉店時間まで入り浸っていたらいいでしょう。」
「前々から、こんなに来ること自体、我々の店の規模ではありえませんでしたからね。」
「不審者がうろついているとお客様の入りにもフェアの評判にも関わるから。
初日だけで我慢したのかもしれませんね。」
三人が王子は一回でもこっちに来れば印象に残るのに、その後の入り浸り様を見ていると、来ない方が当たり前なのだと改めて思っていた。
「しかし、王子様の事だからどこかで見守っていたような気もします。来なかっただけで。」
「ですな。」
「ははは……。」
すっかり王子様のキャラクターを把握していた三人、特にサナダさんだった。
「という訳で、初日にも行いましたが、今回は皆さんもお疲れだと思いますし。
ちょっと打ち上げをここでやって帰りますか?」
サナダさんの提案に。
「やりますか。」
ゴンドウさんが乗り。
「私も。」
マスエさんも参加することにした。
「じゃあ、今回のフェアで残っていた、トリュフと、コーヒーと。
チーズフォンデュでお祝いしますか。」
「我々も食べられるんですね。」
「やったー。」
隣国でも食べてきたがそれはそれ。サナダさんの粋な計らいでゴンドウさんとマスエさんも今回のフェアの料理にありつけたのだった。
「改めて、皆さん、お疲れさまでした。僕たちも明日から休みですし。
来月の夏休み商戦に向けて、また旅行も企画していますから。
そちらもよろしくお願いします。」
チーズフォンデュを三人で突きながら話をするサナダさん。
「今度はどこに行くんですか?」
ゴンドウさんが質問する。
「僕たちの国から見て南の隣国です。モフモフ喫茶はそこから入ったみたいです。
そこの研修にも向かえるみたいですよ。」
「ほう。南の隣国もご飯が美味しい所。」
「ええ。カフェメニューもピッツァやジェラートがあると思いますが。
アフォガートやエスプレッソ、カプチーノと多彩なメニューになりそうです。
それでも……僕たちのメインはクワトロフォルマッジになりそうですが。」
「クワトロフォルマッジ(四種類のチーズのピザ)でしょうな。」
「はい。景気よくチーズマシマシにしましょう。モッツアレラチーズはブッファにして。
真ん中に乗せてはいかがでしょうか。」
「ですな。」
サナダさんと会話をずっとしていたゴンドウさんが同意するようにうなずく。
「向こうはどういう方が運営されているんですか?」
「僕たちがやってきた国と同じですよ。確か……。」
「ほう……。」
「あっ、またお焦げ。」
マスエさんが底に固まったお焦げを剥がしていく。
「しかし僕たちもスッカリ、フェアが日常化してきましたね。いい事です。」
「ええ。願わくば、こういう日が続けられることを。」
「旅行と美味しい物と、その土地の名物を紹介して、私たちも研修に行けてますね。
本当に、こういう日が……。」
三人がフェアの感慨に耽りつつ、まとめに取り掛かろうとすると。
「やあ諸君! フェアも無事、終わったようじゃないですか! 私もこっちに来られたから。
これから打ち上げなど……おっと。」
勢いよくドアが開き、王子が入ってくると。
「おや、もう打ち上げをしていましたか。まだお腹は空いていますかな?」
「当たり前のように入ってこないでください。」
「今回は私もフェアの打ち上げに参加してもいいはずです。」
「アポなしで突然来ないでくださいって話です。」
初日同様、アポなしで来た王子だった。
「ふふふ。私がアポなしで来たのは今回はサプライズ。ですが無礼は詫びましょう。
ひとまずその話は置いておいて。今日はお菓子を持ってきました!」
「皆さんでお召し上がりください。」
王子の声で従者が入ってきて、隣国のお菓子(主に保存の利く焼き菓子)が持ち込まれる。
「プラリネもありますね。」
目を引かれたサナダさんが言う。
「ええ。甘いものでも食べて疲れを取られてください。宜しければコーヒーもお淹れしますよ。」
「丁度しょっぱいのを食べた後で甘いのとコーヒーも飲みたかった気分……。」
マスエさんがアッサリ揺らいでいる。
「はい。何しろバカンスが終わる秋口には我らの国にとってはアップルパイの季節。
また是非、ウチの国に来て貰おうかと。国境近くにしておきますよ。」
王子が話を勧めようとしている。
「そうなんですね。次はもう決まっているから、丁度その次あたりでお願いします。」
「おや、もうでしたか。場所はどこなんです?」
「秘密です。情報はまだリークできません。」
王子には口を堅くしておかないとどんな競合の仕方をしてくるか分からないから対処をしているサナダさんだった。何せ南の隣国もご飯が美味しかった。
「ふふ。まあ、次の次の話は置いておいて。折角持ってきたから食べてください。」
「では。いただきます。」
サナダさんがプラリネをひょいぱくすると。
「我々も頂きますか。」
「わーい、ケーキもある! チョコもだ!」
ゴンドウさんとマスエさんもお菓子を食べ始めた。
「そう言えばサナダさん。杏の季節がそろそろやってくるんですよ。いかがですか。
チョコやフロマージュと合わせてみては。」
「それもいいですねぇ。」
「アップルパイにも塗るんですが。」
「杏のパイでもいいですね。」
既に食べながら雑談をしつつ、また自国の農産物を売り込んでいる王子。社交界などで売り込むのは慣れたものなのだろう。
「おいし~い。」
「このプラリネ、癖になりますね。」
ケーキとプラリネを食べながらコーヒーも飲んでいるマスエさんとゴンドウさん。
「ふふ。やはり……こういう景色はいい。」
王子が満足したように言う。
「ええ。今回は王子様の助力もあってのフェアですから。堪能されてください。」
「そうですね。いつの間にか私も……ここのカフェが気に入ってしまっていたようです。」
「あれだけ入り浸って気に入らなかったら僕も困ります。」
「ははは……そういう話がしたかったんじゃなくて。いい所じゃないですか、ここ。」
ふと漏らした、王子の言葉に。
「そうでしょう?」
「ええ。いい所ですよ。」
サナダさんが返し、王子が再び言う。
「ふふ。王子様だったら他にもいい所をご存知でしょうに。」
「そういう場所だけじゃないって事ですよ。いい所は。息抜きって言うのかな。
カフェってそういう場所でしょう?」
「王子様にそう思って貰えるなら光栄ですね。」
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