34 / 36
喫茶モフモフ
案の定、王子が様子を見に来ていました
しおりを挟む
「ふむ。ふむふむ。ふーむふむ。」
王子はカウンターの、一番奥の席で一人で見えないようにして、テーブルの繁盛の様子を見ながら唸っていた。今回はチョコレートとプラリネのフルーツパフェと、コーヒーを頼んで、そっちもシッカリ食べていた。
「様子が見たいならおっしゃってくだされば。今回はそちらの仕事でもあるんですし。
許可が下りなかったんですか?」
「いや……丁度暇になって、ここにお忍びで来る用事もあって、つい様子を見てみようと。
ちょっとだけのつもりで。」
王子も偶然、ここに来られたようだった。
「いつもは閉店後にいらっしゃいますからね。」
「あ、そうだ。フェア中、閉店後に来てもいいですか?」
「いいですよ。いつものように事前に連絡を頂ければ。」
サナダさんは呑気に王子と会話をしているようにみえるが、動き回りながら様子を見ては会話をしていたのだった。
「うんうん。モフモフも元気に走り回っているし。みんなに撫でられていますね。」
王子が目で追う三匹の魔獣も人にスッカリ慣れた様子であいさつ回りをするようにお客さんの所をあちこち回っては撫でられていた。
「やだー、カワイイ。」
「ワンちゃん、こっちにも来て!」
「ワウ、ワウッ!」
人懐っこいちょい悪ワンちゃんもスッカリ人気だった。
「いい眺めだな……私の国の料理を隣国で、こんな形でみんなが食べる姿を見るのは。」
「ええ。王子様が紹介してくれたおかげですよ。」
「こちらでお気に入りいただけそうなのを選んだつもりですが。こんなにとはね。」
王子は王子で、実際に自分の国の料理が隣国の街の一角でも受け入れられるのを目の当たりにするのは珍しいようだった。普段は社交界や応接サロンなどでも振舞うのだろうが、招待や接待の範疇だから、お付き合い以外の、こういった形で来るか来ないか分からない状態で人が入るのを見るのは滅多にないのだろう。
「王子の国はご飯が美味しいので有名ですし。近場に大都市もありますからね。
そこの料理だと、みんな食べたくなるんでしょう。」
「あの……サナダさん、今日は泣いていいですか。」
「いいですよ。」
「ああ……世界中がこうなればいい……。」
「大袈裟ですね。」
王子が決壊したように、その場にうずくまった。
・・・・・・。
「皆さん、初日目、お疲れさまでした。」
「お疲れ様でしたー。」
「お疲れさまでした。」
その後、閉店時間になるまでずっと人が途切れず、初日から成功の予感を感じさせていた。
「お疲れさまでした……。」
王子もまだ残っていた。
「いかがでしたか、フェアの様子は。」
「いやもう、何て言ったらいいか……感無量です。」
王子も閉店まで様子を見守ったからか、力尽きたようになっていたが、その表情は満足げだった。
「それじゃあ、コーヒーを淹れますから、皆さん飲んでからお帰りください。」
「おお、かたじけない。」
ゴンドウさんは故郷の口癖が出た。
「ありがとうございます。」
マスエさんもサナダさんに挨拶をする。
「私も……いいんですか?」
「ええ。今回のフェアの成功は王子様のお陰でもあるんですし。
飲んでいかれてください。」
「うう……っ。やはり、世界中がモフモフ喫茶になればいい……。」
「またですか。」
「またですね。」
実はさっきもサナダさんの横でゴンドウさんは聞いていたのだったが、王子はまた、テーブルに突っ伏した。
・・・・・・。
「やっぱり、コーヒーを飲むと疲れが取れますねぇ。」
仕事終わりのコーヒーをサナダさんが堪能する。豆は店のブレンドだった。
「この一杯と、仕事の繁盛で、何もかもが満たされる気がします。」
ゴンドウさんも満足げだった。
「美味しいです~。今日は大変だったけど充実したな~。」
マスエさんも仕事終わりにようやく一息、吐けたようだった。
「うん。美味しいですね。」
王子も一日、自国とのフェアの様子を見守った後だから、やり遂げた顔だった。
「明日もまた、こんな感じだといいですが。そうなったら皆さん、よろしくお願いしますね。」
「はーい。」
「はい。」
サナダさんの言葉にしっかりと挨拶をするモフモフスタッフ。
「ワフワフッ!」
「バウッ!」
「クンクン。ピスピス。」
犬たちも返事をしていた。
「ええ。君たちもですね。ジャーキーをどうぞ。」
「がつがつ。」
魔獣にもジャーキーをあげると嬉しそうに食べている。
「……僕たちにとって、これが当たり前の日々になりそうですが。
なるべく続けられるようにしましょう。」
「ええ。」
「ですね。」
サナダさんたちが言い終えると、いつの間にかジャーキーを食べ終えた魔獣たちはマスエさんの所に寄っていき、魔力を貰うように撫でられていた。
「ふっ。フェアとあればまた呼んでください。隣国には国境近く以外にも。
観光地は沢山ありますからね。」
「ええ。王子もよろしくお願いします。」
王子も王子自ら、重要な取引先にいつの間にかなっていた。
「僕たちにとっては、次の住処にいつの間にかなっていましたが。
これはきっと、僕たちだから作れた居場所だと思います。
僕たちが成功すれば、その輪は広がっていく。
そうだと思えるようにしていきましょう。」
「はい。」
「ですね。」
マスエさんとゴンドウさんがサナダさんの言葉に大きく返事を再びすると。
「……。ちょっと私のポケットマネーで皆さん、このまま好きなものを食べていきませんか?」
「おお! ありがとうございます。」
珍しく驚いたような声をサナダさんが出す。王子がそれに感化されたのか、夕飯は王子のおごりで、美味しいものをまた、食べてきたのだった。
王子はカウンターの、一番奥の席で一人で見えないようにして、テーブルの繁盛の様子を見ながら唸っていた。今回はチョコレートとプラリネのフルーツパフェと、コーヒーを頼んで、そっちもシッカリ食べていた。
「様子が見たいならおっしゃってくだされば。今回はそちらの仕事でもあるんですし。
許可が下りなかったんですか?」
「いや……丁度暇になって、ここにお忍びで来る用事もあって、つい様子を見てみようと。
ちょっとだけのつもりで。」
王子も偶然、ここに来られたようだった。
「いつもは閉店後にいらっしゃいますからね。」
「あ、そうだ。フェア中、閉店後に来てもいいですか?」
「いいですよ。いつものように事前に連絡を頂ければ。」
サナダさんは呑気に王子と会話をしているようにみえるが、動き回りながら様子を見ては会話をしていたのだった。
「うんうん。モフモフも元気に走り回っているし。みんなに撫でられていますね。」
王子が目で追う三匹の魔獣も人にスッカリ慣れた様子であいさつ回りをするようにお客さんの所をあちこち回っては撫でられていた。
「やだー、カワイイ。」
「ワンちゃん、こっちにも来て!」
「ワウ、ワウッ!」
人懐っこいちょい悪ワンちゃんもスッカリ人気だった。
「いい眺めだな……私の国の料理を隣国で、こんな形でみんなが食べる姿を見るのは。」
「ええ。王子様が紹介してくれたおかげですよ。」
「こちらでお気に入りいただけそうなのを選んだつもりですが。こんなにとはね。」
王子は王子で、実際に自分の国の料理が隣国の街の一角でも受け入れられるのを目の当たりにするのは珍しいようだった。普段は社交界や応接サロンなどでも振舞うのだろうが、招待や接待の範疇だから、お付き合い以外の、こういった形で来るか来ないか分からない状態で人が入るのを見るのは滅多にないのだろう。
「王子の国はご飯が美味しいので有名ですし。近場に大都市もありますからね。
そこの料理だと、みんな食べたくなるんでしょう。」
「あの……サナダさん、今日は泣いていいですか。」
「いいですよ。」
「ああ……世界中がこうなればいい……。」
「大袈裟ですね。」
王子が決壊したように、その場にうずくまった。
・・・・・・。
「皆さん、初日目、お疲れさまでした。」
「お疲れ様でしたー。」
「お疲れさまでした。」
その後、閉店時間になるまでずっと人が途切れず、初日から成功の予感を感じさせていた。
「お疲れさまでした……。」
王子もまだ残っていた。
「いかがでしたか、フェアの様子は。」
「いやもう、何て言ったらいいか……感無量です。」
王子も閉店まで様子を見守ったからか、力尽きたようになっていたが、その表情は満足げだった。
「それじゃあ、コーヒーを淹れますから、皆さん飲んでからお帰りください。」
「おお、かたじけない。」
ゴンドウさんは故郷の口癖が出た。
「ありがとうございます。」
マスエさんもサナダさんに挨拶をする。
「私も……いいんですか?」
「ええ。今回のフェアの成功は王子様のお陰でもあるんですし。
飲んでいかれてください。」
「うう……っ。やはり、世界中がモフモフ喫茶になればいい……。」
「またですか。」
「またですね。」
実はさっきもサナダさんの横でゴンドウさんは聞いていたのだったが、王子はまた、テーブルに突っ伏した。
・・・・・・。
「やっぱり、コーヒーを飲むと疲れが取れますねぇ。」
仕事終わりのコーヒーをサナダさんが堪能する。豆は店のブレンドだった。
「この一杯と、仕事の繁盛で、何もかもが満たされる気がします。」
ゴンドウさんも満足げだった。
「美味しいです~。今日は大変だったけど充実したな~。」
マスエさんも仕事終わりにようやく一息、吐けたようだった。
「うん。美味しいですね。」
王子も一日、自国とのフェアの様子を見守った後だから、やり遂げた顔だった。
「明日もまた、こんな感じだといいですが。そうなったら皆さん、よろしくお願いしますね。」
「はーい。」
「はい。」
サナダさんの言葉にしっかりと挨拶をするモフモフスタッフ。
「ワフワフッ!」
「バウッ!」
「クンクン。ピスピス。」
犬たちも返事をしていた。
「ええ。君たちもですね。ジャーキーをどうぞ。」
「がつがつ。」
魔獣にもジャーキーをあげると嬉しそうに食べている。
「……僕たちにとって、これが当たり前の日々になりそうですが。
なるべく続けられるようにしましょう。」
「ええ。」
「ですね。」
サナダさんたちが言い終えると、いつの間にかジャーキーを食べ終えた魔獣たちはマスエさんの所に寄っていき、魔力を貰うように撫でられていた。
「ふっ。フェアとあればまた呼んでください。隣国には国境近く以外にも。
観光地は沢山ありますからね。」
「ええ。王子もよろしくお願いします。」
王子も王子自ら、重要な取引先にいつの間にかなっていた。
「僕たちにとっては、次の住処にいつの間にかなっていましたが。
これはきっと、僕たちだから作れた居場所だと思います。
僕たちが成功すれば、その輪は広がっていく。
そうだと思えるようにしていきましょう。」
「はい。」
「ですね。」
マスエさんとゴンドウさんがサナダさんの言葉に大きく返事を再びすると。
「……。ちょっと私のポケットマネーで皆さん、このまま好きなものを食べていきませんか?」
「おお! ありがとうございます。」
珍しく驚いたような声をサナダさんが出す。王子がそれに感化されたのか、夕飯は王子のおごりで、美味しいものをまた、食べてきたのだった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる