喫茶モフモフ

白石華

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喫茶モフモフ

隣国のフェア、始まる

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  ガヤガヤガヤ……。

「予約席、四名様、三名様。入りました!」
「はい! 予約席に案内して! バゲットは作ってあります!
 ゴンドウさん、パフェの準備も!」
「ええと……バラと絹織物が見たいんですけど……。」
「こちらの商品と、他にも欲しいものがあればパンフレットをご覧ください!」
「プラリネタルト、美味しかったからお土産にもいいですか?」
「どうぞどうぞ!」
「チーズフォンデュください。」
「はーい!」

 フェア当日。隣国の国境近くの街のフェアは事前の宣伝も済ませ、初日から大賑わいだった。チョコレート、プラリネ、南国産のフルーツ、チーズフォンデュ、チョコレートとプラリネで作ったトリュフ。紅茶にコーヒーと、美味しいものも揃い、売店には絹織物の一部とバラの花を買って帰れるようにしてあった。
 更に隣国の旅行先のパンフレットや旅行プラン、も用意し。一部を写した写真を壁に掛けるなど、旅行の宣伝もやっている。

 具体的なメニューの一部はこうなる。
・チョコレートとプラリネのタルト、パイナップルなどのフルーツ添え。
・隣国産南国のフルーツパフェ、プラリネ入り。
・隣国産南国フルーツとチョコレートのパフェ、プラリネ入り。
・クレープとフロマージュ、南国産フルーツ入り。
・紅茶各種(フレーバーティー、ストレート、ミルク、ミルク+フレーバーティー)
・隣国産南国のフルーツティー。
・フルーツとバラの紅茶。
・バラの紅茶。
・パッションフルーツティー。
・コーヒー各種(フレーバー入り、ブレンド、産地によって)。
・カフェオレ。
・アーモンドオレ、生クリーム+プラリネ付き。
・チーズフォンデュ。

 となっており、更にその中の一部はフェア前から商品開発中にメニューとしてお客さんに注文可能にしておいて宣伝もしていたのだった。

「覚悟はしていましたが人気が~。」

 マスエさんはバタバタとテーブルの案内と給仕で走り回る羽目になっている。

「僕も人は来ると思っていましたがここまでとは。」
「チーズフォンデュも売れていますね。」
「チーズフォンデュですからねぇ。」

 カウンター奥のキッチンでお茶とお菓子の準備をしているサナダさんとゴンドウさんも慌ただしい。国境を越えた隣国の王子の国でもここから距離も近く国境付近で。温泉も美味しいものも観光地もあるとなり。更に前回のフェアでは旅行先も宣伝していいとあって、王子のメニューと新たに加わった地理選びにとても何かを感じる。
 試食の時に職業病だけど、食べておいしいが自分の国でもやれると思ってしまうというのは本当だったのだし、本当にやってしまった王子だった。これだけ人気で、美味しいものも置いてあるなら納得なのだが、一歩間違えば強引が過ぎる。

「まあしかし、この調子で行けば今回のフェアも安泰……。」

 サナダさんが初日から人が来ない不安は無くなったから、あとは自分たちの体力と在庫管理の勝負だと思っていると。

「ねえねえ、ママ。外に人がソワソワしてウロウロしていたけど。
 全然入ってこないって変なのー。」
「しっ。そういう人をジロジロ見たり、話したりしないの。」

 親子たちの会話が給仕をしていたマスエさんの耳に入ってくる。

「何かお店の前の行列と整理券の配布を見て何度も頷いているし。」
「だから話すんじゃありません。」
「うん。僕たちは中に入ってご飯も食べるもんね!」
「そうよ、気にしないの。あと静かにしなさい。」
「……。」

 マスエさんはカウンターに向かった。

 ・・・・・・。

「あの、王子様が自らいらしたんですか?」
「おわっ!?」

 マスターに許可を貰って様子を見に行ったマスエさんが一人で外にいた人物に声を掛けたが、こういうのはマスエさんの腕っぷしが強いから任されたものだった。
 外の人を見たら変装はしていたが背格好と髪色、仕草がどう見ても王子様だったから速攻、王子と見破ったマスエさんだった。

「は、ははは。私はちょっとお忍びで。」
「様子を見に来たんですね。」
「は……はい。」
「お客様に不審者だって思われているみたいだから。
 中に入るか、見えないところでお願いします。」
「はい……。中に入ります。すみません、どうしても気になって……。」

 王子は礼儀正しくなって中に入る事にした。
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