喫茶モフモフ

白石華

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喫茶モフモフ

マスエさんにお礼を伝える会、始まる

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「本日もお疲れさまでした。」
「お疲れ様でしたー。」
「お疲れさまでした。」

 まだフェアは終わっておらず、王子様との商談の一回目を終えたばかりの頃。サナダさんがいつものように終業後にみんなにお疲れ様と声を掛けていた。

「今日はマスエさんに今までお世話になったお礼をしようと思いまして。」
「そうなんです。」

 サナダさんの言葉にゴンドウさんが続く。
 
「えっ。」
「僕とゴンドウさん。今でこそ王子様たちと男子会などやっていますが。
 それまではマスエさんがずっと僕たちを励ましてくれていたじゃないですか。
 それで、そのお礼を僕とゴンドウさんでしましょうという事になりました。」
「えっ……。」
「マスエさんの励ましが響いていなかった訳じゃないんです。
 問題は僕たちが聞く耳を持てていなかった。
 やっと聞く耳も持てるようになりましたし。それまでのお礼を、マスエさんにしようと。」
「あっ、ありがとう……ございます。」

 マスエさんはとても嬉しそうだった。ちょっと照れてもいた。

「僕とゴンドウさんでマスエさんに行えることはお茶とお菓子をお出しする事ですが。
 これが一番、外さないと思いまして。」
「今日は沢山、食べて行ってください。」
「ささ、カウンターにどうぞ。」
「ええ? 何だろう。食べていいんですか?」
「はい。」
「はい。」
 
 サナダさんもゴンドウさんも頷く。今日はとことん、マスエさんに美味しいものを食べて貰う日にしたようだ。

「ええと、まずは。紅茶と、スズランのアイシングクッキーを。」
「うわあ……カワイイ。」

 カウンターに座ったマスエさんに紅茶と、クッキーにアイシングでスズランの花を描いたものが二つ、用意される。

「王子様の国では、親しい人にスズランの贈り物をする習慣があると聞いて。
 僕たちも教わってやってみました。」
「王室御用達ではないですが、食べてみてください。」
「か、可愛すぎて食べられません! 暫く見ていていいですか!?」

 マスエさんがいそいそと包みを出してしまっていく。

「いいですが、美味しい内に食べられてくださいね。」
「はい!」

 アイシングクッキーは見た目の可愛さもあるが、二人の自分のために作ってくれたプレゼントを取っておきたかったマスエさんでもあった。

「他にもですね、スズランの造花も作ってみたんです。」
「うわあ! これも可愛い!」

 スズランそっくりに作られた造花のブーケもマスエさんにサナダとゴンドウさんから渡された。

「ええ……嬉しい……こんなに貰っちゃっていいんですか?」
「いいんですよ。本当はもっと早く、マスエさんの言葉を聞き入れられたら良かったんですが。」
「いっ、いえ! お二人が出来なかった理由は教えて貰いましたし!
 私こそ……二人に逆に悪い事しちゃってたかなって。」
「それも今は変わって、マスエさんにはお礼を言う番に僕たちはなったんですよ。
 ね、ゴンドウさん。」
「はい。自分たちの仕事でも繋げられる仕事と縁はあるのだと。思えるようになれました。
 そうなるまで引っ張ってくださったのはマスエさんです。」

 ゴンドウさんは大きく頷いた。

「あとはお好きなだけ、メニューにある物で、ご用意ください。」
「お作りします。」
「えっ、ええと……それじゃあ、私もチーズフォンデュで! 燻製のサイドメニューも!」
「はい。」
「他には……ええっと、私もチョコとサワーチェリーのケーキも食べたかったし。
 チョコレートとサワーチェリーのショートケーキも食べたかったし。
 いつものスコーンもお願いします! 食べられなかった分は、持ち帰りで!」
「どうぞどうぞ。」
「他には……ええっと。うっ、うう……。」

 マスエさんがうつむいてしまう。

「うええ……っ。こうなってくれてよかったよぉ……っ。
 私……っ、二人はきっと、変わらないんだなって思っていたから……。」
「マスエさん……。」

 マスエさんは次々に零れる涙を手でぬぐっていた。
 
「僕たちは遅かったぐらいだと思っていたんですが。
 そこまで喜んでもらえると思わなくて。」 
「はい。今まで答えられなくて申し訳なかったぐらいで。」
「ぐすっ。そんな事……ないです。」
「ええと、マスエさん。今まで僕たちを支えてくれてありがとうございます。
 これからも……よろしくお願いしますね。」
「はい……。」
「やっぱり、やってよかったですね、ゴンドウさん。」
「はい。ご心配をおかけしていても返せませんでしたからね。」

 マスエさんにずっと心配を掛けていたんだなと、改めて再確認した日だったという、マスエさんにお礼をする会となり。

「ふわ~……チーズフォンデュ、美味しい……。パンも燻製も美味しいですね。」
「良かったです。」
「お口に合ったようで。」

 マスエさんが泣き止んだ頃、美味しいものとお茶をたらふく食べて貰っていた。
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