喫茶モフモフ

白石華

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喫茶モフモフ

エルフを焚き付ける(放火ではない)サナダさん

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「ふむ……。」

 エルフの姉妹が写真を撮りまくるのを見て、サナダさんは何か思ったようだ。

「実は、隣国の王室御用達の茶葉と香辛料がまだ数人分だけ残っているのですが。
 エルフの方々にはこういうのは飲ませても大丈夫でしょうか。」
「「王室御用達! 飲みます!」」
「よかった。エルフの方々にも紅茶と香辛料はお口に合うんですね。」
「サナダさん、急にサービス精神旺盛になって……。」

 エルフのふたりのバエ心を更に焚き付けるように、サナダさんがフェアのメニューまで出してきたようだった。そんなサナダさんの変化をマスエさんが眺めていた。

(でもいいか。サナダさんが明るい方に向かえているんだし。)

 マスエさんはマスターは本当に変わったなあと思っていると。

「ではパフェに、チャイに、スコーンもお出ししますね。」
「「くわ~~~~!」」

 マスエさんが感慨に耽っている頃、貸し切りモフモフ喫茶は最高潮を迎えていた。出されたメニューを景気よく撮影している。

「パフェとスコーンなどのスイーツを作られたのはコチラのゴンドウさんです。」
「写真、撮りますか? 顔出し撮影オーケーです。」
「撮る! これは意外性!」
「話のネタに事欠かない!」

 しかもゴンドウさんまで出てきていた。

「パフェ! スコーン! チャイ! これはヌン活というのでしょうか!?」
「妹よ、アフタヌーンティは夕方です! 早合点ですよ!」

 エルフのお姉さんはお茶の時間帯にも詳しかった。

「なるほど! ではこれは何というのでしょう!?」
「クリームティーもアフタヌーンに入りますし、これは……?」
「面倒だからティー活でいいんじゃないですか?」
「ティー活!」
「ティー活! これは間違えない!」

 エルフの姉妹はサナダさんの鶴の一声で決まったようだった。それにしてもSNSにハマったばかりの人のような盛り上がりを見せるエルフの姉妹であった。

「とりあえず、お茶も冷めちゃいますし、食べられてください。」
「はい。」
「はーい。」

 サナダさんの声で食べるとなると急にエルフの姉妹は大人しくなった。基本。食べるときの行儀はいいのだろう。エルフだから。

「美味しいですね、お姉さま。」
「はい。パンケーキがふわりと口で。」

 しかもパンケーキ用のナイフとフォークまで器用に用いていた。

「ハーブティーも香りと味に満たされます。」
「懐かしさを感じる味ですね。ウチの森にもあるようなハーブの味もします。」

 食レポも得意そうだった。

「人間の作った食器も用いられるんですか?」
「はい。解析魔法で触った瞬間に何に用いるか瞬時に理解可能です。」
「旅行で異文化に触れるときは便利です。他にも翻訳魔法とか。」

 サナダさんの質問にエルフが答える。確かにそれは便利だし、ここの世界ではエルフが発明した魔法のようだった。

「他にも旅行で困った時に簡単な魔法ならすぐ作って扱えるようにしますし。」
「エルフは精霊みたいなものですから新しく見たことが無い魔法を作るのも可能なのです。」

 この世界の魔法の魔法は精霊信仰によって精霊から魔法を出させて貰っていた。

「へえ~。そう言えば便利そうな魔法を次々に出していましたね。」
「はい。それで便利すぎて森の暮らしで満足してしまい。」
「誰も魔法以外を発展させようとせず……。それでも十分だったりして。」
「それが森の暮らしで変わらず生きている理由ですか?」
「発展しすぎて森なんてすぐ放火されたり山火事になっても冷凍魔法で消火しますし。」
「里全体に魔法陣を描いて自動消火魔法も作りましたね……あれも便利。」

 エルフの魔法文明は発達具合が違っていた。

「どうせなら人間の国で遊ばせて貰う代わりに。
 こっちで魔法とか教える副業とかしましょうか。」
「いいですね、お姉さま。あると便利な魔法から伝えていきましょう。」

 人間の暮らすところでもこれからは魔法文明が栄える日が来るのかもしれない……。もしかしたら召喚魔法や転生魔法など、異世界の勇者がここに来るのもエルフが開発するのかもしれない。

「それはそうと、スコーンも美味しいですね、妹よ。」
「クロデットクリームを選びましたが。やはり王道には王道である理由がありますね。
 ベリーのジャムをクリームのようにし、スコーンのザクザク感を食べやすくします。」
「美味しい。」
「その後のティーも格別です。」

 写真を撮っている時とは別人のように食レポをしながらティータイムを満喫していたエルフたちだった。
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