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喫茶モフモフ
王子たちがお忍びでやってきた
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「ええと、僕たち、フェア初日後で肉体疲労が大変なことになっているんですが。」
サナダさんがやんわり断ろうとすると。
「ああ、それで分からないようにクローズ後にやってきたのだ。」
「意見をどうしても通すつもりですか?」
「うむ。実は移動式遊園地がここにやってくると聞いてお忍びで遊びに来たのだが。」
「はあ。」
サナダさんたちはとりあえず聞くことにして、全員、椅子に座った。かみ合っているようで、こっちの話を聞いていない会話で押してくるなあと思いながら。
「ええと……遊園地で遊んでいたら、ここでフェアをしていると聞いて……。
お茶も美味しかったし、どうしてもメニューが気になって……。」
「はあ、食べたくなったんですか?」
「コクリ。」
王子様は説明し、サナダさんに確認された後、頬を染めて頷いた。王子様も割とミーハーなところがあるかもしれない。
「オープン時に来たら混雑がもっと大変なことになるから。
終わったところを見計らいに来ようと。
それに、王家の者が食べに来たら、フェアの後でも宣伝になると思いますが。
あなたたちの負担も大きいでしょうと。」
護衛の者も説明した。フェアにフェアを重ねるようなものだった。
「今すぐではなくても宣伝がしたいならするといい。私たちが王族で今もいる理由の一つだ。
それはそちらにお任せするとして。頼んでもいいかな?」
「時間外料金まで頂けるなら。あと時間代も頂きます。」
「おお! ありがたい! 犬もモフらせていただこう!」
サナダさんはキッチリ時間外労働代と普段のモフモフ喫茶に留まる時間代まで要求したが、呑むことにしたらしい。
「ついでだから明日の分の仕込みもしましょう。
その代わり。もう疲労が限界だから順番で休憩に入りますよ。
遅くなっても問題ないなら。」
「うむ。全く問題ないですね。」
自分の意見が通れば後は気を利かせてくれたのか、サナダさんの要求を次々に呑んでくれる王子様だった。マスターのサナダさんも従業員に時間外労働で負担をさせたくないのも理解してくれている。
「とりあえず、犬三匹いるから、メニューが完成するまで犬と戯れて待っていてください。」
「はい! よーしよし、よしよし!」
「ワフッワフッ!」
とりあえず犬(魔獣)に面倒を見て貰う事にして仕込みと王子様用のメニューを作る事にした面々(ウエイトレスのマスエさんから休憩に入った)。
カチャカチャ……。
「あの、時になんですが。」
準備を始めたマスターたちに王子様が話し掛けた。
「何ですか?」
「明日には、妹たちも連れて来ていいでしょうか?
また外の空気を吸いたい、退屈だと言い始めてですね。」
「移動式遊園地には連れて行ってあげたんでしょう?」
「連れて行ってもですよ。家(城)に帰ったら、今日あった事まで忘れているか。
本人たちもここに来たくなったんでしょう。
子供のおねだりに付き合うのもと思ったんですが。
また肝試しとか言い出して城を抜け出したらもっと大変なことに……。
香辛料研究所だって王家が出資して建造した敷地内じゃなかったらどうなる事だったか。
王家の者が子どもの頃から不法侵入と盗みを働くとか……。」
「そんなに……。」
「まあちょっと、それもあって自分の時間とご褒美時間が欲しくなって……。」
「あなたも大変だったんですね。」
「おお! 理解して頂けますか!」
相槌を打っていたら王子様が嬉しそうになった。どうやら本人も限界育児だったらしい。王子様なのになあと、サナダさんは思いながら話(育児の愚痴)を聞いていた。
「本来はあなただってまだ、教育や教養を受ける段階ですからねえ。」
「そう言って頂けると……。受けてはいるんですけどね。」
「じゃあますます自分の時間が無くて大変ですね。」
「そうなんです……。」
不思議な縁で限界育児をしている王子様の愚痴を聞き続けるマスターのサナダさんだった。しかし王子に教育や教養、武術(多分)、公務以外にも妹二人の育児までさせるとか、とんでもない王室だなと内心思いながら。
「そろそろ完成しそうですね。ゴンドウさん、休憩に入っていいですよ。」
「はい。」
仕込みの途中だったがゴンドウさんにも休んで貰う事にしたサナダさん。
「おお!」
「護衛に来て頂いた方と、あなたにも。まずはチャイ。」
「我々にもすみませんね。」
「いいえ、あなたたちも仕事でしょうに。」
「ええ……ありがとうございます……。」
いつも来る依頼人と護衛の人まで疲れているようで、限界仕事人たちの夜のお茶会はひっそりと、そしてしっとりと行われた。
「はあ……夜に食べるパフェが生き返る……。」
「チャイもいいですよ、王子様。」
「ええ。仕事終わりの甘いものは格別ですね。」
パフェを食べて感動している王子に依頼人と護衛が声を掛ける。
「ワフッワフッ!」
「クキューン。」
「はは。お前たちにだって癒されているぞ。」
そして王子たちの所に来たわんわんにも声を掛けていた。
「……ふふ。何と言うか……王家の人たちにもモフモフ喫茶の癒しを感じて貰えると。
確かに箔が付いた気分になりますね。それだけの効果があるんだなと。」
サナダさんは自分が今している仕事……モフモフ喫茶に誇らしげに語り始める。
「ははは……押しかけてしまって……すみません……限界だったんです……。
なんかサナダさんに声を掛けられたら急に涙が……。」
「あっ……大丈夫ですか。」
王子様が決壊してしまった。本当に限界育児だったようだ。
「明日も来て……いいですか、今度は妹たちも来ますが。」
「いいですよ……追加料金は頂きますが。」
「はい……それも勿論。」
サナダさんがやんわり断ろうとすると。
「ああ、それで分からないようにクローズ後にやってきたのだ。」
「意見をどうしても通すつもりですか?」
「うむ。実は移動式遊園地がここにやってくると聞いてお忍びで遊びに来たのだが。」
「はあ。」
サナダさんたちはとりあえず聞くことにして、全員、椅子に座った。かみ合っているようで、こっちの話を聞いていない会話で押してくるなあと思いながら。
「ええと……遊園地で遊んでいたら、ここでフェアをしていると聞いて……。
お茶も美味しかったし、どうしてもメニューが気になって……。」
「はあ、食べたくなったんですか?」
「コクリ。」
王子様は説明し、サナダさんに確認された後、頬を染めて頷いた。王子様も割とミーハーなところがあるかもしれない。
「オープン時に来たら混雑がもっと大変なことになるから。
終わったところを見計らいに来ようと。
それに、王家の者が食べに来たら、フェアの後でも宣伝になると思いますが。
あなたたちの負担も大きいでしょうと。」
護衛の者も説明した。フェアにフェアを重ねるようなものだった。
「今すぐではなくても宣伝がしたいならするといい。私たちが王族で今もいる理由の一つだ。
それはそちらにお任せするとして。頼んでもいいかな?」
「時間外料金まで頂けるなら。あと時間代も頂きます。」
「おお! ありがたい! 犬もモフらせていただこう!」
サナダさんはキッチリ時間外労働代と普段のモフモフ喫茶に留まる時間代まで要求したが、呑むことにしたらしい。
「ついでだから明日の分の仕込みもしましょう。
その代わり。もう疲労が限界だから順番で休憩に入りますよ。
遅くなっても問題ないなら。」
「うむ。全く問題ないですね。」
自分の意見が通れば後は気を利かせてくれたのか、サナダさんの要求を次々に呑んでくれる王子様だった。マスターのサナダさんも従業員に時間外労働で負担をさせたくないのも理解してくれている。
「とりあえず、犬三匹いるから、メニューが完成するまで犬と戯れて待っていてください。」
「はい! よーしよし、よしよし!」
「ワフッワフッ!」
とりあえず犬(魔獣)に面倒を見て貰う事にして仕込みと王子様用のメニューを作る事にした面々(ウエイトレスのマスエさんから休憩に入った)。
カチャカチャ……。
「あの、時になんですが。」
準備を始めたマスターたちに王子様が話し掛けた。
「何ですか?」
「明日には、妹たちも連れて来ていいでしょうか?
また外の空気を吸いたい、退屈だと言い始めてですね。」
「移動式遊園地には連れて行ってあげたんでしょう?」
「連れて行ってもですよ。家(城)に帰ったら、今日あった事まで忘れているか。
本人たちもここに来たくなったんでしょう。
子供のおねだりに付き合うのもと思ったんですが。
また肝試しとか言い出して城を抜け出したらもっと大変なことに……。
香辛料研究所だって王家が出資して建造した敷地内じゃなかったらどうなる事だったか。
王家の者が子どもの頃から不法侵入と盗みを働くとか……。」
「そんなに……。」
「まあちょっと、それもあって自分の時間とご褒美時間が欲しくなって……。」
「あなたも大変だったんですね。」
「おお! 理解して頂けますか!」
相槌を打っていたら王子様が嬉しそうになった。どうやら本人も限界育児だったらしい。王子様なのになあと、サナダさんは思いながら話(育児の愚痴)を聞いていた。
「本来はあなただってまだ、教育や教養を受ける段階ですからねえ。」
「そう言って頂けると……。受けてはいるんですけどね。」
「じゃあますます自分の時間が無くて大変ですね。」
「そうなんです……。」
不思議な縁で限界育児をしている王子様の愚痴を聞き続けるマスターのサナダさんだった。しかし王子に教育や教養、武術(多分)、公務以外にも妹二人の育児までさせるとか、とんでもない王室だなと内心思いながら。
「そろそろ完成しそうですね。ゴンドウさん、休憩に入っていいですよ。」
「はい。」
仕込みの途中だったがゴンドウさんにも休んで貰う事にしたサナダさん。
「おお!」
「護衛に来て頂いた方と、あなたにも。まずはチャイ。」
「我々にもすみませんね。」
「いいえ、あなたたちも仕事でしょうに。」
「ええ……ありがとうございます……。」
いつも来る依頼人と護衛の人まで疲れているようで、限界仕事人たちの夜のお茶会はひっそりと、そしてしっとりと行われた。
「はあ……夜に食べるパフェが生き返る……。」
「チャイもいいですよ、王子様。」
「ええ。仕事終わりの甘いものは格別ですね。」
パフェを食べて感動している王子に依頼人と護衛が声を掛ける。
「ワフッワフッ!」
「クキューン。」
「はは。お前たちにだって癒されているぞ。」
そして王子たちの所に来たわんわんにも声を掛けていた。
「……ふふ。何と言うか……王家の人たちにもモフモフ喫茶の癒しを感じて貰えると。
確かに箔が付いた気分になりますね。それだけの効果があるんだなと。」
サナダさんは自分が今している仕事……モフモフ喫茶に誇らしげに語り始める。
「ははは……押しかけてしまって……すみません……限界だったんです……。
なんかサナダさんに声を掛けられたら急に涙が……。」
「あっ……大丈夫ですか。」
王子様が決壊してしまった。本当に限界育児だったようだ。
「明日も来て……いいですか、今度は妹たちも来ますが。」
「いいですよ……追加料金は頂きますが。」
「はい……それも勿論。」
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