喫茶モフモフ

白石華

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喫茶モフモフ

フェア始まる

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「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」

 王室御用達茶葉と香辛料フェア当日、他にも宣伝もしつつ、暫く試食も展開していたからか、人づてにフェアの存在も伝わり、初日から入りがよかった。

「うわ~。こんなに人が入ってくれるのってすごいですね!」
「はい、その代わり……出入りがお待たせしてしまう事になりますが。」

 客席は開始数分で満席を維持し。そこから数時間経ってマスエさんとサナダさんが会話をする。店の出入りは入り浸る人より出入りする人の方が多いから、今回は時間制を取らず、魔獣も一人の所に留まらせず、店内をウロウロして貰う事にした。

「それだけ美味しいと思って貰えたのと。やはり王室御用達だと。
 みんな飲んでみたくなるんでしょうね。」
「そうですね。そのための王室御用達という肩書ですから。」

 王室への献上品、御用達、立ち寄られた時にお土産で買われた品、食べられたメニューなど、そういう言葉を肩書に用いるのは宣伝効果抜群だったようだ。

「フェアは無くなるまでだから、期間は一応、決めていますが無くなり次第。
 終了になります。後は……僕たちの身体が持つまでやりましょう。」
「これだけの数のお客様ですからね。」

 モフモフ喫茶にはランチタイムもあるが、注文されたメニューがすべて、王室御用達のもののため、ランチにもそれを付けられるようにしていて正解だったようだった。

 ・・・・・・。

「いやあ。骨が折れましたね……。」
「初日からいきなり、ほぼ満席をキープとは。」
「サナダさん、肩やっておきますか。」
「ああ。すみません、ゴンドウさん……。」

 ゴンドウさんは神官時代に人体の構造も把握していたため、按摩の心得もあった。サナダさんの肩をストレッチしたりマッサージしたりしている。あれからクローズの時間までずっと働き詰めだったモフモフ喫茶の店員は完全に力尽きていた。

「冒険者でも給仕に力尽きる事ってあるんですね。鍛え方が足りないのかな。」
「違う筋肉と頭を働かせているのかもしれませんね。
 僕たち、こういう経験が子どもの頃からある訳じゃないですし。」

 マスエさんとマッサージを受けているサナダさんが会話を始めた。

「あっ、ああ~。ずっとお茶を沸かしてはポットに注いでいたからか。
 腕の感覚が蘇るようです……。」
「大分お疲れみたいですね、サナダさん。」
「いやあ。全く。鍛え方がまだ足りないようです。」
「鍛えても飲食店経営だとこうなりますよ。」

 今度はゴンドウさんとサナダさんが会話を始めた。

「今日は皆さん、早く家に帰ってゆっくり……。」
「ちょっといいかね?」
「「「!?」」」

 鍵を掛けたはずのドアが開き……そこに現れたのは。

「モフモフ喫茶の諸君! ちょっと依頼があって現れたよ!」
「すまないねえ……来るといって聞かなくて」

 隣国の王子といつも来ている隣国担当の依頼人と、護衛のものだった。
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