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喫茶モフモフ
モフモフ喫茶の評価
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「そう言えば……フェアの前にもう一匹くらい、動物を増やそうと思います。」
モフモフ喫茶オープン前、サナダさんがみんなの前で説明する。
「モフモフした生き物ですか?」
「はい……今度はシェパードっぽいモフモフにしようと。」
サナダさんのモフモフ好きのセンスの方向は変わる事は無いようだった。
「いいと思います!」
マスエさんも乗っかる。
「ええ……冒険者が魅惑の術で捕らえたモフモフがコチラに流れてくるんですか?」
「ゴンドウさん。それは依頼次第です。」
「ほう……そういう事ですか。」
「はい。」
「今回も依頼の報酬でこちらに来るんですね!」
「そういう事です。だから今夜も皆さん、よろしくお願いします。」
「はい!」
「はい。」
――そんなこんなでモフモフ喫茶が今日もオープンすると――
「うわーん、かわいい! モフモフ―!」
「バウっ、バウッ!」
「クキューン。」
今日もいかつい内装の店と店員とモフモフ魔獣。ウエイトレスのマスエさんが給仕するモフモフにお客さんは来ていた。
「本日はお代金は頂くことになっていますが。
そろそろ隣国の王室御用達の茶葉と香辛料を扱ったティーセットのフェアを行う予定で。
その試作品の提供も行いますがいかがでしょうか?」
「隣国ってあの、魔法植物の香辛料が盛んなところですよね!?」
隣国は香辛料の他にもコーヒー、茶、お菓子といった物の研究が盛んだった。
「はい。それに合う茶葉も隣国の王室御用達のを揃えています。」
「うわー! すっごーい! 一応。メニュー、見せてください!」
「はい。」
マスエさんの説明が終わるとお客さんはメニューを受け取った。
「うわあ……本当だ、今はやりのメニューまでそろえてある。」
メニュー表はまだ仮だから、手書き(ゴンドウさんが書いた)のメニュー表になっていたがそれでも見た目がレタリングされたように揃っていて、お客さんの目を引く。
(ゴンドウさん、本当に何でもやれる人ですよね……。)
マスエさんが内心、ニコニコしていた。お茶を出したり店全体の指示をするのはマスターだが、お菓子担当と用心棒はゴンドウさんだったが、レタリングデザインも得意だった。
「あっ、じゃあ、今日はチャイとスコーンで! ミルクジャムとベリーでお願いします!」
「はい!」
マスエさんがオーダーを聞いて、嬉しそうにマスターの所に向かって行った。
・・・・・・。
「おいしーい! モフモフは可愛いし、最高!」
お客さんはチャイとスコーンを交互に食べてご満悦だった。
「ありがとうございます。後で感想など、聞かせてくださいね。」
「はい! あの……すっごい美味しいです!」
「えっと……お厭でなければ、他にもお聞きしていいですか?」
「はい?」
マスエさんはずっと気がかりだったことをお客さんに尋ねた。
「この店、そのものの評価というか……どうしてここに来るかですか?」
「はい。モフモフ喫茶はこの町だとここにしかないですが……他にもあると思いますし。
ここに来る理由を教えてください。」
マスエさんは聞きすぎだったかもしれないが、サナダさんとゴンドウさんと自分、それとモフモフがいるこの店が大好きだった。ひょっとしたらこの人だってそう思ってくれているかもしれない。自分の言葉が届かなくても、他の人のお客さんの意見なら……と思っていると。
「そうですね、何と言うか……私、こういう店と動物の方がいいんですよ。
お菓子もお茶も美味しいですし。動物も人なつっこいちょい悪ワンちゃんで。」
「ですよね! わーい! ありがとうございます!」
(あと、ウエイトレスさんも感じいいし……。)
マスエさんは、ぱあっと嬉しそうにしていたが自分も評価に入っていたことは知らなかった。カフェでウエイトレスさんの感じがいいのも重要であったようだ。
・・・・・・。
「という訳でマスター、お客様がこの店がいいとお気に入りの言葉を頂けました!」
お客さんが帰るとマスエさんが報告にマスターたちの所に来ていた。
「おお、ありがとうございますマスエさん。
僕たちだとそこまで突っ込んで聞くとビビられますから。」
「……コクリ。」
ゴンドウさんが照れながらもサナダさんの言葉に頷く。
「でも、お客様もこう言って頂けていますし、今のお店の雰囲気。
守っていきましょうね!」
「ええ。何だかんだで僕の好きなようにしていてもみんなが付いて来てくれますし。」
「どうしても前職の名残で、自分に居場所を作らないようにしていましたが。
そろそろ観念する時が来ましたか……。」
「あ……、そうですね。」
何度もこの話になるが、この三人はモフモフ喫茶を作る前は暗殺者。居場所も帰る所も全く痕跡を残さないのが職業に就く者の背負ってしまった役割だった。
「僕たちが幸せに生きることは許されないのかもしれませんが……。
それでも残された人生をこうして生きる事の理由を。
見つける必要があるのかもしれません。」
サナダさんにとってはそこまで必要な事だったのかもしれない。
「ですね。我々も……こうして生き延びてしまったのですから。」
ゴンドウさんもそれに頷く。
「サナダさん、ゴンドウさん……。」
マスエさんは何て言ったらいいか分からない表情をしていると。
「いいえ、マスエさんが僕たちのためにそうしてくれて。
僕たちの分まで明るく振舞ってくれるから、僕たちもそうなろうと思うんです。」
「ええ。あなたまで笑顔を曇らせてはいけない。
あなたは我々のホープなんですから。」
「あっ、ありがとうございます!」
三人と動物がいてモフモフ喫茶なんだとマスエさんが改めて思っていると。
「僕たちからもありがとうですね。
それでは……お客様も帰りましたし。依頼に向かいますか。」
「今日は何の依頼なんです?」
「討伐したはずの盗賊の残党狩りですね。捕まえるだけでいいそうです。
ギルドで解決したと報告した手前、残党がいたと表に言えないそうで。」
「あっ……はいっ!」
「それの報酬がモフモフどうぶつになります。皆さん、よろしくお願いしますね。」
今日もモフモフ喫茶の裏の仕事――ギルドで受理されない仕事が行われる――
モフモフ喫茶オープン前、サナダさんがみんなの前で説明する。
「モフモフした生き物ですか?」
「はい……今度はシェパードっぽいモフモフにしようと。」
サナダさんのモフモフ好きのセンスの方向は変わる事は無いようだった。
「いいと思います!」
マスエさんも乗っかる。
「ええ……冒険者が魅惑の術で捕らえたモフモフがコチラに流れてくるんですか?」
「ゴンドウさん。それは依頼次第です。」
「ほう……そういう事ですか。」
「はい。」
「今回も依頼の報酬でこちらに来るんですね!」
「そういう事です。だから今夜も皆さん、よろしくお願いします。」
「はい!」
「はい。」
――そんなこんなでモフモフ喫茶が今日もオープンすると――
「うわーん、かわいい! モフモフ―!」
「バウっ、バウッ!」
「クキューン。」
今日もいかつい内装の店と店員とモフモフ魔獣。ウエイトレスのマスエさんが給仕するモフモフにお客さんは来ていた。
「本日はお代金は頂くことになっていますが。
そろそろ隣国の王室御用達の茶葉と香辛料を扱ったティーセットのフェアを行う予定で。
その試作品の提供も行いますがいかがでしょうか?」
「隣国ってあの、魔法植物の香辛料が盛んなところですよね!?」
隣国は香辛料の他にもコーヒー、茶、お菓子といった物の研究が盛んだった。
「はい。それに合う茶葉も隣国の王室御用達のを揃えています。」
「うわー! すっごーい! 一応。メニュー、見せてください!」
「はい。」
マスエさんの説明が終わるとお客さんはメニューを受け取った。
「うわあ……本当だ、今はやりのメニューまでそろえてある。」
メニュー表はまだ仮だから、手書き(ゴンドウさんが書いた)のメニュー表になっていたがそれでも見た目がレタリングされたように揃っていて、お客さんの目を引く。
(ゴンドウさん、本当に何でもやれる人ですよね……。)
マスエさんが内心、ニコニコしていた。お茶を出したり店全体の指示をするのはマスターだが、お菓子担当と用心棒はゴンドウさんだったが、レタリングデザインも得意だった。
「あっ、じゃあ、今日はチャイとスコーンで! ミルクジャムとベリーでお願いします!」
「はい!」
マスエさんがオーダーを聞いて、嬉しそうにマスターの所に向かって行った。
・・・・・・。
「おいしーい! モフモフは可愛いし、最高!」
お客さんはチャイとスコーンを交互に食べてご満悦だった。
「ありがとうございます。後で感想など、聞かせてくださいね。」
「はい! あの……すっごい美味しいです!」
「えっと……お厭でなければ、他にもお聞きしていいですか?」
「はい?」
マスエさんはずっと気がかりだったことをお客さんに尋ねた。
「この店、そのものの評価というか……どうしてここに来るかですか?」
「はい。モフモフ喫茶はこの町だとここにしかないですが……他にもあると思いますし。
ここに来る理由を教えてください。」
マスエさんは聞きすぎだったかもしれないが、サナダさんとゴンドウさんと自分、それとモフモフがいるこの店が大好きだった。ひょっとしたらこの人だってそう思ってくれているかもしれない。自分の言葉が届かなくても、他の人のお客さんの意見なら……と思っていると。
「そうですね、何と言うか……私、こういう店と動物の方がいいんですよ。
お菓子もお茶も美味しいですし。動物も人なつっこいちょい悪ワンちゃんで。」
「ですよね! わーい! ありがとうございます!」
(あと、ウエイトレスさんも感じいいし……。)
マスエさんは、ぱあっと嬉しそうにしていたが自分も評価に入っていたことは知らなかった。カフェでウエイトレスさんの感じがいいのも重要であったようだ。
・・・・・・。
「という訳でマスター、お客様がこの店がいいとお気に入りの言葉を頂けました!」
お客さんが帰るとマスエさんが報告にマスターたちの所に来ていた。
「おお、ありがとうございますマスエさん。
僕たちだとそこまで突っ込んで聞くとビビられますから。」
「……コクリ。」
ゴンドウさんが照れながらもサナダさんの言葉に頷く。
「でも、お客様もこう言って頂けていますし、今のお店の雰囲気。
守っていきましょうね!」
「ええ。何だかんだで僕の好きなようにしていてもみんなが付いて来てくれますし。」
「どうしても前職の名残で、自分に居場所を作らないようにしていましたが。
そろそろ観念する時が来ましたか……。」
「あ……、そうですね。」
何度もこの話になるが、この三人はモフモフ喫茶を作る前は暗殺者。居場所も帰る所も全く痕跡を残さないのが職業に就く者の背負ってしまった役割だった。
「僕たちが幸せに生きることは許されないのかもしれませんが……。
それでも残された人生をこうして生きる事の理由を。
見つける必要があるのかもしれません。」
サナダさんにとってはそこまで必要な事だったのかもしれない。
「ですね。我々も……こうして生き延びてしまったのですから。」
ゴンドウさんもそれに頷く。
「サナダさん、ゴンドウさん……。」
マスエさんは何て言ったらいいか分からない表情をしていると。
「いいえ、マスエさんが僕たちのためにそうしてくれて。
僕たちの分まで明るく振舞ってくれるから、僕たちもそうなろうと思うんです。」
「ええ。あなたまで笑顔を曇らせてはいけない。
あなたは我々のホープなんですから。」
「あっ、ありがとうございます!」
三人と動物がいてモフモフ喫茶なんだとマスエさんが改めて思っていると。
「僕たちからもありがとうですね。
それでは……お客様も帰りましたし。依頼に向かいますか。」
「今日は何の依頼なんです?」
「討伐したはずの盗賊の残党狩りですね。捕まえるだけでいいそうです。
ギルドで解決したと報告した手前、残党がいたと表に言えないそうで。」
「あっ……はいっ!」
「それの報酬がモフモフどうぶつになります。皆さん、よろしくお願いしますね。」
今日もモフモフ喫茶の裏の仕事――ギルドで受理されない仕事が行われる――
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