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喫茶モフモフ
モフモフ喫茶の一日
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「そろそろオープンの時間ですね。」
「あっ、マスター。私がオープンの札、出してきます!」
「よろしくお願いします、マスエさん。」
オープン時間内までに午前中の仕込みとテーブルの準備を済ませた、モフモフ喫茶のマスター、サナダさんと、ドアの外に出て札をオープンにするウエイトレスのマスエさん、そして何かあったらスタンバイ可能にして影に溶け込んでいる用心棒兼ウエイターのゴンドウさん。この三人が、ここ、モフモフした動物をモフれる喫茶、モフモフ喫茶の従業員だった。
「ふう……それにしても、魔獣を扱うために急遽、作られた、喫茶店の経営資格が。
冒険者ギルドに登録している者とはねえ……。
お陰で僕みたいな日陰者でも再就職可能になったんですが。」
バタンと元気よく、店のドアを開けてオープンの札を出しに行ったマスエさんの方角を見ながらマスターが呟く。
「それは私も同じです。マスター。マスエさんがいらっしゃらなかったら。
我々ではモフモフ目当てに来たお客様が入ったと同時に逃げられます。
モフモフ喫茶だと言っても信じて貰えなさそうです。」
「カタギの職業じゃなかったですからね、僕たち。」
カウンターの影に隠れていたゴンドウさんとマスターのサナダさんが喋っていると。
「マスター! 早速入りたい方がいらっしゃいました!」
「え、ええと、ここだとモフモフ喫茶だから、動物に触れるって。」
勢いよくドアが開き、マスエさんがお客さんを連れてきた。女性の二人組のようだった。
「おお、やりましたね、マスエさん。私たちのホープ!」
「やだなあ、褒めすぎですよ。さ、とりあえず何時間後利用ですか?」
ここの店はモフモフに触れ合う利用時間に応じて、料金を取り、ドリンク、ご飯代は別料金だった。モフモフに触れ合うのみでもよく、注文して、払わなくてもいい事になっていた。
「ええと、とりあえず半日ぐらいで。」
「やったあ! ありがとうございます!」
「それでモフモフはどちらに。」
「その前に、逃げないようにドアを締めて頂いていいですか?
魔法柵になってて、モフモフにだけ反応して逃げられないようになっていても一応。」
「へえ……はい。あっ。」
お客さんはドアを閉めて中を見渡すと。店の中は喫茶店というより、冒険者酒場跡を改築して作ったバーのような暗い色の樹の柱と屋根、壁は一部、塗り壁と石組みになっていてカフェというよりはごつい見た目をしているが、テーブルと椅子はカフェのようにお洒落になっているという、年代的な見た目の建物以外はカフェの様相になっていた。
「それで、あちらがモフモフになります。」
「クキューン。グルル。」
「ワオーン」
マスターがいるカウンターの近くで伏せていた、見た目は甲斐犬とドーベルマンのようなシルエットをした、身体に魔力を宿した魔獣が二体いた。
「やだーかわいい! 私、モフモフに目がないんです!」
「私もー! やだー! おりこうワンちゃんっぽい!」
「グフッグフッ。」
「ワホッ。」
お客さんは本当に魔獣になったモフモフ目当てで来たようで、一心不乱にモフっていた。
「ああ~カワイイ! 本当に触れるんだ~!」
「よーしよし、撫でてあげるからね~!」
「ワホッ!」
撫でられる魔獣も嬉しそうに触られていた。
「良かったですねえ。本当に。マスエさんがいなくて僕たちだけだったら。
ここにいるモフモフまで全員ごついワイルドカフェになるところでした。」
カウンターにいるマスターがしみじみしながら呟いていた。
「やだもーマスター、何言っているんですか。
モフモフが可愛くてこのカフェ、作ったんでしょ!
可愛いって自慢しましょうよ!」
「そうですね……僕としたことが自虐にまた、走るところでした。」
「そうですよ、マスター! 何でそんなに自虐に走るんですか。」
「うん……きっと後ろ暗い職業ばかりしていたから、日向に慣れなくて。」
「はい、でもそれは私もですから。」
「そうでしたね……。」
ここのモフモフ喫茶は職にあぶれた冒険者たちが集まる場所だったが。あぶれるとは雇われていたギルドや雇い主から不要になる事。そうなるまでに何やかやがあったのだった。
「ここにいる者、全員元、暗殺者ですからねえ。」
「そうですね……。足は洗いましたけど。」
マスターであるサナダさんはアサシン、ウエイトレスのマスエさんは見た目と性格とは裏腹に(暗殺者の気配を感じづらいから油断しやすい)素手で人が屠れる格闘家。ゴンドウさんは特殊聖職者だが暗殺者スキル持ちの集団専門のヒーラーだった。全員、日陰の者だから逆に話が合うため集まってしまったのである。
「それでマスター。今日はお仕事、来ているんです?」
「いや、今日は特に……。」
そして昔のつてで、ギルドで断られた仕事がこっちに流れてくるのであった。
「じゃあ、今日はモフモフ喫茶で一日中、働いていられますね!」
「はは。何だかんだで僕たちはモフモフした生き物が大好きですから……。」
今日はモフモフ喫茶の店員は平和な一日を過ごしたのであった。
「あっ、マスター。私がオープンの札、出してきます!」
「よろしくお願いします、マスエさん。」
オープン時間内までに午前中の仕込みとテーブルの準備を済ませた、モフモフ喫茶のマスター、サナダさんと、ドアの外に出て札をオープンにするウエイトレスのマスエさん、そして何かあったらスタンバイ可能にして影に溶け込んでいる用心棒兼ウエイターのゴンドウさん。この三人が、ここ、モフモフした動物をモフれる喫茶、モフモフ喫茶の従業員だった。
「ふう……それにしても、魔獣を扱うために急遽、作られた、喫茶店の経営資格が。
冒険者ギルドに登録している者とはねえ……。
お陰で僕みたいな日陰者でも再就職可能になったんですが。」
バタンと元気よく、店のドアを開けてオープンの札を出しに行ったマスエさんの方角を見ながらマスターが呟く。
「それは私も同じです。マスター。マスエさんがいらっしゃらなかったら。
我々ではモフモフ目当てに来たお客様が入ったと同時に逃げられます。
モフモフ喫茶だと言っても信じて貰えなさそうです。」
「カタギの職業じゃなかったですからね、僕たち。」
カウンターの影に隠れていたゴンドウさんとマスターのサナダさんが喋っていると。
「マスター! 早速入りたい方がいらっしゃいました!」
「え、ええと、ここだとモフモフ喫茶だから、動物に触れるって。」
勢いよくドアが開き、マスエさんがお客さんを連れてきた。女性の二人組のようだった。
「おお、やりましたね、マスエさん。私たちのホープ!」
「やだなあ、褒めすぎですよ。さ、とりあえず何時間後利用ですか?」
ここの店はモフモフに触れ合う利用時間に応じて、料金を取り、ドリンク、ご飯代は別料金だった。モフモフに触れ合うのみでもよく、注文して、払わなくてもいい事になっていた。
「ええと、とりあえず半日ぐらいで。」
「やったあ! ありがとうございます!」
「それでモフモフはどちらに。」
「その前に、逃げないようにドアを締めて頂いていいですか?
魔法柵になってて、モフモフにだけ反応して逃げられないようになっていても一応。」
「へえ……はい。あっ。」
お客さんはドアを閉めて中を見渡すと。店の中は喫茶店というより、冒険者酒場跡を改築して作ったバーのような暗い色の樹の柱と屋根、壁は一部、塗り壁と石組みになっていてカフェというよりはごつい見た目をしているが、テーブルと椅子はカフェのようにお洒落になっているという、年代的な見た目の建物以外はカフェの様相になっていた。
「それで、あちらがモフモフになります。」
「クキューン。グルル。」
「ワオーン」
マスターがいるカウンターの近くで伏せていた、見た目は甲斐犬とドーベルマンのようなシルエットをした、身体に魔力を宿した魔獣が二体いた。
「やだーかわいい! 私、モフモフに目がないんです!」
「私もー! やだー! おりこうワンちゃんっぽい!」
「グフッグフッ。」
「ワホッ。」
お客さんは本当に魔獣になったモフモフ目当てで来たようで、一心不乱にモフっていた。
「ああ~カワイイ! 本当に触れるんだ~!」
「よーしよし、撫でてあげるからね~!」
「ワホッ!」
撫でられる魔獣も嬉しそうに触られていた。
「良かったですねえ。本当に。マスエさんがいなくて僕たちだけだったら。
ここにいるモフモフまで全員ごついワイルドカフェになるところでした。」
カウンターにいるマスターがしみじみしながら呟いていた。
「やだもーマスター、何言っているんですか。
モフモフが可愛くてこのカフェ、作ったんでしょ!
可愛いって自慢しましょうよ!」
「そうですね……僕としたことが自虐にまた、走るところでした。」
「そうですよ、マスター! 何でそんなに自虐に走るんですか。」
「うん……きっと後ろ暗い職業ばかりしていたから、日向に慣れなくて。」
「はい、でもそれは私もですから。」
「そうでしたね……。」
ここのモフモフ喫茶は職にあぶれた冒険者たちが集まる場所だったが。あぶれるとは雇われていたギルドや雇い主から不要になる事。そうなるまでに何やかやがあったのだった。
「ここにいる者、全員元、暗殺者ですからねえ。」
「そうですね……。足は洗いましたけど。」
マスターであるサナダさんはアサシン、ウエイトレスのマスエさんは見た目と性格とは裏腹に(暗殺者の気配を感じづらいから油断しやすい)素手で人が屠れる格闘家。ゴンドウさんは特殊聖職者だが暗殺者スキル持ちの集団専門のヒーラーだった。全員、日陰の者だから逆に話が合うため集まってしまったのである。
「それでマスター。今日はお仕事、来ているんです?」
「いや、今日は特に……。」
そして昔のつてで、ギルドで断られた仕事がこっちに流れてくるのであった。
「じゃあ、今日はモフモフ喫茶で一日中、働いていられますね!」
「はは。何だかんだで僕たちはモフモフした生き物が大好きですから……。」
今日はモフモフ喫茶の店員は平和な一日を過ごしたのであった。
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