精霊都市の再開発事業

白石華

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第六章

精霊との対決

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「ふん。精霊の加護を授かったところで、お前らは儂には勝てんわ!」

 カッ……ドゴオオンッ!

「ギャー!」

 俺は振りかぶった瞬間、雷に打たれた。

「トンカ!」

 サシガネの悲鳴が俺のところまで届く。

「……ぐ、精霊の加護が無かったらヤバかった。」

 俺は運よく黒焦げとアフロヘアーで済んだ。

「トンカ様。治癒を。」
「ああ、すまねえ梅花さん。」

 梅花さんは巫女だからか治癒魔法が扱えたようだ。なぜかアフロヘアーまで元通りになる。

「社長! あたしも戦う!」
「僕も戦います!」
「私も……消されると知ってて行く奴なんていないわよ!」

 既にカンナ、シーガル、サシガネは戦う気満々だった。

「あなたたちであろうと……戦うなら容赦はしませんよ。儂にも仕事がありましてな。」

 精霊は雷を再び呼び出そうとする。

「あの雷が……なくなればいいんですね?」
「ぬ?」

 ベルさんが呟くと、辺りは晴れ渡り、精霊のまとっていた雷も消滅する!

「な、この力……もしやあなたは。」
「私の正体は秘密です。ここで口にすればあなたは……抹消対象になる。」
「ひっ!?」
「ぬわ!?」

 精霊もビビったが、俺もビビった。まさかベルさんの正体が抹消案件とは思わなかった。

「ここには私がいます。管理の権限は私の方がある。どうか……お引き取りを。」
「あ、あなたまでいたら……もはやひずみがグチャグチャになって当たり前ではないですか!」
「はい。だからこの子たちが産まれたのでしょう。私も管理役を行っていますし、許容範囲です。」

 なんかベルさんが押しとおそうとしている。

「く……私は珠之小箱のひずみを直そうとしたのに。そのひずみから。
 あなたまで発生したら、ひずみが直せないではないか!
 これじゃあ……あんまりだー!」

 精霊は板挟みになった中間管理職のようだった。

「よっしゃー! 雷さえなくなったらこっちのモンだ!」
「あいよ! ぶち抜いたところを殴りまくるかんね!」

 俺とカンナがフルスイングの構えを見せる。

「ふん! 雷を失わせただけで精霊に人間が勝てると思う……な……。」
「ぎろり。」

 ベルさんもバスターソードを振りかぶっている。

(こ、これは、まずいぞ。)

 精霊がベルさんに怖気づいているため、俺たちに啖呵を切れないようだ。

「あんまりなのはこっちよ! 消すとか簡単に言うな!」
「そうです!」

 サシガネとシーガルが叫ぶ

「私はね、ここが気に入っているの! トンカが作ってくれた、この居場所が!
 カンナも、ベルさんもいて……シーガルと梅花さんもいて。
 これが終わったらまたみんなでバーベキューだってするの!
 レジャー施設だって建て直したばっかりで、商店街だってそうだし。
 まちの施設もまだ回ってないし。この街で全然、遊び足りないの!」
「僕も……梅花さんとみんなでここに暮らします!」
「そうですよ。シーガル。」
「おう! もっと言ってやれサシガネ!」
「そうだそうだ!」

 サシガネの言葉にシーガルが乗り、梅花さんも俺もカンナも続いていくが。

「ぬう……。」

 精霊は難しそうな表情になっている。

(儂が悪い精霊になっとる……。儂は仕事なのに。)

 精霊は世知辛い表情になっている。

「くっ。こうなりゃやけだ!」

 精霊は何かを決めたようだ。

「ふむ、お前らの言い分は聞いた。だが儂も、何もしないで帰る訳にもいかんのだ!」

 精霊は大きなハンマーを振りかぶった。

「いったらー! 俺だってハンマーくらい持っているわ!」

 俺が向かった。

 ガキイインッ!

 俺のハンマーと精霊のハンマーが殴り合うようになる。

「ふんっ。やるではないか……。」
「ここでやらねーでいつやるんだよ!」

 ガキインッ! ガキインッ!

 俺と精霊でいつの間にかハンマー同士を打ち付け合う一騎打ちになっていた。

「社長、がんばれー!」
「社長! 負けないでください!」
「トンカさん……!」

 カンナ、ベルさん、梅花さんが俺に声をかけ。

「僕も、トンカさんに勝って欲しいです!」

 シーガルにも声を掛けられ。

「トンカ! お願い……こんなヤツ、倒して! ココから消えるなんて……厭!
 私の居場所は……ここなの! やっと……ここならやれるって思えたの!
 もしトンカが無理だったら……私がコイツと戦う!」

 サシガネの声が俺に聞こえてくる。

「あたしだって戦う! あたしもそうだよ!」

 カンナも後ろで控えているようだ。

「そうですね。ここがどんなにいい場所か。私も経験ぐらいはしています。」

 ベルさんも。

「僕だって……。」
「そうですね。シーガル。」

 シーガルと梅花さんもサシガネたちに続いているようだ。

「どいつもこいつもヤケになっとる……。」

 精霊がまた、渋い顔になった。

「ああ……っ。そうだ。俺は……今までこのために。うおおおお!」
「ぬっ!?」

 俺は思いっきりハンマーを振りかぶり。

「ちぇいすとおおおお!」

 雄叫びを発するようにしながらハンマーを精霊に向かってフルスイングした!

 バキイイッ!

「すぐべっ!」

 何と精霊のハンマーを砕き、顔面にクリーンヒットした!

「に、人間が、精霊の加護を授かったからと言ってこの力は……あり得ない、規格外だ!」
「うるせー! そんなことはどうでもいいんだよ! さっさと帰れ!」

 ゴチイインッ!

「ぶおっ!」

 もう一発、頭をハンマーでぶん殴った。

「はー……っ、はー……っ。次は、どこだ……っ。」

 俺は既に本能のみの存在となり、精霊の殴る場所を探している。

「ま、マズい、儂は帰るぞ! もうホント何しに呼び出されたの儂!」
「うるせー! これでも喰らえ!」
「これがあたしの怒りよ!」
「ぶぎゃっ! ぐげっ!」

 俺とカンナは帰ろうとする精霊へ土産代わりにハンマーとハルバードをぶん投げたが、命中したようだった。

 シュウウウ……ウウン。

 霊殿は消え。何か稲光を纏った俺のハンマーとカンナのハルバードだけが戻ってきた。

「一応精霊の加護も授かったようですね。」
「そっすね。」
「あい。」

 俺とカンナはそそくさとハンマー、ハルバードを拾ったが。ベルさんがちょっと怖くなった。カンナもビビっているようだった。
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