精霊都市の再開発事業

白石華

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第六章

瑠璃姫様のお言葉

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「皆様、来るのをお待ちしていました。」
「えっ?」

 そこで玉座の間のような場所があり、お姫様である瑠璃姫様と思わしき方が玉座に座っていたのだが、その姿がサシガネそっくりだったため、俺が驚く。

「私……そっくり。」
「本当に改めて確認すると似ていますね。」
「うん……。」

 サシガネ、ベルさん、カンナも驚いているようだった。

「奥の方が瑠璃姫様になります。」

 カメの従者がシードルと梅花さんを先頭にした俺たち列の脇に控えるようになった。

「シーガル様、と申しましたね。私は瑠璃姫になります。」
「は、はいっ。」
「よろしくお願いします。」

 瑠璃姫様とシードル、梅花さんが挨拶を交わしたようだ。

「まずは……あなたの素性について確認しますが、記憶はお持ちでしょうか?」
「はい。記憶のかけらに、失ったはずの僕のと思わしき記憶が残っていたんですが。
 僕は記憶を失う前、これらを持っていたんでしょうか。」

 シードルは釣り針、べっこうぶちの眼鏡、潮玉を見せる。

「……それは本物ではありません。失った記憶たちが実体化したものです。」
「本物ではない?」
「はい。あなたの本体である人物……精霊でもある存在ですが。
 開けてはいけない箱を開けたとき……ひずみが生じ。あなたが生まれてしまった。」
「……?」

 シーガルは瑠璃姫様の説明に、ぽかんとしている。

「その者はここに住んでいた私の先祖の元に来て、暫く滞在したのち、帰る事となりました。
 その後、決して開けてはいけない宝箱を開けてしまったのです。
 何が起こるかは私達にも預かり知らぬものでした。
 その結果は、ずれていた時は流れ、その者は大きく年を取ってしまった。」

 聞いたことのある話だが、ベルさんからから聞いた話とは別の話だなと俺は思ったが、シーガルとの会話みたいだから黙っていた。

「あなたはその者の記憶と、ずれていた時の時間を進めたときに。
 ひずみによって生まれた。
 記憶の一部と時間を実体化させた存在なのです。
 記憶は記憶のかけらとなり、一部の記憶と時間はあなた……シーガルになった。」
「はあ……そんな事があるんですか。」

 俺の国では精霊は万物に宿るとあるが、これにも宿るとは、俺も驚いた。

「はい。元の存在に戻るには、ここを管理している者に戻してもらう必要があります。」
「戻ると……どうなるんですか?」
「あなたが本来の姿に戻ります。もしかすると、あなたではなくなるかもしれませんが。」
「えっ。」
「……。」

 シーガルが驚いたとき、梅花さんも僅かに身構えたようだった。

「記憶も時間も、本来なら元に戻る存在です。
 この後どうするかは、あなたが決めてください。」

 瑠璃姫様はそれだけを口にして、あとは静かにしていた。

「管理している者に……会う必要はあるのですか?」
「そうですね、いずれにせよ、会う必要はあります。その時に、あなたが申し出てください。
 通り方を教えます。」

 瑠璃姫様はシーガルに進み方を教える。

「……となります。後はあなたたちでどうされるかお決めください。
 私の役割は、ここまでです。」

 瑠璃姫様はそう言うと、本当に何も言わなくなったため、俺たちは城を出る事となった。
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