精霊都市の再開発事業

白石華

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第五章

ベルさんとお泊り会、始まるが難しい話になる

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「いや~。何があったかは想像の範疇ですが、今日はありがとうございました。
 ビールどうぞ。」
「ありがとうございます。今日は呑んじゃおうかな~。」

 部屋に着くなりベルさんにお礼を済ませると、二人で乾杯してみる事にした。

「トンカ社長。サシガネさん。まだ気持ちが不安定だと思いますし。
 多分カンナさんと二人で向こうは向こうでお泊り会みたいな事していると思いますが。
 社長も社長でサシガネさんの事、見てあげてください。」
「はい。次はカンナの予定でしたが、その後辺りに。」
「そうですね。その辺りでもいいんじゃないかと思います。サシガネさん。几帳面だから。」
「ですねえ。」

 恐らくこの流れだと、カンナより先にまた、サシガネをお泊り会に誘うと「何でカンナじゃないのよ!」と言う事だろう。あいつもハーレム維持の協力をしてくれているんだろうな。
 問題はアイツが、自分とみんなの扱いを気にしすぎているところだが、問題の方に行かなければ、それがアイツのいい所でもあるから、もっと気にするのは俺のみんなへの扱いである。ハーレムと言っても男は俺一人。例えサシガネが周りに合わせようとしても、俺がみんなに接しない事には真の意味での公平にならんのだ。それに、俺がそうすればサシガネも大目に見て貰えるだろうしな。

「ベルさんは……サシガネにも、カンナにも気を回せるからすごいですよね。」
「ふふふ。こういう時は、お姉さんにならないとですから。」
「ええ、ベルさんにとってはそうなんでしょうが。今日は俺と二人きりですし。
 今日ぐらいは羽目を外してください。そうしてくれた方が俺としても今後のためになります。」
「ありがとうございます~。私も羽目、外しちゃいますね。」
「はいはい。」

 俺はベルさんに、こないだベルさんに作って貰った食材がまだ残っていたからそれもツマミに出す。保存も精霊装置で何とかなっていると思ってくれ。

「美味しいです~。牛と羊って美味しいですよね~。」
「はい。各、一頭分もあれば相当、食べていられますよね。」
「ビールが美味しいから、今度ビールとトマトの煮込みも作ろうかな~。」
「そういうのもいいですね。」
「はい。デミグラスソースを薄くしたスープみたいな感じで。
 これも美味しいんですよ~。」
「へー。」

 味のイメージが薄っすらだが想像したら確かにうまそうだ。

「後はそうですね。豚や鶏も食べてみたいです。」
「モンスターで出てくるとどっちも狂暴なのだけど……今度出てくるダンジョンにはあるかな?」
「ええ、恐らく。新たに作る建造物で……。」
「俺たちにとってはダンジョン探索は倒したモンスターでバーベキュー目的ですが。
 また出てくるのがリビングメイルぐらいだったらぶっ壊してやりましょう。」
「無事、シーガル君も送り届けられるといいですね。」
「そうですね。多分、いい身分の者みたいだから……。
 記憶が戻ったら、そっちに帰るかもしれませんね。」
「帰れる場所があれば、ですが。」
「身分が良くても帰れなかったりするんですか?」
「この国を治めている精霊が二人いたとして、一人は国をその人に譲りました。」
「そうですねえ。」

 釣り針が記憶のかけらにもあったし、潮引き玉の話もあったし。それで二人の精霊だと、俺でも知っている海と山の話かもしれないと思い、その流れで相槌を打つ。

「では、その二人がいるとして。シーガル君は誰なんでしょう。」
「ああ、その二人じゃない可能性もあるんですか。だったら子孫とかですか?」
「その人でもない可能性です。」
「ん? その先は俺が聞いても大丈夫な話ですか?」
「ここまでなら秘匿はされていませんね。知った時点で抹消される話でもないと思います。」
「やっぱり知ったら抹消される話もあるんじゃないですか!」

 俺はつい、話に乗ってしまったが途中でおじけづいた。

「この話は違いますよ~。タブーにも触れていません。」
「はあ。」
「あるんです、伝承に。流産として処理されてしまった子が……。」
「つまり、その子かもしれないって事ですか?」
「ええ。どこに帰る場所があるかは分かりませんが。梅花さんと暮らされているからには。
 あの霊社の御本尊様の家系かもしれませんし。
 帰れる場所が完全に無い訳ではないと思いますが。その子と言う可能性もあります。」
「今の時期だと、そういう子供を祀って精霊としてお祭りに参加させるところもありますし。」
「そうですね。ひょっとしたら、精霊として、そういう形で実体化して出てきてしまった。
 子供かもしれません。」
「それで少年の姿をした精霊として実体化してしまったのかもしれないと。」
「あくまで伝承を紐解けばの話です。他に何かあるかもしれませんが。」
「うーん。」

 俺はいきなり解説を聞いてしまい、そろそろ知恵熱が出そうになってきた。

「話もこれ以上の事は分かりませんから、この辺にしておきますか。」
「ですねえ。俺も、あとは建物を建造してからにしましょう。」
「はい。それで、この後はどうされます?」
「あっ、それじゃあ、風呂にでも。」
「は~い。」

 俺はベルさんと風呂に入る事にしたのだった。
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